自力で授業技術を磨く

昨日は中学校の音楽の授業アドバイスをおこないました。講師経験が3年ある初任者です。言語活動を意識した合唱の授業でした。

笑顔の素敵な明るいキャラクターで、子どもとの人間関係もとても良好です。終始高めのテンションでしたが、子どもたちはよく集中していました。子どもたちの発言をよく受容し、同じ考えの子どもに挙手させる、話し合いの後の問いかけは「どんな話をした」と子どもが発言しやすいように気を使う。子どものあいまいな発言を聞き返すことで明確にしていくこともできます。また、教師の問いとずれた発言もしっかり受け止めた上で、上手に本来の発問に戻します。子どものつぶやきもうまく拾います。若手とは思えないほど、いろいろな授業技術を持っています。
聞けば、ふだんからよく子どもをほめ、子どもの振り返りに対しても、必ずポジティブなコメントを全員に書くなど子どもとの関係づくりを意識しています。授業がよい雰囲気なのもうなずけます。

しかし、授業の流れとこの授業技術の間に何か違和感があるのです。これだけ子どもを活かそうとしているのに、最初の数分間は先生の説明ばかりで、子どもの発言はありません。問いかけをしてもほとんど間をとらずに次に進んでいきます。
録音した自分たちの合唱を聞いて自己評価する場面では、子どもの発言をきちんと評価しほめているのですが、復習の場面では評価が薄いと感じることもあります。これだけ人間関係ができていれば、言葉ではなく表情やうなずくだけでもよいのですが、どうもそうではなさそうです。
子どもに「相談して」と言って子どもが動きだすと、すぐにピアノでヒントをだす。ヒントが終わるとすぐに指名して答えさせる。時間がなかったのかもしれませんが、かなり無理があります。
また、子どもからいろいろ意見を引き出すのですが、具体的にどう表現して歌うかについては授業者が説明します。子どもの発言への切り返しも、やや誘導的です。子どもたちはこの先生のことが好きなので、先生の意図するところを汲み取って答えようとしています。
最後に子どもたちが話し合ったことを意識して歌ったのですが、明らかによくなっていました。しかし、それは子どもたちが話し合ったことが生きたのか、授業者が最初のときと違って、指揮をしながらたくさん指示をしたからなのか、私にはよくわかりませんでした。話し合いをしなくてもこれだけ教師のかかわり方に差があれば大きく変わると思えるからです。

いろいろな疑問を持ったまま、授業者へのアドバイスが始まりました。
最初に、彼女のキャラについて素ですかと聞きました。答は「作っています」でした。大したものです。本人いわくもっと暗いそうですが、授業中は意図的に子どもたちに好かれるようなキャラクターを演じていたのです。であれば、間をとるなり、テンションを意図的に下げることは意識してできるはずです。要は何が大切かを意識すればいいのです。
次に一番気になった疑問を聞きました。受容の仕方、切り返し、つなぎ方などの授業技術をどうやって身につけたかということです。これもびっくりしました。彼女は講師時代からこの学校にいるのですが、私が先生方に以前全体で話したこととまわりの教師からの情報だけで身につけていったのです。この学校では、個別のアドバイスが中心で、全体への話はこの2年ほどは全くしていません。また、彼女にアドバイスをするのはこれが初めてです。これで多くの疑問が解けました。授業技術を一人で磨くことで、場面場面で使う技術は身についているのですが、授業構想や流れについては学びきれていなかったのです。全体構想の中でこの場面は何を大切にする。だから、こういう活動をする。その活動をうまく進めるためにこの技術を使う。こうではなく、場面ごとに使える技術を使っていたというわけです。だからといって彼女を責めるわけではありません。それどころ、よく自力でここまでの力をつけたと感心しました。ただ、バランスが悪かっただけなのです。今回を機に、きっと授業全体の流れやポイントと授業技術の関係を意識してくれることと思います。

管理職の先生から、私が個別にアドバイスしていることも、情報として先生方に伝わるよにしていることをうかがいました。先生同士でも学び合っているようです。アドバイスを学校としてどう活かすかをしっかりと考えていただけていることをとてもうれしく思うと同時に、その責任の重さをあらためて感じました。また、今回の授業者のように間接的な情報でもしっかりと力をつけてくれる方がいることはとても新鮮な驚きでした。学ぶ気持ちがあればどのような環境でも人は進歩するということを教えていただけました。今回もよい勉強をさせていただきました。

校長会の評議員会で講演

昨日は校長会の評議員会で「学校を変えるのは校長!?」という題で講演をさせていただきました。

顔見知りの校長がたくさんいる中での講演でしたので、やりにくいと感じていたのですが、その方たちがとてもよく反応してくださったので、気持ちよく進めさせていただきました。

伝えたかったのは、

「学校を変えるのは校長の仕事であること」
で、

「変えるためには、校長が具体的なビジョンを示すこと」
「その目指す姿を実現するための方策を具体化すること」

が求められ、そのためには、

「校長が学校の実態をよく知ること」
「それをもとに、課題と目指す姿を考えること」
「そのゴールに向かうアプローチを考えること」

が必要であり、

「それを教職員に共有化し、動かすかための仕組みをつくること」
「動いた結果を評価し、教職員のやる気を持続させること」

が実現の条件であり、校長には、

「アドバイス力、コメント力を磨くこと」

が求められるということです。

新しいこと始めればどうしても仕事が増え教職員の多忙感につながります。おまけとして、他の会で話した(多忙感の解消について講演参照)多忙感の解消について駈け足でお話しました。

ついいろいろなエピソードを話しすぎたため時間を延長してしまい、ご迷惑をかけてしまいました。話も散漫になって伝えたいことがちゃんと伝わったか自信がもてません。反省です。にもかかわらず、最後まで熱心に話を聞いていただきとてもうれしく思いました。
何人かの校長と久しぶりお会いすることができました。少ししかお話はできませんでしたが、昔と変わらぬやる気いっぱいの姿に私も元気をいただきました。とても楽しい時間を過ごすことができました。このような機会をいただけたことに感謝です。

前へ向かう気持ち

昨日は中学校の数学の授業研究に参加しました。

先週末におこなった先行授業へのアドバイス(授業を大切にしているというメッセージ参照)でどのように変わったか楽しみにしていました。
しかし、どうやらたくさんのアドバイスをしすぎたようです。ポイントを伝えたつもりでしたが、消化しきれていなかったようです。大きく変わることのない授業でした。あらためてアドバイスの難しさを知らされました。先行授業を見た先輩方もいろいろアドバイスされたのですが、同じ感想を持たれたようです。

授業検討会での授業者の反省は、子どもから言葉を引き出そうとしたが、うまくできなくて自分で説明してしまったというものでした。子どもの言葉を引き出そうと意識していたことはうれしく思いました。検討会で先生方からでた意見は、子どもたちが興味を持った教材であることを評価し、その上で子どもたちの数学的な気づきや思考がどうであったかという点を指摘するものでした。授業者の工夫を認めた上での指摘で、受け入れやすいものでした。先生同士の関係がよいことがわかります。
とても素晴らしいと思ったのが、感想という言葉で語られたベテランの言葉でした。指導案の添削をはじめとし、先行授業にも参加し、たくさんのアドバイスをされた先生です。アドバイスを活かすことができなかった授業者に厳しい言葉がかけられるのかと思いました。ところが、若いころ授業研究で厳しく指導され、その悔しさをばねにして成長した自分の体験をもとに、この授業をきっかけにして目標を定めて前へ進んでほしいという励ましでした。授業後、アドバイスが伝わらなかったのは、自分たちが反省すべきことだと言っておられたことが思い出されます。次にすべきアドバイスは何かを考えての発言だったのでしょう。若手を育てることを自分の仕事としてとらえられていることがよくわかります。彼の発言を受けて、もう一人のベテランも次へのステップへのアドバイスと励ましの言葉をかけました。阿吽の呼吸だと思います。こういうベテランがいることがこの学校の強みだとよくわかります。

教科指導員の方の助言も素晴らしいものでした。この授業に関して指摘したいことは山ほどあるはずです。しかし、そんなことより、この授業、この教材をきっかけに授業のポイントはどこにあるか、また、どのような進め方が大切であるかを自分の言葉で語られました。数学におけるグループ活動を中学校で実践されているようです。自身の体験に裏付けされた言葉は受け入れやすいものでした。数学を通じて、どの教科にもつながることを話していただけました。

検討会後、授業者が反省した、子どもの言葉引き出せなかった場面に絞って少しアドバイスをしました。
子どもが話し合っていたのになぜ答えようとしてくれなかったのかという私の問いかけに、正しいことを言わないといけないと思ったからと答えてくれました。自分でもわかっているのです。しかし、わかってはいても、すぐに変わるものではありません。子どもが何も言っても許される、正解でなくても認められる。日ごろからそういう授業にしなければなりません。このことを意識することが第1歩です。
今回の場面で有効なスキルとして、「どんなことを話したか聞かせてくれる」という問いかけを教えました。こんな些細なスキルでも、子どもが発言してくれるようになります。あとは、その発言をどうポジティブに評価するかです。まだまだ、時間がかかるとは思いますが、少しずつ前に進んでくれることを期待します。

最後に彼が「また、授業を見てください」と笑顔で前向きに言ってくれました。私自身この言葉に救われました。彼に対してうまくアドバイスをできなかったことにちょっと沈んでいたのですが、チャンスをもらった気持になりました。うまくいくときばかりではありません。失敗にこだわるのではなく、前へ向かう気持ちが大切です。このことを実感した1日でした。

授業を大切にしているというメッセージ

先週末は中学校で3つの授業アドバイスをおこないました。

そのうちの1つは本日おこなわれる初任者の授業研究の先行授業です。以前からアドバイスをしている数学の確率の授業です。
指導案をみると流れが明確です。前時の復習、課題の把握、試行、探求・・・。流れはとても自然でした。ここまでにするために、教科の先輩や主任の方の指導がたくさんあったことと思います。まわりが支えることができる学校であることがよくわかります。先行授業にもかかわらず、校長をはじめ先輩が何人も見に来てくれました。
興味を持ちやすい課題で、実際に道具を使って試行をするので、子どもたちは興味関心を持ってくれます。ポイントはいかに子どもたちに数学的な思考をさせるかです。残念ながら、各場面で何が数学的に大切なのかを授業者はしっかりと意識できていませんでした。結局、解き方を教師が教えるだけで、なぜそうなるかを子どもたちが考える場面はありませんでした。
この授業での数学的な本質である言葉、復習の場面と本時の課題でつなぐべき言葉である「同様に確からしい」をどう子どもに伝え、意識させるかがポイントであることを具体的に伝えました。この言葉をもとに、子どもたちの考えを深めるためには、子どもの言葉を問い返す、つなぐという、1問1答でないやりとりが必要です。これは一朝一夕でできるものではありません。本番の授業でうまくできると私も期待している訳ではありません。今回の授業がそのことを意識するきっかけになってくれればいいのです。たどたどしくてもいいので、子どもに問い返すこと、つなぐことにチャレンジしてくれることを願っています。

美術の講師の授業は、授業者の美術に対する思いが伝わる授業でした。子どもたちに互いのよいところを学び合わせようとする場面と、ゴッホの2枚の自画像から技術と表現、個性について考える場面を見ました。
授業者にこの授業を振り返ってもらったところ、非常によいことを言ってくれました。
ゴッホの写実的な自画像と、誰もが知っている個性的な自画像の感想を言わせた後、どちらが若い時の作品かという発問の場面でのことです。

若いころの自画像を「うまく描こうとしている」「写実的」といいった言葉を使って解説したが、子どもたちから出てきた言葉ではなかった。子どもたちから出てきた言葉で説明をするべきだった。うまい言葉が出てこなければ、もっと引きだすようにするべきだった。

子どもの言葉を活かそうと意識していることがよくわかります。この姿勢をとてもうれしく思いました。うまくできなかったかもしれませんが、このことを意識できていれば必ずできるようになります。きっとよい教師に育っていくことでしょう。

最後は英語の講師の授業でした。前回と比べて、コーラスリーディングで子どもたち全員の口が開いていたことに気づきました。声も確かに大きくなっています。子どもたちの声が出るまで繰り返す。大きな声で発音している子をほめる。アドバイスを素直に受け入れてくれたようです。また、子どもたちへの指示も、きちんと通るまで待って、全員ができてから次に進むようにしています。これも立派な進歩です。
わずかな進歩と思うかもしれませんが、この1歩が大切なのです。この進歩をとてもうれしく思っていることを伝えました。授業についていろいろと悩んでいましたが、若い教師であれば当然のことです。その中で確かな1歩踏み出せたことが、大きな進歩につながるのです。次はどのような1歩踏み出してくれるのか期待しています。

初任者を先輩が育てようとしている。たとえ講師でも、私のようなものをつけて育てようとする。この姿勢から、授業を大切にしているという強いメッセージを感じます。教師集団がこのメッセージをしっかりと受けとめてくれることが、この学校のさらなる進歩につながっていくと思います。この学校の変化を見ることが私の学びにもつながっています。この学校の今後がとても楽しみです。

東京出張

昨日は東京で打合せを2つおこなってきました。

一つはIT系の出版社からのヒアリングでした。学校・教育関係者向けのICT本の企画を立てるにあたって、学校現場のICTの活用の状況を知りたいということでした。
お話していて、外部からは学校の中は見えにくいということをあらためて感じました。学校の実情を少しはわかっていただけたのならうれしいです。学校や先生にとって役に立つ本が生まれることを期待します。

もう一つは、「愛される学校づくりフォーラム2012 in東京」の現場スタッフとの運営・進行の打合せです。多くの方にスタッフとしてお手伝いいただいています。用意された資料からも、細かいところまで気を使っていただいていることがよくわかります。スタッフの方の尽力に報いるためにもよいフォーラムにしたいと思いました。

帰りの新幹線では研究会の会長のT先生と名古屋までご一緒しました。精力的に活動されている先生の話に私ももっと頑張れねばとたくさんの元気をいただきました。

若手の成長を感じる

昨日は、中学校の社会科の授業アドバイスをおこないました。昨年も1度アドバイスしている先生です。地理の気候の最初の時間でした。

担任をしている学級ではないのですが、子どもとの人間関係が実によいことに気づきます。理由はすぐにわかりました。子どもの発言を否定しない、ポジティブに評価することを徹底しているのです。指名して発言させたあとも、同じ考えの人がいるか確認をして子どもをつなげるようにしています。つぶやきも拾っています。以前と比べて先生がしゃべる時間も格段に少なくなっています。子どもたちの集中力は最後まで途切れませんでした。基本となる部分がしっかりとできてきたので、課題も明確になります。

子どもの挙手の仕方が気になりました。授業者は子どもの発言を否定しないのに、子どもたちは自信なさそうに挙げるのです。ちゃんとワークシートに答を書いているのに手を挙げない子どももいます。
こんな場面がありました。赤道地方が暖かい理由を聞いたところ、「太陽に近いから」と指名された子どもが元気よく答えてくれました。授業者は、否定せずにどういうことか聞いてあげます。手で太陽光線の傾きを示したりすることから、理由は正しく理解しているがうまく言葉にして説明できないようです。結局、授業者は肯定も否定もせずにあいまいなまま次時への課題としました。着席した子どもは「違ったな」とつぶやき、ちょっと元気をなくしました。棚上げになったことでそう感じたのでしょう。
このことと子どもの自信なさそうな挙手とは関係がありそうです。子どもたちは正解を言わなければならない、正解を求められていると思っているのです。授業者はどんな発言も受容しようとしていますが、正解を言わなければいけないと子どもは感じているのです。
子どものノートに○をつけて自信を持たせる。発言をつなぐことで、間違えていた子どもが自分で気づいて最後には正解を言える。間違えても最後はほめられる経験を積むことで、自信がなくても発言できるようにする。このようなことを意識するとよいでしょう。

また、以前に学習したことの復習で子どもたちの手があまり挙がらない場面がありました。このとき、手の挙がらない子どもはじっとしていました。これも気になるところです。子どもたちは復習を試験のように感じて、教科書やノートを見てはいけないと思っているのかもしれません。挙手しなければ指名されないので、指名されて間違えるよりはじっとしている方がいいと思っているのかもしれません。
教科書やノート見るように促す。ときには挙手に頼らず指名する。このようにすることで子どもたちの姿勢も変わっていくはずです。

子どもたちの活動を増やす事を意識して授業を組み立てていますが、どの活動も同じように扱っていました。この授業でいえば、日本地図を見て愛知県より暖かい県はどこか考える。世界地図を見て日本より暖かい国はどこか考える。2つの活動がありました。最初の活動で子どもたちから南が暖かいという言葉を引き出す、2つ目で、南ではなく緯度に注目することを気づかせるという流れです。この2つに同じくらいの時間を割いていました。メインは明らかに2つ目の活動です。南が暖かいという言葉を引き出すのは全体で素早くおこない、世界地図を中心に活動をさせることで、もっと深めることができたはずです。日本より暖かい国としてオーストラリアと答えた子どももいましたが、この時間の中で気温を調べたりして確認する時間を取ることができませんでした。

このようなことを中心にアドバイスしましたが、とても素直に受け止めてくれました。この姿勢が成長につながっています。忘れ物の多い学級だそうですが、地図帳を忘れた子どもはほとんどいませんでした。授業者から、私から受けた忘れ物を減らすアドバイス、「いつも使っていれば忘れない。たまにしか使わないから忘れる」を意識して、地図帳を使った個別の活動をたくさんさせていると聞きました。私が忘れていたようなアドバイスをちゃんと実行していてくれたのです。とてもうれしく思いました。だからこそ、次のステップが見えてくるのです。今後ますます力をつけてくれることと確信しました。

校長、教頭と少しお話をする時間がありました。この学校は、以前は生徒指導上の問題をたくさん抱えていましたが、今は本当に落ち着いた学校になっています。学力もずいぶん伸びてきたそうです。生徒指導の基本を授業において、子どもたちを認める、活かす授業で子どもたちを育てようという方針で立て直されました。うまくいった理由の一つに、管理職や主任の方が目指す子どもの姿、授業のイメージをよく共有されていたことがあげられると思います。きちんと共有化されているからこそ、校長から指示されて動くのではなく、自分のなすべきことをそれぞれが考えて動いていたのです。管理職や主任が、言葉では同じ事を言っていても実はぶれている学校もよくあります。お二人と話していて、言葉は違っていても同じところを目指し、思いを共有していることがよくわかります。この学校がよい方向に向かっている秘密はここにあると思いました。

この学校とかかわらせていただくことで、私も学校経営のあり方、教師が育つ要素など本当にたくさんのことを学んでいます。この日も充実した1日でした。

愛される学校づくり研究会に参加

先週末は愛される学校づくり研究会に参加しました。

前半は、2月25日(土)の「愛される学校づくりフォーラム2012 in東京」に関する報告。参加申し込みは順調で、残り90名ほどで定員です。2月早々には締め切りになりそうなので、参加をお考えの方は早めに申込みください。(申込みはこちらから)

後半は「4月末までに何を見える化するか」をテーマーに3グループで話し合い、その後全体で討議しました。
この会のメンバーと話をしていていつも感じるのは、実によい実践をしていることです。私が、「学校ではこういうことを意識していなのが問題」とつっこんでも、「私は、このようにしている」と、なるほどと納得させられる実践で答えてくれます。
今回も、4月になってから新学年にやるべきことを見える化しても遅いという私の発言に対して、3月からおこなっている手立てを具体的に教えていただけました。

全体の話し合いの場では、久しぶりの参加のN先生の元気な発言で、とても楽しい議論になりました。校長の力量の問題か仕組みづくりの問題かが話題になりましたが、校長がしっかりしていれば学校はうまくいくことは、私が訪問する学校での経験からいっても間違いありません。この会に参加している方たちであれば、まず問題ないでしょう。しかし、すべての校長がそれだけの力量を持っているとは限りません。また経験が浅ければ、わからないこともたくさんあるでしょう。そこを個人の問題にしない仕組みも必要だと思います。
訪問すると、いつも他の学校の校長から質問や相談の電話がかかってくる学校があります。この学校の校長に聞けば教えてもらえるということなのでしょう。丁寧に対応している姿をみると相談がたくさんくるのも納得できますが、これだけ頻繁だと業務に支障が出るのではと気の毒になります。これも本来何らかの仕組みがあるべきことを個人が対応している例でしょう。
いつものことですが、たくさんのことを考え、学ぶことができました。

研究会終了後、新しい企画について仕掛け人の先生と関係者で打合せをおこないました。今後どうなるのかとても楽しみです。うまくテイク・オフできるように、私もお手伝いしたいと思います。

研修担当者の目に見えない努力を感じる

昨日は小学校で算数の授業アドバイスと模擬授業に参加しました。2回目の訪問で、前回からどのような変化があったか楽しみでした。

特別支援学級の算数の授業は異学年の4人の一斉授業でした。年齢も支援の必要度合いも異なる子どもたちです。子ども一人ひとりに何が起こっているかを中心に観察しました。
授業開始前から2人の先生は、受容的な態度で子どもたちと接しています。笑顔がとても素敵でした。授業が始まっても落ち着かない子どもがいます。いつもと違う知らない人が授業を見ているので、興奮したのかもしれません。4人の中で一番しっかりしている児童が注意をしてくれます。その時気になったのが注意の仕方です。「・・・してはだめ」「・・・して」と否定的な表現や命令調なのです。たまたまなのかもしれませんが、先生の注意の仕方と何か似たものを感じました。「・・・しよう」という表現を意識して使っていただくことをお願いしました。
授業は輪投げとさいころゲームを使って得点を計算するという課題でした。全員に○をつけて自身を持って発表するように工夫しています。しかし、一生懸命に発表してくれた友だちの言葉ではなく、そのあとの先生の確認の言葉に反応します。ここにも少し工夫が必要かもしれません。

アドバイスとしては大きく2点です。
1つは、子どもたちへのポジティブな評価を今以上に増やすことです。困難を持っている子どもたちですのでちょっとしたことでも、できたことはできるだけほめて自己有用感を高めることが大切です。
もう1つは、コミュニケーション力を高めることを意識していただくことです。学力も大切ですが、彼らが将来自立していくためには自己有用感を持って他者とかかわれることがより大切です。発表の場面などでは、聞いたことを復唱などで確認し、聞いていたことをほめる。聞いてもらってよかったねと発表者とつなぐ。このようなことを授業の中に組み込むこと意識するようにお願いしました。

4年生の2学級の算数は、学年主任と講師の方の資料の整理の授業でした。
学年主任の先生は学級規律をしっかりつくり、子どもたちを笑顔できちんと評価できる方でした。細かな授業技術もしっかりして、とてもわかりやすい授業です。ほめるところ参考になることがたくさんありました。だからこそ、課題も明確になりました。的確な指示でどの子も作業がきちんとできます。しかし、なぜ資料を整理するのか、整理することで何がわかるようになるのかといった、考える部分が弱いのです。このことをお話ししたところ、本人も自分の課題として認識されていました。自己評価ができる素晴らしい先生です。この教材を具体例に、課題の設定、発問についてお話しました。今後の教材研究にきっと活かしてくれると思います。

講師の方は、笑顔と受容的な雰囲気で子どもたちが落ち着いて授業を受けていました。しかし、板書がされると子どもがノートを写すことに意識がいってしまい話を聞かなくなっています。積極的に子どもに問いかけ参加を促すことが大切です。
気になったのが、数人しか手が挙がらないのに指名して、「あってますか」「あってます」で進めてしまったことです。本人もどうしても待ちきれないとどうすればいいか困っていました。まわりと相談させる、ヒントを子どもに言わせるなどの方法をアドバイスしました。
また、資料の項目を問う場面で指名された子どもが「人間」とよくわからない発言をしました。先生が即座に否定することなく聞き直すことで「東町の人、西町の人」と言葉が足されました。とてもよい対応です。ただ、残念なのが、「人間ではわかりにくいから他の言葉で言って」と他の発言をすぐに求めたことです。発言者をほめたり、しっかり評価する場面がありませんでした。結局、「町」という言葉が出たところでこれを評価し、答としました。このようなことが続くと、子どもたちは教師の求める正解を見つけようとします。自分の答えを考えることしなくなってしまいます。一人ひとりの考えを認め、子どもたちの判断させることも時に必要なことを伝えました。

5年生のきまりの授業と6年生の資料の整理の授業は前回アドバイスした先生でした。
2人とも前回は表情が硬かったのですが、笑顔も増えてこのことを意識していることがよくわかりました。

5年生の授業は、マッチ棒でつくった階段のきまりを見つける問題です。なかなかむずかしい問題なので、前時の復習と問題把握に多くの時間を割きました。しかし、先生が一方的にしゃべるので子どもはだんだん集中力をなくしていきます。子どもに問いかけて発言させることで同じ内容を伝えられるところがたくさんあります。子どもの発言で進めることができないかと常に自分に問いかけることをお願いしました。
この問題は、マッチ棒を数える、表をつくったりして整理する、整理したことをもとに決まりを見つけるといったスモールステップがあります。これらを明確にしないで個人追究をさせようとしましたが、子どもの状況に大きな差ができました。スモールステップを意識して、ある程度足場をそろえることも必要です。問題把握の段階で、マッチ棒を数える作業をいれるなどの工夫をすることをアドバイスしました。

6年生の資料の整理の授業は、資料から度数分布表をつくる作業が1時間のメインでした。教師が一人ひとりの表を確認して○をつけていますが、非常に時間がかかります。○をもらった子どもはすることがなくて集中力をなくしています。こういった作業的な課題は、互いにまわりと確認し合い、もし違っていればやり直すようにすることで、スムーズに進むことをアドバイスしました。
また、この授業では度数分布表をつくることが目的となってしまって、そこから何がわかる考えることがありませんでした。つくったものを活用する、何のためにつくっているのかといったことを考えることを大切にするようお願いしました。

全体研修では、この学校では初めての試みとなる模擬授業をおこないました。1年生の算数の授業に若手がチャレンジしてくれました。
模擬授業を企画した先生が手順やポイントをまとめたものを配り、丁寧に説明をします。特に子ども役が学ぶことが多いこと、みんなで考えることを強調されました。模擬授業をよく理解されています。
初めての試みということで最初は私が意図的に介入しましたが、そんなことは必要ないことがすぐにわかりました。企画した先生が司会者となったのですが、実に的確に授業を止め課題を明らかにしていきます。
わかったかどうかの確認で、ほぼ全員が手を挙げたのに、3人の子ども役の手が挙がらない場面がありました。そのまま授業者が進めようとしたところを止めて、挙げなかった理由を聞き、どうするかまわりの人と相談するように指示されました。先生方はとてもよい雰囲気で意見を出し合っています。全体で発表される意見も素晴らしいものでした。これをきっかけに雰囲気も柔らかくなり、子ども役の先生方も子どもになりきって実に細かく演じてくれました。授業者も意見を受けて何度も進め方を変えてくれ、教師の対応が子どもたちの活動にどう影響するかとてもよくわかる模擬授業となりました。先生方に模擬授業のよさが伝わったことと思います。企画した先生の準備と素晴らしい取り回しのおかげです。授業をみる力があることと模擬授業をきちんと研究していたことがとてもよくわかります。この学校にきっとよい形で模擬授業が定着していくことと思います。

私も学ぶことが多い1日でしたが、研修担当の先生が模擬授業だけでなくアドバイスを受ける先生に事前に働きかけるなど、一つひとつしっかり準備していたおかげだと思います。充実した研修の裏にはこういった担当者の目に見えない努力があるものです。この学校がこれからどのように進歩していくのか、とても楽しみです。

教師が育つ学校づくりについて講演

先週末は校長会の研修会で「教師が育つ学校づくり」と題して講演をおこないました。

どの学校でも、ベテランからは「自分たちは先輩から盗んだ」、若手からは「なかなか教えてもらえない」という声が聞こえてきます。このギャップは放っておいても埋まりません。いかに学校として組織的に対応するかが課題です。

教師が育つためには、一人ひとりが課題意識を持って毎日の仕事に取り組むことが大切です。そのためには、学校として、どんな課題があるかをまず管理職が把握することから始める必要があります。学校を回り授業の様子を見て、全員に共通する課題、個人の課題をそれぞれ明確にするのです。その上で、課題をどう共有化しどう解決していくかを考えます。
全体での研修を工夫するのか、個別に対応するのか、グループをつくるのか、状況によってそのアプローチは変わってきます。いずれのアプローチを取るにしても、課題解決のための手段が具体的になるようにする必要があります。「子どもたちをよく見よう」といったスローガン的なものではなく、「挙手しなかった子どもを必ず確認する」というようにできるだけ具体的なものに落としていくのです。具体的になればなるほど、実効性は上がっていきます。

若手について言えば、目指す授業像が確立していない傾向があります。手本となるよい授業を見せること、そしてその授業のどこがよいのかを解説することから始める必要があります。その上で、具体的な指導に移るのです。
また、指導役になる方には、しっかりと相手の話を聞くことをお願いする必要があります。一方的に指摘するのではなく、一緒に考える姿勢が大切です。指摘されたからといってすぐにできるようになるとは限りません。うまくいかないことが続くと追い詰められていきます。まずは自分が認められていると感じてもらうことが大切です。以前と比べて最近の教師は同僚との関係が希薄な傾向があります。悩み事を相談できずに孤独になっていることもよくあります。まわりの先生と気軽に授業や仕事のことを相談し合えるような関係づくりが大切です。そのために管理職は意図的に動く必要があるのです。

結論を言えば、管理職が学校の課題を把握して、そのための具体的な対策をとる・・・という、PDSCのサイクルを回せばいいという当り前のことに帰着するのですが、ポイントはその具体的な対策を考えるときに何を意識するか、どういう方法があるのかを知っておくことです。今回はその具体的に意識すべきこと、方法を中心にお話しました。

大変熱心に聞いていただける方が多かったため、つい具体例を話しすぎてしまいました。最後は駈け足になってしまい、申し訳ないことをしました。講演はどうしても一般論になりがちです。参加者一人ひとりの課題解決にとって少しでも参考となる話ができたのであれば幸いです。
各学校の状況に応じたシャープな話をするには、子どもたちの様子を見せていただく必要があります。今回の参加者から一度学校に来てほしいと声をかけていただけたらとてもうれしく思います。

有田和正先生から元気をいただく

教師力アップセミナーで授業名人有田和正先生からたくさんのことを学ばせていただきました。

今回は、防災を意識した社会科のお話を聞かせていただきました。元の襲来に備えた防塁、防人などの歴史から備えるということを考える模擬授業でした。そのこととつなげて、東日本大震災での釜石の奇跡とその奇跡を起こした釜石市の防災教育について語られました。教育の持つ力と素晴らしさを「奇跡を起こせるのは教育だけだ」という言葉に込め、何度も口にされました。いつも以上に熱いメッセージから、私だけでなく会場の多くの方が元気をいただいたことと思います。

教師が何でも教えるのではなく子どもが調べることが大切だと強調され、自身もそのことを裏付けるように、必ず現地まで出向いて調べたことをもとに授業をつくられます。今年も新しいお話をたくさん聞くことができました。いくつになっても、追究し続ける有田先生の姿勢に、このような年の重ね方が自分にできるだろうかと問いかけた一日でした。

講演前に時間をいただいて、愛される学校づくり研究会の代表が、「愛される学校づくりフォーラム2012 in東京」について、当日の諸連絡をおこないました。有田先生の「バスのうんてんしゅ」の展開をとりいれたコンビニの授業を見ていただくことをお話すると、「それはおもしろそうだ」とおっしゃっていただけました。当日有田先生のセッションを担当する私も、どんなお話が聞けるかとても楽しみです。少しでも多くおもしろい話を引き出せるように、精一杯頑張りたいと思います。

昨年末は一時体調を崩されていたようですが、例年以上に熱の入った講演でした。有田先生から多くの元気をいただきました。本当にありがとうございました。

充実した1日

昨日は、教材開発、書籍、「愛される学校づくりフォーラム2012 in東京」の打合せを東京でおこなってきました。

教材作成のために教科書を何度も読み込んでいますが、本当によく考えて作られています。教科書の内容をもとに掘り下げることで、いろいろな授業展開が考えられるはずです。現実には教師の力量や授業時間の問題もありなかなか難しいでしょうが、こんな授業をやっていただけたらなとアイデアが広がります。教材にはそんな思いも込めています。
教材の多くは単に問題を解くために必要な情報だけでなく、関連したちょっとした情報を付加することで、もっと知りたい、調べてみたいと思うきっかけになるように考えています。また、情報同士がつながることでより深いことが見えてくることも強く意識しています。
この日は、社会科の教材を検討しました。社会科は地理、歴史、政治・経済を切り離して考えることはできません。地理であれば、その事柄に関連する歴史や政治・経済の情報も付加するようにしています。情報をつなぎ合わせていくことで最終的に現代の日本が見えてくることを目指しています。
知識を記憶して効率的に出力できるようにすることではなく、問題を解くことを通じて知識を得る、知識を活用することで身につく。そんな教材にしたいと思っています。

「学校を応援する人のための学校がよく分かる本(3部作)」の編集の打ち合わせをおこないました。この本は、保護者、学校にかかわる地域の人、先生と先生を目指す人を対象として、学校をよりよく理解していただくために、学校の「組織・しくみ」「学習内容」「授業」について書かれたものです。「組織・しくみ編」「学習内容編」を玉置崇先生、「授業編」を私が執筆しました。このような視点で学校のことを書いた本は初めてではないかと思います。関係者の私が言うのもなんですが、素敵な編集も相まってとてもよいものになったと思います。2月上旬の発刊が今からとても待ち遠しいです。

「愛される学校づくりフォーラム2012 in東京」まで1月余りになりました。会場下見前の打ち合わせをおこないましたが、当日の会場運営については事務局が段取りよく進めてくれています。授業紹介の進め方について変更しなければならないことがでてきましたが、それに対してもすぐに対応案をいくつか提示していただけました。安心して当日を迎えられそうです。申込みも順調で、すでに定員の半分ほどに達したそうです。この調子でいけばスタッフ・関係者の一部は立見になるかもしれません。参加を予定されている方は、早めに申込みをお願いします。(申込みはここ

久しぶりの東京でしたが、とても充実した1日になりました。関係者の皆さんに感謝です。

成長の原動力と向上の条件

昨日は、中学校で数学の指導案へのアドバイスと英語の授業アドバイスをおこなってきました。

数学の初任者は、前回の教材研究をもとに(個別のアドバイスの場で管理職の役割を考える参照)指導案を作成してきました。確率に興味をもたせよう、確率は面白いと感じさせたい、そういう思いのあるものでした。前回の宿題を自分で考え直して、確率のおもしろさを感じてくれたようです。一番確率が高そうにみえる事象が実はそうではない。子どもたちの予想を裏切るような課題を考えてきてくれました。しかし、そのような課題は何故そうなるのかを考えるにはハードルが高いものです。だからといって先生が説明したのでは、せっかく子どもたちが興味を持ってくれても、学びにはつながっていきません。また単純におもしろそうだと試行するだけでは、数学的にも深まりません。

そこで、次のようなアドバイスをしました。

「直感でいいから予想して」という問いかけは単純に「予想して」に変える。
直感といっても子どもなりの根拠があるはずです。直感でいいと言ってしまうと、予想の根拠を聞いても答えない可能性があります。予想の理由を聞くことで、より試行の結果に対してその理由を考えようとします。

「一番確率が高いのはどの組み合わせ」という発問を活かして、確率の意味に迫る。
「一番確率が高いということは、どういうこと」「どうすると確かめられる」と子どもに問いかける。「でやすい」といった反応には、1、2回の試行をして「これがでやすいね」といって揺さぶる。「もっとやる」といったときに、「どのくらいやればいいの」と問い返す。こういったやり取りをすることで、みんなで何度も確かめることの意味、確率とは何を表すのかを考えさせます。最終的には大数の法則につながるやりとりです。

子どもが大切なことに気づく仕組みをつくる。
この課題は、立方体の3面に○、2面に△、1面に×をつけたものを2個使います。組み合わせの表を使って場合の数を調べることで確率を考えさせようとしていますが、この場合、○△×の出方は同様に確からしくないので、どの立方体の○か、どの面の○かを意識させる必要があります。たとえば、サイコロに○△×のシールを貼る。シールの色を2種類用意する。このような仕掛けをしておくことで、シールの色でどちらのサイコロか、シールをはがしてみることで1の面の○、2の面の○とどの面の○か意識することができます。何が同様に確からしいかを子どもたちが気づきやすくなります。

このほかにもいろいろアドバイスしましたが、授業者はこのような問いかけや仕掛けをすると子どもたちがどんな反応をしてくれるだろうかと、次第にワクワクしてきたようです。彼自身が授業を楽しみになってきたようです。教材研究をすることで、子どもの反応が楽しみになることは、授業力を高めるための大きな原動力です。この授業がきっかけとなって大きく成長してくれることと思います。彼がこのあとどのように授業を作り上げるかとても楽しみです。参加する先生方にとってもよい授業研究になってくれることと思います。

英語の授業はALTとのTTでした。一斉の発声場面で子どもたちの声が出ないことが気になりました。ALTの言葉やジェスチャーは真剣に聞いています。しかし、声はでないのです。正解の○をもらっても声が出ない。黒板に答が書かれるとやっと声が出る。このような場面もありました。
間違えてもいい、自信がなくても話せる。そんな雰囲気をつくることが大切です。たとえ小さくても声がでれば、笑顔で大きくうなずき、何度も繰り返す。それにつられて次第に声が出る生徒が増えれば、声が出た子と目を合わせてうなずく。全員がしっかり声が出るまで繰り返す。最初は大変かもしれませんが、根気よく育てていくことが大切です。
声を出さなくても、答を写しておけば困らない。こういう子どもたちに、しっかり声を出すとほめられる。声を出すと自信を持って使えるようになる。そういう経験をさせるようにお願いしました。

アドバイスが終わった後、教頭と現職教育の担当者の3人で来年度の研修のあり方について話し合いました。子どもたちの状態がよいために、先生方の授業力向上の意欲が薄れているのではないかと危機感を持っておられました。どうすればよいかすぐに方策が見つかるわけではありません。しかし、先生方をリードする立場の方がしっかりと問題意識を持っていれば、必ずよい方向に進んでいくものです。何も考えずに前年通りではなく、うまくいかないと悩みながらでも次の課題に立ち向かう姿勢はとても立派だと思います。私もできる限りのお手伝いをさせていただきたいと思います。きっとよい結果が出るものと信じています。

フォーラム提案授業の編集

先週末に「愛される学校づくりフォーラム2012 in東京」での提案授業の編集をおこないました。国語、算数(2時間)、社会それぞれの授業を10分間に縮めました。
プロにお願いしての編集ですので、こちらの要望に素早く対応して、ワイプやオーバーラップなどの効果も瞬時に入ります。また各チームの事前の準備もよかったため当初の予定よりかなり早く仕上がりました。

再度授業を見直しながら、当日の感動をあらためて思い出しました。どの授業もカットするのが惜しい場面の連続です。逆にどこを見ても皆さんお見せしたい場面ばかりです。しかし、当日の提案をシャープにするために、ICTの活用場面を中心に大胆に編集しました。
当初は何をやっている場面か文字で入れて説明する必要があるかと思っていましたが、繰り返し行われる場面をカットすることで流れがすっきりとし、説明がなくてもかえってわかりやすいものになりました。

今回の作業を通じて、授業は子どもたちが理解し考えるための時間を本当にたくさん取っていることにあらためて気づきました。ポイントの説明やまとめだけなら10分程度で十分です。その他の時間はすべてその内容を子どものものにするための活動に当てられているのです。時としてくどいぐらいに繰り返して発言させたり、いろいろな視点から何度も説明させたりします。教師が一方的に説明する授業であれば、進むのが早いのは当然です。
授業にとって大切な要素が自分の中でより明確になった気がします。

久しぶりに会う授業者は、以前より自信に満ちた表情になっているような気がしました。今回の授業づくりを通じて自分の成長を実感できたのでしょう。大変だったが楽しかったと感想を言ってくれた先生もいました。どの先生もフォーラム当日をとても楽しみにしてくれています。今回の提案授業は彼らにとって大きな壁だったかもしれませんが、それを乗り越えたことで大きなものを得たようです。ぜひ彼らの素敵な表情を見に来てほしいと思います。

教師の人間関係をよくする

教師の人間関係がよい、悪いという言葉を聞くことがよくあります。授業研究を通じて互いに学び合おうとするときに問題となることが多いようです。人間関係が悪いので、活発な議論にならない、学び合おうとしない。こういう形で耳にします。人間関係が悪いのでこの学校はよくならない、指導はしたくないとおっしゃるアドバイザーもいらっしゃいます。私も、先生方が互いに学び合うためには、人間関係が大きな要素であることは否定しません。そこに問題があるのなら、何とかしたいとも思います。私なりに先生方の人間関係をよくするために気をつけていることをまとめてみます。

人間関係が問題点として語られる学校にはいくつかの特徴があるように思います。

学級経営や授業がうまくいかないときに、担任の問題として指摘する。
特定の人同士、小グループでは話をするが、全体としてはあまり会話しない。
授業を見られることに抵抗感が強い。
授業検討会などで、あまり意見が出ない。
一部のベテランが意見を言うと、他の先生の意見が出にくくなる。

人間関係が悪いからこうなるのか、こういう傾向があるから人間関係が悪くなるかはわかりませんが、ここにヒントがあるような気がします。

・困っている先生を助ける雰囲気をつくる
たしかにこの先生のやり方ではうまくいかないと思うことがあります。しかし、多くの場合本人も気づいて苦しんでいます。あまり責めても追い詰めるだけです。もちろん個別にアドバイスも必要ですが、まわりの方に助けてもらえるようにします。同じ学年の先生や、その学級とかかわる先生方に「大変でしょうが、先生ならできると思うので」と子どもへの指導を通じて助けてくれるように頼みます。助けてもらった先生がまわりの助けに気づくのを待って、「みんなが助けてくれてよかったですね」とコメントし、「ありがとう」を伝えるようにアドバイスします。もちろん私も助けてくれた先生方に、「感謝されていましたよ。ありがとうございました」と個別に伝えます。
また。研究授業の担当になったときなどは、有志による模擬授業や検討会への参加をまわりの先生にお願いします。事前のアドバイスを受けて授業がよくなると、かかわった先生がその先生の進歩認めるとともに自己有用感を持ちます。
助けあうことで自己有用感を持ち、互いにかかわることに前向きになっていきます。

・ネガティブな言葉を封印する
授業検討会などでは、よかったこと、参考になったことを中心に話すルールにすることで、話し合いの雰囲気がよくなります。批判的なことばかり言われると他者とかかわるのが嫌になります。逆にほめられると相手に対してポジティブな気持ちになります。授業を見られるとほめられるということが常態化すると、見られることへの抵抗感も薄れます。

・小グループで活動をさせる
検討会では、ベテランと若手を組み合わせるなどふだんあまり交流がない先生同士を小グループにして話し合わせることで、きっかけをつくります。ポジティブなことを中心に話し合うようにすることで、楽しいものになります。また、授業アドバイスを小グループでおこなうことも有効です。よい意見を大いにほめたうえで、感想を他の先生に聞くことで仲間からもほめられるようにします。自分がこの先生方に認められた感じることでよい関係になっていきます。

・意図的につなげる
ベテランや力のある先生のよいところを大いにほめ、「他の先生に教えてもらうように伝えますので、そのときはよろしくお願いします」と伝えます。若手に対しては、「○○先生はとても上手だから教えてもらったら。頼んでおいたからだいじょうぶだよ」と声をかけます。力のない先生に批判的な方でも自分に教えを乞う人に対しては寛容になります。助けてあげようという気持ちになっていきます。

これをやれば人間関係が必ずよくなるというわけではありません。しかし、昔のようにノミ(飲み)ニケーションに頼るわけにもいきませんし、ほっておいても人間関係はよくなりません。管理職やリーダーの方が、教師の人間関係をよくするために必要なことを意識してほしいと思います。

対策を考えるアプローチ

授業がうまくいかないときは何らかの対策を立てることになります。子どもたちが積極的に発言しない。子どもたちが人の意見を聞かない。「発言して」「意見を聞こう」と言っても、そう簡単には変わりません。どのようにして考えればいいのでしょうか。

対策を考えるために、まずその原因を考えることが大切です。
子どもが積極的に発言しないのであれば、子どもたちに自信がないから、人の意見を聞かないのであれば、子どもにとって聞くことに価値がないから。このような原因を考えてみるのです。想像した原因が正しいかどうかはわかりませんが、とにかく考えてみなければ先に進みません。

次に、どうすればよいのか具体的に考えていくわけです。
考え方の一つは、どう原因を取り除くかです。自信がないのが理由であれば、自信を持たせるという発想です。わかった、自分の答えは正しいと思えるように、わかりやすく授業をしよう。まわりと確認する時間をとって確認させよう。机間指導で○をつけて安心して発言できるようにしよう。聞くことに価値がないのなら、聞くことを価値づけしよう。聞いていたことをほめよう。すぐに教師が解説せずに、子どもの意見に対してどう考えるか他の子にたずねてみよう。こういうことです。
また、原因を無効化する、結果を変えるという発想もあります。自信がないから積極的に発言できないのであれば、自信がなくても積極的に発言できるようにしようと考えるわけです。「自信がなければ積極的に発言できない」理由を考えると言ってもよいかもしれません。間違えるのが嫌だ、馬鹿にされたくないから積極的に発言しないと考えるのであれば、間違えても嫌な思いをさせないようにしよう。正解、不正解とすぐに判断しないようにしよう。馬鹿にしない雰囲気をつくろう。わかった人ではなく、困っている人と聞こう。こういうことです。
ここで対策を考えるときに、授業技術そのものを知らないとその選択肢が非常に狭くなってしまいます。日ごろから他の教師の授業を見たりして、授業技術を学んでおくことが必要になります。そして、一つひとつの技術が何を意図している、何を解決するものであるかがわかっていないとうまく活用することができません。日ごろから授業技術を意識しておくことが大切です。

また、対策を取ったからといって必ずうまくいとはかぎりません。うまくいかなければ、他の対策を考える。他の原因を考えてみる。思いつかなければ、まわりと相談するといったことが必要です。打つ手がなくなってあきらめてしまうと、いつの間にか、うまくいかないのは子どもが悪い、子どものせいだと考えるようになってしまいます。こうなってしまうと、授業改善をする意欲そのものがなくなってしまいます。あきらめずに、原因を考え、原因を取り除く、原因を無効化する、結果を変えるといった発想で切り抜けていってほしいと思います。

学校の役割を考える

学校教育の目的は何だろうと考え直すことがあります。
子どもたちが学校で勉強するのは何のため、誰のためなのか。先生方はこのことを明確に意識しているのでしょうか。少なくとも義務教育である小中学校では、「本人のため」だけではないことを明確にしてほしい気がします。どうも「社会のため」という視点が子どもたちからも先生からも抜け落ちているように思います。先生方はよりよい社会の担い手になるということはどういうことなのか、子どもたちに伝えているのでしょうか。

「この問題は試験(入試)に出るから覚えておきなさい」といった言葉が学習の動機づけに使われる場面に出会うことがありますが、何か違う気がします。確かに個人の自己実現の手段という側面が教育にあることは否定しません、しかしそれだけではないはずです。自分たちが学ぶことはよりよい社会の実現のためであるという意識と実感を持たせてほしいのです。

子どもたちにこのことを伝えるのは簡単だとは思いません。口で言えば伝わるわけではないでしょう。学校、教室という小さな社会で他者とかかわり合いながら学ぶことで少しずつわかってくることだと思います。そのためには、自分の存在が他者にとって価値あるものだと実感する場面を意図的につくることが大切だと思います。学習場面では、自分がわかればいいのではなく、友だちがわかるためにどうかかわるか、自分の意見や考えがどうまわりに認められるか。特別活動では、それぞれが役目を果たすことで何ができるのかといったことを子どもたちが意識するようにしてほしいのです。

学校は塾とは違います。子どもたちに自分たちがこれからの社会を担うのだ。そのために学んでいるのだということをしっかり伝え、一人ひとりに自己有用感を持って学校生活を送らせることで、よりよき社会の担い手に育てることも学校の大切な役割なのです。

年末年始のお休み

12月29日から1月3日までお休みをいただきます。
日記もお休みをいただき、1月4日より再開します。

課題解決の手段を考える

子どもたちに与える課題を考えるときに、意識してほしいのはその課題解決の手段です。いきなり課題を与えて解決できる子どもはそれほど多くはありません。その課題を解決するにはどのようなアプローチがあるか考え、それぞれの手段を具体的にするのです。

個人ではなかなか解決できない課題であれば、友だちと相談するというアプローチがあります。「グループで考えて」「まわりと相談してもいいよ」とその手段を子どもたち与えます。

過去に取り組んだ課題の考え方や知識を利用するというアプローチであれば、基本的に子どもたちはその手段を持っています。子どもが自分で気づくのを待つというやり方もできますし、教師が働きかけることで手段として意識させる方法もあります。「似たような問題を解いたことない」「これに関してどんなことを勉強したかな」と思いださせたり、課題提示前に復習したりすることで、手段として意識させることができます。

根拠となる資料や情報をもとに考えるというアプローチであれば、その情報にアクセスできる手段を与える必要があります。資料集や辞書、インターネットなどをがいつでも使える状況であるのなら、利用するかどうかを子どもたちに任せておいたり、「資料集を見ている子がいるね」と気づかない子に手段を意識させたりすればいいでしょう。そうでないのなら、準備をしなければなりません。この場合、教師がわざわざ用意しているので、特に言わなくてもこれが課題解決の手段になることがわかります。

これらのアプローチや手段はどれか一つだけである必要はありません。互いに組み合わせることも可能です。一つに絞るのか、自由に取り組ませるのか。教師が与えるのか、子どもに気づかせるのかといったことも考えておく必要があります。「どうやったら解決できそう」「何か使いたいものはある?」と最初に問いかけてプローチや手段を意識させたり、途中で「何を使って考えた?」と聞くことで手段を共有化させたりする方法もあります。

子どもたちは課題解決の手段を持っていなければ、すぐに行き詰ってしまいます。あらかじめどのようなアプローチや手段があるかを明確にして授業にのぞむことで、子どもが行き詰った時の対応の幅が広がります。課題を考えるときは必ずその課題解決のための手段を意識するようにしてほしいと思います。

大切にしているものが伝わる学校とは

どの学校も目標を持って日々の教育活動がおこなわれているはずです。ところが、何を大切にしているのかすぐに伝わってくる学校とそうでない学校があります。どの教室でも同じような場面が見られたり、同じものが掲示されたりしていて、ああこの学校はこんなことを大切にしているとよくわかる学校もあれば、一人ひとりの教師が何を大切にしているかはよく伝わるが、全体として何を大切にしているのかよくわからない学校もあります。学校として大切にしているものが伝わる学校は、組織として力をつけているということです。どの教室でも最低限のことが保障されているといってもいいでしょう。この違いはどこから来るのでしょうか。

大きな要素として、学校の目指す目標の具体的な姿とその実現のための手段が共有化されているかどうかということがあげられます。目指す姿や手段を明確にするアプローチは大きく2つあります。

先行事例がある場合は、そこから学ぶという方法があります。先進校を訪問して教えてもらう。実践者を講師として招く。ここから出発します。

先行事例が身近にない場合は自分たちで探ることになります。部会を設けたりしながら、自分たちで仮説を立てることから始めます。

ここまではどの学校でも大差ないと思います。差がつくのは、その学んだ手段や仮設が学校全体に共有化され広がるための仕組みが作られているかどうかです。
ただ話を聞いたり、こうしようと呼びかけるだけでは先生方はなかなか納得して動くことができません。自分たちの学校でその具体的な姿を見ることができて、初めてやってみようという気持ちになります。とはいえ、いきなり結果が出るわけではありません。まず実行することから始めるしかありません。このとき大切になるのは、一人ひとりが納得しているかどうかは別にして、全員で取り組むと決めることです。温度差があってもこう決めることで、共通の土壌で話ができるのです。そして、その結果がどうであったか互いに見合うことを日常化するのです。
自分はうまくいった、うまくいかなかったという報告はどうしても客観性を欠きます。同じ手段を取っているつもりでも、個人差はどうしてもあります。互いに見合うことで、具体的な手段が共有化できるようになります。また、目指す姿の一部でも見ることができるようになれば、それがその学校での具体化になります。具体的なイメージがつかめなかった先生も「ああ、こういうことか」と納得でき、目指すものが実感できることで意欲につながります。実現できた場面をしっかり分析することで、その方法もより具体的になります。うまくいかなければ、個人の問題とせずに、どうすればよいか、全員の課題として考えます。できたことを共通の手段とする、できなかったことを共通の課題とする。こうなることで、共有化が進むのです。

互いの実践の中に目指す姿を見つけようとする、うまくいかないことを個人ではなく全体の課題にする、この雰囲気がとても大切なのですが、実はそんなに簡単に生まれるものではありません。管理職をはじめとするリーダーが意図的に働きかけることが必要です。日ごろから積極的によい場面を見つけ全体に知らせる。課題を見つければ、見つかったことをポジティブに評価する。うまくいっている学校では必ずこういう動きをみることができます。
何を大切にしているのかが訪問してすぐ伝わるような学校は、学校の目指す姿との実現のために組織的に動けている学校です。このような学校になるかどうかは、やはり管理職の力が大きいのです。

若手教師が育つ環境を考える

この1年もたくさんの先生方といろいろな場面でかかわらせていただきました。いつも感じるのは、年齢問わず、教師の授業力には急激に伸びるときがあるということです。特に、若手はちょっとしたきっかけでみるみる成長します。成長する若手は素直であるなど本人に共通することがいくつかありますが、職場の環境にも共通点があるように思います。

1つは授業が大切であることが学校として明確にされていることです。
そんなこと当り前だと思われるかもしれませんが、決してそうではありません。中学校では部活動や生徒の指導が強調され、授業については子どもたちの授業態度という観点でしか語られないことがよくあります。授業研究が年に数回しかなく、日常的に授業がどうであるか語られない学校もよく見ます。こういう環境では、なかなか授業を改善していこうという気持ちにはなりません。当然目指す授業像や授業をみる視点が明確になっていないので、授業研究そのものも形式的で実効性のないものになりがちです。授業が大切であることを否定する学校はありません。そのことが学校として具体的な形となっていることが大切なのです。
互いに授業を見合う。個々の授業のよさを伝え合う。共通の目指す授業像をもとに、授業について日常的に語られる学校であることが、授業を大切にしようとする意識を持たせます。そのことが授業を改善する意欲につながり、結果として授業力がアップするのです。

もう1つは授業について相談できる相手や仲間が身近にいることです。
意欲があっても、教材研究のポイントや自分の授業に欠けている要素に気づくことは一人ではなかなか難しいものがあります。また、授業の欠点を指摘されても具体的な改善方法がわからなければ、どうしていいかわからず追い詰められるばかりです。どうすればいいのかを相談できる相手がいないと、成長どころかかえって落ち込んでしまいます。
授業に対して具体的にアドバイスしてくれる管理職や、教材研究などの相談ができる同僚がいることが、授業改善の意欲を授業力アップにつなげてくれるのです。

授業力に限らず、教師の力量がアップするためには学校の環境が大きく影響します。相談できずに悩んでいる、孤独な教師の数も増えているように思えます。どのような学校に赴任するかが、その後の教師人生に大きく影響します。若手教師に限らず、教員集団が育つ環境をどうつくっていくかは、管理職の大きな課題です。教員が育つための働きかけや仕掛けを工夫してほしいと思います。
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