教科でつけたい力と教科を越えてつけさせたい力について考えされた授業

昨日の日記の続きです。

高校1年生の社会科の授業は、アジアにおけるグローバル化を考える授業でした。
授業者は積極的に子どもたちが学び合う授業に挑戦しています。この日は、ジグソーを取り入れた授業でした。
時間割の変更の連絡が上手くいかなかったために、教科書等を持っていない子どもがいるというハンディがある状態でした。最初に、最低限の知識を押さえるワークシートの穴埋めをさせます。知識の問題なのであまり考える時間を与えても意味がありません。授業者がヒントとして語群を与えますが、答探しになってしまいます。子どもたちに相談させますが知識の確認をするだけになってしまうので、あまり意味のあることではありません。もし既習の内容であれば、テーマを与えて語群の言葉を使って説明させるといったことをすると面白かったかもしれません。未習であれば、最初から調べさせればよかったでしょう。
この後、「朝鮮半島の動向」といったテーマごとにグループに分かれ、ワークシートの内容を元により詳しく調べます。ワークシートの内容がきっかけになっているので、子どもたちは漠然とではなく焦点化して調べることができます。また、iPadもグループに与えます。紙の資料は古いので、最新の情報も集めてほしいというわけです。ここで子どもたちの目標を、元のグループに戻って「調べたことを要領よくまとめて報告すること」としました。子どもたちにつけたい資質・能力として「伝える力」を意識して、そのことを子どもたちに説明していました。このことを目標として明確にしていたのはとても素晴らしいと思いました。残念なのは、世界史としてここで調べたことが何につながるかが意識されていなかったことです。元のグループでの発表は、とにかく話せばいいのでテンションが上がり気味です。発表者以外は調べていないので、一生懸命聞いていますが、ワークシートに書きこむのが目的になっているので、その内容について深く考えている様子はありませんでした。自分たちの調べたことをもとに課題を見つけるような活動したいところでした。具体的には、「これからのアジアの最大の課題は何か?」「アジアにおける最大のリスク要因は何か?」といったことを互いに調べたことをもとに、相談するといったものです。こういったゴールを意識して調べることで発表の内容も変わってきますし、グループ活動での思考が深まっていくと思います。
子どもたちは、授業規律もよく、一生懸命に課題に取り組んでいましたが、世界史としてどのような力がついたのかが今一つはっきりしなかったことが残念でした。

授業終了後に他の社会科の先生から質問を受けました。「考えさせる授業をしたいが知識がなければ考えることができない。知識を与えて、それをもとに考えさせるべきだと思うがどうだろうか?」というものです。必ずと言っていいほど先生方がぶつかる壁です。特に歴史では入試等で知識を問う問題が多いため、必要なことすべてを授業で説明しておかなければならないというプレッシャーが先生方にかかります。ここで先生方に意識してほしいのは、知識を説明しただけでは決して定着はしないということです。知識を定着させるために、どのような活動が必要か考えることが必要です。基本は、自分自身で調べることです。ただ指定された項目を調べて整理するよりも、課題を解決するためにどのような知識が必要かを考えて調べた方が間違いなく知識は身につくはずです。知識がなければ考えられないのはその通りですが、考える過程で知識を求める、調べるという方法もあるのです。
2つのことを意識するとよいと思います。まず、当たり前のことですが、基礎的な知識がなければ調べることすらできません。ネットなどを使って知識が簡単に手に入ると言っても、基礎的な知識がなければどこから調べていいかもわかりませんし、書かれている内容を理解することもできません。これをきちんと身につけさせることが必要です。もう1つは、どのような課題を設定するかです。子どもたちがその課題を解決しようとすると自然に知識を必要とするような課題を準備するのです。よく例に出しますが、「平安時代に農民たちが土地を捨てて逃げ出したのはどうしてか?どこへ行ったのか?」といったものです。土地を捨てる理由を考える過程で租庸調といった税制や、口分田の仕組を知る必要が出てきます。口分田を捨てて逃げてどこへ行くのかを考えることで、荘園制度の発達に関するいろいろなことに気づけるはずです。こういった課題を与えることで知識の獲得と考えることがつながっていきます。とはいえ、このような課題を毎回考えることはそれほど簡単ではありません。先生方が協力してこういった課題を蓄積していくことが求められます。

この続きは明日の日記で。
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