私立の中学校高等学校の授業公開2日目

前回の日記の続きです。

2日目の公開授業です。
高校3年生の日本史の授業はとても興味深いものでした。
子どもたちが事前に調べた女子校(大学や高校で過去にそうであったものも含む)の設立年と設立理念を共有するところから授業は始まりました。友だちと情報交換して自分の調べたものに4つ付け加えるように指示します。子どもたちは教室内を移動しながら友だちの調べた物を写していますが、手で写しているので結構な時間がかかりました。
いくつかの学校について授業者が全体に問いかけながら情報を聞きますが、自分たちですでに共有しているので、あまり反応はよくありません。また、タイの女子校からの留学生がいたので、その学校についても授業者がいろいろと質問しましたが、ここまでにかなり時間を使ってしまいました。
情報を共有し終わったあと、それをもとに年表を作成します。縦軸に年を、その左側に各大学の設立年を書き込ませます。すると、あらかじめ書き込んでいたこの学校の設立年の前後に集中します。このことについて授業者がコメントをした後、年表の右側に、その頃に起きた教育に関連しそうな出来事を、教科書を参考にして書き込ませます。ある視点を持って歴史を整理して再構成することはとても大切なことです。子どもたちの興味とうまく関連づけて歴史の見方・考え方を伝えています。
最後に、AIAIモンキーという学習用の情報共有・分析ソフトを使って、事前に子どもたちに書かせていた東京医科大学の女子入試差別に対する意見を共有します。女子教育の歴史的な意味と現代の教育に関する問題をつなげて考えるという授業展開です。子どもたちにどのような力をつけたいかという授業者の思いがとても感じられる授業でした。この後の子どもたちが考える場面が、時間切れで次の時間に持ち越しとなったことがとても残念でした。
歴史の時間に授業者がつけたいと考える力と正面から向き合って考えられた授業でした。その反面、授業の構成としては時間配分に工夫が必要だと思います。この授業で大切なのは、年表をもとに考えることと、そこで考えたことをもとに現代に起こっている問題を考え直すことです。であれば、前半の女子校の情報の共有場面はもっと大胆に時間カットするべきでしょう。授業者は子どもから出た「写真に撮っていい?」という言葉で、あえて手で写させる必要はないことに気づいたようです。別の学級では友だちの書いた物を写真に撮らせることでぐっと時間が短縮されたようです。1人1台のタブレットがある環境では、手で写す価値がある作業か、それともデジタルで共有すればよいものかを判断することが大切でしょう。手で書くことに意味のある場合もたくさんありますが、単なる作業であればデジタルで共有しそれを基に考えることに時間を割くべきです。先生方も経験からそのことに気づき始めているようです。
また、今回のように授業者が内容や構成を考えることにエネルギーを使った授業では、思いが強いためどうしても語りすぎてしまう傾向があります。言いたいことをぐっと我慢して子どもたちの考える場と時間を保障することを優先してほしいと思います。
授業者の今後の進歩がとても楽しみです。

中学2年生の英語の時間は疑問詞を使ったbe動詞の疑問文をつくる練習の場面でした。
ワークシートの問題を個人で解かせます。まだ学習していない問題もあるがヒントを参考にして考えるようにと指示しました。ヒントをもとに考えるというのは正解探しにつながる危険性があります。特に語学では”situation”をもとに言葉の使われ方、使い方を身につけていくのが現代の主流です。ルールに従って機械的に単語を並べ替えることを学習させるのではなく、言葉として使うことで習得させることを意識してほしいと思います。
子どもたちの座席が孤立していて、相談するにも距離が離れています。友だちの方を見て聞きたそうにする子どももいるのですがなかなかかかわることができません。そのせいもあるのでしょう、子どもたちは直接授業者に質問をし、授業者が自分で対応しています。座席を近づけて子ども同士をつなぐことを意識するとよいでしょう。
予定の時間が過ぎてもワークシートが埋まっていない子どもがいるので、「もうちょっと時間をとります」と延長します。子どもたちは参考にするものが無い状態で問題と向き合っているので、時間を与えたからといってできるようにはなりません。できた子どもたちが時間を持て余して、集中力を失くすだけです。時間を与えることよりも困っている子どもに見通しを持たせることを考えることが大切です。
全体の場でワークシートの解答を一問一答で確認し板書していきます。子どもたちは授業者が板書するとすぐに写します。授業者は「なんでareなの?」という質問に対して「notebooksと複数になっているから」と即答しました。全体で疑問を共有し、子どもたちに考えさせるとことも対応の選択肢に入れる必要があります。常に授業者が正誤を判定するものだと思えば、考えることをしなくなる子どもが増えてくるので、注意が必要です。
また、「できた子、納得できるように説明してあげて」と教え合いをうながしますが、こういう言い方はできる子どもが上という価値観を醸成していきます。「よくわからなかった人はできた人に聞いてごらん。聞かれた人は納得できるまで説明してあげて。聞いた人は納得していないのにわかったと言わないでね」と聞く側を中心にした指示をするとよいと思います。
時間の関係で私は見ることはできませんでしたが、iPad用に自作した穴埋めの練習問題を、個別に全問正解なるまで練習をさせたそうです。ちょっと古い使い方ですがこういう使い方ももちろんありです。自分の意図にあった練習にすることができるのが自作するよさです。逆に言えば、ねらいをきちんと意識しなければ単なるドリルの電子化になってしまいます。また、この種の使い方では意欲のない子どもは、答を入力して不正解であれば適当に入れ直して正確になればよしという行動をとります。子どもたちに意欲を持たせるような工夫が求められます。子どもの学力応じて、もっとできるようになりたい、次のレベルの問題に挑戦したいといった気持ちにさせることが必要です。手間のかからない範囲で、レベル別に問題を用意したり、達成度を見える化したりしてほしいと思います。

2年生の男子の体育はバレーボールのパスとレシーブの練習場面でした。
授業者は笑顔で子どもたち接していて、明るい雰囲気をつくっています。子どもたちも元気よく練習に取り組んでいました。
授業者は具体的にポイントを伝えることを意識しています。練習前にはそこでのポイントをわかりやすく実演して伝えています。時間を短縮させるためでしょうか、コートに広がった状態で説明しています。子どもたちもしっかり見よう、聞こうとしていますが、後ろの方はどうしても集中力が切れやすくなります。もう少し授業者の方に近づかせるとよいでしょう。
アンダーハンドパスの手の組み方をていねいに説明しますが、実際に手を組んでみる子どもは少数です。また、説明が長くなって子どもがじれてしまい、勝手に動き出す場面もありました。ポイントごとにペアやまわりでちょっと確認し合う場面をつくるとよかったと思います。
子どもたちは黙って練習をしていて、互いにアドバイスをすることはしません。授業者がコート上を移動しながら個別に、全体に対して声をかけますが、ボールの音が反響していることもありなかなか子どもの耳には届いていないようです。
例えばレシーブの練習であれば、ボールを投げる人にアドバイスをする役割を明確に持たせるとよいでしょう。注意してほしいのは、授業者がポイントをわかりやすく説明しても、一方通行なので子どもたちは整理できていないことです。子どもの口から「手の組み方」「ボールを受ける部位」といったポイントを言わせる場面をつくったり、掲示したりすることが必要でしょう。
また、せっかく1人1台iPadを持たせているので、チームやグループで練習の様子を撮影し、要所要所でどこができているか、どこを注意しなければいけないかを確認するとよいでしょう。わかりやすくポイントを説明できているので、それを活かすための工夫をすると子どもたちの技術がぐっと向上すると思います。

3日目については次回の日記で。
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