子どもたちが目的やポイントを理解して活動することが大切

前回日記の続きです。

5年生の国語の授業は、本のポスターかポップ、帯をつくる活動でした。
授業開始時の授業者のテンションが高いのが気になります。子どものちょっとした声にもすぐに反応します。授業に関係のないような言葉は無視してもよいでしょう。授業者のテンションが高いので子どもたちのテンションが高いのか、子どもたちのテンションが高いので授業者のテンションが上がっているのかわかりませんが、子どもたちのテンションも高めです。
「タオル(を使う)止めてください」と注意するのに否定的な言葉を使ったことも気になりました。ちょっとした違いですが、「タオルを使うのはやめよう」とよい行動を促すような言い方にするとよいと思います。また、挨拶の後、子どもの聞く姿勢ができていないのにすぐにしゃべり始めました。授業中は、子どもたちはよい姿勢で聞くことができていたので、一旦集中させてから話し始めるとよかったと思います。

子どもたちへの見本として、授業者がつくったポスターを見せます。子どもから「じょうず」という言葉が出ると、「ありがとう。うれしい」と返します。明るいよい雰囲気をつくっています。続いて、帯とポップを見せます。
この日のめあてを示した後、「3つとも共通の言葉が書いてあるけれど、ポスターには他の物にはないものが書いてある」と、違いを問いかけます。挙手指名した子どもがポスターだけ書名が入っていることを発表すると、ほとんどの子どもが賛成のハンドサインを出しました。理由を問いかけると、挙手はパラパラです。すぐに指名すると「他のところに貼ってあっても、何の本のことかわかる」という答です。これに対する賛成のハンドサインは半分ほどでした。授業者は「なるほど、みんな同じ考えなの。もしかしてそうかもしれないね」と受けます。「正解」と言わずに、子どもの発言を受容しているのはよい姿勢です。しかし、みんなと言うには、ハンドサインを出している子どもは少なすぎます。他の子どもの考えを聞いたり、まわりと確認したりする必要があるでしょう。続けて、授業者は「もし学校に貼ってあっても、何の本かわかる」と説明をしていきますが、せっかく、「もしかしてそうかもしれない」と受けたのに授業者が説明しては、「正解」と言ったのと変わりません。子どもたちで説明する場面をつくることを意識するとよいでしょう。

授業者は3種類共通の文章は何かを問いかけますが、子どもは反応できません。何を聞かれているかわからないからです。そのことに気づいて、授業者は「この文章は引用で、今回作りました。引用というのは」と説明します。この説明も混乱に拍車をかけます。どんな文章を書けばよいのかと思った子どもは、「今回」という言葉で、他にもあるのかとよくわからなくなります。引用という知らない言葉が出てきてその説明が始まると、本来の問いである「どのようなことを書けばいいのか」が消えてしまいます。異なった次元の2つのことを同時に扱ってしまうと訳がわからなくなってしまうのです。

授業者は引用の説明をした後、引用かキャッチフレーズのどちらかを使って書きましょうと言って作業に入りました。引用といいますが、どこを引用すればよいのでしょうか。突然キャッチフレーズという言葉が出てきましたが、これも具体的にどのようにしてつくればよいのかわかりません。子どもたちが何を基に作業をすればよいのか不明確なまま進んでしまいました。

前の時間に押さえていたことだとは思いますが、まず、ポスター、帯、ポップは何のためのものか、その共通点と相違点を確認することから始める必要があります。その視点で授業者のつくった3種類の工夫を子どもたちに考えさせることが必要です。授業者がつくったものを見せることも悪いことではないですが、実際の書店のポスターやポップを見せることもリアリティがあってよいと思います。それを基に共通点や違いを見つけるという活動をすると、より視点がシャープになると思います。
子どもたちが自分の言葉で目的や具体的なポイントを理解して活動することが大切です。

この続きは次回の日記で。

作業の流れをコントロールすることが大切

前回の日記の続きです。

2年生の図工の授業は、グループで秘密基地をつくるというものでした。
子どもたちは新聞紙を丸めて棒にするなど、思い思いに作業をしています。しかし、グループとして活動しているというよりも、個人でつくりたいものをつくっているように感じられました。秘密基地という名前はワクワクしますが、秘密基地が秘密基地たりえるためには、そのような要素が必要なのでしょうか。グループ全員がその中に入れるといった条件を意識させたいところです。

授業者は事前に新聞紙をどのように使えるかの例を見せているようですが、子どもたちはそれ以上の工夫はしていないように見えます。新聞紙でつくった部品がどのような構成要素として使えるのかを子どもたちが考える時間や、新聞紙でどのようなものがつくれるのかをいろいろと試してそれを全体で共有するといった時間が必要だったと思います。
また、いくつかのサンプルを用意して、どのようなものをつくればよいのかのイメージを持たせることも必要でしょう。似たものをつくろうとすれば、自然にそれを見てどうなっているのかを知ろうとするはずです。子どもたちにいろいろな動きや思考を促すための仕掛けを意識してほしいと思います。

目先の作業に没頭して、ゴールが頭から消えている子どもが多いように感じました。テンションが上がり気味で、まわりの子どもにちょっかいをかけている子どもも目に付きます。
一連の作業の流れを明確にし、そこで必要なスキルやポイントを子どもたちに意識させることが必要でしょう。例えば、次のようなことです。

・何をつくるのか、その目的や目標をはっきりさせる(具体物を見せるとよくわかる)。
・条件内(新聞紙)で何ができるのか、できそうかを考える(どんな構成要素をつくれるかを見せる)。
・グループで、何をつくるかを考えさせる(ラフでいいので具体的なスケッチができるとよい)。
・グループで作業の手順と分担を考えさせる(細かい部品をグループ全員で先に全部つくってから組み立てるのか、構成要素ごとに分担するのか等を考える)。
・進捗を適宜確認しながら進めて、進行の調整する(子どもたちに任せっぱなしにすると、完成しないグループが出てくる)。
・完成した物を評価するだけでなく、進め方なども評価し振り返らせる。

一連の作業の流れを授業者がコントロールすることが大切です。

この続きは次回の日記で。

子どもが学び合うために大切なこと

1学期に訪問した小学校の授業アドバイスです。

1年生の道徳は、主人公が水やりをする時間になったのに気づかず、気づいた時に1回くらいやらなくても大丈夫だという友だちの言葉に従ってサボってしまったら、翌朝苗がしおれていてドキドキしたという話でした。授業者はゆっくりとわかりやすく話をします。少し集中していなかった子どもも次第に集中していきます。
話し終わった後、内容の確認をしました。最初に登場人物は誰かを問いかけますが、手が挙がるのは2/3くらいです。先生、女の子(私)と発言が続きます。コの字型にしているのですが、子どもは黒板の前に立っている授業者に向かって話をします。授業者ではなく友だちに向かって話すことを意識させることが大切です。そのためには、授業者が黒板の前でなく、子どもたちにもっと近い位置に立つといったことが必要です。
登場人物が2人挙がったところで、挙手がずいぶん減ってきました。登場人物は先生、私、友だちの3人なのですが、3人目が発表されてもまだ手を挙げている子どもがいました。授業者は「いいよ、ありがとう」と言って先に進みましたが、ここは、手を挙げている子どもを指名して聞いてみたいところです。間違った読み取りをしていたかもしれませんが、授業者も気づいていないよい視点での発言かもしれません。ここで切ってしまうと、授業者の求めるものしか発言できないというヒドゥンカリキュラムになってしまいます。
続いて、友だちと私がどんなことを話したかと内容を聞きますが、記憶がはっきりしないためか、手が挙がる子どもはわずかです。子どもたちは、自分が答えられないので参加意欲が失われ、友だちの話も聞いていません。集中力がどんどん下がっていきました。小学1年生にとって、話の内容を記憶することは想像以上に難しいことです。新しい人物が登場したらその場で確認し、話のポイントと合わせて黒板に書き留めるといったことが必要です。
また、挙手できない子どもをどう参加させるのかも課題です。授業者は、「みんなの意見が大切」「パスしてもいいけど、最期は意見を言って」「友だちと同じでもいいから、しゃべって」と子どもたちに告げますが、その時点で子どもたちの集中力は切れているので、多くの子どもが聞けていません。子どもたちの姿勢を正し、集中させてから話す必要がありました。話すだけでなく、実際に指示したことできた時にはほめて、よい行動を強化することが大切になります。先生が言ったことが具体的にどういうことなのかは、小学1年生ではなかなか理解できないからです。
また、子どもたちの聞く姿勢がまだ育っていないようなので、聞くことを評価する場面をつくることが求められます。「今、○○さんの言ったこと、もう一度言ってくれるかな?」「○○さんの考えをなるほどと思った人、どこでそう思った?」「○○さんの考えとどこが同じ、どこが違う?」といったことを問いかけ、ちゃんと聞いていれば活躍できる、ほめてもらえるということを子どもたちに実感させてほしいと思います。

2年生の算数は、子どもたちが問題を解く場面でした。
授業者は子ども同士で学び合ってほしいと願っているようです。このことはとてもよいことだと思います。
子どもが席を移動して教え合っていますが、一方的に教えている子どもが目立ちます。授業者は「後20分でわかるようになれよ」と子どもたちに大きな声で指示しています。机間指導をしながら、「正解」と声かけをしますが、これでは「わかるようになれよ」と言っているのに「正解」が「わかること」になってしまいます。そうではなく、問題の解き方を見つける力・考える力、説明できる力を大切にする必要があります。「考えて」と授業者は声をかけますが、具体的にどのようにすればよいのかは指示がありません。抽象的、感覚的です。授業者は絶えず何かしらの声をかけていますが、授業者の声が大きくなると、子どもたちの声も大きくなります。互いの声が影響し合ってどんどん大きくなり、教室は騒然としてきました。
「(教える人が)どんどん入れ替われ」と指示しますが、これでは教える側は言いっぱなしで、わからなければ相手の問題で仕方がないと無責任になってしまいます。そうではなく、「わかるまで」付き合う姿勢を持たせることが大切です。授業者は「逃げとるやつがいる。最悪」といいますが、次から次へと一方的に教えられたら、嫌になる子どもがいてもおかしくありません。静かな雰囲気の中で、じっくりと考えるようにする必要があります。正解ではなく、考え方をいかに共有できるかを意識して授業を見直してほしいと思います。

この続きは次回の日記で。

中学生の通学靴の規制と自由について考える

先日参加した、私が学校評議員を務めている中学校の青少年健全育成会議でのことです。
学校から子どもたちの通学靴に関する状況の説明があり、それに対する考えを聞きたいということでした。この市の他の中学校では色等に制限を設けているところがほとんどだそうです。この学校ではかつての生徒たちの要望で、靴の色などの制限がなくなっているのですが、今の子どもたちはその経緯を知らず、最近では派手な色の靴が増えてきているようです。ある生徒が入試の時に派手な靴ではチェックされて不利になるかもしれないと、弟の白い靴を勝手に履いて行き、弟が履く靴がなく困ったという事件が起こりました。これを機に、規制をすべきではないかという声が先生方の一部から上がってきているそうです。学校ではこの問題をきっかけに、子どもたちに自由や規範について考えさせようとしているようです。地域の大人のいろいろな考えを伝えて、多様な視点から考えさせたいという意図のようです。

出席者から、「(今の世の中)自由でいいじゃないか」という意見が出されました。また、「TPOを守れていればよいのではないか」「規制されると、割高な靴を買うことになって家計的には苦しい」という声もありました。私自身、基本自由でよいと思うのですが、どうしても皆さんの言葉に違和感を持たずにいられませんでした。昔は自由がなかったとよく言いますが、そもそも大昔は規則や法律などもなく、勝手に人の物を持っていったり、互いに殺し合ったりしたことも頻繁にあったはずです。それでは、みんなが安心して暮らせないので、規則や法律がつくられ、それを守らせるための仕組みが生まれていったのです。自由とは、規則があるからこそ生まれる概念です。そのことを無視して単純に「自由がよい」と子どもたちに伝えるのはどうかと思ったのです。
「TPOを守れていればよい」というのはその通りですが、このTPOの判断基準はどうなのかが大きな問題です。残念ながら大人でも守れていない方もいます。この問題をきっかけに、子どもたちがTPOについても深く考えてくれることを願います。また、親の金銭的な負担というのもよくわかりますが、論じられるべきは金銭的な負担と規制した時に得られるメリットのどちらが大きいかということです。子どもを育てるために親が支払うべきコストとしてその負担が妥当なものかという視点がほしいと思います。

思春期の子どもたちですから、服装や身なりなどを自分の好きにしたいという欲求を持つのは当然です。そのこと自体を悪いことだという気はありません。しかし、社会生活を送る上では、自分の欲求と社会のルールや約束事と折り合いをつけることが求められます。学校は子どもたちが実社会にでるための訓練の場でもあります。先生方はこの靴の問題を通じて、子どもたちにいろいろなことを考えてほしいと願い、社会の未来の担い手である子どもたちを育てるという視点でのメッセージを私たちに求めていたのだと思います。規制するかしないか、結論はどちらでもよいと思います。先生方の願い通り、子どもたちが真剣にこの問題を考えてくれることを願っています。
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