課題意識を持って授業に取り組む

私立の中学校高等学校の公開授業を参観しました。1週間の公開期間はどの授業も自由に見ることができます。この日は前回気になった中学校の様子を中心に参観し、また希望の先生方からの相談にも答えました。

中学校は前回ある先生に子どもたちのかかわり方や授業規律について指摘しましたが、中学校全体でそのことを意識して授業に取り組んでいるようでした。中学校は規模が小さいこともあり、先生方のコミュニケーションがよいことがわかります。
授業規律がしっかりしていても、子どもたちに過度に守ることを意識させているように感じる学級がありました。子どもたちの笑顔が少ないように思います。やわらかい空気の中で授業規律が保たれることが理想です。子どもたちのよい行動をほめることで授業規律を保つことを意識してほしいと思います。
中学校では日ごろから子どもたちの発言を大切にし、考えをつなごうとしている先生が多いのですが、この日は発言を授業者が受けて、説明したりまとめたりしている場面に多く出会いました。無意識のうちに授業を先に進めること優先しているようです。一人一台のiPadがあるのですから、発言させることにこだわらず、iPadで考えを書かせオンライン上で共有するといった進め方も視野に入れるとよいでしょう。こうすることで授業者は子どもたちの考えを把握しやすいので「○○さんの意見と△△さんの意見が似ているように思うけど、どう?」「□□さんはちょっと違う意見のようだけど、どういうことか聞かせてくれる?」とすぐにつなぐことができます。意見を発表させなくても子ども同士が互いの考え知ることができるので、「納得した考えある?」「質問や疑問ある?」と問いかけることもできます。これが最善というわけではありませんが、3密対策や時間を効率的に使うことを考えると一つの方法になると思います。

国語の先生から「子どもたちに文章を読み取る力をつけたいが一人ではなかなかできない。ワークシートに沿って穴埋めさせているが、これで力がつくのか自信がない」と相談されました。文章の構成にそって筆者の主張を読み取ることは簡単なことではありません。力をつけていくためのステップを意識することをアドバイスしました。最初はワークシートの項目に従って穴埋めすることでよいと思います。大切なのは、項目を指示ではなく文章の読み取りのポイントとして意識させることです。「接続詞に注目することで段落の関係がわかる」「結論、根拠、例示・・・のどれか意識する」「何度も出てくる言葉、言い換えている言葉はキーワード」といったワークシート上の作業をメタなものとして意識させるのです。このようなワークシートでの作業を経験させてから、今度は記入枠の項目や指示を省いたものに変えていきます。何を書けばよいのかを自分たちで考えさせ、どんな項目を書こうとしたか、何に注目したかといったことを互いに聞き合い、自分たちでゼロから読み取れるようにしていくのです。
また、子どもたちの力に差があるので、課題への取り掛かりが見つからずになかなか手がつかない子どもがいることも悩んでおられました。子どもたちに課題に取り組ませるとある程度区切りがつくまで時間を与えることが多いのですが、そうすると手のつかない、途中で止まったままで時間が過ぎていく子どもがどうしても増えます。個別対応も一つの方法ですが、限界があります。早い段階で、どこで困っているか、何がわからないかを全体で確認し、同じように困った子どもをつなぎながら、動けている子どもに「なにをやった?」「どこに注目した?」と解決に向かってどのようにしているかの過程を共有するのです。ある程度見通しが持てそうな状態になったら、また作業に戻ります。結論ではなく困ったこと、過程を共有することを大切にするようアドバイスしました。

数学担当の先生からは、「今までは子ども同士で教え合うことで、中位の子どもがわかるようになる場面が多かった。しかし、教え合うことがやりづらくなったので、iPadで解答を共有するようにしたのだが、直接教えてもらえないのでわからない子どもが増えてしまった」と相談を受けました。そこで上位の子どもを鍛えることをアドバイスしました。子どもたちは、式を順番に書いてその結果が正しければそれで満足します。そこで、「どういう方針で問題を解いたのか?」「式の変形は何をしているのか?」「なぜそうしたか?」といった、行間を埋めることを書くように求めるのです。それを見合い、よかったところをマーカーで塗り、「どこでわかった」「どこがわからない」「どの説明がよかった」といったコメントを書いたり、「いいね」スタンプを押したりして子ども同士で評価させるのです。こうすることで、オンライン上でコミュニケーションが生まれ、子ども同士で問題解決ができるようになりますし、上位の子どもも説明を書くことでより力がつき、友だちに評価されることで自己有用感も増します。授業をいろいろ工夫している先生ですので、これをヒントに自分なりの解決方法を見つけてくれると思います。

今回、課題意識を持って授業に取り組んでいる先生とたくさんお話しすることができました。先生方の今後の成長が楽しみです。
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30