授業改善へのエネルギーを感じる

昨日の日記の続きです。

3年生の若手の英語は、教科書のまとめの問題に取り組んでいる場面でした。本文の内容をもとに英文の質問に答える問題を、個人でノートにやっています。早い子どもは次の作業が指示されているので時間をムダにはしていません。子ども同士聞き合っている姿も見られ、よい場面に見えますが、どうにも気になります。本文の内容を理解していれば答えられる問題ですが、逆に言えば教科書の本文の該当箇所を見て写せばそれで解答できてしまいます。学習した英語を使えるようにするためには、本文を見ないで即答させることの方が有効だと思います。このことを授業者に伝えました。授業者もそういった疑問は持っていたようです。質問を授業者が英語で問いかけ、全体や個人で何度か答えさせてそれをノートに書く。こういった活動に変えると時間のムダも減って、密度の濃い活動になると思いました。

1年生の若手の英語は、工夫がたくさんありました。
フラッシュカードを使って英文を読ませます。復習なのでしょう、子どもたちだけで読ませます。リピートの場面では、発音をていねいに指導しています。ねらいがよくわかります。
教科書の文章の内容が描かれた1枚の絵を使って、その状況を英語で話させます。”situation”を英語に直すことを意識して授業が組み立てられています。残念だったのが、全員が反応できていないのに次に進んでしまうことです。個別に指名して確認したり、もう一度全員に言わせたりといったことが必要でしょう。また、フラッシュカードや絵を持った時に視線が正面に固定される癖があることも気になりました。全体の反応を見ながら進めることができるともっとよくなるでしょう。
各場面で子どもたちに何を求めているかが明確になってきました。同じ学年担当同士で、いろいろと工夫しながら授業づくりをしています。チームワークのよさを感じます。英語科は若手が多いのですが、こうやって互いに学び合うことがとても大切です。この半年でずいぶんよい方向に変化していると思います。これからの成長が楽しみです。

2年目の英語の先生の授業研究は、三人称単数現在の”s”の定着場面でした。絵を見せてその場面を英語で言わせます。指名した子どもが答を言った後、全員に言わせます。間違えた時も自分で正解を言わずに、他の子どもを指名して答を聞かせ自分で修正する機会を与えます。子どもたちが、友だちの発言を一語一語うなずきながら聞いていました。集中度の高さを感じます。
授業者が全員できるようになってほしいと強く願っていることがよくわかります。力のない子どもも指名します。答えられなくても他の子どもや全体で言わせることで、自分で修正できるのを待っています。授業研究などでは答えられない子どもはあえて指名しないこともよくあるのですが、授業者はそのようなことを全く考えていないようでした。子どもたちに対する誠実さを感じます。教師として一番大切な資質を持っているように思います。ただ、残念だったのが、できない子どもを何度も指名しすぎたことです。もう少し間を開けて、同じ内容の確認を別の場面で行うといったやり方もあります。できない子どもを意識過ぎて、他の子どもたちがその子どものための活動場面のように感じることも心配です。
グループでの活動場面で、ちょっと落ち着きのない子どもが間違ったことを言っているグループがありました。その子どもには困らされていることもよくありそうでしたが、子どもたちは一所懸命に声をかけ、間違いを直させようとしていました。よい学級がつくられていると感じました。
まだ、2年目の先生ですが、会うたびに何かしらの進歩を感じさせてくれます。今後の成長が本当に楽しみです。

3年生の数学は変化の割合の場面でした。前回授業を見てほしいと声をかけてくれた若手の授業を中心に見せていただきました。
一言で言うと、何を押さえたいか、大切にしたいかがわからなくなっていました。その迷いが授業に出ています。余裕が無くなっています。
1次関数を使って変化の割合の復習をします。「変化の割合を表わしているのは何か?」と子どもたちに聞きます。傾きと比例定数という言葉がでてきました。比例定数は間違いなので授業者は修正しようとします。どういうことか聞き返し、”a”という言葉を引き出しますが、そのあとy=ax+bのaであると確認して、これは比例定数ではなく傾きだと説明してしまいました。間違えた子どもは、1次関数の「比例部分」という言葉が印象に残っていたので、比例定数という言葉を使ったのでしょう。であれば、「比例部分の定数のことを言ったんだね。1次関数ではこのことをなんて言ったっけ?」と本人に修正させたいところでした。
子どもの言葉を受け止めて、うまく返すこともできるようになっていたのですが、この日は自分で説明してしまっていました。
変化の割合を定義した後、y=x2で変化の割合を、表を使って考えます。増分を1にして確かめますが、割合だからxの増分で割ることを確認しなければいけません。しかし、xの増分が1だからと、何も言わずにyの増分だけに注目しました。次の例題は増分が1ではありません。今度は定義からxの増分で割らなければいけないと説明します。一部の子どもが、モヤモヤした表情を見せていました。
変化の割合が一定でないことを押さえるだけで、これが何を意味しているかは押さえません。グラフ上の点を結んでその2点間の傾きを意識させる図を描きますが、その図と変化の割合の関係を押さえることをしません。変化の割合が増えるとその線分を延長した直線よりもグラフは上になります。変化の割合が増えていくということは、どんどん上に向かって急なグラフになるということです(x>0で考えていた)。これは、前にやったy=x2のグラフの特徴を説明するものです。こういったところを押さえなければ、子どもたちは何で変化の割合を調べるのかわかりません。変化の割合からグラフの概形がわかることは、高等学校で学習する微分にもつながる大切なことです。
授業者はこの日の授業を、子どもたちが全く考えていない授業だったと、自ら振り返っていました。自分でもモヤモヤしていると素直に本音を語ってくれました。ある程度子どもたちとやりとりができるようになって、その後少し成長が止まっていました。しかし、じぶんで壁に気づいてくれました。教材研究が不足していることが一番の原因ですが、子どもの姿からそのことに気づいてくれました。自らその壁を壊そうと動き出したのです。このことはとてもうれしいことです。毎回私が教材の解説をするわけにはいきません。自分で何とかしていかなくてはなりません。しかし、頼りになるベテランもこの学校にはいます。自分で勉強し、わからないことは同僚に聞く。この姿勢を大切にするように伝えました。すぐに結果がついてくるとは言えません。遅々とした歩みになるかもしれませんが、前に進み続ければいつか必ず目的地に着くはずです。まずは、次の成長への第一歩を踏み出したことを喜びたいと思います。

2年生の数学は方程式のグラフと連立方程式の関係の場面でした。
1次方程式のグラフをかくのに、yについて解いていました。そのことの意味は少なくとも板書には押さえていませんでした。1次式だから1次関数と見ることができるということが大切です。もっと言うと1次方程式のグラフは直線であることをきちんと押さえれば、グラフのかき方はもっとシンプルにできます。また、方程式のグラフは解の集まりであることをどこにも押さえていません。「方程式のグラフの通る点=方程式の解(を座標とする)」を明確にし、連立方程式の解は「同時に成り立つ」解と合わせて、グラフの交点という関係を整理しなければいけません。
根本的なところを整理せずに、問題を解いていては色々なことが出てきてわけがわからないということになってしまいます。子どもたちが関数に苦手意識を持ってしまうのです。他の単元で学習したことを関数的な視点で整理し直すということをもっと大切にしてほしいとおもいます。

特別支援学級の授業は国語の授業でした。
6人ほどが同じ内容を学習しています。特別支援でこの人数を同時に教える場面を見ることはあまりありません。子どもたちの関係も含めて興味を持って見ました。友だちとかかわったり、フォローできたりする子どももいます。こういった子どもが活躍している場面を見ることができました。もちろんコミュニケーションを上手く取れない子どももいます。そういう子どもを中心に授業者は支援していきます。授業者は子どもに寄り添うように接していますが、その間、課題ができた子どもは手持ち無沙汰です。学力差があるので仕方がないのですが、個別に追加の課題を準備できるとよいように思いました。

この日も、授業に前向きに取り組んでいる先生方の姿をたくさん見ることができました。若い先生を中心に授業をよくしようというエネルギーを感じることができることは本当に幸せなことです。このエネルギーを授業の進歩、子どもたちの成長という結果に変えるお手伝いをすることが私の役割です。そのような機会をいただいていることをとてもうれしく思います。
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