安心して全員が参加できる授業だからこそ、どのような力をつけたいかが問われる

昨日の日記の続きです。

1年生の数学は、今年度小学校から中学校へ異動となった先生の授業でした。たまたま昨年度まで勤務していた小学校で私が何度か授業アドバイスした先生です。
中学生にどのように接したらよいか悩んでいたようですが、小学校で行っていたように笑顔で子どもたちを受容することを大切にしていました。子どもたちが笑顔でよく反応することが印象的でした。

立体の表面積を求める問題の解答を吟味していました。正四角推の側面積を三角形の面積×4とする理由を「三角形が4つだから」と子どもが説明します。ここに授業者はこだわりました。この説明で十分かどうかを子どもたちに問いかけます。子どもたちはほぼ全員が「よい」「よくない」のどちらかに挙手します。きれいに分かれます。子どもたちは間違えることを気にしていません。安心して間違えることができる雰囲気がつくられています。この状態であれば、子どもからいろいろな考えを引き出すことができます。まわりと相談させますが、子どもたちはすぐに口を開き、よくしゃべりました。日ごろから考えを聞き合うことをしていることがよくわかります。全体で、よくない理由を発表させ、「納得したかどうか」挙手させます。授業者がすぐに正解か不正解を判断しません。子どもたちの納得感を大切にしています。このとき、考えを変えた子どもに、すかさずその理由を聞きます。子どもたちをよく見ています。また、考えを変えたことを評価する姿勢を見せることで、その時点での考えを安心して発表するようになります。子どもたちの考えで授業をつくるための基本がきちんとできていることをうれしく思いました。
4つの三角形が「合同」だから「×4」となるという説明が必要だと全員が納得したことは、どの子どももよい表情で納得の挙手をしたことでわかりました。全員参加の授業になっていました。ただ、正四角推だから4つの側面は合同な三角形になっていることの確認は弱かったように思います。正四角推の定義と合わせてきちんと理由を押さえることができるとよかったでしょう。

とてもていねいに「×4」となる理由の確認をしていたのは評価できるのですが、1時間の授業として見た時はどうでしょうか。
立体の表面積を考える時に、展開図を使うことが多いのですが、その理由はどこにあるのでしょうか。平面で構成されている立体であれば、平面に分割して、それを一つの平面に並べて考えるとわかりやすくなります。展開図はできるだけ辺をくっつけて組み立てやすいようにつくるという暗黙の了解がありますが、表面積を求めるのであれば、それにこだわる必要はありません。構成面を組み合わせて計算しやすい形にするといった活動も必要かもしれません。また、円柱の側面は曲面ですが、これが平面に切り開けることや、斜めに切ることで平行四辺形になったりすること(ラップの芯はこの考え方で作られていました)を試した上で、ちゃんと側面積は一緒になることを確かめるといった活動も面白いかもしれません。立体を様々な視点で見ることができるような活動も必要だったと思います。
また、「四角推を横に倒したときの底面はどこだろう?」といった問いかけがあってもよかったかもしれません。底面という言葉は、漠然と基準面と接している面という意味で使われる時と、「推」や「柱」のように明確に定義されている時があります。こういったことも押さえておきたいところでした。

授業者として、この授業でどのような力をつけたかったのが問われます。合同を意識させることはとてもよいことですが、立体図形の学習の中でどう位置付けたいのかが今一つよくわかりませんでした。もう少しコンパクトにまとめて、立体図形の学習としての活動を増やしてもよかったと思います。

全員が安心して参加できる授業でした。だからこそ、この授業でどんな力をつけるのかが問われます。基礎はできているので、教材研究がより大切になります。意欲的な先生なので、これからどのように伸びていくのかとても楽しみです。

この続きは明日の日記で。
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