次の課題が見えてくる

中学校で授業アドバイスを行ってきました。2学期2回目の訪問です。各学年の子どもたちの授業の様子を学年担当の先生方と一緒に見て回りました。

3年生は、授業者によって見せる姿の差が大きいように感じました。この学校では、例年3年生はどの先生に対してもよい姿勢で授業を受けるようになるのですが、今年はちょっと違って見えます。主体的に活動するような授業では、とてもよい表情で集中して参加しますし、子ども同士がかかわる場面があれば、しっかりとかかわることもできます。人間関係もよいのですが、教師主導型で受け身の活動になると、そのよさが消えてしまいます。今までの3年生と違って、受け身の授業では集中力が落ち積極的に友だちとかかわろうとする姿勢を見せません。授業者の問いかけに対しても、考えることよりも板書を写すことに専念しています。授業のスタイルに合わせて態度を変えているようです。
高校受験を意識して演習的な時間が増えるのはしかたがないとしても、子どもたちと先生のやり取りをもっと増やして、考える過程を教室全体で共有することが必要だと思います。3年生の子どもたちは、場をつくればよく反応して、積極的に活動することができます。例え問題演習であっても、子ども同士で問題解決の過程を聞き合うような取り組みを取り入れると、もっと力を発揮すると思います。子どもたちの力をもっと信じるようにお願いしました。

新型コロナウイルスによる学校閉鎖の影響を一番受けたのが2年生だと思います。この時期になっても人間関係がうまく構築出きていません。教室では、子どもたちからも先生方からもコミュニケーションをとる意欲が感じられませんでした。先生が話をしても子どもたちの顔が上がりませんし、先生方も子どもたちの顔をあまり見ようとしません。子ども同士がかかわる場面も少なく、授業の中で孤立感を感じている子どもが多くなっている可能性があります。授業者の話を受け身で聞くことが多いため、すぐに集中力が切れ、コミュニケーションが上手くいっていないこととあわせて、授業に対するエネルギーが感じられません。ここで関係を再構築しないと、残りの中学校生活がこのままの状態でずるずるといってしまそうです。
まず、先生は自分たちを受け止めて寄り添ってくれる存在であると、子どもたちに思ってもらえることが大切です。出力がなければ、受け止めることはできません。授業だけでなく学校生活のあらゆる場面で子どもたちに出力を求めることが必要になります。発言することだけでなく、振り返りを書くことや行事、学級活動で行動することも大切な出力です。その出力を受け止め、ポジティブに評価し、子どもたちから疑問や困りごとがでてくれば、どうすればよいか一緒に考えてほしいのです。
朝や帰り、授業の最初と最後での挨拶で、一人ひとりと目を合わせ、元気に学校に来て授業に参加してくれていることを先生が喜んでいると伝えることから始めてほしいとお願いしました。

1年生は授業規律がしっかりしてきました。先生との関係もよくなっていると感じます。子どもたちの顔がきちんと上がるようになってきました。しかし、よく見ると顔は上がっているのですが、集中して参加できていない子どもの存在が気になります。表情がかたく、授業の中身が理解できていないように感じます。授業者との関係も悪くなく、やる気がないわけではないようですが、授業が「わからない」のです。
授業規律がよくなり、その過程で子どもとの人間関係も構築されたので、次はどのようにして学習内容を理解させていくかが課題です。
この学年全体に共通していると感じるのは、わからなくて困っている子どもが理解してできるようになるための仕組みやプロセスが授業の中にないことです。課題に取り組む子どもたちの手が止まっていると、授業者がヒントを出します。これでは、子どもたちはできるようになりません。なぜなら、教師が出すヒントはこうやりなさいという指示と同じだからです。この進め方をしている限り、困っている子どもは言われたことをやるだけで、自分で考える力は育ちません。また、問題を解かせた後、できた子どもに発表させますが、いきなり答を言われてもわからない子どもはついていくことができません。わかるできるためのスモールステップを意識することが大切です。
まず、課題に取り組む前に、何が求められているのかを子どもを指名しながら確認することが必要です。課題によっては試しに一つやってみたり、とりあえずの答を発表させたりすることで、全員が課題を理解できるようにします。また、見通しを持つための活動も大切です。似たような課題に取り組んだことを思い出させたり、課題に取り組むにあたって疑問や困ったことを共有したりするとよいでしょう。困ったことについては、どうすればうまくいきそうか数人に発表させたり、まわりと相談させたりすると見通しを持って取り組めるようになります。
次に、個人で解決することにこだわらず、グループやまわりと相談するようにします。手がつかない子どもが多いようであれば、いったん活動を止めて全体で、困っていることを共有し、できた子どもには答ややり方ではなく、どう考えたのか、どうやって気づけたのかといった過程を発表させるようにします。子どもたちが見通しを持てたようであれば、再度課題に取り組ませます。最終的な発表も答ではなく過程を発表させることを中心にし、つまずいた子どもがそのことを理解できたかを確認して進めます。答や解き方を教えるのではなく、どうすれば答えが出せるかという課題解決の力を意識した授業に変えてほしいと思います。
授業後、1年の先生から、家庭学習の課題を出さない子どもが多くどうすればよいのかという質問をいただきました。無理に出させようとすれば、答を写して提出するといったことになりかねません。「形だけ整えればよい」と教えることになるだけで、本質的な解決にはつながりません。授業中、わからなくても顔をあげて聞こうとする子どもたちです。提出できないのは、課題がわからない、解けないからだと思います。できない問題を無理にやらせるのではなく、できる問題に取り組ませてやる気を出させるという発想に変えてほしいと思います。全員が同じ課題に取り組む必要はありません。子ども自身が提出する課題を選ぶという個別最適な学習を目指してはどうでしょうか。一人一台のタブレットを活用すればそれほど難しいことではありません。問題集であれば、デジタル化して一題ずつ選べるようにし、難易度別に分けておいて子どもたちに好きな問題を選ばせるのです。中には中学校以前の内容でつまずいている子どももいるので、その子どもたちでも解けるような問題も用意しておくとよいでしょう。最低何題提出するかを指示するだけにして、自分で取り組む問題を選んで提出させるようにするのです。やれたことをほめ、次は題数を増やそうとか難易度の高い問題を増やそうといった声をかけるとよいでしょう。課題の準備は大変に思えますが、分担してやればそれほどではないと思います。一度作っておけば、来年度以降も活用できるので、年々充実していきます。
こういった工夫をすることで、宿題のあり方も変わっていくと思います。今後の先生方の工夫に期待したいと思います。
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