つまずきを明確にする

算数や数学のように積み重ねが大切な教科は、単元を進める前提となる部分ですでにつまずいてしまっていると授業についていくのが難しくなります。とはいえ、授業でもう一度やり直してから新しい単元に入るのも時間的に難しくなります。どのようにすればよいのでしょうか。

まず教師が、新しい学習内容を理解するために必要となる知識や考え方をきちんと整理しておく必要があります。たとえば、連立方程式の学習であれば、1元1次方程式を解くことができなければ、文字を消去できても正解にはいたりません。1元1次方程式であれば、正負の数の四則演算や文字式の計算がきちんとできていなければ、式の変形はできても正解にはいたりません。これから学習する内容を支えるものはどんなものか、細かく意識しておくのです。
その上で、事前にその内容の確認のテストをおこなったり、授業の最初の数分間に復習をするなどしたり、子どもにその内容を意識させます。大切なのはこの内容が身についていないと新しい単元で困ることを子どもが理解し、身につけようと思うことです。身についていないと気づいた子どもに対して、具体的に何を勉強すればいいか指示を出す、復習のための説明の書かれたプリントを用意して課題とする、放課後に個別に指導するといった対応が求められます。負担だとは思いますが、必要なことなのです。ポイントは多くを求めるのではなく、新しい単元に必要な最低限のことに絞ることです。こうすることで、教師の負担も子どもの負担も減ることになります。

授業中も、新しく学習したことと既習事項とを明確に区別しながら進めます。連立方程式であれば、文字の消去が終われば、ここからは1元1次方程式の問題であることを伝えます。ここまでできて、その先で間違えたのであれば、1元1次方程式の復習が必要であることを意識させるのです。問題演習も○か×かではなく、文字の消去まで、消去した後と分けてチェックします。教師が正解を解説するのであれば、文字の消去ができたかどうかで一旦確認することが大切です。ここまでできた人は2年生の内容を理解できていると評価するのです。その上でここからは1年生の内容だねと明確に既習事項と分けます。教師が○つけするときも、消去までできていればまず、そこに○をつけることが必要です。答が違っていても文字の消去ができていれば、「ちゃんとわかっているね」とほめて、「なんだあとはここができればいいだけじゃない」と1年生のことができるようになればOKだと前向きに捉えて励まします。こうすることで、子どもに前に戻って勉強をやり直す気持ちにさせるのです。

積み重ねが必要なものは、つまずいたところまで戻ることが必要です。そのためには、どこでつまずいているかを子どもがはっきりと理解し、ここができるようになれば自分できるようになるのだと、前向きにとらえることが大切です。
チェックのためにテストをステップに分けてきめ細かにつくる。授業中の机間指導でここを勉強すればいいと具体的なアドバイスをする(既習事項を授業時間内でできるようにしようと無理をしない)。本当につまずいているところ見つけ、そこまで戻ってやり直そうと前向きな気持ちにして、何をすればよいか具体的に示す。教師の負担も大きいですが、つまずいている子どもに寄り添って、やり直そうという気持ちを支えてほしいと思います。
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