素直な先生は伸びる

中学校の若手二人に授業アドバイスを行いました。

1年生の社会科の授業は、摂関政治の授業でした。
授業者は「この世をば わが世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも なしと思へば」の句を示して、藤原道長が権勢を持ったことを示します。その上で藤原氏がどうやって権力を握ったのかを考えることをこの日の課題として提示します。子どもたちはワークシートの天皇の系図、教科書や資料集をもとに考えます。と言っても、教科書には天皇との外戚関係を使って権力を持つようになってきたことは書かれています。途中で子どもたちの活動を止めて系図の内容を確認しますが、教科書の記述の確認にしかすぎません。子どもたちに考えた結果を発表させますが、当然のことながら教科書の内容の繰り返しになります。その後、摂政や関白の確認をして板書にまとめますが、結局子どもたちにとっては、先生のまとめをワークシートに写せばそれで困らないので、どうしても学習に対する意欲が上がりません。
教科書に記述していることをなぞっても子どもたちは考えることはありません。事実(史実)をもとにより深く考えさせることが大切になります。この授業であれば、外戚関係を使って権力を持ったということは史実としてすぐに押さえて、そこから考えるような課題を与えたいところです。「天皇の親戚になれば、権力を持てると他の貴族は考えなかったの?」「なぜ藤原氏が上手くやれたの?」といったことを問いかけて、子どもたちに疑問を持たせたいところです。ここから、貴族が力を持つようになる過程や、その中で藤原氏が特に力を持った理由を考えることで、平安時代の歴史の流れが理解できると思います。「天皇はそれでいいと思っていたの?」「この後どうなると思う?」「藤原氏はずっと権力を持ち続けれそう?」といったことを問いかければ、この後の歴史の流れを自分たちで考えると思います。
こういった視点で歴史を見ることは、社会科として大切な見方・考え方の一つだと思います。現在の社会で起こっていることから、これからの社会を予測したり、自分たちの社会をどうして行くのかを考えたりする力につながっていきます。この力をつけることは社会科を学ぶ大きな理由だと思います。また、授業の最後に女流文学などの平安文化に簡単に触れましたが、外戚政治との関連を考えさせることも課題として面白いかもしれません。
子どもたちにどのような力をつけたいのかを明確にして、授業をつくってほしいと思います。

3年生の体育の授業はバスケットボールの最後の時間でした。2コートを使って試合を行います。
準備運動も含めて、子どもたちの動きによどみがありません。試合を始める前には、何も言わなくても体育館の扉を閉め、バスケットゴールを利用できる状態にします。試合がすべて終わった後も素早く元の状態に戻します。単元の最初の授業で準備や後片付けについて説明をするようにしているそうですが、きちんと定着しています。子どもたちがよく育っているのを感じました。
授業者は以前と比べて子どもたちをとてもよく見ています。準備運動や説明の場面でもしっかりと子どもたちと視線を合わせるようにしていました。意識して子どもを見ていることがよくわかります。
授業者が進め方と組み合わせの提示をしただけで、子どもたちは指示されなくても、タイマーの音に従って試合を開始、終了、交替、開始と混乱なく進めます。自分たちの試合のない時も遊んでいる子どもはほとんどなく、どの子どもも試合をしっかり見て声援を送っていました。授業者は体育館の2階から全体を見ながら評価をしていましたが、メモすることに気を取られることなくしっかりと全体の様子を把握していました。
体育の授業のバスケットボールの試合では、ボールに人が集まり接触プレーが多いのが普通ですが、この授業ではどのチームも全体に広がってパスでボールを運ぼうとする、見通しのよいプレーをしていました。ただ、防御より攻撃の意識が強く、ゴール下にボールを運ばれるとディフェンスに参加せず、味方のボールになった時にすぐに攻められるように外から様子を見ています。ボールを取るとゴール下でずっと待っている仲間へロングパスを投げて速攻をしかけるという攻撃パターンが主です。特に審判を設けていないので、バイオレーションやファールを取ることがなく、ボールが外に出ない限りプレーは止まりません。3秒ルールを意識していないために、このようなオフサイドのないサッカーのようなバスケットになってしまいました。
このことについて授業者と話を聞いたところ、ゲームでは点数が入らないと意欲が上がらないので、得点できることを意識した指導をしてきたそうです。コートを広く使い、ドリブルとパスのどちらが早くボールを運べるかを判断することを大切にしてきたそうです。きちんと指導の成果が出ているから起こっているプレーだということです。そうであれば、次は、子どもたちの技術をもう一段階上げるためにどうするのかを考えればよいということです。授業者の課題が、「どのように子どもと接し指導していくのか」という授業技術面から、「何を教えるのか」という教科の内容面へと移ってきています。
1チームだけ、マンツーマンを意識したディフェンスを行っているチームがありました。当然ながら他のチームに対して圧倒的でした。試合のインターバルで少し時間をとって、こういったチームのよさを共有することで、授業者が指導した以外のことに気づかせることができます。子どもたちが互いに学び合う場面を意識するとよいでしょう。
昨年初めて授業を見せていただいた時と比べて、ずいぶんと授業が進化したように思います。素直にアドバイスを受け止め、授業を改善しようと日々臨んだのだと思います。授業が変化すれば子どもたちも変化することを肌で感じ、子どもたちの姿から学ぶことを知ったのだと思います。若い先生が成長していく姿を見ることができるのは本当にうれしいことです。この姿勢があれば、後は単元で扱う内容と目指すべき子どもの姿を明確にしていくことで、どんどん力をつけていくと思います。これからが楽しみになってきました。
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