どのような力をつけるための練習かを考えることが大切

前回の日記の続きです。

体育の初任者の授業は1年生の剣道のTTでの授業でした。
何よりも気になったのが、授業者が死角をつくる場面が多かったことです。武道場は比較的狭いところですが、それでも子どもたちの中に入ってしまうと死角ができてしまいます。意識して全体の様子を見ようとすることが要求されます。立ち位置をどうするかを含め、死角をつくらないことを意識してほしいと思います。
練習中に防具の紐がほどけてしまっている子どもがいました。授業者はその横を通り過ぎたのですが、気がつきませんでした。子どもたちを眺めているだけで、見てはいなかったのです。幸いペアの子どもが気づいて結び直させたのでよかったのですが、こういったことは事故につながることです。ただの机間散歩にならないように、今子どもたちの何を見るのか常に意識することが求められます。

前時までの活動のポイントを確認します。子どもに問いかけても、一人答えればそれで終わってしまいます。大切なことであれば、本当に全員が理解できているかのチェックが必要です。
剣道はペアで練習することの多い種目ですが、ただ打ちあっているだけでは技術は向上しません。授業者がすべてのペアを見てチェックすることは不可能です。子ども同士で指摘し合うことが必要になります。攻め側がきちんとポイントを押さえているかを確認するといった受け側の役割が大切になりますが、その指示はありませんでした。

防具をつける時間の差が大きいために、早く着けた子どもは時間を持て余しています。授業者が上手く着けられない子どもの支援に回りますが、追いつきません。早くできている子どもに、困っている子どもを助ける役割を与えるとよかったでしょう。授業者が何かもやろうとするのではなく、発想を変えて、子ども同士が助け合って進む授業を目指すとよいでしょう。

ペアでの「切り返し」の練習について口頭で説明しますが、子どもたちはよく理解できていません。「はじめ」の声をかけても、動き出せません。まずやって見せることで子どもに何をすればよいかを理解させることが必要です。その上で、ポイントを確認するのです。このポイントは教師が一方的に教えるのではなく、できるだけ子どもの口から言わせるようにしたいものです。よい例、悪い例を見せて「どこが違う?」と問いかけて考えさせるといったことをするとよいでしょう。
「切り返し」のチェックポイントを活動が終わった後に授業者が説明しましたが、それを聞いても修正する時間はありません。次の時間に復習したとしても、このことはまず子どもたちの意識に残っていないでしょう。

新しいことを教える時に、それまでに学習した基本となることをきちんと押さえていないと積み上がっていきません。「切り返し」の練習で、面打ちで学んだはずの残心ができている子どもが見当たらないことがとても気になりました。授業者はそのことに気づいた時点でいったん活動を止め、集合させてから指導する必要があったと思います。また、鍔ぜり合いは、受け側がしっかり押してやらないと成立しませんが、こういったことも押さえていません。そもそも、なぜ鍔ぜり合いということが起こるのかを子どもたちは理解していません。押し負けて体制を崩すと引き際に打ち込まれるからですが、実際にやって見せて実感させる必要があります。打ち込みを受け止められても、打ち込んだ勢いで相手を押すことで体制を崩し、そこを打ち込んで見せるのです。見ている子どもたちに、「では受け側はどうすればいいのか?」と問いかけて考えさせるような場面をつくるのです。
子どもたちは何となく鍔をくっつけてそれらしい形をつくっているだけです。授業者はその様子を見て鍔ぜり合いになっていないことに気づいていたはずですが、先を急いでいたのでしょうか、何も注意をせずに終わってしまいました。

授業者は剣道が苦手なのかもしれません。一つひとつの活動のポイントをよく理解していないように思いました。苦手なことが悪いわけではありません。苦手だからこそ、教材研究をしっかりすればよいのです。例えばペアの活動なら、「攻め側には何を意識させる?」「受け側の役割は何?」といったことを、教材研究の際に常に自分自身に問いかけるのです。
また、子どもたちにどのような力をつけたいのかを意識することは、体育でも同じです。「こういう練習方法があるからやる」のではなく、「こういう力をつけるためにこの練習をする」という発想をしてほしいと思います。

この続きは明日の日記で。
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