楽しく仕事をする

私立の中学校高等学校で次年度の高等学校の募集用パンフレットについて相談を受けました。

「これまでは各コースの概要や特徴より、基本となる学校の理念や授業のスタイルを優先して紹介してきたが、今回新しいコースができることで、それぞれの特徴や違いを伝えることがこれまで以上に大切になる。どのように伝えるとよいか」という相談です。特に新しいコースについてはきちんと訴求をしないと募集につながりません。しかし、学校として大切にしていることはコースが違っても変わりません。重点をどこに置くかの塩梅が難しいところです。担当の先生は頭を悩ましながらもとても楽しそうです。自分の仕事の手ごたえを感じているから前向きに取り組めているのだと思います。募集が順調で、学校全体が上げ潮に乗っていることの現れだと思います。相談を受けている私も、一緒に楽しく悩むことができました。
学校の理念や授業スタイルを基本として各コースがあること示すために、共通のキーワードの上に各コースの特色を表わすキーワードを重ねる図を使うことを考えました。毎年工夫したパンフレット作ってくれているので、次年度のものも楽しみです。

私の訪問を聞いて英語の若手の先生が相談に来てくれました。
「これからはオンラインの授業も普通になっていくし、オンラインの方がかえって効率的な場合もあり得ると思う。だからこそ対面のよさを活かした授業を考えていきたい。答は自分で考えるので、何かヒントをください」ということでした。
自ら進んで授業改善に取り組んでいる先生ですが、「答えは自分で考える」という言葉にそのことがよく表れていると思います。話をしていると、どのようなことでも前向きに取り入れようとしている姿勢がよく伝わってきます。この姿勢だからこそ、成長が著しいのだと思います。親子ほど年の離れた先生ですが、いつもその姿から多くのことを学ばせていただいています。
オンラインでも共同作業や小集団での話し合いはできます。しかし、対面でのコミュニケーションと比べると、互いに緊張しやすく、ぎこちないつながり方になりやすいように思います。ゆるい話ができないというか、寄り道ができないというように感じます。解決に一直線に向かうと考えの幅が狭くなります。思わぬ気づきがあったり、思考の幅が広がったりするという点では、対面でのコミュニケーションの方が優れているように思います。こんなことを取りとめもなく話させていただきました。参考になれば幸いです。
今回も、楽しい時間を過ごさせていただきました。

研修担当の先生と次年度以降のことを話している時に、たまたま「14歳は大人か?」という道徳の授業に話がおよびました。事前に子どもたちに聞いて見ると、ほとんどの子どもが大人ではないと思っているようでした。そこでどう進めたものかという話になり、それならば、世界ではどうなのかということを調べさせて見たらと提案しました。すぐその後に授業を実施されたのですが、ふだんはあまり積極的に参加しない子どもが、14歳で正式に結婚して普通に子どもを産んでいる国や、免許を取れる国や州があること、14歳が立派な大人として責任を持つ国があることを知って衝撃を受け、その後いろいろと考えていたそうです。先生も知らないことだから一緒に驚いたり、考えたりすることができたようです。一人一台のタブレットがあるということは、先生の知識的優位がなくなることでもあります。先生も知らいないことを認めて、子どもと一緒になって「知らなかったね」と言えることも大切になってくると思います。子どもと同じレベルで、「大人であるってどういうことだろう?いくつから大人なんだろう?」と考える楽しい授業になったようです。一人一台のタブレット環境だからこそ、思いついてすぐに試すことができた授業でした。一人一台のタブレットの可能性をまた感じさせていただきました。

今年度最後の訪問でしたが、来年度は中学校で新学習指導要領が実施されます。また、高等学校の新コースの準備も進めなくてはなりません。私にとっても刺激的で学びの多い1年になりそうです。

一人一台のタブレット環境のよさと課題を学ぶ

小学校で授業参観と授業研究の助言を行ってきました。

昨年の秋に一人一台のタブレットが整備された学校です。この日は、タブレットを積極的に活用した授業をたくさん見せてもらえました。
子どもたちは、操作面ではほとんど心配のない状態でした。日常的に使われていることがよくわかります。子どもたちがタブレットを立てて使う場面が多かったのですが、授業者が机間指導する時に覗き込まなくてはいけないことが気になりました。教師用タブレットでモニターするという発想もありますが、子どもたちの手の動きや表情を見ることも大切です。子ども同士がのぞきやすいようにするという観点からも、タブレットを寝かせて使った方がよい場面が多いように思います。

1年生でもタブレットのワークシートに自分の指を使って上手に書き込んでいました。子どもたちは指で入力することにストレスを感じてなさそうです。ワークシートをデジタル化して送ったり、そこに書き込んだものを先生に提出させたりしていました。紙の配布といったことの効率化から始めるのは悪くないと思います。

2年生の回文をつくる学習場面で、入力した文を反転して付け足すことで回文を作ってくれるツールを使った先生がいました。こういったツールを使うことで回文をつくる作業の負荷が減ることはよいことだと思います。問われるのは、その結果生まれた時間でどのような活動が充実し、その結果どのような力を獲得するのに役立ったかです。ここが意識されなければ授業のねらいはぼけてしまいます。本来子どもたちがするべき作業をタブレットが代わりにやってしまっては本末転倒です。今まで以上に教材研究が求められます。

3年生の理科の授業では、電気を通す、磁石にくっつくという2つの性質を予想させて実験する授業でした。自由に調べるものを選んでカードをつくり、性質を2つの軸で表わして4分割した画面に貼り付けさせます。予想と違った結果が出ればカードをコピーして色を変え、正しい位置に貼り付けます。全体で結果を共有してから追究が始まりました。色が変わったカードを見ることで自然に焦点化するべきことが見えてきます。工夫がたくさん見られた面白い授業でした。

5年生のプログラミングでは、タートルグラフィックスを使って四角形をかかせる授業でした。先生の指示通りに入力したり、ワーク―シートの穴埋めをしたりしてプログラムを完成させていました。基本的なことを教えた後は、正しく動くものを指示して書かせるのではなく、自由に触らせる時間を多くとるとよいでしょう。失敗しながら、なぜだろう、上手くいっている友だちとどこが違うのだろうと比べたりしながら考えることが大切です。子どもたちの表情が楽しそうに見えなかったことが残念でした。

6年生の社会科では調べた物をまとめさせる授業でした。まとめることも大切ですが、まとめることが何につながるのかという、目的が明確でなければ意味はありません。一人一台の環境では調べることが今まで以上に簡単になります。検索してまとめるだけでなく、必要な情報を探し出し、それをもとに考えることが大切です。課題意識を持たせ、調べたことから子どもたちが新たな疑問を持つことを目指してほしいと思います。一人一台のタブレット環境では授業の構成を変えることで今まで以上に深い学びをつくり出すことができます。ぜひそのことに気づいてほしいと思います。

授業研究は5年生の担任がICTの活用をテーマに行いました。授業者はどの教科単元で授業をすればよいかから悩んでいたので、事前準備の段階で教務主任も交え、オンラインで2度相談をしました。こういったことが気軽にできる時代になりました。今後先生方が、学校の垣根を越えて情報交換を活発にする時代なると感じました。
授業者に何を大切にしたいのかを聞きながら、ICTのよさをどう活かすかを一緒に考えました。受け身でなく主体的に取り組むことで、子どもたちに楽しんで課題に取り組んでほしいという授業者の思いを強く感じました。私からは主体性を意識した時、何を使うか、どのように取り組むかといったことを子どもたち選択させるとよいとアドバイスをしました。失敗してもよいので先生方が考えるきっかけになるような授業にしたいという授業者の言葉に、よい授業研究になる予感がしました。
授業は社会科のコンビニの学習になりました。
最初に、以前に学習したことを活かして、スーパーとコンビのいい所を発表させます。挙手した子どもはとてもよい表情です。授業者は早く本題に入りたいのでテンポよく進めますが、挙手しない子どもを活かすことも考えたいところです。時間との勝負ですが、手を挙げない子どもに、「どう、賛成?納得?」と反応を求めるといったことをするとよかったでしょう。
子どもたちは、「安い」「品物が豊富」とスーパーの方を高く評価します。そこで、授業者は、子どもたちから出た言葉を活かして「それなのに、なぜ、スーパーと違ってコンビニは『たくさん』あるの?」と投げかけ、「何を使って調べる?」と選択させます。インターネット以外にも教科書で調べるという子どももいます。また、インターネットを使って調べるといっても、何を検索すればよいかわからない子どもいます。そこで授業者は何を検索するかを問いかけ、いくつかの例を引き出しました。子どもたちの活動の足場をそろえるよい問いかけだと思います。
子どもたちが結論を出すまで調べさせ続けるのではなく、途中で一旦止めて、わかったことを発表させました。最近は50代より上の世代の利用が増えたということが出てきます。非常時にトイレが使えるといったよさを発表する子どももいます。コンビニのよいところで調べたのでしょう。子どもたちはインターネットを使って様々な情報を得ていましたが、「いろいろできるコピー機がある」という発言が出てきた時、多くの子どもが「えっ」という顔をしました。その情報を持っていなかったのでしょう。授業者がどうやって調べたのか聞くと、教科書に書いてあると答えます。子どもたちにとっては盲点だったようです。何でもインターネットがよいわけではないのです。教科書のように整理してまとめられた書籍のよさに気づいてくれるきっかけになったかもしれません。
子ども同士で聞き合うようにすると、今まであまり積極的でなかった子どもも口を開きだします。自分の考えを口頭で伝える子どももいれば、タブレットを寝かせて情報を見せながら説明する子どももいますし、タブレットを立ててプレゼンのようにして説明する子どももいます。タブレットが子どもたちの道具となりつつあるのを感じます。
先生方は、日ごろからタブレットを自由に使わせているそうです。子どもたちがやらかすこともあったそうですが、そのことで委縮せずに自分たちで使い方を考えさせるという方針で対応したそうです。そのことが、タブレットが子どもたちとって自然に使える道具になっている大きな要因だと思います。
タブレットの活用で子どもたちの考えが広がっているのを感じますが、授業としてはどこに着地させるのかが難しいところでした。授業者は無理にまとめようとせずに授業を終えました。先生の言葉でまとめなかったのは評価できますが、子どもたちの考えを焦点化できると子どもたちなりに考えをまとめることができたのではないかと思います。広げることと焦点化することの兼ね合いの難しさを感じました。一人一台のタブレット環境のよさと課題を知ることのできた授業でした。

この後私からは、この日見た授業についての簡単な講評と、タブレットの活用について、子どもたちとって「成長の道具」「表現の道具」「世界とつながる道具」という視点でお話させていただきました。

この学校ではタブレットの操作に慣れる時期は既に終わりつつあり、いろいろな使い方や工夫が見られるようになっています。今後、深い学びにつなげるための活用を学校全体で考えていくことが重要になってきます。そのためには、互いの授業を見合い、考えや工夫を共有することが大切です。今回の授業研究はそのよいきっかけだったと思います。
今後この学校でどのような活用がなされていくか楽しみです。

ベテランの前向きな姿に驚く(長文)

先月、私立の中学校高等学校で、ベテランの先生と懇談を行ってきました。

ベテランの先生を中心にICT活用を意識した授業公開を行っていただきましたが、その結果の報告や事前相談でした。
驚いたのは、これまでやや後ろ向きだと思っていたベテラン陣の多くがICTの活用を前向きにとらえていたことです。学校がよい方向へ変わるエネルギーを肌で感じることができました。

国語のベテランはワークシートをデジタル化して子どもたちに取り組ませています。自分が説明するのではなくワークシートの中に参考資料や必要な情報も組み込むことで、子どもたちが主体的に取り組めるように工夫しています。しかし、自分の考えを整理するページと資料のページが異なるため、資料を参照するたびにページを行き来しなければならないので、紙の方がいいのではないかと悩んでおられました。子どもの様子を見ているから気づくことだと思います。そこで、ワークシートの下段を余白にして、必要な情報を見ながら整理できるようにページ構成を変えてみてはどうかと提案しました。
次の放課に「これでどうでしょうか?」と改善したワークシートを見せに来てくれました。次の時間にこれでやってみると前向きな姿を見せていただいたことをとてもうれしく思いました。紙のワークシートであれば、修正後に印刷する時間も必要ですし、場合によっては事前に作ったものがムダになります。デジタルであれば修正するだけですぐ次の授業で利用することができます。ちょっとしてことですが、デジタルのよさを感じる場面でした。

理科の先生からはいろいろな実験を工夫している物理の授業の実践を報告していただきました。アプリを使うことで、iPadを実験のための道具として活用されていることが印象的でした。アプリを組み込むことでこういった活用ができる点もタブレットの魅力です。学校でアプリのインストールは管理していますが、お金がかからないようなものであれば、基本的にすぐ許可が出るようです。個々の先生の工夫や思いつきをできるだけ妨げないような使用ルールになっていることが、活用度が上がってくるために大切なことだと思いました。
魅力的な題材や面白い実験を工夫される力のある先生だからこそ、一歩進んで、子どもたち自身が疑問を持ち、課題を見つけ、実験等を通じて自ら解決するような授業を目指してほしいことをお願いしました。

もう一人の理科の先生からは、知識をもとに考えさせることを目指している、生物の授業について話していただけました。教師が最後にまとめや正解を提示してしまえば、子どもたちはそれを待ってしまうので、自分たちで結論づけることを意識しておられます。とてもよいことなのですが、子どもたちから明確に正解を示してもらえないと不安だという声が上がっていることにどう対応しようか悩まれているようでした。正解を先生が提示しない授業では、子どもたちが不安を訴えることはよくあることです。正解は自分たちでつくるものだということがわかってくるまでは、ある程度時間がかかります。まずは、子どもたちの考えを発表させたりタブレットで共有させたりしながら、先生の言葉ではなく、子どもたちの言葉でまとめる場面をつくることから始めるとよいと思います。また、その学習の最後に振り返りを書かせることも有効です。考えたことを自己評価することや、他の考えに触れて気づいたことを振り返ることで、自分たちで答を見つけることはどういうことか気づいていくと思います。焦らずに他の先生とも連携を取りながら、自分たちで答を見つける姿勢を、時間をかけて育ててほしいと思います。

保健体育の先生からは、子どもたちの演技をビデオ撮影して活用するダンスの授業の報告を受けました。子ども同士でビデオを撮らせ、それを見て自分たちの演技を修正するという授業です。漠然と演技を撮影するのではなく、演技をする前に意識することを宣言してからビデオを撮ると、演技を振り返るときの視点がシャープになります。また、撮影している者も演技を見る視点が明確になって、双方の学びが深まります。多くのことを意識することは難しいので毎回ポイントは絞り、短いサイクルで何度も振り返るようにすることをアドバイスしました。単元の最後のまとめとして、初期のダンスと最終のダンスを比較してみることも提案しました。これまでの過程と進歩したと思うこととをビデオをもとに振り返ることで成長をメタ認知できます。この提案に対して、撮影データは各自の端末に残っているので、早速やってみると言っていただけました。過去のデータがいつでも見ることができるデジタルのよさがこういった思いつきをすぐに実現させてくれます。
保健の授業でもICTが役に立っていると報告がありました。先生同士で授業の説明スライドを共有しているそうです。他の先生がつくったものを利用することや共同で一つのスライドをつくることで、授業準備の時間短縮にもなりますし、スライドを通じて先生方のかかわり合いが増えることにもつながります。いろいろな場面でICTが活用されていることをうれしく思います。

英語の先生からは、この学校で取り入れているGDM(教師が日本語で説明せずに、シチュエーションから英語を理解し話せるようにする指導法)に手ごたえを感じつつも、なかなか理解できない子どもたちにどう対応すればよいかという悩みを相談されました。
子どもが理解するタイミングには個人差があります。ライブ(シチュエーションを簡単な寸劇で見せる)の場面で理解できる子どももいれば、先生と対話することや最後のワークシートに取り組むことで理解する子どももいます。全員が一度に理解することを求めるのではなく、一人ひとりのペースを大切にすることが必要です。子どもたちの理解度によっては、予定している流れにこだわらず、直前のステップに戻ることや以前の学習活動を再度行うことも必要です。今理解できなくても、子ども自身が活動のどこかで理解できるタイミングが来ることを信じることができれば、集中力を切らしません。先生も子どもたちができるようになることを信じて取り組むことをお願いしました。また、その日の活動についてこられているのに、学習内容を整理して確認するワークシートが手につかない子どもも一定数いるようです。ワークシートでは棒で表わした人物を使った図でシチュエーションを表わし、そのシチュエーションを英文にします。ワークシートでつまずく子どもは、図からそのシチュエーションを読み取ることができないので手がつかないのだと思います。困っている子どもに対して、そのシチュエーションが授業のどの場面のことかをわかるようにちょっとライブを見せてみるといったことが有効だと思います。もちろん、子ども同士で聞き合うことが許されるのならばそれに越したことはありません。その際、答ではなく図のシチュエーションを聞くことを意識させておくことが大切です。
先生は、準備は大変だが、子どもたちが楽しそうにしていると頑張ろうという気持ちなるとおっしゃっていました。「自分楽しいと思わなければ子どもも楽しくない」と、自分が楽しく授業することを意識されていたことが素晴らしいと思いました。

もう一人の英語の先生もGDMの授業での悩みの相談でした。この先生は習熟度別の下位の子どもたちを担当していますが、先ほどの先生と似たことで悩んでおられました。ワークシートについては同様ですが、その他にも、英語をなかなか文にすることができずに、単語や句での表現になってしまう子どももいるようです。そのような時にはまず、笑顔を作り、部分肯定で子どもが言った言葉を繰り返してOKサインを出します。続く言葉を待ち、なかなか出てこなければ、その言葉につながる動作や物を見せて言葉を出しやすくするといったことが有効です。もし主語がなければ、主語にあたる人や物を指さして見せて子どもが言葉を紡ぐのを待つといったことをします。子どもが間違えた、失敗したと思わないようにしてあげることが大切です。子どもが困っているとどうしてもヒントを出したくなるのですが、しゃべるのではなく、待ったり、きっかけになるものを見せたりすることを意識するとよいでしょう。子ども同士に助け合わせることも大切です。困っている子どもを座らせてから他の子どもに発表させ、もう一度その子どもに言わせるという方法もあります。最後は言えたという状態にしてあげれば子どもは意欲を失いません。このようなことをアドバイスさせていただきました。

この日にあった英語の公開授業を見ることができました。演習とその解答確認の場面でした。
ほとんどの子どもたちはiPadの画面を立てて使用しています。そのほうが使いやすいのはわかるのですが、友だちの手元を覗きにくかったり、先生の説明の時に表情が見えにくくなったりすることが気になります。場合によっては画面を寝かすことがあってもよいと思います。
子どもの様子を見ようと教室の後ろから移動する先生が増えていることに、先生方の授業に対する意識の変化が現れてきているように感じました。一人一台のタブレットになったからこそ、一人ひとりの様子を見ることが大切になると思います。
私が見られなかった前半では、ペアで問題を交換して解く場面や、作業中に質問等があると先生をタブレットのボタンで呼ぶといった場面もあったようです。この学校での多様なICT活用の一端を知ることができました。
授業者は一人一台のタブレットの導入で自分の授業が変化しつつあると語ってくれました。以前より教師主導にならないように意識しているようです。一つひとつの活動が、子どもたちにつけたいと思う力につながっているかを意識して取り組むことをお願いしました。

数学の先生は、ICTのよさを熱く語ってくださいました。新型コロナウイルスの感染予防の休校の時に、他の先生がICTを活用するのを見て自分も試したところ、これは素晴らしいと気づいたそうです。目からうろこという言葉を何度も使われました。
問題を解く過程で子どもたちにかかせたグラフの一覧をiPadの画面で私に見せながら、授業での活用の様子を説明してくれました。「子どもの考えが一目でわかり、自分が選んだものをスクリーンに映すことで子どもの考えをもとに授業を進めることができる。黒板に書かせると時間がかかるので、自分が書いて説明していたが、タブレットを活用すれば子どもの考えをもとに進めることができ、しかも時間が短縮できる。こんな素晴らしいものはない」とうれしそうに話してくれました。これまで、説明や解説型の授業をしていたのは、時間の問題も大きかったようです。一人一台のタブレットによってその壁が取り払われたことで授業が変わり始めたのです。
タブレットはねらいによって使い方が変わりますし、逆にどう使おうか考えることでねらいがシャープになります。ICTの可能性に気づくことでこの先生の授業が進化していくことが感じられました。

この日は、懇談を通じてベテランの先生方のICT活用や授業改善への強い意欲を感じました。ベテランの先生が意識を変えると、これまで培った経験がベースにあるので授業が大きく進化することがよくあります。新型コロナウイルスによる休校と、今回のベテラン対象の授業公開がそのきっかけになったように思います。若手だけでなくベテランも前向きになってきたことはとても喜ぶべきことです。課題は、年齢や経験にかかわらず、変革に後ろ向きな方がまだ一定数いることです。その人たちをどうこうすることよりも、前を向いている方がどれだけ先に進めるかが大切だと思います。前向きなエネルギーが集まってきたことで、次年度以降、学校がより大きく進化すると確信しました。
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