元気をもらえた研修会

昨日は、終日研修会の講師を務めました。8月の上旬におこなった研修会の続きです。(学びの多い研修会参照)

3つの模擬授業を参加者におこなってもらいました。授業者が準備した指導案をもとに事前にリハーサルをしながら指導案の検討をおこないます。発問や指示が子ども役にきちんと伝わらなかった。子どもになったつもりで話し合ったら答が分かれた。どのチームもよい雰囲気でそれぞれの授業について話し合っています。事前に検討することで、指導案が大きく変わったグループもありました。

1つ目の模擬授業は、小学校の国語の説明文の読み取りでした。1つの段落の文の内容にそって、教師が用意した絵を正しい順番に並べ替えることをグループでおこなう授業です。この授業のために絵を何セットも用意してくれました。
5つの文に対して、絵は7枚あります。ダミーが混ざることで子どもたちの話し合いの視点を増やそうという仕掛けです。
模擬授業はドラマの連続でした。授業者は文中の「ちりぢり」の意味にこだわりました。この文章を私たちが読んだとき、「ちりぢり」という言葉はそのまま読み流してしまうような表現でした。しかし、この言葉が2つの異なった答えに対して、判断を下す決め手になりました。この表現にこだわって絵を見れば、答が明確になったのです。授業者がこの言葉にこだわったのは、自分で絵を描いたからです。絵を描く手掛かりになった言葉だったのです。判断のキーワードとなることを意図して取り上げたわけではなかったのですが、結果として素晴らしい一手となりました。筆者は状況を説明する言葉として、「ちりぢり」という言葉を明確に選んでいたことがよくわかりました。国語は本文の表現にこだわることが大切であることを再認識させられました。

2つ目の模擬授業は、中学校の理科の月の満ち欠けです。空間の位置関係を相対的に理解しなければいけない難しい教材です。授業者は同僚に手伝ってもらって、ピンポン球を黄色と黒の2色に塗り分けて串を刺した教具を準備してくれました。このピンポン球を渡して、課題の説明をしたのですが、子ども役になりきった先生は、ピンポン球を回して遊びました。子どもは物をもらえばそれが気になるものです。道具を渡したらすぐに活動させる。そのためには、説明は道具を渡す前にすることが大切であることに気づかせてくれました。
月の公転に従って月がどう見えるか、太陽の方向に注意してピンポン球をモデルに観察することが課題です。子ども役の先生は、自然に隣同士で相談したり、確かめあったりしています。難しい課題は自然に相談したくなるのです。実際の子どもたちの場合は、まわりとかかわり合うことを普段からしていないと、なかなか相談できないこともあります。この課題は、ペアやグループで取り組んだ方がいい課題なのかもしれません。
授業者は2学期にこの授業を実際にやるのですが、本番では大きく変わっていると思うと言っていました。たくさんのことを学んでくれたようです。

3つ目の模擬授業は、小学校の体育でした。背中合わせで座った状態から立ち上がる、ペアでの活動を通じて、互いに協力し合う、コツを伝え合うものです。言語活動を意識して伝え合うことに重点を置いた授業です。子ども役の中にはなかなかうまくできずに、みんなのアドバイスをもらってやっとできたペアもありました。本当の子どもたちと同じように嬉しそうにしていました。体育のような実技教科はどうしてもうまい子どもにスポットがあたりがちですが、最初からできた子どもよりできるようになった子どもの方が感動は大きいはずです。こういった子どもたちに語らせることが、言語活動では大切であることに気づかされました。

2日間の研修の最後に、参加者全員に一言ずつ感想や学んだことを話していただきました。多くの先生が、この研修を通じて気づいたいろいろなことを2学期から実践したいと、前向きな気持ちを語ってくれました。コーディネートした私にとってこれほどうれしい言葉ありません。私にとっても大きな学びと元気をもらえた研修会でした。ありがとうございました。

小学校の現職教育

昨日は小学校の現職教育で、「子どもの言葉を生かした授業つくり」についてお話をさせていただきました。

子どもの言葉を生かすということはよく言われますが、それが果たしてどういうことなのか意外にはっきりとはしていないような気がします。子どもの言葉を生かすことのイメージがあるかどうか挙手してもらいましたが、それほど多くの方の手が挙がりませんでした。実際のところ、私も今回このテーマをいただくことで、あらためて整理し直して、やっと皆さんの前でお話ができる状態になったというところです。

教師の説明でわかるのではなく、子どもが子どもの言葉を聞いてわかっていく。教師は子どもの言葉をしっかり聞いて、子ども同士がつながるような働きかけをすることにエネルギーを使う。言葉にすれば簡単なことですが、現実にはとても難しいことです。
私の話に先生方が納得して、すぐにできるようになるなどと大それたことは思いません。先生方に、「子どもの言葉をしっかり聞こう」「子どもの言葉を子どもに返そう」「子どもの言葉、他の子につなごう」、そんな気持ちなっていただければと思っています。

今回、子どもの言葉を生かす授業をするとどんな子どもが育つかを、ある先生の授業ビデオで見ていただきました。どの先生も真剣に見てくださいました。子どもの言葉は拙く、不完全で言葉足らずです。そのため、子どもの言葉で授業を進めると時間がかかってしょうがないと思う方が多いように思います。しかし、この授業では通常だとまとめる直前の状態まで、授業時間の半分で進んでいます。教師のしゃべる時間が少なくなれば、子どもが話す時間を驚くほどたくさんとれるのです。

先生方が大変熱心に話を聞いてくださり、私も楽しい時間を過ごすことができました。また、よいテーマをいただいたことで、子どもの言葉生かすことに関して、いろいろと考え直したり整理することができました。ありがとうございます。
秋には先生方の授業を見せていただく機会を設けていただけそうです。とはいえ、先生方に授業を見てほしいといっていただけなければ、見ることはできません。今回の話を聞いて先生方は手を挙げてくださるでしょうか? ちょっとドキドキしています。たくさんの先生方に手を挙げていただけることを期待しています。

ICT関係の会議に出席

先週末に、ある市のICT情報教育推進の会議に委員として参加しました。

今回のテーマの1つに、数年先の学校のICT環境を考えることがありました。先進的な取り組みで知られる市ですが、決して目新しいことにすぐに跳びつくわけでありません。子どもたちにとって、教師にとってどんな環境が必要なのかをしっかりと考えています。「教師が日々の授業の中でやりたいと思ったことがすぐに実現できる環境を整えることが大切」と言った委員の言葉に大きくうなずきました。こういう先生方がICT活用を支えていることがこの市の強さです。

私にとって大いに勉強になったと感じたのが、中学校のPC教室の今後のあり方についてです。今の子どもたちは、小学生のうちからパソコンを普通に活用しています。もはや中学校でコンピュータリテラシーは必要ありません。パソコンを学ぶ教室から活用する教室への転換が求められます。ネットワークも無線LANが当り前になり、机やパソコン、ICT機器の配置の自由度もずいぶん高くなりました。固定したレイアウトでなく、用途に応じて自在に変化する多目的な教室に変わっていくだろうと会議を通じて確信を持つことができました。

また、小学校では今後、子どもたちの個人の学習の成果物やいろいろな活動の結果をデジタル化して校内のサーバに保存することができる環境になるそうです。これは単に記録が残るということではありません。自分の過去を振り返って成長を実感できるポートフォリオとして活用できることをはじめ、先輩たちの過去の学習の結果を共有したり、他の学級や学校での学習の結果を共有することで時間と空間を越えた学びを生み出す可能性もあります。しかし、環境をつくったからといって実現するわけではありません。このことを実現するためには、教師がそれを意図した授業をデザインする必要があります。チャレンジ精神にあふれたこの市のことです。数年後にはきっと素晴らしい実践が生まれていることと思います。この会議に出席する楽しみが、また一つ増えました。

この会議に参加することで、私自身も事前に勉強したり、いろいろな視点での意見に出会え、たくさんのことを学ぶことができます。こういう機会を与えていただいていることに、あらためて感謝いたします。

夏休みをいただきます

今週いっぱい夏休みをいただきます。
日記もお休みさせていただき、22日(月)より再開します。

授業の最後に何を振りかえらせる

授業の終わりに振りかえりを書くことが増えてきています。しかし、子どもたちの振り返りを見ると、ただ感想を書いているだけのことが多いのです。何を書くように指導すればよいか考えてみましょう。

「面白かった」
「よくわかった」
「頑張った」

このような感想だけでは、次の学びにつながっていきません。大切なことは、この授業で何を学んだか子どもの言葉で振り返ることです。
「今日わかったことはどんなこと」「できるようになったことはなに」と振り返らせるとよいでしょう。

「・・・が・・・であることがわかった」
「・・・を考えるときに、・・・に注目するとよいことがわかった」
「・・・のような問題を解くときには線分図に表すと考えやすい」

このような振り返りは、授業を通じて自分が進歩したことを確認することにもつながります。また、「・・・のような問題を解くとき・・・」というようにまとめることで、メタ認知が働くようになります。

指導すればすぐにこのような振り返りになるわけではありませんが、よい振り返りを紹介しながら、「感想」から「学んだこと」へと質の転換を図るようにしてほしいと思います。

数学の課題のアイデア検討

昨日は指導案作成のアドバイスをおこないました。中学校1年生の数学、1次方程式の利用です。今回は、指導案作成に向けて、どんな子どもの姿を目指すか、どんな教材がよいのかについていろいろと話をさせていただきました。

授業者は、子ども同士が互いに相談して問題に取り組むような授業を目指しています。できる子がさっさと問題を解いてしまう、わからない子が手も足も出ない。そういう授業にはしたくない。
となると、塾で予習しているような問題では一部の子がすぐに解いてしまいます。子どもたちの興味を引き出し、みんなで知恵を絞らなければ解けないような問題を用意する必要があります。子どもたちに身近で、かつ方程式を利用することで解決されるような課題のアイデアを出し合いました。

通販で、購入金額が一定額を越すと送料が無料になることを使った問題
トライアスロンを舞台にした追いかけの問題
異なった道を通る追いかけの問題
金券キャッシュバックと割引クーポンの違いを意識した問題
・・・
いろいろと考えてみました。

また、こういう課題をおもしろくするための視点として、明確に書いていないが、解の吟味で必要となる条件をいれておく。情報が過多である、足りない。こんな仕掛けをするとよいことも伝えました。

次回は具体的に課題を決めて指導案にしてきてくれます。どんな指導案になるかとても楽しみです。

最後に、今回の指導案作成とは直接関係ありませんが、教科書の記述から何を読み取るか、実際に教科書を見ながら話をさせていただきました。意外に教科書は軽く読み飛ばしているようです。数学は、問題を見て解き方がわかっていればなんとなく授業ができてしまいます。このことが原因の一つかもしれません。これを機会に教科書の記述からも指導のポイントについて考えるようになってほしいと思います。数学の教材についてたっぷり浸れた、楽しい時間でした。

友だちの作品から学ぶ

授業で作品をつくったときはそれで終わりでなく、展示して互いの作品から学び合う場面をつくります。しかし、ただ展示するだけでは学びはおきません。どのようなことを意識すればいいのでしょうか。

一つは必然性を意識することです。完成した作品を見て学んでも、それを活かす機会は先になってしまいます。学んだことを活かせるタイミングで見ることは、学ぶ意欲を高めます。
たとえば、下絵の構図を互いに学ぶのであれば、大体構図が決まった時点で一旦作業を中断します。ここで作品を見合えば、よいと思ったことを自分の作品に活かすことができます。また、制作ノートやワークシートに、意図したこと、工夫したことを書いておき、作品と一緒に提示することで、よさや工夫がより伝わりやすくなります。
また、互いのよさを共有する方法の一つにグループの活用があります。グループ内で自分が見つけた友だちのよさを伝えあうのです。自分が気づかなかったよさを友だちから聞くことで、視野が広がります。また、実際にもう一度作品を見て確認することもできます。

では、完成した後の展示はどのようにすればいいのでしょう。
自分の作品を認めてもらうことは、子どもの自己有用感を高めます。そこで、互いに作品を見合い、よいところをレポートにします。ちょっと大きめのメモ用紙程度のものに、作品の工夫、それがどうよかった、全体的な感想など、作品を見る視点を印刷しておいて書きこませます。全員の作品について書くのは大変なので、グループごとに一つのグループを割り当てて見る、一つのグループ内で分担して全員を見るなどの工夫をしてください。前者の場合は、グループ内で発表し合い、友だちのレポートでよいと思ったところをつけ加える、後者であれば、友だちのレポートから興味を持った作品を見に行くといった活動をおこなうとよいでしょう。
また、教室にしばらく作品を展示しておくような場合、作品とともに子どもたちのレポートもつけ加えることで、より多くのことが学べるはずです。

個人作業になりがちな作品づくりですが、作品を見あう場面をうまくつくることでかかわりを持つことができます。互いの作品から学ぶことを意識して授業をつくってほしいと思います。

友だちの発言を聞く意欲を高める

授業を見ていると、子どもが友だちの発言を聞こうとしてないと感じることがあります。授業に集中していないというわけではありません。教師が説明して板書をすると素早くノートに写します。なぜこのようなことが起こるのでしょうか。

一番の理由は、聞いていなくても子どもたちが困らないことです。
友だちの説明はわかりにくいので、聞かない。聞かなくても、最後に先生がわかりやすくまとめてくれる。また、算数などは説明ができなくても、手順がわかれば問題は解けるので困らない。友だちのよい気づきは先生が復唱したり、板書してくれるから先生に注目していればいい。こう思っているのです。

子どもの発言を安易に教師がまとめず、子どもの言葉を活かして、自分たちでわかった実感を持たせることが大切です。
子どもの説明が不十分であれば、「それってどういうこと」とより詳しい説明を求めたり、「だれか、○○君の考え説明できる」と友だちの考えを理解しようとすることを意識させます。
また、教師がまとめずに、子どもに自分でまとめさせることも大切です。「みんなの気づいたことで、なるほどと思ったことを自分のノートに書き足してください」「まとめたことを隣同士で確認してください。友だちの気づいたことでなるほど思うものは自分のに足しましょう」というように、自分たちでまとめる作業を取り入れるようにするとよいでしょう。

この他にも、そもそも課題に手がつかない、何をやったらいいかわからなかったというときは、手がついていないので、友だちの発言を聞く意欲が薄れてしまいます。自分の考えが持てているときの方が友だちはどう考えたのか気になるので聞こうという気持ちになるのです。解決のための見通しを持たせてから課題に取り組ませたり、できるだけ課題を具体的に提示するなどの工夫が必要です。また、活動を途中で一旦止めて、結論でなくどこに注目しているかを全体で共有することで見通しが持てることもあります。

子どもが友だちの発言を聞かないのには理由があります。聞こうとする意欲をどう高めるか、聞く必然性をどうつくるか。教師の工夫が求められるのです。

授業の最初に何をするか

授業の始まりは、多くの子どもの意欲が高い時間です。苦手な子どもも今日はわかるかもしれない、できるかもと思っています。ここで一方的に教師の話を聞かせるなど受け身の活動をさせるとせっかくの意欲がすぐになくなってしまいます。この時間をうまく使うことは子どもの授業への集中度を高めるためにとても大事なことです。

最初に復習をするのであれば、全員の子どもが「できた」「わかった」と思うようにする工夫が必要です。数人に発言させて、「みんないいですね」と確認しても、よくわからないままの子どもが必ずいます。わからないと思うと意欲はすぐになくなってしまいます。

できるだけ多くの子どもに発言させる。
わかっていない子どもには、教科書やノートを確認する時間を与えて、答えられようにする。
まわりと互いに確認させる。

このようなことを意識して、「できそうだ」「やれる」という気持ちにさせることが大切です。

また、脳の活性度を上げるために小テストなどを取り入れるという考え方もあります。この場合注意してほしいのは、できるだけ全員が満点をとれるようなものにすることです。できなかった、ダメだったという気持ちになってしまうとしばらく気持ちが下がったままになってしまいます。そこで、少しでもできるようにと多くの時間をとってしまうと、今度は先にできた子はすることがなくなってだれてしまいます。時間を決めて、時間がくればきっちり終わるようにすることが大切です。
逆に時間内でどれだけできるかという進め方もあります。問題をたくさん用意しておいて何問できるかという発想です。これであれば、自分のペースでやれるのでだれることもなくなります。また前回より何問増えたといった進歩をみることで一人ひとりの頑張りを評価することもできます。
答えを書く以外に声に出すという方法もあります。2人1組で一方が答えを言い他方確認するというやり方です。声を出すことで脳も活性化します。

授業の最初は必ず復習をしなければならないわけではありません。子どもの意欲の高い間に、本時の課題を提示することで集中度を高めることができます。このとき、一方的に教師が説明するのではなく、子どもとやり取りをたくさんすることが大切です。資料を提示して興味を持たせたり、課題に関係した、どの子も答えられる、考えられる発問をたくさんすることで課題への意欲をもたせるとよいでしょう。

授業の始まりは子どもたちの意欲の高いとても大切な時間です。この時間を有効に使うことを意識した授業づくりをしてほしいと思います。

学びの多い研修会

昨日は、終日研修会で講師を務めました。昨年より始まった、参加者による模擬授業を中心としたものです。午前と午後にそれぞれ1回ずつの模擬授業と言語活動について講演をさせていただきました。

講演は、言語活動という視点から授業で大切にしてほしいことをテーマに、実は言語活動を意識するということは特別なことではなく、普段の授業でコミュニケーションを充実することに他ならないということを話させていただきました。参加した先生方が真剣に聞いてくださったので、ついつい予定よりも深いところまで話をしたり、わき道にそれたりしてしまいましたが、楽しく話をすることができました。

模擬授業を前に、2つのグループに分かれてリハーサルをしていただきました。この時間が、参加者同士が打ち解けるいい機会になったようです。スタートの講演のときにはちょっと硬かった表情がずいぶん柔らかくなっていました。参加者が互いにかかわる時間を持つことのよさがよくわかります。

1つ目の授業は、中学校の英語でした。シチュエーションを意識して組み立てることを目指した授業です。テンポのよい笑顔あふれる授業で、英語が嫌いな生徒でも引き込まれてしまうような、とても素敵なものでした。発言に対して"Good!"、"Good job!"と称賛の言葉をきちんとかけていました。笑顔とほめることの大切さ参加者が実感してくれたと思います。シチュエーションとそれに対応する英文とを明確にして進めるとよいのではとアドバイスさせていただきました。

2つ目の授業は、小学校3年の国語の話し合いの指導でした。授業者は、グループでの話し合いの場面で、全員が発表し終わるとその後意見が出なくて停滞してしまうのを課題と感じていました。子どもたちはメモもなかとれないため、次々に発表されると整理できなくなってしまいます。そこで、自分の話の内容をあらかじめ付箋紙に書いて貼ることで整理するという方法を考えました。こうすることで話を整理して意見が言いやすくなると考えたからです。授業者もこのやり方はまだ試したことはないそうです。この機会にうまくいくか、問題点は何かを参加者と一緒に考えようというわけです。模擬授業をすることを前向きにとらえていただけたことを大変うれしく思いました。司会の進め方と発表のポイントを両面に印刷した厚紙を用意するなど、実際の授業と同じようにしっかりと準備もしてくれました。

授業者にとっても初めての試みということなので、話し合いの場面は結論が出るまでじっくり時間をかけてもらいました。3つのグループで話し合ったのですが、それぞれで様子は異なっていました。全員が付箋紙に書き込んでから話しあうグループ。次々に意見を交換し、平行して付箋紙を書いているグループ。付箋紙を貼って賛成や質問もしっかりでたあとで、動きが止まってしまったグループ。三者三様でした。模擬授業の後で、生徒役、参観していた先生方に感想を聞きましたが、それぞれの立場で実に貴重なことが語られました。

次々に意見を交換できたグループでは、実は話を聞いているときに自分の発表のメモを付箋紙に書いていた。
話し合いが止まっていたグループでは、意見はあったのだが、またメモをしなくてはいけないのか、そのまま話していいのかどうしていいかわからなかった。
参観者からは、意見を聞きながら付箋紙を書いているのはとてもすごいのだが、小学3年生には無理ではないだろうか。
・・・

付箋紙は「書く」「読む」。話し合いは「話す」「聞く」。要素がたくさんあるために、どこで何をするかがグループによって異なっていたようです。授業者にとっても、参加者にとってもたくさんの学びがあったように思います。授業者は今回の模擬授業を参考にして、9月に自分の学級で実際にやってみるそうです。ぜひ報告をしてくださいとお願いをしました。

いつも思うことですが、参加者が学べる研修は、講師の私もたくさんのことが学べるものです。今回も素晴らしい参加者のおかげで多くのことを考え、皆さんの気づきにハッとさせられ、とてもよい学びをさせていただきました。ありがとうございました。次回は3人の方に模擬授業をしていただきます。今からとても楽しみです。

充実した研修会

昨日は市主催の授業改善研修会で授業解説をおこなってきました。打合せの時点から楽しみにしていましたが(研修の打ち合わせ参照)、期待以上に内容の濃いものになりました。

授業者はこの1週間、ずいぶん内容を検討してきたようです。細かいところまでよく練られていました。また、このブログも参考にしていただいたそうです。たしかに私が日ごろ意識していることが、随所に見られました。とてもうれしく思いました。この日の模擬授業は、一つひとつの発問や子どもとのやり取りの意図がはっきりとしていたので、とても解説がしやすいものでした。
たとえば、子どもの発言をつなぐかつながないか、評価するかしないかはその後で取り上げたいことを反映していました。授業者の意図がよくわかるのです。しかし、子どもからすれば、なぜ自分の意見は評価されないのだろうか、きっと教師の期待したものではなかったのだと思ってしまいます。一つひとつの意見はどれも素晴らしいものです。取り上げる、取り上げないは教師の都合なのです。取り上げなかった意見と同じ考えの子どももいるはずです。今日は取り上げなくても、きちんと評価しつなげる必要があります。これはきちんと評価したりつなぐ場面があったからこそ、見えてくることです。
よい点がたくさんあるからこそ、うっかり見落としてしまうこと、改善点がはっきり見えてくるのです。

また、今回の生徒役は他の研修会の参加者にお願いしましたが、実に素晴らしいものでした。教師の指示が不明確であれば、素直に生徒になりきって態度に表してくれます。不安な時は、友だちの書き込みを覗いたりもしてくれます。実際の授業と同じように、子ども役の動きからいろいろなことが見えてきます。気になる動きをした生徒役にインタービューすることで、何が起こっていたのかが明らかになります。それは、誰もが納得できることでした。
授業者はその指摘を素直に認める度量がありました。生徒役の様子を見ていなかったときも言い訳せず、どうすべきだったか考えてくれました。また、その場で予定を変更して進め方を変えたりもしてくれました。これが模擬授業のよさです。その場で修正しながら授業をみんなでつくっていくことができるのです。

十分な時間があったはずなのですが、解説したいことがたくさん出てきたため、授業の一部をはしょらなければいけなくなりました。また最後に授業者や生徒役の先生から感想をうかがう時間もなくなってしまいました。申し訳ないことです。
とはいえ、私自身は、見るべきものがたくさんあり、一瞬たりとも気を抜けない緊張感あふれる模擬授業を本当に楽しませていただきました。得るべきものがたくさんありました。参加された200人近い先生方はどのような感想を持たれたでしょうか? 会場が大きな舞台であったこともあり、参加者と直接かかわることができなかったのが残念です。来年はもう少しコンパクトでフラットな会場をお願いできましたので、参加者とのやり取りも楽しめると思います。今から来年が楽しみです。
授業者、生徒役の先生、また早くから準備やお手伝いをしていただいた先生方、本当にありがとうございました。おかげでとても充実した時間を過ごせました。

子どもが活動する発問

子どもへの問いかけ、発問によって子どもたちの動きは大きく変わります。資料を提示して「気づいたことをメモして」といった発問ではなかなか動いてくれないこともあります。どのようなことを意識するといいのでしょうか。

一つは意欲をもたせることです。
比較的簡単な方法は、

「先生は4つみつけたよ。先生よりたくさん見つけられるかな」
「隣のクラスでは、10みつけたよ。このクラスはいくつ見つけられるかな」
「2分で何問解けるかな。昨日よりたくさんできるといいね」

というように、目標となるような指標を合わせて提示するといったやりかたです。指標は何も数値に限りません。「みんながあっと言う」「みんながなるほどと言う」といったものもよいでしょう。もちろん興味をもたせる工夫ができればそれに越したことはありません。これに限らず、子どもが意欲的に取り組むためには、どんな要素が必要かを意識することが大切です。

もう一つは発問からどう具体的な活動につなげるかです。
「考えて」といった抽象的な言葉は子どもにとっては何をすればよいかわかりにくいものです。

「先生はこんなことに気づいたよ」
「たとえば、この線を引いたところからどんな気持がわかるかな。○○さんどう」

というように、一つ例を提示したり、個人活動の前に、全体で一度やってみることで、具体的に何をすればよいか明確にします。
また、「考える」「気づく」といった発問は、比較となる物を与えることで視点がはっきりして活動しやすくなります。

「この絵を見て気づいたこと」
→「この絵を見て、今の暮らしと違うところを見つけて」

というように、比較の対象を意識させることにより、コントラストが明確になり、見通しがもてます。
発問に対して期待する子どもの活動を具体的にイメージすると、そのため必要な知識、視点などの要素が明確になってきます。どのような知識を事前に与える、確認する。視点を明確にするために比較の対象として何を意識させる、提示するといったポイントが明確になります。その上でもう一度発問を見直すとより具体的で子どもたちが活動しやすいものにすることができます。

基本となる発問を考えてそれで終わるのではなく、子どもが意欲的に活動するためにはどんな要素が必要か、発問を具体的な活動につなげるために何を付け加えるか、どう変えるかといったことを考えてほしいと思います。こうして発問を練っていくことが、子どもたちの意欲的な活動につながっていくはずです。

授業の感想に課題や意識が見える

昨日は、アドバイザーとしてお手伝いしている中学校の現職教育に参加してきました。7月に撮影した国語の授業ビデオを見て学び合うというものでした。

先生方はとても熱心に授業を見た感想をまわりと話し合っていました。だれしもが授業を大切に思っている証拠です。
話し合ったことを全体で聞き合う場面で気づくことは、授業を見る視点が、自分が課題としていること、意識していることと関連しているということです。
言葉のつなぎを課題にしている先生は、言葉づかいが丁寧であることや、考えを発表させた後に同じ意見の生徒に確認をしていることに気づきます。
子どもの考えで授業を進めたいと考えている先生は、子どもの動きが止まっているときの支援についてどうであったかと意見を言ってくれます。
授業者が子どもの発言に対して、意見を聞かせてくれて「ありがとう」と言っているのに気づく先生は、自分も意識して「ありがとう」を言っている先生です。
授業について感想や気づいたことをみんなで共有するということは、互いの課題や大切にしていることを共有することでもあります。授業者からだけでなく、互いに多くのことを学び合えるのです。

この学校では、現職教育といった特別のときだけでなく、日ごろから授業について教師同士が語り合うことが増えてきています。それに伴って課題意識も明確になっているように思います。学校がどのように変わっていくか、これからも楽しみです。

算数・数学の授業力アップ研修会に参加

昨日は、算数・数学の授業力アップの研修会にオブザーバーとして参加しました。毎年この時期に先生方の自主運営でおこなわれています。今年でもう9年目です。毎年何かしらバージョンアップされているので、とても楽しみにしている研修会です。以前は授業技術やスキルにスポットを当てての実技研修が中心でしたが、ここ数年は新任や若い先生の参加が多くなってきたことに合わせて、個々の授業技術が授業の中でどう活かせるのか、また教材研究は具体的にどうやるのかといった内容も付加されるようになってきました。

今年は一つの教材を1日かけていろいろな視点で考えることができるような構成でした。最初の実習では、子どもの言葉を活かす授業のイメージが伝わるような教師と子どものやり取りで練習をするようになっていました。このシナリオが実にコンパクトでしかもポイントとなる要素が明確でわかりやすいものでした。スタッフが真剣に取り組んで、工夫していることがよくわかります。

次の実習は、一見単純で簡単に見える授業技術を実際に体験してみることで、その難しさとポイント、その効果を実感できるようにつくられていました。限られた時間で研修の効果を高めるために、思い切って入門レベルに絞っていることが印象的でした。よい判断だと思いました。

そして、最後の研修は、この日学んだ技術を取り入れて授業を組み立てるとどうなるかを、参加者を子ども役にして模擬授業形式で見せるものでした。その後、この授業を具体例として、教材研究が教科書を読みこむことが中心であることを授業者が解説してくれました。
この模擬授業が実に素晴らしいものでした。授業者の発言、行動が意図的につくられていて、復習問題の数値の工夫や定着問題の提示の仕方など見所がたくさんありました。しかし、あまりにも自然に授業が進んでいくので授業者の意図を参加者がすべて読み取れていないようにも感じました。解説は教材研究にスポットを当てていますし、自分の口からは話しにくいこともあるでしょう。この授業のよさにあまり触れられていないのがとてももったいなく思いました。このことを同席しているスタッフの先生に話したところ、ありがたいことに私が授業解説をする時間をとるように進言してくださいました。おかげで、特別に時間をいただいて、この授業の素晴らしい点を伝えることができました。ありがとうございました。

今回は時期の問題もあり、例年と比べてスタッフの数が少なかったのですが、一人ひとりのレベルが高く、参加者の満足度が高い研修を実現できていたと思います。
また、参加者は自腹を切って参加するような方たちです。学ぶ意欲も旺盛で積極的で、実に素直に講師の話を受け止めていました。きっと多くのことを学ばれたことと思います。ただ残念なのは、この研修会はリピーターが少ないことです。多くの方が経験するという意味ではよいことなのですが、一度研修を受けたからといってすぐに身につくものでもありません。研修の内容を授業に活かそうとすれば必ずうまくいかないことや疑問点にぶつかります。そういった問題意識を持ってぜひ来年も参加していただけたらと思います。

スタッフの皆さんの努力に敬意を表するとともに、大きな刺激とたくさんのことを学ぶ機会をいただいたことに感謝します。ありがとうございました。10年目となる来年の研修会はさらにバージョンアップしていることと楽しみにしています。

大学生に講演

昨日は大学で学生対象の講演をおこないました。聴講者の大半は小学校教員志望の学生ということです。主催者からのリクエストは、「元気が出る話」です。教員志望者の心得のようなことを厳しく話せば、「そんなの無理!」とやる気をなくしてしまうかもしれません。できるだけ現場のことを話しながら、何が教師にとって大切なのか理解してもらい、その上で頑張ろうという気持ちになってもらいたい。大学生相手の経験が少ないこともあり、通常の講演より準備に時間を掛けることになりました。

以前見た大学の授業の様子が頭に強く残っていて、学生は反応してくれないのではないかと不安に思っていました。反応が悪いときの対策をいろいろと考えていたのですが、想像以上によく反応してくれました。
問いかけに対しては素直に考え、まわりともちゃんと関わり、聞き合ってくれます。納得したときはよくうなずいてくれます。後から試験があるわけでもないのに、メモもしっかりととってくれました。特に、実際に教壇に立った時に役立ちそうなスキルなどは、ほとんどの学生がメモをとっていました。先生になりたいと思っていることがよく伝わります。

・教師が目指す姿と子どもが願う教師の姿のズレ
・教師という職業の難しさと素晴らしさ
・子どもを見るということ
・教師がわかっていることと子どもがわかることの違い
・教師に求められる資質と能力

このようなことを話しましたが、反応のよさについつい余計な話もしてしまい、質問を受ける時間がなくなってしまいました。申し訳ないことをしたとちょっと落ち込んだのですが、退室するときのたくさんの笑顔に救われました。ありがとうございました。皆さん、元気が出たでしょうか? 私はたくさんの元気を皆さんからいただきました。どこかの現場でまた会えることを楽しみにしています。また、このような機会を与えてくれた先生方に深く感謝します。

若手教師との勉強会

昨日は小学校で若手教師5人と勉強会をおこないました。3年生の算数「何倍でしょう」を題材にして全員で教材研究をおこないました。3倍の2倍は6倍になる。結合法則につながる教材です。

最初に、この教材のねらいは何かについて話し合いました。小学校6年間のかけ算の学習の流れをつかんでいれば位置づけやねらいがよくわかるのですが、経験が少ないためなかなかシャープになりません。そこで、教科書をしっかり読みこむことをしました。
なぜ最初の例は連続量なのに、次の問題は離散量なのか?
なぜ左のページでは解き方のヒントとなる図が書いていないのに、右のページでは書いてあるのか?
左のページの例題と右のページの例題では何が変わっているのか?
・・・
たくさんの疑問や、気づきがありました。教科書を読みこむことで、この教材のねらいが次第にはっきりとしてきました。

続いてどんな流れ・説明であれば子どもがわかるのか、教師の視点から考えてみました。教師にとっては当り前すぎて、意外とポイントがわかりません。ここでも、教科書が教えてくれます。
教科書の左側も例題は3倍、2倍という表現ですが、右側のページでは4はい分、2はい分となっていますが、図では倍となっています。何はい分も倍であることは子どもにとってそんなに簡単ではない。最初に倍の意味の確認がいる。何はい分をかけ算の定義の「いくつ分」にもどって、倍につなげる。いろいろなことに気づきました。

ここで先生方から、教師が主導して説明するとどうしても一部の子どもしかわからない。多くの子は手順を覚えるだけで、自分で納得して説明できるようにならない。子ども同士で説明し合うような活動をすればいいと思うが、子どもたちが話せない。こんな言葉が出てきました。とても素晴らしい悩みです。ならば、どうすれば子どもたちが話してくれるようになるのか。教材研究からは外れますが、ひとしきりその話題で話しました。

子どもたちが話せるようになるには、毎日の授業の積み重ねです。すぐにできるようになはなりません。子どもたちが自分で理解できるような課題、活動が必要です。どんな活動をさせるか5人で考えてもらいました。
おもしろいアイデアがでてきました。
「赤の車は2m走る。青の車は赤の3倍、黄の車は青の2倍。黄の走った長さは?」
この問題で、ノートに赤、青、黄の走った長さを順番に図で書かせることで長さを求めさせる。こうすることで問題を把握しやすくなるし、図に長さを書きこむことで答えもでる。でも、そうすると黄は赤の「何倍」と問いかけたとき6倍がダイレクトに出てくる。3×2倍がでてこない。どうしよう。先生方にとってとてもよい学び合いです。赤と黄だけを図に書かせる。どうやって黄の図を書いたと問いかける。そうすれば、3×2に気づいてくれる。こういう修正になりました。これが正解ということでありません。いろいろと考えることで先生方の懐が広がります。

半日、一つの教材にどっぷりとつかりました。教科書としっかり向き合うことで、読みこむポイントが見えてきます。普段は忙しくて一つの教材にこんな時間を割くことはできませんが、ポイントを押さえて教科書を読み込むことで、効率的に教材研究ができるはずです。このことに気づいてくれたと思います。
また、5人はとても楽しそうに授業について話し合っていました。子どもの固有名詞も出てきます。子どもの姿を浮かべながら教材研究をしていました。これをきっかけに互いに学び合う雰囲気が広がることを期待します。
若い先生と一緒に教材研究する機会は私にとってもそれほど頻繁ではありません。私にとっても多くの学びと刺激のあった時間でした。ありがとうございました。

研修はフォローが大切

メーリングリストなどで、参加した研修の報告をいただく機会が増えてきました。よくまとめられた記録は、よく理解でき大変参考になります。また、私の講演記録も送っていただくことがあるのですが、これを読むのは結構つらいものがあります。第三者がこれを読んでもよくわからないだろうなと思うことが多いからです。決して書き手が悪いのではありません。私の話が横道にそれたり、論理の展開に隙間があったりしているからです。ライブ感覚を大切にして、その場のノリで話をつくったり変えていることも一貫性がないことの原因かもしれません。
そんな私の講演や研修ですが、先日教えていただいた研修とその後はとても考えさせられるものでした。(三楽の仕事日記「2011年07月15日(金) 派遣指導主事会研修会 」参照)

授業のビデオを見て、参加者に感じたことを意見交換していただき、考えてもらう形をとっています。受け身でなく積極的に参加し、考えてもらうよい方法です。参加者の発言をつないで考えを深めていきます。授業と同じです。私もこういった方法をとることがよくあるのですが、どうしても最後には解説やコメントを多く入れてしまいます。先生方に授業で気をつけるようにお願いしているパターンを自らやってしまっているのです。言い訳になりますが、あまり話をしないと、お金をいただいているのに働いていないと思われてしまうかもしれないと心配になってしまうこともあるのです。
それはさておき、この研修では、講師の方は聴き役に徹していたそうです。その場で参加者が自ら考えたこと、気づいたことを大切にし、自ら学ぶことを期待していたのだと思います。参加者の力を信じているからでしょう。これは授業でも同じです。言うことは簡単ですが、なかなかできることではありません。授業なら何回もチャンスがありますが、研修では1回だけということがほとんどです。よけいにハードルが高いのです。

素晴らしいのは、参加者がより深く学べるために、主催者側がちゃんとフォローしていることです。講師の話に関連して資料を研修後に提供しているのです。(三楽の仕事日記「2011年07月17日(日) 石井順治さんの本」参照)
そして、さらに素晴らしいと思ったのは、10日ほどして、講師の方が参加者あてにコメントを書いて送られたと聞いたことです。適当な時間をおいてからコメントすることで、参加者は落ち着いて振り返ることができますし、その場で聞くより冷静に受け止めることができるはずです。なるほど、こういう方法もあるのですね。

私もたくさんの機会をいただいていますが、まだまだ工夫が足りないと考えさせられました。アドバイザーとして関わっている学校で、先生方が急速に成長していると感じる場合は間違いなく、管理職や研修担当の先生がフォローをしっかりしているところです。逆に、外部の者ができることは限られているのです。研修で何かが変わるのではなく、きっかけにして内部を変える動きが必要なのです。
研修をより効果的にするために、講師としてのあり方、フォローするための仕掛けをよりしっかり考えなければいけないとあらため気づかせていただきました。

研修の打ち合わせ

昨日は、来週おこなう研修の打合せをしてきました。市が主催する研修会で、200名ほどの参加者です。舞台で模擬授業をおこなっていただき、それを私が適宜解説するかたちでおこなわれます。その授業者との打合せです。

模擬授業は中学校1年生の国語の単元「古典との出会い」でおこないます。授業者は言語活動を「新しい言葉を獲得する」「自分の言葉で語り合う」ことを両輪と考えて、この授業を構想されました。ここが明確なので、視点をはっきりさせて検討することができました。

現代語訳があると子どもたちは、それを頼りに原文の言葉の意味を考えようとしません。そこで、原文だけのワークシートを準備し、言葉をコンテキストに理解させたいというのが、「新しい言葉を獲得する」という視点での授業者の思いでした。私からは、この流れを活かしながら、子どもたちがわからない語句にもレベルがある。考えることで類推できそうなものとそうでないものを仕分けする必要があること。子どもたちがこの語句の意味を知りたいと思うための工夫や、塾等で学習して語句の意味を知っている子だけが活躍するようにならないための工夫が必要であることをアドバイスさせていただきました。
また、音読を大切にしたいということだったので、古文の文節を意識して読めるようにするために、ワークシートから読点を除き、自分の手で書きこむ活動を加えることにしました。

同じ市の先生方の前で模擬授業をおこない、その場でコメントされるというのは想像以上にプレッシャーのかかることです。それを快く受け、自分が学ぶチャンスととらえて真剣に取り組んでいただけていることには、本当に頭が下がります。授業について深く考える濃密な時間を過ごさせていただきました。私も中学校の古典の授業について新たな視点を得ることができました。

当日は、国語の視点だけでなく、多くの教科で役に立つ気づきを参加者にしてもらえるよう、工夫したいと思います。本番までにどのように授業がブラッシュアップされるかとても楽しみに思うと同時に、その授業をうまく解説しなければいけないという、心地よいプレッシャーを感じています。

教科書を比較する

夏休みは普段できない教材研究をするチャンスと書きましたが、そのもう一つが教科書の比較です。(教科書を離れた教材研究参照)
教科書を読みこむことを縦と横に広げるのです。(教科書を読みこむ参照)
具体的には、今自分が教えている内容と対応するものが、前の学年ではどのように扱われているか、学年が上がればどのように深まるのかと縦に広げて読み込むこと。そして、他の教科書ではどのような内容となっているのかと横に広げて読み込むことです。

縦に比較することで、今までで子どもが学んだことが整理されるので、学習の土台となることがはっきりします。今後どのように展開されるのかを知ることで、つながりを意識して学習内容を整理しまとめることができます。この学年で意識すべきことが明確になるのです。

横に比較することで、学習内容のポイントが明確になり、展開の幅が広がります。教科書が違うと、その内容は思ったより異なっているものです。逆に変わらないところは、間違いなくしっかり押さえなければならないところです。また、その違いを見ることで、異なった展開の方法を知ることができます。他の教科書のまねをするという発想ではなく、そのよいところを取り入れたり、知っておくことで、子どもたちの多様な反応に対応する幅が広がります。
また、今の時期は、新学習指導要領対応のものと以前のものを比較するのもよいでしょう。何が変わったか変わらないかが指導要領を読む以上にはっきりして勉強になります。

小学校の先生であれば、苦手な教科に絞ってもいいかもしれません、また教科書を何種類も集めるのが難しそうであれば、特徴的と言われる2、3社に絞ってもよいと思います。机の上に教科書を並べて過ごす時間を取ってみませんか。きっとたくさんの発見や気づきがあると思います。

学校マネジメントを考える

学校マネジメントという言葉がよく聞かれるようになりました。マネジメントをどうとらえるかは、人によって差があると感じます。学校にはマネジメントはなじまないという方もいれば、これからは積極的にマネジメントを取り入れなければならないという方もたくさんいます。では、今までは学校マネジメントという考えはなかったのでしょうか。

マネジメントとは、目的を達成するために人・物・金・情報をいかに活用するかということですが、これはどの組織でも当然考えなければいけないことです。うまく機能しているかどうかは別にして、学校でもこのことは考えてきたはずです。だれをどの学級の担任にするか、行事の担当をだれにするかなどは、マネジメントという言葉で意識されていなくても、立派なマネジメントの一部なのです。

では、なぜ今までマネジメントが大切なこととして意識されてこなかったのでしょうか。その理由は、大きく2つあるように思います。

一つは学校が達成すべき目的(たとえば子どもたちの心身の健やかな成長?)に対してその達成のための目標がなかなか具体的にできないことです。教育の特性として、目標が抽象的になりやすいのです。結果、目標が達成できたかどうかのチェックも曖昧になってしまいます。そのため、そもそも具体的な目標をきちんと設定しなかったり、設定しても行動計画が立てられない。チェックできないので行動計画が改善されない、責任が明確にならないといった状態になってしまいます。どこに向かっているのか、どこにいるのかわからないようでは、マネジメントどころではありません。

もう一つは、学校では人・物・金・情報に関する自由度が低いことです。人に関しては、一般の教員は学級担任、教科担任、部活動顧問を振り分けるとほとんど余裕がありません。定員を勝手に増やすこともできませんから、どこかに人を厚くしてパワーアップをしたくてもなかなか難しく、教員の負担を増やさずに何かをやることはとても困難なのです。
物とお金に関しては学校が独自に予算を請求したり、自由に裁量して使える範囲は全体の予算の中で非常に限られています。情報に関しても、組織的に情報を集めたり、共有化するということがされにくい体制があります。
マネジメントをおこなうにも道具や材料がとても少ないのです。打てる手が限られているため、マネジメントをしようという意識が薄いのです。

では、なぜ今学校マネジメントという言葉が言われるようになってきたのでしょうか。それは学校を取り巻く状況が少しずつですが変わってきているからです。

一つは学校と地域の連携が進み始めたことです。その結果、地域の方が学校経営に積極的に協力するようになってきました。当然、第三者にもわかりやすい、客観的な目標の設定と評価が必要になってきます。学校評価の導入です。目標とその達成を明確にすることが求められるようになりました。これはマネジメントそのものです。また、人の問題に関しても、地域の方がボランティアとして学校の活動に協力してくれるようになってきました。学校として活用できるリソースが増えてきています。地域の方と一緒になって新しい教育活動に取り組んでいる学校が増えています。

もう一つはICTの活用です。学校評価にしてもそうですが、新しいことを始めればそのための労力はどうしても必要です。しかしICTをうまく活用することで負担を減らすことができます。最近多くの学校で導入されている校務支援システムは、教師の事務作業の効率化をはかることで、多少なりとも余裕を生み出してくれます。うまく活用することで教師間の情報の収集や共有化も促進できます。また、ホームページの活用は学校と地域の情報共有に大きな効果が期待できます。

大きく状況が変わったとはいえないかもしれません。しかし、こういった変化をうまくとらえ、マネジメントを工夫している学校は大きな成果をあげています。また、学校独自で使える予算をつけている市町村も増えてきました。環境は間違いなくよい方向に向かってきています。従来の思い込みを捨てて、あらためてマネジメントを考え直すことで、学校がよりよい方向に向かっていくことと思います。
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