授業研究から大いに学ぶ

昨日の日記の続きです。

家庭科の授業研究は、お弁当の献立をグループで考える1年生の授業でした。
「○○が喜ぶ弁当」がテーマです。教科係が担任に聞いてきた情報を発表します。好きなもの、嫌いなもの、ご飯系かパン系か、アレルギーの有無などです。係2人は一方が説明し、もう一方が用意した紙を貼って発表します。紙を用意するのは自発的だったそうです。今の子どもたちはこういったことに慣れていると思いました。ただ、口頭で発表した子どもは、顔があまり上がらず、メモを見てしゃべっています。せっかくですから、こういったところも指導しておくとよかったでしょう。
○○が担任の先生だと確認してから授業を進めます。担任は、唐揚げが好きで、ご飯系のお弁当が好みです。ゴーヤやトマト、きのこ類が苦手でアレルギーはない。この情報をもとに担任が喜ぶ弁当の献立を考えるのですが、授業者がもう1つ条件を付け加えました。1〜6群の食品をすべて入れることです。この条件を授業者から出しましたが、「お弁当で大切なことは何?好きなものだけ入れればいい?」と問いかけて、子どもたちから引き出してもよかったでしょう。または条件に入れずに、献立をつくる課程で気づかせてもよかったでしょう。
食品群を出したところで、復習をします。子どもたちに食品群に関することを質問しますが反応がありません。数人が挙手しますが、ほとんどの子どもは動きません。教科書やノート、資料集を見る子どもがいてもよさそうですが、そういう子どももいません。子どもたちはこの場面は参加しなくても困らないということを知っています。挙手した子どもを指名するのではなく、子どもたちに参加、活動を促すことが必要です。
主食・主菜・副菜の割合が3:1:2を確認しますが、この比率が何を表わしているかが私にはよくわかりません。弁当で占める面積でしょうか、重量でしょうか?特に野菜は、その加工の仕方で、かさは大きく変わります。子どもたちは何の疑問も持たずに納得していましたが、気になるところです。献立てを考えていく途中で、生野菜にするのか煮たものにするのかといった論点につながるところです。
続いて、グループ活動について発表用紙のまとめ方の説明をします。ここでも簡単な質問をしますが、子どもたちは反応しません。授業開始から10分ほど経ちました。最初はとても集中していましたが、さすがに少し落ちてきます。授業者は早く進めたいので子どもとのやり取りに時間をかけなかったのでしょうが、もっと子どもたちを動かすことを意識するとよいでしょう。手元の食品成分表を見て探させるなどの作業を入れるだけで子どもの集中力は維持できると思います。
今回の献立の目標は担任の先生が「喜ぶ」です。こういった目標があるのはよいことですが、まだ抽象度が高いことが気になります。意見が分かれた時に、何でも主張できてしまいます。決定プロセスがはっきりしていません。子どもたちは思いつきを話して、テンションが上がってしまう恐れがあります。また、献立と合わせておすすめポイント発表することになっていますが、おすすめポイントは先生が喜ぶに直接つながりません。このことも気になります。実際に子どもたちは、よく相談していましたが、予想通り思いついた献立を言い合っているグループが目立ちます。献立決定のプロセスを明確にして相談しているグループはありません。最終の出力ははっきりしていますが、そのための方法論が不明確なのです。このことをあらかじめ与えておく方法と、子どもたちから出させる方法があります。
前者であれば、作業に入る前に「どんな弁当だったら担任の先生は喜ぶと思う?」と問いかけて、子どもから意見を出させます。「唐揚げが好きだからガッツリした弁当」「唐揚げはカロリーが高いから、苦手そうな野菜を上手く組み合わせたバランスのよいもの」「ダイエットにいいもの」「先生の好きなキャラクターのキャラ弁」……と言ったことを出させ、まずどんな弁当だったら喜ぶかを考えさせてから献立作成に入るのです。「先生が喜ぶ弁当はどんなものかを考える」「具体的な献立をつくる」と作業を明確に2段階に分けてもよいでしょう。
後者であれば、作業の途中で一旦止めて、どんなことを相談しているかを聞き合います。そこで、進め方や決定の方法などを確認して共有するのです。
また、食品群がきちんとチェックされていないグループが目立ちます。表をつくってバランスを確認しているグループは見当たりません。その割には、おすすめポイントでは「バランスのよい」をうたうグループが多いのです。事前にチェックの方法を考えさせるか、チェックのための表を道具として与えておいてもよかったかもしれません。
授業者が、説明の時にキャラ弁のことを話したことと、担任の先生がキャラクター好きなこともあって、先生が喜ぶキャラ弁に走っているグループが多くありました。中には、弁当の完成図を描くことに夢中になっている子どももいます。家庭科のねらいとはちょっとずれてしまいました。
全体での発表はグループの内2人が前に出て、一人が説明して、一人が完成図を見せるというものです。特に授業者が決める時間を設けなくても、すぐに発表者を決めてスムーズに進みました。こういったことは鍛えられていると感じます。子どもたちの発表を聞いている姿は悪いものではないのですが、傍観者です。「喜ぶ」が明確になっていないので、自分たちと比較したり参考にしたりできないからです。おすすめポイントも判で押したように「好きな物中心」「バランスのよい」「先生の好きなキャラクター」の言葉が並びます。目標である「喜ぶ」を深くとらえているグループはありませんでした。
面白かったのが、唐揚げの材料を書き出す時に、家庭によってつくり方や材料がかなり違うことです。ここを上手く取り上げても面白い授業になったと思います。唐揚げから、家庭の味を考えさせ、世に言う「おふくろの味」「ソウルフード」といった食育につなげてもよかったでしょう。いろいろな唐揚げをつくって喜んでもらうといったアイデアにつながったかもしれません。
グループで一つのものをつくるような活動では、決定のための根拠やプロセスを明確にすることの必要性に改めて気づかせてくれる授業でした。

理科の授業研究は、3年生のイオンの学習?の単元の導入場面でした。他の授業との関係で、最初と最後しか見ることができなかったのが残念です。
最初に、溶質、溶媒といった水溶液に関する知識の復習を行います。全体で答えさせようとしますが、なかなか全員が反応しません。教科書やノートを確認させて、全員が参加できるようにしたいところでした。
知識として、精製水には電気が流れなかったことを確認します。電気を通すものがあるかを子どもたちに問いかけると、食塩水という声が上がります。この日の授業のねらいは実験を通じて「水溶液には水を通すものと通さないものがある」ことを知る、まとめは「水に溶けると電気を通すものを電解質、そうでないものを非電解質という」です。もう実験をしなくてもねらいは達成できています。その上でアルコール水や砂糖水、食塩水、塩酸、水酸化ナトリウム水溶液、水道水などで電気が通るかどうか確認する実験をしても、子どもたちに課題意識はありません。通すものもあれば通さないものもあることは知っているからです。
実験の様子を見ることはできませんでしたが、まとめの場面は見ることができました。
まとめには、「電解質を水に溶かすと電気を通す」と書いてありました。ちょっとびっくりです。中学校では「水に溶かすと電気を通す物質を電解質」と定義しています。あたりまえのことが書いてあるというか、定義と性質がぐるぐる回っています(循環論法?)。続いて、砂糖と食塩に電気が流れないことを演示して授業は終わりました。
この授業であれば、電気が流れるもの、流れないものがあることは知っていることを前提にして、用意したものに電気が流れるかどうか予想させます。すぐに考えさせると根拠のない想像になってしまいますから、それぞれについて知っていることをできるだけたくさんあげさせます。砂糖水は「甘い」「焦がすと炭になる」、食塩水は「中性」「しょっぱい」、アルコール水は「酔う」「揮発性」、塩酸は「酸性」「金属を溶かす」、水酸化ナトリウム水溶液は「アルカリ性」「皮膚を溶かす」、水道水は「弱アルカリ性」「殺菌してある」といったことを言わせます。その上で、予想させるのです。この情報から根拠に基づく正しい答を導き出すことはできませんが、電気を通すかどうかにつながる何かを見つけようとさせるのです。結果から酸性、アルカリ性は電気を通す。中性はわからないといったことを考えてくれるだけでも大成功です。イオンと酸性、アルカリ性との関係への布石になるのです。
砂糖と食塩に直接電気を通す実験では、子どもたちに「砂糖も食塩も電気を通さないね。砂糖と食塩を混ぜたらどうかな?」と問いかけたいところです。実験をして通さないことを確認した後で、「通さない同士を混ぜたんだから当然だね」とまとめて、「砂糖も精製水も電気を通さないね。これを混ぜても当然電気を通さないね」と砂糖水の結果を思い出させて、「食塩も精製水も電気を通さないね、これを混ぜても当然電気を通さない……??」と食塩水が電気を通すことに疑問をもたせるのです。「おかしいじゃない!!どういうこと?」と問いかけて、子どももから「水に溶かすと食塩が変化する」といった言葉をひきだすのです。「えー、でも食塩水を蒸発させたらちゃんと食塩の結晶ができたよね。変化してないじゃない」というように揺さぶって、「次の時間から、このことについて考えよう」として子どもたちに課題を意識させて終わるのです。
子どもたちに、主体的に課題を持たせることが大切であると言われていますが、それほど簡単なことではありません。しかし、同じ実験をしても、ちょっとしたことを質問して焦点化することで子どもたちが疑問を持ってくれたりします。理科は実験という武器があります。そこからいかに課題を見つけさせるかといった工夫をしてほしいと思います。
私の場合、ただ教科書を眺めていてもなかなかよい課題をつくることができません。授業を見せていただき、子どもの様子や子どもの立場に立って見ることで浮かんでくることがたくさんあります。こういう機会をいただけることがとても勉強になります。先生方も他の先生の授業を見る機会をぜひたくさん持っていただきたいと思います。
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