どのような力をつけるのかを意識した教材研究が必要

前回の日記の続きです。

4年生は正方形を積み上げた時の段数とまわりの長さの変わり方の規則を考える学習でした。
正方形を階段状に積み上げていくときの、段の数とまわりの長さの表から規則を見つけて、一般化するところから参観しました。表を縦に見る、横に見るといった視点がはっきりと整理されていませんでした。出てきた規則で一般化しますが、数学の視点で言えば見通しを持っただけです。それが「いつも言えるか?」「絶対に正しいのか?」という根拠を問わなければいけません。この授業ではそのことに触れられていないようでした。「いつも言えそう?」ということを問いかける必要があります。少なくとも根拠が明確になっていなければ、それを「正しい」とは言ってはいけません。「どうやら言えそうに見えるね」といった表現にして、まだ「正しい」とは言えていないことを明確にしておくことが必要です。

続いて、正方形をピラミッド状に積み上げていく時の段数とまわりの長さの関係の規則を見つける課題に取り組みます。子どもたちは淡々と表を埋めましたが、予想がついた子どもとつかない子どもがかかわる様子はあまり見られませんでした。その前の階段状に積み上げることで何を獲得していたのかを注意して見ましたが、戦略的に辺の数を数える子どもはいないようでした。表を縦に見た子どもは、規則を見つけることができません。横に見た子どもは同じ数だけ増えていることに気づけますが、○や△を使って式にするのに苦労していたようでした。先ほどの全体での確認の場で、押さえるべきことが明確に押さえられていなかったように思えます。

最初の課題で、表をつくるのにまわりの長さを毎回調べる子どももいたでしょうが、どれだけ増えたかを考えた子どももいたはずです。1段増やす時に、各段の左側に正方形を1つずつ積んで最後に上に1段増やすという考え方もあります。そうではなく右側に1列正方形を積むという発想もあります。どれだけ増えるかという発想を持つことで、増えかたの規則がわかります。この視点は帰納的に物事を見るというとても大切なものです。高等学校での漸化式にもつながるものです。そして、表から見つけた規則が図からも見つかることに気づくことで、多様な視点を獲得していくことにつながります。
一方、毎回数えるという方法も演繹的な発想につながります。この時、縦と横を別々に数えることをすれば、表に頼らなくても規則は見つかります。こういった、課題解決のための発想、視点、道具を子どもたちから引き出して整理し、共有することが大切なのです。そこで得たものを次の課題解決につなげるということが、算数・数学を通じて身につけさせたい資質・能力の一つなのです。
一度経験したからといって身につくことではありません。しかし、意図的に経験を重ねさせることで、必ず身につくはずのことです。教科書はそのような意図を持って編集されていますが、先生方が理解できていないことがあるのが残念です。

授業者が、この課題の解決にはどんな力(知識ではない)が必要なのかをあらかじめ理解した上で、どの力に焦点を当てるのかを考えて授業を組み立てる必要があります。単にその課題を解いて説明できる以上の力が授業者に要求されます。すべての先生に高い数学的な能力を求めているのではありません。算数としてつけるべき力を理解して、どのような活動や問いかけが必要かを考え工夫するという、教材研究の基本を大切にしてほしいのです。
変化の様子をとらえるのに、戦略的なものの見方ができるようにする必要があります。こういったことを理解した上で、教材研究に取り組んでほしいと思いました。

この続きは明日の日記で。
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