小学校の授業参観

先週は、小学校の現職教育に参加しました。訪問するようになって今年で3年目です。若手がどのように伸びているか、ベテランがどのような変化をしているかとても楽しみでした。

授業研究に先立って2時限、新しく異動された方を中心に授業を参観しました。
1年生は講師の方が担任でした。チャイムが鳴る中、子どもが2人足早に歩いてきます。廊下を走ってはいけないことを意識しているのです。席につこうとしている時に、授業者はチャイムが鳴り終わるまでに席につかなければいけないことを全体に注意します。子どもをチェックする目で見ていることが気になります。子どもは頑張って間に合うように行動しました。ここは「間に合ってよかったね」と笑顔で喜んであげることが大切です。
黒板に向かって板書をしている時に、子どもたちのしゃべり声が聞こえてきました。授業者は振り返らず「おしゃべりはいかん」と言いました。それよりも、振り返ってしゃべっている子どもと笑顔で目を合わせ、口を閉じるのを待って「気がついてくれて、うれしい」とほめたいところです。また、子どもの発言に対しても評価がありません。まずは、子どもをポジティブに評価して、よい行動を増やすようにしてほしいと思います。

特別支援の先生は、ベテランの方です。非常にまじめな方で、3人の子どもたち一人ひとりにこうなってほしいという目標を達成しようと一生懸命です。1人の指導を終えると、次の子どもと休む暇がありません。支援をちょっと我慢し、「5問やってみよう」といった指示をしてしばらく様子を見ているというように、直接かかわる時間を少し減らしてもいいように思います。
目標をスモールステップで刻んで、できたことを一つずつ小刻みに評価することも意識するとよいと思いました。できることを何回もやらせて自信をつけさせ、新しいことを学習する時はステップをできるだけ小さくし、ほめる場面を増やすようにするのです。ペアレントトレーニングの発想を活かすとよいと思います。

初任者は4年生の担任で、算数のグラフの授業でした。
「わかりやすくするためにはどうすればいい?」と問いかける場面がありました。これはとてもわかりにくい発問です。資料から何がわかるといいのかという視点が必要です。このことは、社会科の資料の活用にもつながることです。ここを押さえておかなければ、「わかりやすい」を考えることができません。考えるために必要なことは何かを意識する必要があります。
ペア活動をうまく活用していました。子どもたちは友だちとかかわることが上手にできます。しかし、「わかった人」と聞いて、発言者と授業者の2人だけの一問一答で進んでいくので、参加できない子どもの集中力が落ちていきます。また、子どもの発言に対して評価がないことも気になります。せっかく子どもが頑張って説明しても、そのあとすぐに授業者が説明してしまいます。子どもたちの言葉を活かすことができていませんでした。
初任者ですので仕方のないことばかりです。初任者指導の先生ともお話しする機会がありましたが、授業の課題もよく理解しておられました。この方に指導していただければきっとよくなっていくことと思います。

ベテランの3年生の担任は、素直でとても前向きな方です。この2年間でずいぶん授業によい変化がでてきました。アドバイスしたことをきちんと実行されています。笑顔で子どもたちを受容し、常にポジティブに評価しています。しかし、一部の子どもがなかなかうまく参加してくれません。全くやる気がないわけではないのですが、集中力が続かないのです。そのことを授業者は気にしているようです。注意をするのではなく、他の子どもの発言をその子につなごうとするなど何とか参加させようとしているのですが、なかなかうまくいかないようです。授業者は自ら授業を見てほしいと申し出られたそうです。その理由がわかりました。
集中できない子どもも、他の子どもが反応した時などは一時的に集中します。そこで、他の子どもとかかわる場面を増やすという方法が考えられます。具体的には、挙手で進める前にペアやまわりと相談させるのです。今は授業全体で教師がコントロールする時間が多いのですが、少しそれを控えて子ども同士でかかわる時間を増やすのです。グループ活動も有効だと思います。前向きな先生なので。きっといろいろと挑戦されるでしょう。上手くいくという保証はありませんが、やってみることでわかることがきっとたくさんあるはずです。次回の訪問時にどのような変化があるかとても楽しみです。

2年生の担任は、4年目の先生です。いつも笑顔で子どもたちに接することを意識されています。子どもたちも落ち着いていて、授業者との関係もよさそうです。指示もきちんと通るまで待とうとしているのですが、全員ができていることを確認しないままに進める場面もありました。このことは、気をつける必要があります。
机間指導の時に、まわりを見ることができていました。これはとても大切なことです。常に教室全体の様子を把握しておくことが重要です。必要な子どもに素早く支援をするためにも、このことは意識してほしいと思います。また、作業が終わった子どもに対する次の指示がありませんでした。どうしても子どもの集中力が切れてしまいます。事前にこうなることを予測して、活動前に次の指示をしておくことが大切です。
子どもの発言をしっかり聞いて、受容することはできていますが、まだ発言者と1対1になってしまいます。まわりの子どもを見てつなぐことを意識してほしいと思います。

もう1人の2年生の担任は、今年異動して来られた7年目の先生でした。柔らかい、受容的な雰囲気のある方です。
子どもが受け身の状態で集中力がなくなった場面がありました。その時に、全員に手を挙げさせ、その手を大きく動かせました。子どもの集中が戻り、反応の声も大きくなりました。いろいろな授業技術を持っていることがわかります。
にこやかな表情でとても上手に子どもを受容しますが、評価がありません。子どもの発言を聞こえているか問いかけたりもしますが、具体的な確認はしません。もっと子どもに対して反応を求めるとよいと思います。
全体的に子どもの活動量の少なさが気になりました。ゆったりと丁寧に進んでいくのですが、基本的に一問一答形式なので、子どもが参加できない時間が多いように思います。集中力がなくなる理由です。先ほどの体を動かして集中力を取りもどさせることも悪くはないのですが、学習活動そのものでなんとかすべきでしょう。確認の場面などはテンポアップをすること、同じ意見の子どもをつなぐこと、ペアで確認する活動を入れることなどをして活動量を増やしたいところです。
また、活動に子ども自身で評価できる目標を与えることも重要です。子ども自身が「できた」「やった」と思うことを大切にしてほしいと思います。
子どもを受容することがきちんとできている方です。この学校の授業スタイルにあっているので、他の先生の授業から学ぶことで、すぐによい方向に変わると思います。
この授業には学習支援員が入っているのですが、支援を必要とする子どもとの関係が気になりました。支援員は困っている子を教えようとするのです。このことが「わかれ」という圧力なっています。子どもの体が支援員から逃げようとします。どこで困っているのか、どうすればいいのか一緒に考えるという、寄りそう姿勢が求められます。このことに気づいてほしいと思いました。

今年度から新しい教務主任の方が異動されてきましたが、とても明るく前向きな方です。自分も勉強しようという意欲を感じます。今まで以上に先生方の学び合いを進めてくれることと思います。

授業研究は、昨年度にとても素晴らしい授業を見せてくれた若手が引き続き挑戦してくれました。熱心な姿勢に頭が下がります。この授業研究については明日の日記で。

私立の中高等学校で授業参観

先週、私立の中高等学校へ授業参観に出かけました。この学校の今後の授業評価の進め方の参考にするためです。校長とともに1時限目から2時間学校全体の様子を参観させていただきました。

印象的だったのが、授業者によって子どもたちの学習に対する集中度が変わることと、授業者との人間関係が上手く作られていない学級が目立ったことです。1時限目は子どもたちが一番集中しやすい時だと思いますが、それにもかかわらずやる気を失くしている子どもが目立つのが気になりました。しかし、私には子どもたちの問題よりも授業者の姿勢の方に問題があるように思えました。子どもたちの可能性をあまり信じていないように感じたのです。子どもたちは理解できるはずだ、きっとできるようになるはずだというエネルギーが授業から伝わってこないのです。とりあえず説明はした、やるべきことはやっているという、アリバイ作りをしているようしか見えないのです。

子どもたちは大きく3つのコースに分かれるのですが、それぞれに学習の姿勢に特徴があるのも興味深い事実でした。中学校からそのまま上がってきた子どもたちは、教師とよい人間関係ができています。学習に対して前向きで、よい表情で授業者の話を集中して聞いています。特別進学コースの子どもたちは、授業には参加しているのですが、授業者の説明よりは板書を優先する傾向があります。基本的に必要な情報だけを得ようとする消費者的な態度が気になります。一般のコースの子どもたちは、素直ですが授業者との関係や授業の進め方、その内容で学習に対する姿勢が大きく変わるようでした。学習のプリントなどやるべき課題が明確であれば集中して取り組む姿勢を見せてくれます。授業者の工夫の余地が大きいように思います。

ある学級で面白い場面にであいました。授業者が所用で教室を離れていた時に子どもたちが集中して問題に取り組んでいたのですが、戻ってくるとその集中が急に落ちてしまったのです。どう解釈していいか悩みますが、普通では起きにくいことです。

授業の進め方に共通していたのは、授業者の一方的な説明と板書に終始することです。子どもたちが活躍する場面が非常に少ないのです。授業者と子ども、子ども同士がかかわる場面も非常にまれです。子どもたちは、教師の説明を聞けばわかるようになるという実感をあまり持っていないようです。説明を聞くよりも板書を写すことを優先します。中には、試験に出るからと点数で子どもを釣るような方もいらっしゃいました。

以前に行われた授業に対するアンケート評価の結果と比べると実際の方がよくない状態に見えます。今回たまたま評価の高い実力のある方の多くが出張だったこともその原因の一つかもしれません。ただ、無記名のアンケートでこのように感じるということは、子どもたちが先生方に気を使っているのかもしれませんし、逆に期待をしていないことの現れかもしれません。

先生方の授業の実態について校長はとてもよく把握し理解しておられました。しかし、具体的にどのような手立てを取ればよいかに悩まれているようでした。
学年が上がるにつれて子どもの状態がよくないと感じます。先生方が子どもたちを育てていないという証拠です。ということは、しっかりと育てれば大きく伸びるということです。子どもたちの伸び代はとても大きいのです。先生方がこの可能性を信じることが大切だと思います。
これから校長はじめ先生方と一緒に、どう子どもたちを育てていくか、どう授業を魅力的なものに変えていくかを考えていきたいと思います。

「楽しく、手軽に授業改善をしよう」第3回公開

「愛される学校づくり研究会」のWEBサイトで、教育コラム「楽しく、手軽に授業改善をしよう」の第3回「失敗を前提としたプチ授業研究」が公開されました。

ぜひご一読ください。

授業技術について講演

先週、市主催の研修で講演を行ってきました。今年の1月に小中学校の管理職向けに研修を行ったのですが、その際具体的な授業技術について時間の関係で話ができませんでした。そこで、今回は市内の小中学校の若手と若手を指導する立場の方を対象に日々の授業技術について話をしました。

ちょっと暑い平日の午後でしたので、開始前からお疲れ気味の方がやや目立ちました。個々の授業技術について説明する前に、目指す子どもの姿について話しましたが、どうも空気が重いようです。「自ら考える子ども」「自己有用感を持つ子ども」といった言葉が陳腐に聞こえたのかもしれません。
授業を考える視点として、「安心して暮らせる学級・教室をつくる」「子どもを受け身にさせない」「子どもの言葉で授業をつくる」「考えるためには課題が大切である」の4つを挙げ、それぞれについて解説をしました。
続いて、授業技術やそのポイントについて具体的な場面を基にお話ししましたが、このあたりから参加者の反応がよくなってきました。具体的な話でないとなかなか関心を持っていただけないことがよくわかります。いつも話していることですが、まず笑顔の大切さ、話すことよりも聞く姿勢の大切さを強く訴えました。また、今回は最近特に強く感じている「全員参加」の授業の大切さについて具体的に詳しく話をしました。個人追究の後、「わかった人」「できた人」と問いかけ、挙手した子どもを指名して進める、参加できる子どもだけで進む授業によく出会うからです。この市での実際の授業の様子は残念ながらまだ見る機会がないため、そんなことはないのかもしれませんが、先生方の反応を見ているとあながち的外れではなかったように思いました。

最後の質問の時間に、ある学校の管理職の方が最近は学力向上の話が多いが、今回のような授業論は久々で期待した以上だったと感想を発表してくださいました。社交辞令かもしれませんが、機会があれば自校の授業を見てほしいと、とてもうれしい言葉をいただけました。
担当の指導主事の方に、現場での授業研究に参加できる機会をいただけるようにお願いしています。新しい地域で授業を見せていただくと本当に学ぶことがたくさんあります。なかなか実現しないのですが、何とか秋には調整がつくことを期待しています。
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