わかりやすい授業はよい授業か?

子どもたちからの「わかりやすい授業」という評価は先生にとってうれしいものです。私も子どもたちから「今日の授業はよくわかった」と言わるとうれしく思ったものでした。ところがその後試験をしてみると、期待していたほど点数が取れないことがよくありました。逆によくわからなかったという時の方が試験のできがよかったりするのです。「わかりやすい授業」が本当によい授業なのか少し考えてみたいと思います。

子どもたちは授業がよくわかったと思うとそれで満足して、家で復習したり新たな問題に取り組んだりしないようでした。逆によくわからなかった時は友だちに聞いたり自分でもう一度問題に取り組んだりしていたようです。子どもたちがわかりやすいと言ってくれた授業は、単にわかったつもりにさせているだけだったのです。そのことに気づいてから、「もうちょっとでわかりそう」な授業を目指すようになりました。「全然わからない」だと、子どもたちはあきらめてしまいます。「もうちょっと頑張ればわかりそう」というさじ加減が難しいところです。上手くいったと思える時は、授業が終わった後、子どもたちは黒板の前で授業の内容について聞き合っています。子どもたちのわかりたいという意欲が伝わってきます。

授業評価アンケートをとる学校が増えてきましたが、「授業がわかりやすい」という項目の評価が高いからといって、必ずしもよい授業とは言えません。どうやら多くの場合、子どもたちの思う「わかりやすい」が「試験に出る問題」「試験前に何を覚えておけばよいか」がわかりやすいということのようだからです。試験に何が出題されるかがわかれば点数を取りやすく、また、試験で点を取れれば子どもたちがその授業を評価してくれるので、子どもたちも先生も互いにそれで満足しているのです。これがエスカレートしていくと、授業の内容を理解し考えることよりも、板書を写しワークシートの穴埋めをして試験対策が効率よくできるノートづくりを優先するようになってしまいます。先生も試験で点数を取らせることが目的化して、極端な場合は試験問題を事前に教えたりします。子どものやる気は試験の点数とある程度相関がありますので、こういったこと全否定することはしませんが、受け身で覚えることが学習だと勘違いした子どもを育てることにつながってしまうように思います。
その一方で同じようにわかりやすいと評価される授業でも、自分たちで相談してわからないところを解決するといった全く異なったスタイルのものもあります。最初の内は正解を教えてほしい、早く答が知りたいと不評だったりするのですが、わからないことを自分たちで考え、一つずつ納得しながら解決していくことを積み重ねていくと「よくわかる」「楽しい」と評価が好転していくようです。子どもたちが疑問を持ったり困ったりすることで受け身ではなく主体的に学ぶようになっていくからなのでしょう。子どもたちを「困らせる」授業が「わかりやすい」授業へとつながっているのです。

一口にわかりやすい授業といっても、そのあり方は多様です。自分がどのようなわかりやすさを求めているのか、一度振り返ってみるとことをお勧めします。
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