子どもの姿は先生の鏡

私立の中学校高等学校で授業アドバイスを行ってきました。この日は一般のコースの1年生の授業を先生方と見学して、検討会を行いました。

子どもたちは落ち着いて授業に参加していますが、4月当初にあった、学ぼうという意欲があまり感じられない状況でした。子どもたちの表情が乏しくなっているのが気になります。この日見た授業のほとんどが、一方的に授業者が話し続けるもので、子どもたちの声を聞くことがほとんどありませんでした。子どもたちは授業に参加しようという姿勢を見せるのですが、力尽きてしまう姿が次第に目につきだします。
口頭での説明や板書ではなく、一人一台のiPadに直接データを送れば済むような場面も多くみられました。ICT機器を活用することで、子どもたちがかかわり合って活動する時間を捻出することができると思います。中学校では、ICTを積極的に活用することで子どもたちが活動する時間を上手くつくっています。中学校と高等学校で学び合って、せっかくの環境を有効に使ってほしいと思います。
気になったのが数学の授業です。かなりの子どもたちが授業者の説明についていけなくて、板書を写すだけになっています。中には最初から理解することをあきらめて、iPadで板書を写して他の時間はじっとしている子どももいます。困っている子どもができるようになる場面をつくる必要があります。
しかし、いくつかの授業の様子からすると、子どもたちは学ぶ意欲がなくなってしまったわけではなさそうです。ペアやグループ活動をしている授業では、とてもよい表情でいきいきと活動している子どもたちの姿が見られました。意欲もありかかわり合う力もあるのですが、それを発揮する場面がなかったのです。困っている子どもができる子どもに助けてもらうような場面をつくることで、子どもたちのよさを引きだすことができると思います。
先生方は、子どもたちが指示に従い、落ち着いて授業を受けてくれるので、いつの間にか教師主導の旧来の授業に戻ってしまいました。その結果子どもが受け身になっているのを見て、受け身な子どもたちだと思ってしまっています。
子ども同士がかかわり合い活躍する場面をつくり、彼らの持つよさを引き出すことで、積極的に学習に向かう姿を取り戻すことができると思います。子どもは先生の姿を映す鏡です。子どもたちの姿は先生がつくっていることを忘れないでほしいと思います。

11月中旬に行う研究授業の授業者と懇談しました。
今年度他校から移られた社会科の先生は、教科を通じてどのような力をつけたいのかが今一つはっきりしていませんでした。授業の進め方も一方通行で、子どもとのやり取りもほとんどありません。授業者は子どもに問いかけるようにしているということでしたが、具体的に聞いた例は、国際協力に関連して日本の輸出入額の一番大きいものは何かといった、単なる知識を聞くものでした。子どもが考えるような発問を考えてほしいことと伝えました。国際協力を経済や政治の観点で考えるのであれば、iPhoneを構成する部品がどこで作られているかを調べるといった活動をさせるとよいでしょう。そのことから、どんなことがわかるかを問いかけることで、国際分業やそれに伴う、日韓や米中の経済問題が見えてくると思います。こういった学習活動もあることをお伝えしました。
この先生には、研究授業ではどんな力をつけたいと考えているのがわかるような授業を目指すことをお願いしました。

英語の若手の先生は、子どもたちがこちらの与えた課題に前向きに取り組み、それなりに楽しんでくれているという手ごたえを感じていますが、そこから一歩進んで、主体的に取り組み、学ぶ楽しさを味わってほしいと考えていました。よい視点だと思います。今回の授業では英語の絵本を幼稚園児に読み聞かせするというテーマで活動をさせます。子どもたちに主体的に取り組んでもらうために、絵本の選定、本文の改変などの自由度を大きくとることにしました。これまでは、声の大きさや抑揚といった基本的な話し方の技能を相互に評価していましたが、今回は幼稚園児を意識した工夫も評価項目に入れたいと考えています。子どもたちが実際にどのような動きをするかわかりませんが、意図をもって実践し続けることで授業の質は確実に上がっていくと思います。この姿勢を忘れなければ、若い先生なので大きく成長していくことと思います。

国語の若手の先生は、日々授業が変化しているようです。授業を見るたびにいろいろと工夫が見られます。今学期はグループ活動を積極的に取り入れているのですが、できる子どもが、「こうじゃない?」と自分の答を示すと、多くの子どもがそれにのって、深く話し合わずに結論を出してしまうことを悩んでいました。この問題の原因の一つは、課題がグループで考える必然性がないことにあります。一部の子どもがすぐに答を出せるような課題では話し合う必然性がないのです。また、答をグループで一つにまとめようとすると、強い子どもの意見がそのまま通り、話し合うことをしなくなります。あくまでも自分の答を出すためにグループを活用するとことを基本とし、全体の場では答ではなく、根拠を聞いて共有することが大切です。
この先生は、どんな形(個人、ペア、グループ)で活動させるのかを先に考えていますが、まず、この単元でどのような力をつけたいのかを考え、それを達成するにはどのような課題や活動を選べばいいのかを考えてほしいと思います。ねらいを達成するための活動の選択肢の一つとして、ペア活動やグループ活動があるのです。
今回の研究授業では、どんな力をつけたいのかを明確にした上で、どのような形で活動させるかを考えるようにお願いしました。素直で柔軟な先生なので、また新たな変化、進化を見せてくれることと思います。
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