成長と同時に課題が見えた授業

昨日の日記の続きです。

5年生の授業は国語の「大造じいさんとガン」で、大造じいさんの残雪に対する気持ちがどこで変わったかを考えるものでした。

授業者も子どもたちもとてもよい表情です。人間関係のよさを感じます。
これまでの段落で、大造じいさんの残雪への気持ちが現れている言葉を全体で言わせます。子どもたちはよく反応してくれますが、反応できない子どもが気になります。個別に指名して何人にも答えさせたり、その一文を抜き出して言わせたりすることで、全員を巻き込むことが必要でしょう。

挙手指名で順番に音読させますが、大造じいさんの気持ちが変化したところはどこかを考えながら読むことを目標にします。目標を持たせることはいいのですが、「音読」そのものは日ごろどのようなことを意識しているのかよくわかりませんでした。この授業は6/7の位置づけですが、子どもたちの音読の声の大きさや間の取り方がまだまだという感じです。漢字の読みでつかえたり、間違えたりもよくあります。音読での目標を明確にして練習させる必要を感じました。
また、授業者は音読中、教科書に目をやっている時間が多く、できればもう少し教室全体の様子を見るようにしてほしいと思います。読み終ると、よかったことを評価し、最後に「ありがとう」の言葉が自然に出てきます。子どもたちの挙手が増えていきます。友だちが認められるのを見て、安心するのでしょう。音読そのもの目標を明確にし、評価がそれとしっかりと連動するとぐっとよくなると思います。

大造じいさんの残雪への気持ちが変わった場面を抜き出すのが課題です。
子どもたちはワークシートに本文を抜き出し、理由を書くのですが、ここに何を書くのかが子どもたちでバラバラです。「気持ちがこの場面でどのように変わったか」と「その理由」が混在しているのです。ここを整理して区別しておくとよかったでしょう。
これまで学習した場面での残雪に対する「賢い」といった評価を活動の前に確認しておくとよかったかもしれません。そうすることで、この場面での残雪の行動が「勇気」そして「気高さ」といった言葉につながって、対比しやすくなったと思います。
子どもたちは一生懸命に理由を含めて書いています。日ごろから鍛えてあることがわかります。予定の時間になってもまだ書いている子どもが多いので時間を少し延長しました。この判断自体は悪くないのですが、一部の書き終っている子どもへの指示がほしいところでした。

次にグループでの交流です。子どもたちは素早くグループの隊形になります。日ごろのグループ活動が子どもたちにとってよいものであることを感じさせます。友だちの考えを聞いて、なるほどと思ったことをメモしています。子どもたちはよい姿勢で聞き合っていました。

全体での交流は、子ども同士をかかわらせることを大切にしていました。
ほとんどの子どもたちは、発表者の方にすぐに体を向けて、よく聞いています。授業者は発表が終わると意見をすぐに板書するのですが、子どもたちがしっかりと聞けているのでその必要はないでしょう。そのままつないでいって、意見が大体出尽くしてから、必要に応じて板書すればいいと思います。
残雪が身を挺しておとりのガンを助けるところが子どもたちから出てきます。おとりのガンを仲間のガンといった子どもに対して、「このガンは仲間?」と聞き返しますが、すぐに「仲間のガンととらえますか」と自問自答して結論を出してしまいます。このことを焦点化するのであれば、時間を取って考えさせる必要があります。そうでなかっとしても授業者が根拠なく決めるのはちょっと気になる進め方です。時間を気にしてのことだと思いますが、中途半端な取り上げ方でした。
この場面は、ほとんどの子どもたちが抜き出しているので発言はたくさん引き出せます。しかし、授業者のねらいはここではなく、残雪が傷ついた体でどうどうたる態度で立ち向かおうとする場面です。この場面を取り上げた子どもは少数です。
「なぜ?」「どういう状況?」と問いかけ、全体で言わせますが、ここはほとんどの子どもが気づいてない場面ですから、個々に指名して言わせるなど、時間をかけて共有することが必要です。
こういう状況であれば「(逃れようと)さわがない?」というように、ここからは授業者が主導していきます。子どもに問いかけて答えさせますが、子どもたちは自分の考えを持てていませんから、目は発言者を見ていません。授業者の板書に意識が行ってしまいます。
結局、授業者がまとめて終わってしまいました。一番深めたかった場面です。少なくとも何人かの子どもが気づいていたのですから、子どもの言葉で進めたいところでした。

身を挺して仲間を救おうとした場面は、多くの子どもが気づけているので、テンポよくたくさん指名して発言させながら、「勇気」「仲間を思う気持ち」といった言葉を引き出しておけばいいでしょう。もう一つのどうどうたる態度で立ち向かう場面では、「本当?ここで、気持ちが変わる?」と問いかけ、まわりと相談させるとよかったでしょう。もし、時間があればもう一度グループに戻すとよい場面でした。この子どもたちであれば、そうすることでたくさんの言葉を引き出すことができたと思います。

授業者は以前に見た時と、本人も教室の雰囲気も大きく違っていました。最初の内しばらく私の知っている先生かどうかわからなかったほどです。子どもを受容する、認めることが自然にできています。日ごろから子どもの活動量を増やし、発言を活かそうとしていることがわかります。子どもたちにとって安心して暮らせる学級をつくっていました。子どもたちの姿から、授業者の成長がよくわかりました。いろいろな面で努力をし続けてきたのだと思います。先生のこのような成長した姿を見ることができるのが、この仕事をさせていただく上で一番の楽しみです。
次の課題は、その授業で大切にしたい内容をあつかう場面で、子どもたちの発言を引き出し、かかわらせながら深ていくことです。また、そのために必要な布石は何かを考えることです。1時間1時間の教材研究はよくやれていると思いましたが、単元を通じた授業構想をしっかりと考え、授業と授業をどうつないでいくのかがまだ弱いように思います。わずかな期間でここまで成長したのですから、次に会う機会があれば、また別人のような姿を見せてくれることと楽しみです。

最後の授業研究は、明日の日記で。
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31