ICT情報教育推進の会議で大いに学ぶ

昨日は、ある市のICT情報教育推進の会議に委員として参加しました。

この市では、国の仕分け会議にならった外部評価フォーラムが昨年開かれました。そこで、学校のIT整備関連事業が5人中4人から改善が必要、1人から廃止と評価されました。この結果を受けての話し合いが最初に持たれました。
他の市町と比べてもよく活用されている市ですが、なぜこのような結果になったのかは、当日の議事録を読むと納得できます。はっきり言って宣伝不足です。評価された方は、今は学校でICTを導入するべきかどうかというフェイズではなく、あるのが大前提であることをご存じないようです。また、そのことを説明側もきちんと伝えていません。対費用効果と言った言葉も出ますが、学校で日常的に効果的に使われている姿を見せていれば、このような言葉も出てこないように思います。
当然のように、この市の取り組みが伝わっていないことを残念に思う意見ばかりです。学校にとっては、あって当たり前、使うのが自然という状態になってきているので、あえて広報することを意識していないのかもしれません。

・学校ホームページでふだんの授業風景を伝えるときに、ICTの活用にも触れる。
・市の公報に積極的に載せる。
・学校評価の項目の中にICTを入れることで、活用されていることを伝える。

このような意見が出されました。

学校ホームページでの公報について、すぐに思い浮かんだのが、親しくさせていただいている校長の学校のホームページです。同じことを思われたT委員がそのことを伝えました。単にICTを活用している場面を紹介するだけでなく、誰にでもわかりやすい言葉で、使わなかった場合と比較してそのよさを解説しています。伝えることを意識した記事が、広報のあり方を教えてくれます。

他の市町の方がこの市を参考にしているほどICTの活用で有名なのに、足元の市民にはそのことが伝わっていない。皮肉なことです。しかし、このことはICTにかかわらず起こりうることです。学校現場でのよい取り組みを積極的に地域に発信することの大切さをあらためて感じました。

この市では、学び合いを大切にした授業にどの学校も取り組んでいますが、そこにどうICTを活かすかという提案が次の話題です。実際におこなわれている授業をもとにどう組み合わせると有効かという視点で書かれています。ICT機器の優位性が声高に主張されているものではなく、地味かもしれませんがなるほどと納得できるものばかりです。提案されたのは学び合いを活かした授業づくりでとても有名な指導主事です。本人は、ICTは得意ではないと言っていますが、授業がきちんとできる方の視点で書かれたものは説得力があります。よい資料をいただけました。
先日見た授業を例に(幾何ツールを使った授業研究会で大いに学ぶ参照)、ICTは有効であるがその特性を理解した使い方を教師も学んでいく必要があることを強調しました。委員長の大学教授からは、最近の学生の抽象化する力が落ちてきたことと、デジタル化が進んでいることには関係があるのではないかとの意見が出されました。なるほどと思いました。
子どもたちが学び合う姿とICTはとても自然に結びつく気がします。国から出ているICT活用における「協働」というキーワードは、実際に学び合う子どもの姿が見えていないと感じます。この市から、次のステップにつながる素晴らしい発信がされていくのではないかと期待させる話し合いでした。

最後は、2年後に建替えが予定されている学校のPC教室をどうしていくかをきっかけとした、これからのPC教室像についての話でした。
無線やバッテリー技術の進歩で、LANケーブルや電源から解放されたPC教室は、学び合いを進めるための工夫がみられる、PC抜きにでも授業してみたいと思うような教室でした。大型のディスプレイを4隅に置いて、ポスターセッションのようなものを意識したりと、どのような授業をそこで行なおうとしているのが浮かんでくるような素敵なものです。機械が前面に出てくるようなものではなく、そこで活動する子どもの姿を第一に考えていることがよくわかります。これからはPC教室といった特別なものではなく、すべての教室で自由にICT機器が使えるようになっていくはずです。PC教室はなくなるかもしれません。その流れの中でのこの提案は、ICT機器にこだわらない学び合いの空間と逆に普通教室ではできない活用の姿を示してくれました。おそらくこの先には、メディアセンターとのシームレスなつながりがあるのだろうと思いました。この市の先生方がこれまで着実に実践を積み上げてきたからこその提案です。予算の裏付けが取れて、この提案が実現することを期待します。

ICTを先進的に取り組んできた、全校が学び合いを積極的に進めてきたこの市だからこその提案をたくさん聞きことができました。委員として意見を求められる立場ですが、逆にたくさんのことを学ばせていただきました。よい機会をありがとうございました。
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