秋からの変化の違いを感じる

小学校で全学級の授業アドバイスを行ってきました。今年度2回目の訪問です。

秋に訪問した時と比べて変化のある学級と変化の少ない学級がありました。変化があった学級は3学期になって子どもたちのよい面が授業にたくさん表れているように思います。変化のない学級は、子どもたちの授業への参加度、集中度がバラバラなことが課題だったのですが、そのことが先生にあまり意識されていませんでした。どの学級も子どもたちは落ち着いていて、先生方が特に困っていないことがその原因の一つだと思います。

印象に残った授業に、ベテランの1年生の算数の授業があります。ワークシートをクリアファイルにはさみ、サインペンで書くことで簡易ホワイトボードとして使っていました。ワークシートには大きな○が片面に3個もう片面には4個書かれていました。
「?個ずつを3つ」の足し算をそのクリアファイルを使って学習していました。私が見た場面では、最初にブロックを○の上に4個ずつ置いてから、次はブロックの代わりに丸の中に絵をかかせていました。順番に抽象化のレベルを上げていきます。授業者は子どもたちの間を回りながらタブレットPCを使って、クリアファイルを写真に撮っていきました。
撮った写真を、ブロックを使ったもの、絵をかいたもの、○と○の間に+を書いているものと順番に映していきます。+を書いているものが映されると、子どもたちから反応が出ます。授業者が説明するにではなく、友だちの書いたものを見ることで子どもたちにこれは足し算に表わせることを気づかせ、共有していきました。続いて計算式も書いているものを見せます。「式も書いているね」というだけで、式を書きなさいとは言いません。
この後、裏の○4つで活動をさせました。指示ではなく、子どもたちの意志で次のステップに移行させたいのでしょう。子どもたちはとてもよい表情で意欲的に取り組んでいます。子どもたちとのやり取りを授業者も楽しんでいるのがよく伝わってきました。以前の訪問時には落ち着かない子どもがたくさんいたのですが、この授業が終わって挨拶するまで誰がその子どもか気づきませんでした。意欲をうまく引き出していたから、集中して参加していたのでしょう。
ベテランが率先して新しいことに挑戦する姿を是非まわりの先生にも見てほしいと思いました。

4年生の2学級は、ともによい雰囲気でした。3年目の若手と、中堅の担任がよい形で連携できていることを感じます。3年目の先生は、新人の時と比べて大きく成長していました。1、2年目で学んだことが、先輩のよい影響もあって花開いてきたように思います。この日の授業は子どもたちの自主性を引き出そうと工夫をしていることがよくわかる授業でした。そこを目指しているからこそ、課題がよく見えました。
展開図の導入で、紙を与えてさいころをつくらせます。さいころの目の数を確認して、立方体が6個の正方形でできていることに気づかせました。それだけで、特にやり方を指示せずに方眼紙を与えて自由にさいころづくりに取り組ませます。子どもたちはやる気十分で挑戦します。いきなり方眼紙をハサミで切る子どもと線を書いてから切る子どもに分かれます。子どもの作品をいくつか紹介して、先に線を引いたかどうかを聞きます。その上でわからなければ紹介したものと同じようにやればいいと言って、再度挑戦させました。自分でやりたいというやる気を大切にしているのですが、うまくできなった子どもの中には自分のやり方はあきらめて、友だちの展開図をもとつくる者もでてきます。自分の考えで取り組んだことをダメだったと感じてしまうことが残念です。
上手くいかなかったものを見せて、どこに穴が開いて、どこが重なっているのか印をつけてみるとよいでしょう。それを開いて紙の上に載せて、どうするとよいかを書き込ませると面白かったと思います。修正を書き込んだものが展開図につながります。「失敗したから、次は上手くいったね」「失敗を修正するから上手くいくんだね」といった価値付けをすることで、失敗を否定的にとらえず、意欲的に取り組み続けるようになると思います。

6年生は、2学級とも6年生らしく落ち着いているのですが、学習に対するエネルギーが感じられません。担任の一人はこの学年を4年生から受け持っているのですが、その時の授業風景を思い出すと、もっとエネルギーがあったように思いました。
担任は2人とも私がよく知っている方ですが、どうも以前と比べると課題を与えたり指示したりすることが多くなっているように感じました。自分たちでこうしようと主体的にさせることが大切なのですが、最高学年だからこうあってほしいと子どもたちに多くを求めてしまったのかもしれません。
卒業まであと1月ほどです。カウントダウンで順番にグループでお楽しみの時間を運営させるといった、子どもたち自身でやりたいことを考えて実行する場面をつくってほしいと思います。子どもたちのエネルギーを上げて卒業式を迎えられることを願います。

現状で満足せずに、より高いところを目指している方と、そうでない方の差が3学期になって顕著になっています。目指すところが学校全体で共有できていないために、現状で満足してしまう方がでてきてしまうことがその要因に思います。次年度は、目指す子どもの姿を具体的にし、そのためにどんな工夫をするかをテーマに授業研究に取り組んでほしいと思います。よい実践を全員で共有する場面が多くなることを願っています。
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