学年ごとの課題が見える

先日、中学校で今年度最後の授業アドバイスを行ってきました。今年度は学年ごとの子どもの様子を中心に見てきましたが、それぞれに特徴のある行動や変化があり、私にとっても学びの多い1年でした。

3年生は子ども同士の関係がよく、高校入試直前ですがよい表情でかかわり合う場面をたくさん見ることができました。その反面、受験に直面して余裕のない子どもも少なからず目にします。精神的に苦しくなって何をすればよいのかわからない、手がつかない状態のようです。そういった友だちを支える余裕のある子どもがすぐそばにいればよいのですが、自分のことで手一杯になっていることが多いのが実態でしょう。
苦しい状態を「頑張って乗り切ろう」ではなく、「当然だよね」とまずその気持ちに寄り添うことをしてほしいと思います。その上で、どんなことをすればよいのかを具体的に伝えるとよいでしょう。「まずは体調を崩さないことが大切だよね。○○時には寝て、睡眠時間を確保しよう」といった生活面のことでもよいので、何をしてよいかわからない子どもが、少しでも前に向かって進めるような働きかけをしてほしいと思います。

2年生は学力も高く、一見すると落ち着いてよい状態に見えますが、消費者的、功利的な行動をする傾向があります。自分で考えまとめることを意識して板書を減らしている授業に対して、まとめを書いてほしいと訴えたりします。試験や成績に直結する知識や解き方ばかりを求めているようです。考えることよりも結論を欲しがっているのです。
漢字練習などは集中してやる一方で、板書を写す時は先生がしゃべっていてもゆっくりと写し、写し終れば顔を上げて聞く姿勢を見せます。グループでの相談は取り敢えずちゃんとやるのですが、合間に雑談をして息抜きをします。授業者が机間指導で後ろに行くと、作業の手を止めてよそ事をする姿も目にします。注意されない範囲がどこまでかを見抜いて、上手に手を抜いているようです。一部の子どもというよりは、協調して行動しているように感じます。
授業者が意識して指導すれば表面的には態度を改めるでしょうが、それでは子どもたちの成長につながりません。「学びとは何か」を正面から問いかけ、子どもたちの学習観を変える必要があると思います。知識や技能だけでなく、「なぜそうなるのか」「どう活かしていくのか」「どう説明するのか」といった思考力や判断力、表現力これからの時代に求められる力であることを意識させるのです。まわりの空気を読んで動く子どもが多いので、より高いところを目指す子どもが現れれば、それに引っ張られて雰囲気が変わっていくはずです。学級活動や授業など、あらゆる場面でこのことを伝えるよう、学年全体で意識してほしいと思います。

1年生はざわついたり、テンションが上がりすぎたりすることもありましたが、それなりにエネルギーが高い子どもたちでした。それが、3学期になって妙に落ち着いてきたようです。一見すると、目立つ子どもがおとなしくなりよい状態にも見えるのですが、以前と比べて学習に取り組むエネルギーが下がっているように感じました。学習面で苦しい子どもが、わからないなりに頑張ろうとするが最後に集中力が切れてしまうといった場面をよく目にしたのですが、そういう姿も見なくなりました。「やってもダメ、ムダ」とあきらめてしまったように感じます。「とりあえず板書は写して、わからなくてもじっとしていれば時間は過ぎていく」とやり過ごし方を覚えてしまったようです。
一方学力面で上位の子どもは、与えられた課題をこなせばよいという受け身な姿勢に変わってきているように思います。子どもたちのそれぞれの立ち位置がはっきりしとして、変化への意欲がなくってきているようです。エネルギーの低さを感じたのは、こういうところにも原因があるのかもしれません。
変わるためのきっかけを与えることが必要だと思います。具体的に取るべき行動をいろいろな場面で伝えることを意識してほしいと思います。

1、2年生に共通して感じたことに、以前と比べて笑顔が減ったことがあります。先生方は主に授業規律を意識的にほめていましたが、子どもたちが落ち着いてきたためにその機会が減ってきたように感じます。認められる場面が減ったことが、笑顔の減った原因かもしれません。授業規律面だけでなく、学習面でも子どもたちを評価することが大切です。子どもたちにどうなってほしいのか、どのようなことを評価するのかを考え、次にその場面をどうやってつくるのかを意識して授業を組み立てることが必要です。子どもたちをほめる、認めるという水をやり続けることを忘れないようにしてほしいと思います。

この学校は学年団が中心となって子どもたちをよく観察し、子どもたちの状況に応じた対応を工夫しています。波はありますが、確実によい方向へと子どもたちは成長していきます。4月は子どもたちの気持ちがリセットされるので、変容を促す一番の機会です。先生の入れ替わりもありますが、学年として課題をきちんと共有してよいスタートを切ってくれることと思います。4月の訪問が楽しみです。
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