若手の授業に感心する

昨日の日記の続きです。

1年生の国語は絵の女の子の表情とそのわけを、話型を使って話す授業でした。授業者は笑顔をしっかりつくれています。子どもたちの授業規律もできています。指名して返事がなければ「返事がありません」と躾けていました。子どもたち一人ひとりをとてもよく見ています。ただ、子どもたちのテンションの高さが少し気になります。指示に対する「はい」という返事の声が大きすぎるのです。子どもたちを受容しているのですが、具体的な評価は「元気だね」ぐらいしか聞かれません。先生に認めてもらう方法が大きな声を出すこと以外にはよくわからないのかもしれません。
経験年数は少ないのに、子どもからずれた答がでても「なるほど」と受け止めることができるのには感心しました。ただ、授業者はちょっと困った答の時にだけ「なるほど」を使う傾向があります。正解がでれば、すぐにまとめて説明を始めたり、次の質問に移ったりします。子どもは「なるほど」と言われたら答を外したと思うかもしれません。また、子どもとの縦糸の関係は素晴らしいのですが、子ども同士をつなぐことはまだできていません。正解でもいったん「なるほど」と受け止め、同じ答でもいいので何人にも発表させるようにしてほしいと思います。
授業者が提示した女の子の様子を描いた絵に関する質問に対して、1人しか挙手しない場面がありました。絵が少し小さいのでわかりにくかったのかもしれません。どうするかと見ていたらペアで相談させました。よい判断です。しかし、その時絵は提示していませんでした。相談の途中で確認ができないのはちょっとつらいと思います。この時まで、2人だけが1度も挙手をしていませんでした。そのうちの1人がペア活動で口を開きました。その後の活動でもみんなと一緒に反応するなど変化が見られました。ペア活動がよい影響を与えたようです。できれば、ペア活動の後に、どんなことを話したか聞いてあげるとよかったと思います。
ペアで話型を使ってわけを説明する練習をします。活動内容は指示されていますが、どうなればいいのかという目標や評価の基準が示されていません。子どもは話しっぱなしです。聞き手役の子どもの役割もはっきりしません。なんとなく話型を使って話しているだけでした。授業者が上手く活動できていないペアを指導しているうちに多くの子どもたちは集中力を失くしていきました。この後の全体での発表場面でも、目標や評価基準がありません。唯一発表を具体的に評価したのが、「大きな声で言えた」でした。やはり、子どもたちの声ばかりが大きくなってしまうのはここに原因がありそうです。また、聞く側も最初は友だちの発表を興味を持って聞いていましたが、積極的にかかわる場面がないので集中力を失くしていきました。聞く側の役割を明確にすることが大切です。
授業者はとても前向きで素直な方です。子どもたちとの関係は大丈夫なので、子ども同士の関係をつくることを意識してほしいと思います。あとは、一つひとつの活動の目標や評価を子どもたちにわかる言葉で伝えることができれば、大きく成長できると思います。これからがとても楽しみな方でした。

全体での研究授業は、4年生の理科の体のつくりの授業でした。関節の働きに気づかせる場面です。
とにかく感心したのが子どもたちの表情がとても素晴らしかったことです。授業者は笑顔も素晴らしいのですが、上手に子どもをほめながらよい行動をうながすので、子どもがとても前向きなのです。作業を止めるように指示を出した時など、「速い、○○さんと目が合ったね」と行動の速さをほめるだけでなく、「目が合った」と望ましい行動を上手に伝えます。望ましい行動を具体的に示すので、子どものよい行動が増えます。当然ほめる機会も増えて、教室に前向きな雰囲気が生まれます。子どもにちょっとしたことを頼んでも「ありがとう」の言葉を忘れません。指示をして次の行動に移る前には、「準備はいいですか」とチェックを忘れません。教職経験が3年目?とはとても思えない、細かいところまで目が行き届いている授業でした。
最初にダンボールでつくった筒を手足につけたロボットを登場させます。同僚にお願いしたようですが、子どもたちは大喜びです。興奮状態が尾を引くかなと思ったのですが、すぐに引っ込めました。子どもたちにうけるとついつい時間をかけてしまうことが多いのですが、子どもたちのテンションが上がりすぎない前に止める割り切りは見事でした。
ロボット体験をしようということで、ダンボールでつくった筒を手足につけて、「お茶を飲む」「歩く」「立ったり座ったりする」といった行動ができるかを予想して、その理由を考えさせます。その後、ペアで確かめさせました。この時、ペアの片方はちゃんとできているかどうか判定する役割です。ペア活動の基本がよくわかっています。このことにも感心させられました。
全体での発表場面を、挙手で進めました。子どもたちはワークシートにしっかり書けていたので、挙手に頼らなくてもよかったかもしれません。発言に対して「同じような意見の人」と子どもをつなげようとするのですが、挙手だけの確認で終わりました。ここは、最初に挙手できていなかった子どもを指名して、もう一度その子の言葉で発表させたいところです。
歩きにくい理由を「硬い」という言葉で説明した子どもがいます。これ以上の言葉が上手く出てきません。このような時は、授業者が代わりに説明することが多いのですが、他の子どもにどういうことか考えさせました。なかなかのものです。「足が曲がらなかった」という言葉を引き出しました。ここで、先ほどの子どもに「そういうこと?」とはっきり確認をするとよかったでしょう。
授業の最後で先生が少しまとめすぎたのが残念です。「○○さんが言ってくれた」と固有名詞で子どもの発言を引用することもできる方です。子どもたちの言葉でまとめるようにすればもっとよかったでしょう。
授業中に2人の子どもがとても気になりました。友だちの発言や先生の説明をあまり真剣に聞いていません。2人でよそ事をしていたりします。ところがワークシートの記入などの作業は素早くこなします。どうやらよくできる子どものようです。授業者もこの子どもをどう扱えばいいのか悩んでいるようでした。他の子どもとかかわらせたいところです。こういう子どもには単に答を発表させるのではなく、みんなが困った時に助ける、友だちの代わりに説明するといった役割を与えるとよいでしょう。「○○さんのおかげでよくわかったね」「○○さん、△△さんの考えよくわかったね。△△さん、○○さんにわかってもらえてよかったね」と友だちとのかかわりで評価するのです。このようなやり方を試してみるようにお願いしました。
授業者は力がありますが、謙虚で前向きです。これからもどんどん伸びていく方だと思います。授業を見せていただいた私も、とても楽しい気持ちになりました。

全体の場では、挙手に頼りすぎずに全員参加を意識してほしいこと。子どもの言葉に教師がつけ足しをせずに、子ども同士をつないで子どもに言葉を足させること。コミュニケーションの基本はまず聞くことであること。ペアなど、子ども同士のかかわりを意識した時には受け手の役割をはっきりさせることなどを話させていただきました。ベテランの先生方がとてもよい反応をしてくださいました。力のある若手が育っている理由がわかったような気がしました。素晴らしいベテランがよい影響を与えていることは間違いありません。素晴らしい環境だと思いました。

この市の小学校への訪問はこの学校で3校目です。共通して感じたのが、私の訪問が市からの派遣で学校が望んだものでないのにもかかわらず、管理職がとても前向きにとらえてくれることです。みなさん授業改善を学校の重要課題としてとらえ、今回の訪問をそのためのよい機会にしようとしてくれているのです。こんなにうれしいことはありません。来週以降、残り5校を訪問しますが。とても楽しみになってきました。本当によい機会を得られたことに感謝です。

改善点をいろいろと考えた授業

先週末は小学校で若手を中心に授業アドバイスをおこなってきました。市内の全小学校での授業アドバイスの一環です。

3年生の道徳の授業は、読み物教材を使ったものでした。主人公がもらった絵葉書の料金不足を友だちに告げるかどうかという話です。授業者は子どもの発言を「いいこというね」と評価したりしますが、受容も評価もしないことがあります。また、何がいいのかを具体的には示しません。子どもが何か発言してくれたら、少なくとも受容だけは必ずしてほしいと思います。また、子どもたちの半分くらいしか挙手をしなくてもすぐに指名します。発言者が最後に「いいですか」と聞くと、ほとんどの子どもが「賛成」と返します。これはとても気になる場面です。本当にわかっていなくて手を挙げていないのであれば、答だけを聞いて判断できるはずがありません。「賛成」と言うのはおかしいのです。本当はわかっていたが発言することに価値がない、もし間違えたら恥ずかしいと思っているために挙手しなかったのか、よくわかっていないが空気を読んで賛成したのかです。いずれにしても、授業者が発言を常にポジティブに評価していないために、子どもが安心して発言できない教室になっている可能性があります。
授業者が資料を読みますが、読むことに意識がいってしまい、子どもたちをあまり見ません。ただ聞くだけですから、子どもたちの集中力も切れてきます。できるだけ早く子どもたちに資料を読み取らせるために、途中で授業者が適宜質問をしたり説明したりすることが必要です。読み終わってから、友だちとの関係や状況、気持ちなどを質問して確認しますが、挙手する子だけで進んでいきます。
話の中で兄は料金不足を知らせた方がいい、母は知らせない方がいいと言うのですが、その理由を考えさせません。あなたならどうするかと質問しますが、それぞれの考えをよく理解していないので、表面的に考えます。葛藤がなく、友だちの意見を聞いても心が動かされません。授業者は子どもの発言を「・・・ということかな」と自分の都合のよいように整理してしまいます。発言した子どもはきょとんとしています。これでは子どもたちは教師の求める答を言えばいいと考えてしまいます。「料金不足だったよと言われたらどう思う?」「恥をかかされたと思って嫌いにならない」「葉書の料金のことを知らないとまた失敗しちゃうよね」と揺さぶっておいてから、考えさせれば子どもたちの様子はだいぶ違ったものになったと思います。また、あなたの仲のよい友だちから来た葉書が料金不足だったらどうするというように自身の問題としてもよかったかもしれません。
これから友だちとどうしたいかをたずねます。「仲良くしたい」「間違ったら教えてあげる」「助け合う」と相手に対するものと、「嫌われないようにする」「自分が間違うと相手が悩むから間違えないようにしたい」という自分に向かう意見が出てきます。この2つの視点を焦点化してもう一度考えさせると友だちとの関係についてより深く考えたと思います。
最後に授業者が自分の中学時代の体験を話しますが、子どもは真剣に聞いていません。自分たちは与えられた課題をこなした。仕事は終わったという雰囲気です。子どもの心が揺さぶられていなかったのでしょう。
授業者は、自分が子どもたちに迫り切れていないことを自覚していました。そこに気づいていれば大丈夫です。道徳はどれだけ子どもの内面に迫れたかが勝負です。そのためには課題の工夫や揺さぶりが重要になります。そして、深く考えれば考えるほど互いに影響をしあいます。このことを意識して授業を組み立てるようアドバイスしました。

6年生の外国語活動は、ちょっと気になるものでした。
最初にPhonicsの時間がありました。元気よく声を出す子どもがいる反面、ほとんど口を開かない子どもがいます。すでに英語嫌いになった子どもがいるようです。
子どもたちは正しい発音を意識していません。なぜなら、ALTや授業者がそのこと意識した進め方をしていないからです。Phonicsでは、口の形を誇張するくらいはっきりと見せなければ、BとVの違いなどは身に付きません。しかし、ALTは口の形を子どもたちにはっきりと見せずに淡々と発音して繰り返させます。また、正しく発音できていなければ、できるまでやり直させる必要がありますがそれもしません。そのため、子どもたちは正しく発音することを意識していなかったのです。
ヒアリングでは今まで学習した月の名前を一連の文章の中から聞き取るというものでした。何月には何をするという話をALTが「読む」だけです。situationもなければ、身振りもありません。これでは何を言っているのかさっぱりわかりません。月を聞き取りやすいように、意図的に間を取ることもしません。コミュニケーションの基本がないのです。正解の発表はALTが読んだ後、授業者が何の解説もなく和訳をするだけです。これでは、子どもたちは英語を聞いて理解しようとはしなくなります。何を言っているかわからない長文を聞くことより、短い文章でいいから何度も聞いて理解することの方が大切です。せめて、絵や写真と身振りを使って何を言っているか伝える工夫をしてほしいと思います。最近の流れであるsituation baseと真逆のものでした。
誕生日を聞いて答えることがこの日の主課題です。授業者とALTで誕生日を聞き合う見本を見せます。誕生日が12月なので”so far away”という言葉を使いました。しかし、これも一切の身振りがありません。ただ、言葉を使われても理解する糸口がありません。黒板に月のカードが貼られていたので、せめて5月のカードから12月のカードまで指を動かしながら、”so far away”と言えば意味を理解できたのではないでしょうか。
全員でALTの後について発音します。”When is your birth day?”と聞かれて”When is your birth day?”、”My birthday is December twentieth.”という答に対して”My birthday is December twentieth.”と同じ言葉を繰り返します。相手の言った言葉を繰り返すのではなく、それに合わせて答える練習が必要です。言われたことを繰り返して言うだけでは頭を使いません。ALTはCDの代わりで、コミュニケーションを取る相手にはなっていませんでした。一列立たせて、全員で”When is your birth day?”と聞きます。順番に” My birthday is ・・・.”と答えて終わりです。正しく伝わったかどうかわかりません。せめて、”Oh, your birthday is ・・・.”と答えるだけでも全く違ってきます。友だちの発言を聞かなければ言葉を返せません。聞くことを意識できますし、発言者は伝わったことを実感できます。
この後は、友だちから聞いた誕生日の月日の数を使ってのビンゴゲームです。これは、最も避けたい活動です。なぜなら、ビンゴという英語活動とは直接関係のない目標に向かって活動するので、テンションばかり上がって肝心の英語でのコミュニケーションがおろそかになるからです。たくさんの友だちと会話しても、使うのは”When is your birth day?”と” My birthday is ・・・.”だけです。全く同じ2文だけをしゃべればいいのです。もっと言えば、”When is your birth day?”は聞く必要がありません。どう聞こえようが、間違えていようが、” My birthday is ・・・.”と答えればいいのです。聞く方も、何月何日かだけに意識を集中すればいいだけで、コミュニケーションとは程遠いものです。実際に相手の答を聞いている時は、だれも顔を上げずにワークシートに書き込むことに専念していました。ここで一人の男の子が校長のところに来て質問しました。隣にいた私は、その子どもに”When is your mother’s birth day?”と聞いてみました。その子は何を言われたのかわからなくて困った顔をしましたが、何度か聞くと、”Mother?”と聞き返してくれました。”Yes.”とOKサインを出すと、ちょっと考えてから、母親の誕生日を答えてくれました。”Oh, your mother’s birthday is ・・・.”と通じたことを伝えると、とてもうれしそうな顔をしてくれました。こういった聞き取ろう、伝えようとすることが大切なのです。
この活動でも、誕生日を聞いた後、必ず”Your birthday is ・・・.”と答え、それに対して”Yes, that’s right.”と確認を取ることをルールにするだけでかなり様子が変わると思います。誕生日も本人だけでなく、家族の誰かを聞くことにするだけで、双方に聞く必然ができます。誕生日以外の質問も少し用意するだけで全く異なった活動になります。伝わった、聞き取れたというコミュニケーションの実感を持たせるような活動を意識してほしいと思います。
ここに述べたことは、授業者の問題というよりはカリキュラムの問題です。学校全体の課題として改善に取り組みたいという言葉をいただけました。とてもうれしいことです。

この後、2つの授業を参観しましたが、どちらも子どもたちのとてもよい姿をみることができました。これらの授業については明日の日記で。

四役の意欲を感じた訪問

前回の日記の続きです。5月30日にアップ予定でしたが、手違いでアップされていませんでした。申し訳ありません。

3年生の道徳は読み物教材の授業でした。授業者は年配の方です。毅然とした態度が印象的ですが、子どもとの距離感をちょっと感じます。昨年からの持ち上がりの子どもたちなので、授業者のことはよくわかっているようです。良くも悪くもここまでやればいいという線がはっきりしているように思いました。授業者に聞くと、学年も上がったことなので本当は子どもたちにもっと求めていきたいのだが、なかなかけることができないということでした。学年が上がったのだから、もう一つ上を目指そうと子どもたちにはっきりと要求するとよいと話しました。
資料を授業者が丁寧に読んでいきます。すべて読み終ってから、ワークシートに読み取りについて書かせます。資料を読み取ることは大切ですが、それが目的ではありません。できるだけ早く読み取らせる工夫が必要です。子どもたちに読み取りを発表させますが、なかなか終わりません。日ごろなかなか手が挙がらない子どもも意欲を見せたので、どうしてもたくさんの子どもを指名してしまったということでした。道徳の教材はわかりやすい内容になっていますから当然読み取りは簡単です。だからこそ、ここに時間をかけてはいけなかったのです。結局肝心の自分のことに引き寄せて考える時間をほとんど取ることはできませんでした。授業者はワークシートの読み取りの部分は必要なかったと反省していました。授業を通じて、道徳に大切なことにちゃんと気づいてくれました。次の機会にはこのことを意識した授業をしてくれることでしょう。
また、この日は私や管理職が授業を見に来るということでかなり緊張していたようです。笑顔があまり見られませんでした。そのためか、子どもの発言に対して評価があまりありませんでした。子どもの外化に対しては必ずポジティブな評価をすることをお願いしました。

若手の6年生の算数の授業は分数÷単位分数の課題でした。デジタル教科書を使って課題を見せますがそれで終わりです。単なる課題提示装置でした。子どもたちには、計算だけでなく、やり方の説明をできるようになってほしいことを伝えます。大切なことです。しかし、面積図で考えるか、計算の決まりのどちらかを使って考えるという指示をして、ワークシートで説明を考えさせます。例えば面積図であれば、5年生の時の面積図を使って考えた課題の復習をするといったことはしません。これでは、子どもたちは見通しを持って課題取り組むことはできません。子どもたちはなかなか手がつかない状態です。授業者は5年生のどの課題で面積図を使ったのかも把握していませんでした。教材研究不足です。算数は系統的な教科です。指導書と違ってとても安いものですから、少なくとも算数の教科書は1年生から6年生まですべて手元に置いておいてほしいと思います。
子どもたちがなかなか手がつかないので授業者はヒントを出します。面積図と計算の決まりについての2つのヒントを連続で話しますが、これでは混乱してしまいます。一部の子どもを除いて活動が止まっている状態が続きます。ここで、グループで話し合うように指示します。班長が仕切り、できる子が説明をします。中にはわかれと言わんばかりに強い口調で説明する子どももいます。どのグループも友だちの説明を聞いてわかろうとする様子がありません。その代り、友だちのワークシート移す姿が目立ちました。
グループ活動の後発表ですが、ほとんど手が挙がりません。ワークシートに写しただけでは当然説明はできません。指名された子どもは授業者に向かって一生懸命説明します。それに対して、授業者が問い返しますが、誰も聞いていません。説明が終わると授業者がもう一度説明をしますが、発表した子どもは聞いていません。自分の仕事は終わったので関係ないという態度です。子ども同士が全くつながりません。「今の説明でなるほど思った人」「だれから、○○さんの考えもう一度説明してくれるかな」と、子どもをつなぐことが必要です。結局発表した子ども以外は説明をすることはありません。自分で整理して書くこともありません。説明できることが大切と言ってはいますが、板書には式と計算の方法と答えしか残っていません。発表者と授業者の一方的な口頭での説明だけで、考え方の説明につながるものは何も残っていないのです。また、子どもたちからもできるようになろうという意欲を感じません。説明できなくても困らないのです。ちゃんと計算はできるし、問題も解けるからです。授業者が求めていることと活動が乖離してしまっているのです。
子どもが説明できるようになるための足場やスモールステップが全く考えられていませんでした。どこまでわかっているかの確認、どこでつまずくかの予想とその対応などが全くないのです。自力解決だからといって、見通しも持たせずに進めてはいけません。
このことを指摘したからといってすぐにできるようになるわけではありません。まずは地道に教材研究をすることから始めてほしいと思います。

1学年1学級の小さな学校ですので、残りの学級もすべて見せていただきました。その中でとても素晴らしい子どもへの対応をされている方がいました。一人ひとりきちんと受け止めながら、授業規律を維持しています。笑顔で子どもを受容しながら、しっかりとコントロールしていました。元気で自己主張の強い子どもたちのようです。一つ間違えればめいめいが勝手な行動をとり落ち着かない学級になりそうですが、子どもたちの個性がよい形で活かされていました。子どもたちの笑顔がとても印象的でした。

最後に30分ほど全体でお話しする時間をいただきました。「授業規律」「全員参加の授業」「活動の目標と評価」の3つの視点で話ました。
授業規律については、できないこと、できない子どもを減らそうとするのではなく、できること、できる子どもを増やそうとしてほしいことを伝えました。いいことをしてくれなければほめることはできません。そのためには、何を目指せばよいのかを子どもたちに伝え、やる気にさせることが必要です。また、少しでも子どものよい行動を見つけようとする「いいとこ見つけ」の視点も必要です。子どもをポジティブに見ることをお願いしました。
全員参加の授業については、挙手している子だけで進めないことをお願いしました。まわりの子どもと相談するだけで、挙手が増えます。挙手をしない子どもにも、友だちの発言を復唱させたり、なるほどと思ったかと聞いたりすることで参加させることができます。発言すれば必ずポジティブな評価をされることを経験させれば、積極的になっていきます。わかった人と聞くとわかって人しか答えられませんが、「困ったことない?」と聞けばだれでも参加できます。子どもの困ったことから出発すれば全員さんができるのです。
子どもたちに活動の指示だけをしてもゴールがよくわかりません。ただ「走れ!」と言っているようなものです。必ず目標と評価の基準を与えることが大切です。ペア活動では受け手の役割、全体に対する発表では聞く側の目標の設定を明確にすることが必要です。活動だけすればいいという授業にならないようにお願いしました。

校長はじめ四役が授業改善に前向きなことが印象に残りました。授業改善が学校をよくするための重要なポイントだとしっかり認識されています。
教務主任からは、今回お話したこと関して参考資料がほしいとリクエストされました。とてもうれしいことです。このような前向きな学校ですので、次回の訪問時にどのような変化が見られるかとても楽しみです。充実した1日を過ごすことができました。ありがとうございました。
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