大人が伝えること

キャリア教育の模擬授業を検討していて考えたことです。

学校教育はどのようなことを目的としているかを考えてみると、次代の社会を担う構成員として必要な知識や態度を教え、育てることがその一つにあげられます。社会の継続性です。そのために必要なことを学校では教えているのです。これを働くという視点で切り取ったものがキャリア教育だと思います。ですから、キャリア教育といってもあらためて何かするというのではなく、子どもたちが学校で学ぶことが社会で生きていく上で役に立つのだという実感を持って生活してくれることが基本だと思います。

そう考えると、学校で学んでいることにリアリティがないことが問題だと感じました。学校で学ぶことは直近の受験のためで、その先にあるものは実感がないのです。社会に出て働くということには結びついていないのです。そもそも子どもたちに働くことのリアリティがないのです。

私が子どもの頃は町に自営の店がたくさんあり、子どもたちが手伝いをしている姿がよく見られました。農家の子どもも田植えや稲刈りで頼られる労働力でした。子どもたちに働くことのリアリティがありました。
今の子どもたちにこれを求めるのは無理です。短期間の職場体験ではなかなか難しいものがあります。

かれらに働くことと学校で学ぶことの大切さを考えさせても無理があります。それを教え伝えるのは大人の仕事です。社会に出て大切なことを身近な大人である教師や保護者がもっと子どもに伝える必要があると思います。そのうえで、毎日の生活の中、学校生活の中のどこでそれを身につけるのかを子どもに考えさせることが大切です。

例えば職場体験でも、単に経験するだけでなく、働く上で何が大切だと思ったか、職場の人は何を大切にしていたか、そしてそのことはどうすれば身に着くか。そんな問いかけが必要です。

働くことに関してだけでなく、社会で生きていくために大切なことを我々大人が伝え、子どもたちがそのことを意識して生活することが求められます。結果、学校で学ぶことのリアリティが生まれてくると思います。キャリア教育をきっかけに、大人の役割を考えさせられました。

本番が楽しみな模擬授業

昨日は今週行う研修での模擬授業について打ち合わせを行いました。

言語活動をテーマにした理科の模擬授業です。提案していただいた授業は、用意した実験道具から、何を調べる実験ができるか考えさせ、子どもの意見をもとに実験を行うというものです。受身で指示された実験をするのではなく、自分で考えることで、理科的な思考が身に付きます。子どもは自分の考えを発表したくなると思います。いろいろな意見を整理していくことで、対照実験のポイントも身に着きます。活発な言語活動が期待できそうです。

実験道具もこの授業のねらいに合ったシンプルなもので、日ごろから子どもたちの活動を大切にしているからこそ生まれる発想だと思いました。この模擬授業のためにオリジナルで作られましたが、来年は実際の授業で使ってみると楽しそうに話されました。研修での授業はどうしても見せることを意識したものになるのですが、実際にやってみたい授業を考えていただけたことをとてもうれしく思いました。

この模擬授業を通じて伝えたいことがたくさん出てきました。教科を越えて明日から使える内容をどうすればうまく伝えられるか。考える楽しみが増えました。

取り組みが広がる原動力

先週末にホームページの更新頻度が高い私立の中高等学校を訪問しました。

ホームページの活用についてのお話を伺うのが目的でしたが、ホームページだけでなく、いろいろな場面で生徒・保護者とのコミュニケーションを取る取り組みをしていることがわかりました。しかも、その取り組みはトップダウンではなく、教員が互いに学び合って広がっていったものでした。

教員同士が学ぶ合うことの大切さはよく言われますが、実際にはなかなか難しい物があります。お話をいろいろ伺っているうちにわかったことは、キーマンの存在でした。中学、高校の各学年に必ずムードメーカーがいて、コミュニケーションの核となっているのです。互いの取り組みをオープンにし、いい意味で競い合うことで広がり、学び合い、そのことが次の新しい取り組みを生み出すことにつながっているのです。

ホームページをきっかけにたくさんの取り組みとそれを生み出す原動力を学ばせていただきました。

先生方の学ぶ姿に感激

昨日は小学校の研修の講師を務めてきました。
テーマは、学習内容の活用です。これから1年ほど先生方とこのテーマをもとに一緒に勉強をさせていただくのですが、今回はその口火切るものでした。このことをきっかけに私自身が学習内容の活用について整理することができました。このような自分にとっても勉強する機会となるような仕事は大変ありがたいことです。

研修の後半は先生方に、いろいろな活用場面のアイデアをグループで考えていただきました。
グループになってすぐは、皆さんアイデアを考えているのでやや硬い表情で声も聞こえませんでした。しかし、しばらくしてどなたかが声を出されると、堰を切ったようにどのグループも活発に話し始めました。会場全体に声が先生方の声が響きます。でもすぐに声はおさまり、適度な声での話し合いになりました。しっとりとした雰囲気です。どの先生も体を前に傾けて話を聞こうとしています。この状態であれば大きな声を出して注意を引いたり主張する必要もありません。この状態が最後まで続きました。まさに、グループでの学び合いのお手本のような状態でした。この様子をビデオにとって子どもたちに「見本だよ」と見せてあげたいほどでした。
このような姿を先生が見せてくれたのはテーマが先生方にとって意味のあるものだったこともありますが、なにより人間関係が良好なことが根底にあります。そうでなければこのような「聞きあう姿」は見られないからです。

研修終了後食事に誘われました。なんと、校内での流しそうめん大会です。先生方とおいしいそうめんをいただきながら、こんなところにもこの学校の先生方の人間関係のよさの秘密があるのだと思いました。

これから一緒に勉強させていただくのが本当に楽しみとなりました。

言語活動を考える

来週に予定している講演に関連して、「言語活動」についていろいろ考えていました。
どうも言語活動というと、話すこと書くことを中心に語られることが多すぎるように思います。それよりも、聞くこと、読むことの方が大切な気がします。「伝えたい」「わかってほしい」より「理解したい」「わかりたい」を大切にしてほしいのです。

伝えたい思いをこめて一生懸命話したということで満足してもしょうがありません。伝わらなければ意味がないのです。でも、理解しようとしてくれなければなかなか伝わるものではありませんし、伝わらなくても何も反応してくれないからそのまますぎていきます。話し手が自己満足するしかありません。
理解しようとしてくれれば、うなずいたりしてわかってといるという反応をしてくれます。わからないところは首を傾げたり、質問してもらえます。自分の足りないところがわかります。その結果、自然に発信力もついてきます。
教室に相手を理解しようとする空気をつくることから始めなくてはいけません。そういう教師ではいじめも起きにくいはずです。言語活動はまず聞くことから始めてほしいと思います。

資料集をどう活用する

教科によっては教科書以外に資料集を持たせていることがあります。資料集を有効に活用するにはどんなことを意識すればよいのでしょうか。

資料集の活用には、次の3つのステップがあります。

・必要な資料を見つける
・資料を読み取る
・読み取った内容をもとに考える

注意してほしいのは、活動中に途中のステップで止まっている子がいるかどうかです。資料を見つけることができていなかったり、資料を読み取れていないのに、全体の場で結論を聞かされても話し合いに参加できません。
そこで、いきなり結論を発表させるのではなく、ステップごとに確認をすることも必要になります。

「どんな資料が見つかったか教えて」
「この資料からどんなことがいえる」

このようにすることで、途中で止まっている子ども次のステップに移れます。
また、考えることに時間を取りたいのであれば、ステップを飛ばして、利用する資料を最初から指定したり、全体で資料の内容を確認しておくことも有効です。

もうひとつ大切にしてほしいのは、考えを発表する場面で、必ず根拠とした資料を聞くことです。気づかなかった子は、その資料と出会うことができますし、気づいても違うことを考えた子は、別の視点に出会えます。

「・・・だと思います」
「なるほど、それはどの資料でわかったのか教えてくれる」
「○○です」
「Aさんは、○○から・・・がわかったといってくれたけど、なるほどと思った」
・・・
「じゃあ、私は○○から違うことを思ったという人いるかな」

このようにすることで、資料をもとに子どもたちの考えが深まり、つながっていきます。

資料集には子どもの考えを広げたり深めるための情報がたくさんあります。活用のステップを意識して、大いに活用してもらいたいと思います。

漫然と読ませない工夫

授業中、教科書や資料を読むときがあります。声に出す、黙読する、一斉に、個別に・・・。「読む」場面はとても多いと思います。ところがこのような場面で気になるのは、漫然と文字を追っているだけ、声に出しているだけに見える子どもが多いことです。

子どもが活動する時には、目標やその評価を意識することが大切です。「読む」場面でも、何を目標にして読むかを明確にして、その評価をすることが大切になります。

例えば、全員で一斉に読むときは、「大きな声で読もう」「主人公の気持ちになって読もう」といった指示があります。教師も指示した以上は、きちんと評価する必要があります。大きな声で読んでいるかどうかを評価するのであれば、声だけではわかりにくいので、口元が見えるように顔をあげて読ませるようするなどの工夫も必要です。主人公の気持ちになることを求めるのであれば、読む前に主人公の気持ちを確認しておくことも大切です。一度普通に読んだあとに、主人公の気持ちになってもう一度読ませ、「今、主人公の気持ちになって読んでもらったけど、どんな気持ちになって読んでくれたのかな」と聞くことから、本文の読み取りを始めるようなやり方もあります。
このような指示と評価を教師が意識することでより積極的に取り組むようになります。

より注意が必要なのは、黙読するときや友だちが読んでいるのを聞くときです。自分が声をださないので、どうしても漫然と文字を目で追ってしまうのです。こういうときは、本文に線を引きながら読ませることが効果的です。

「わからない言葉があったら線を引いて」
「主人公の気持ちがわかる表現に線を引いて」
「資料で、・・・がわかるところに線を引いて」

このように指示をすることで、子どもの集中度は間違いなく上がりますし、教師も子どもの手の動きをみることで評価がしやすくなります。
読んだ後は、自分で調べる、友だちに教えてもらう、どこに線を引いたか教え合う、その理由を聞きあう、学級全体で線を引いたことを共有する。このような活動をすることで、より「読む」ことに意欲的になっていきます。

「読む」場面では、目標と評価を明確にし、そのことを読む前と後できちんと確認する。そして、できれば、読み取ったこと、意識したことをその後の授業展開に生かす工夫をすることで、より集中して「読む」ことができるようになると思います。

夏休みをいただきます

本日13日より16日まで夏休みをいただきます。
日記もお休みをいただき、17日より再開します。

思いの深さと実現力

昨日は学校改革に成功した私立高校を訪問して、校長先生からお話を伺いました。

一番に感じたのは、子どもたち、学校への思いの深さです。「子どもたちを育てたい、学校をよくしたい」という思いがなければ学校はよくならない、という当たり前のことをあらためて実感しました。
しかし、思いだけでは学校は変わりません。それを実現するためにとった行動が素晴らしいのです。

「するな」の指導ではダメ。内面を育てれば自然に変わる。

地域に出て行って触れあうだけではダメ。地域によい影響を与えることが大切。それが子どもの自己有用感につながる。

教師に思いを持たせる。その思いを実現していくことで教師が育つ。

子どもたちの姿を見てもらうことが学校のよさを伝えること。

挑戦を繰り返して歴史と伝統がつくられる

学校をよくするためには思うだけでは何ともなりません。それを現実のものにする実現力が必要です。ここには書ききれないほどたくさんのことを学ばせていただきました。
この話は、後日まとめて記事にしたいと思います。

セミナーのご案内

(株)プラネクサス主催の学校経営セミナーで講師を務めます。

「授業評価で終わっていませんか? ―学校を変える授業評価とは―」
日 時:2010年9月17日(金)13:30〜15:30
場 所:東京・アルカディア市ヶ谷(私学会館)

授業評価を授業改善に生かすためのポイントをお話しするつもりです。
興味のある方は是非参加ください。
詳しくは(株)プラネクサスのホームページの「セミナーのご案内」をご覧ください。

指導案検討会に参加

研究発表のお手伝いをしている学校で、公開授業の指導案検討会に参加しました。教科単位での検討会でしたが、広い会議室で同時に行っていたので話し合いの様子が比較でき、こんなところにも教科の個性といったものがでるのだなと思いました。

とはいえ、私が目にした指導案は、どれも子ども同士がかかわり合う場面が工夫されていて、子ども同士のかかわりを大切にすることが教科を越えて根付いてきたことを感じました。こんな子どもの姿が見たいという思いも伝わってきます。
いくつかの指導案について授業者と話をしましたが、目指す子どもの姿が明確なので、具体的な発問や活動についての検討も論点がはっきりしたものになりました。

本時の目標につながる活動はどれか。
子どもたちが学ぼうとするにはどういう仕掛けが必要か。
子どもたちにリアリティを持たせるには、どのような教材よいのか。
ペアでの活動を生かすために全体活動で何をしておく必要があるのか。

皆さんと話すことで、私もたくさんのことを学ぶことができました。
検討会が終わった後も、授業のことを話し続けている教科がありました。この学校が目指す姿をそこに見たような気がします。研究発表会の研究協議では授業について楽しくかつ真剣に話し合う姿をきっとたくさん見ることができると思います。私も当日はこの学校の素敵な姿をたくさん皆さんに紹介したいと思います。

ルール化する

子どもに何か活動させる時、事前に指示をたくさんすることがあります。

「グループの全員が必ず意見を言ってね」
「わからないことは聞くように」
・・・
子どもたちは課題に取り組もうと意欲があがっているのに、事前の指示が多すぎて意欲がそがれてしまうこともあります。このような毎回の活動に共通するような指示はできるだけ少なくして、その日の課題に関することを中心に簡潔に指示をする必要があります。とはいえ、毎回確認しておかないと徹底できないようで、不安でもあります。
そこで、このようないつも共通する活動の進め方をルールにするのです。「話し合いのルール」「実験のルール」・・・。最初のうちは詳しく説明、指示が必要ですが、ルールにしてしまえば定着させやすくなります。教室の前に貼っておいて、いつでも確認できるようにするのもいいでしょう。

「話し合いのルールはなんだった。思い出せない人は前を見て確認しよう」

といった指示で済みます。
また、課題ができた子に対する次の指示を、活動中に口頭ですることもよくありますが、まだ作業中の子は自分の課題に集中しているので指示をきちんとは聞きません。そこで、「できた人への指示は黒板に書いておく」というルールにしておけば、できた子は黒板を見て次の課題に取り組むので、遊ぶこともありません。

日ごろの指示で、教室のルールにできそうなものは、ルール化するとよいと思います。

一人で考えることにこだわりすぎない

グループ活動や話し合いの前に、自分の考えを持たせたい。そのためにどのくらいの時間を取ればよいのかと相談されることがよくあります。

自分の考えを持たないと人の話を聞くだけで受け身になって、話し合いに参加できない。
最低一つは自分の考えを持たせてから、グループ活動に参加させたい。

教師にはこのような思いがあるのですが、すべての子に考えを持たせようとすると時間がかかるため、肝心の話し合いの活動の時間が無くなってしまいます。だから相談されるのです。このような相談をされる方は、自分の考えを持たせるために「一人で考える」よう指示していることが多いのです。
実際に授業を見ていると、考えを持てない子は時間を与えてもなかなか持てるようになりません。余分に時間を与えたからといって、考えを持てるようになるわけではないのです。逆に、早く考えを持てた子どもがだれてしまうこともあります。

自分の考えを持つことと、一人で考えることは決して同じではありません。考えを持つためには人の考えを聞くことも大切です。一人で考えて行き詰るなら友だちと相談してもよいのです。一人で考える「時間」にとらわれるより、自分の考えを持てる「活動」を大切にしてほしいのです。そう考えれば、「一人で考える」ことにこだわらず、最初からグループで相談する、苦しくなったら相談するという選択肢も出てきます。大切なのは、友だちとのかかわり合いの中で、答えという「結果」を共有するのではなく、どのように考えたかの「過程」を共有するように指導することです。

「最初に、こう考えたんだけど」
「こうやったけどうまくいかなかった」
「問題の意味がよくわからない」

このような言葉が出るようにすれば、自分の考えを持てていない子どもも、話し合いに参加できるようになります。人とかかわりながら自分の考えを持つことができるようになります。「一人で考える」ことにこだわりすぎないようにしてください。

根拠を問う

子どもに発言を求めるときに、答えや結果だけを確認する場面に出会うことがよくあります。

「主人公はこのときどんな気持だったと思う。考えを聞かせてください」
「とても悲しかったと思います」
「そうです。悲しかったんだね」

しかし、同じ答えだからといってそこにいたる過程や根拠は一人ひとり違うことがあります。また、そこにたどり着けなかった子どもは、結果だけを聞いても何故そうなるか理解できません。子どもに根拠を問うことで結果に至る過程を明らかにする必要があるのです。

「とても悲しかったと思います」
「なるほど、とても悲しかったと思ったんだ。それは、どこでわかるの」
「○ページの△行目に・・・と書いてあるので、ああ悲しいんだなと思いました」
「じゃあ、そこを読んでみて。・・・納得した人手を挙げて」

大人でも「なぜ」と根拠を問われると答えにくいものです。「どこでわかった」「それってどういうこと」と聞くことで、答えやすくなります。

資料から探すような場面でも、

「この人物はどういうことをした人。Aさん教えて」
「○○をした人です」
「それってどうやってわかった」
「資料集の何ページの下の方に書いてありました」
「あっ、あった」
「Bさん見つかった。何って書いてあった」

このようにすることで資料集のよさや使い方を子どもは身につけていきます。

「子どもの発言に対して、必ず根拠を聞くようにするといいよ」とアドバイスした先生に、その後を聞く機会がありました。
子どもが元気よく挙手をする学級でしたが、挙手の数が減ったそうです。今まで根拠を意識していなかった子どもが、根拠を考えるようになったためです。そのかわり首を傾けたりして考える場面が増え、友だちの発言を今まで以上に聞くようなったそうです。

根拠を聞くことで、子どもたちはより深く考えるようにもなるのです。

会場と舞台をつなぐ難しさ

昨日は市の研修会で模擬授業の解説を行ってきました。200人が参加する大規模なものでした。

この市では初めての試みで、しかも大きな市民会館の大ホールでの模擬授業ということもあり、最初会場の雰囲気は固かったのですが、次第に模擬授業を見ながらいろいろな反応を見せてくれるようになりました。しかし、私の取り回しが悪く、なかなかうまく拾って全体の問題とすることができません。私の視点での問いかけが多く、会場の先生方の疑問とうまくリンクしていなかったのかもしれません。
模擬授業も終わりに近づいたころ、授業者が、ここはどのように進めるといいか、どのような問いかけがいいかを子ども役の先生と相談しながら進め始めました。授業者の先生と子ども役の先生が自然に一体となって授業を考え始めたのです。
これが模擬授業のよさです。会場の先生方も一緒になって考えているのがよくわかります。模擬授業の中で自然に出てきた疑問や課題であったので、会場全体に広がり、舞台とつながっていったのでしょう。

授業者の先生と子ども役の先生のおかげで、授業をみんなで考えるよさを伝えることができたと思います。ありがとうございました。
最後に取りまとめの校長先生から、この研修を材料としてそれぞれの視点から各学校で料理してくださいという挨拶がありました。私もこの研修から会場と舞台をつなぐ難しさをあらためて実感しました。よい経験として今後に生かしたいと思います。

ベテランと若手が参加する研修

昨日は終日市主催の授業力研修の講師を務めました。各学校からベテランと若手2〜3名が参加して、その内容を校内に広めてもらおうというものです。若手教師2名が午前と午後にそれぞれ模擬授業を行ってくれました。

私が研修で行う模擬授業は、よいと思った場面、気になる場面があればすぐに止めて、その場面を参加者と振り返ります。今回は基本的なスキルの部分に焦点を当てたかったので、最初の授業はどうしても短い間隔で止めることになってしまいました。授業者にとっては流れが中断してしまうので大変やりにくかったともいます。それにもめげずガッツで最後まで乗り切ってくれた授業者のおかげで、具体的な話ができました。

午後の模擬授業は、1学期に実際にやった授業を再現してくれました。子ども役から出た意見が、教師の予想とはかなり異なったものなので授業者が困って助けを求めるシーンがありました。これが模擬授業のよいところです。このあと、どうすればよいのかを全体で考えることができました。最後に実際の子どもの発表の資料を見せてもらい、教師の考えと子どもの考えの違いがよくわかり、授業者が戸惑った理由も納得できました。

また、授業者はグループ活動に入る前に個人の考えを最低一つは持たせようと個人で考える時間をとっていました。その意図を聞いたところ、グループになった時に聞くばかりでなく話せるようにしたいからということでした。一方では、時間をかければわからない子が自分の考えを持てるようになるわけではない。時間で切るべきだという意見も出てきました。そのとき、わからない子は自分の考えをなかなかもてないので、どこがわからないかだけははっきりさせる。グループでの話し合いは、わからない子が、どこがわからないかを発表して、他の子がそれにこたえることから始める。このことをルールにしていると、自分の実践を発表してくださる先生がいらっしゃいました。この話に参加者全員が納得!! 私自身も大変よいことを教えていただきました。

若手教師のガッツや素直さ、ベテラン教師の実践力。ベテランも若手も参加する研修は、それぞれのよさの相乗効果で、実りの多いものになりました。次回は、私が仕切らずに各グループで授業を検討してもらいます。若手とベテランがどのような化学反応を起こしてくれるのか楽しみです。

やっぱり教師は授業が好き

昨日は中学校の現職教育で模擬授業をコーディネートしてきました。

この学校では模擬授業は初の試みです。先生方も、授業者もどうなるかとやや緊張気味でした。
中学校ですので、参加される先生の教科はばらばらです。教科の特性に影響されやすい、授業の流れより、個々の場面で起こったこととその対応を一緒に考えてもらうことを中心にしました。日ごろ手を焼いている生徒がいるのでしょう、問題のある生徒役の先生はとてもリアルに演じてくれます。思わずこんなシーンあるあるとうなずいていました。

机間指導は何をすればよいのか
友だちの発言を聞けていなかった理由はなぜなのか
指名されていない生徒が答えをつぶやきやき教師の気を引こうとしているときどう対応するのか
教師の発問意図がなぜ子どもに伝わらないのか
グループ活動のあと子どもの発言を引き出すためにどう問いかけるか
・・・

模擬授業から気づいたたくさんの疑問や問題を先生方と考えることができました。

最初かたかった先生方の表情もほぐれ、若手は子どもの立場に立った素直な感想を、中堅は生徒役で迫真の演技を、ベテランはこの問題の原因はここにあるのではないかとさすがの指摘を、授業者の先生は自分の行動や発問の意図を、それぞれの立場や経験に応じた活躍を見せてくださいました。模擬授業を通じて先生方がつながっていくのを感じました。たくさんの笑顔と真剣な表情に、先生は授業が好きなんだとあらためて実感しました。私自身もたくさんのことを学ばせていただいたとても楽しい時間でした。

継続すること

昨日は、授業力アップのセミナーにオブザーバーとして参加しました。このセミナーは先生のグループが自主的に開催しているもので、市教委などの後援はあっても基本的には手弁当の会です。
今年で8年目になりますが、参加者、スタッフの熱気あふれる大変よいセミナーです。新任の参加者が多いのですが、自腹を切ってこのような研修に参加するということは、この市の新任研修が受講者にとって有意義なものであることの証だと思います。(研修嫌いの若手が多い市町も結構たくさんあります)

このセミナーのスタッフには、毎年若手が参加していますが、何年か前に受講者の中に見た顔がスタッフとして成長した姿を見せてくれることはうれしい驚きです。しかも、裏方だけではなく、グループでの実習のリーダーとして進行から受講生へのコメントまでをこなしています。この会のリーダーの先生方がいかに若い先生をフォローし育てているかがよくわかります。

今回は、特に若手がリーダーをしているグループを中心に参観しました。若さあふれる、決して上から目線ではない、参加者とともに学ぶ姿勢が印象的でした。スタッフとして活躍することで、彼らもより多くのことを学んだことと思います。
先日授業参観した若手教師もスタッフとし参加していましたが、緊張している受講者を持ち前の笑顔でほぐしながら、見事に進めていました。この先生の学級がよい状態であった理由がよくわかりました。

余談ですが、雑談の中で、先日の私のアドバイスをすぐに実行して、子どもの変化を手ごたえとして感じ始めているとのことでした。素直に他人の言葉を受け止める姿勢が素晴らしいと思いました。次にお会いする時はより成長した姿を見せてくれることでしょう。

また、毎年新しいことにチャレンジしていることもこのセミナーの特徴です。評価の高さに安住することなく、より高いものを目指すからこそこれだけ会を重ねることができたのだと思います。当然参観する私もたくさんのことを学ぶことができます。このセミナーに欠かさず参加するようにしている所以です。

毎年同じことの繰り返しでは、その先に待つのは穏やかな死です。新しい血を取り入れながら、常により高いところを目指さなければ継続していきません。このことをあらためて教えていただいた一日でした。

事前に子どもの考えを知ることの落とし穴

子どもがどんな考えを持っているかを知るために、机間指導でチェックしたり、グループでの話し合いをそばで聞くことはよくあります。この後の全体での追究場面で生かすためです。最初にこの意見を出させて、次はこの子にあてて、最後はこの意見で締めよう。このような進め方のシナリオをつくることもよくあります。このこと自体は決して間違いではないのですが、注意してほしいことがいくつかあります。

教師が指名する時にあらかじめその子がどのような答えをするかわかっているため、子どもの発言が不完全でも教師は理解できてしまいます。しかし、他の子どもたちは初めて聞くのですから、教師よりも理解度は落ちます。子どもたちが発言を理解できず、考えが全体に広がっていないのに教師が次々指名して、教師の予定した結論に導いてしまうこともあります。教師はあらかじめシナリオをつくっているので、子どもの状況を把握することより、予定した通りに進めることを優先してしまうからです。

また、全体の場で出てきた意見を受けて考えが変わることもあります。当然、教師が予定していた意見を子どもが言ってくれないこともあります。そのようなとき、「ノートに書いたことを言って」と無理やり予定した発言を引きだそうとすると、子どもは自分が最初に発言したことを否定されたような気持ちになってしまいます。

事前に把握している子どもの考えにとらわれず、出てきた意見をきちんと子どもたちに広げて、子どもたちの反応に応じて、時には予定したシナリオを捨てることも必要です。事前に子どもたちの考えを知ることが悪いことではありません。それにとらわれず、子どもたちの状況に柔軟に対応することが大切なのです。

ほめることは難しい?

子どもたちをほめて伸ばすということが、よくいわれます。ところが、このほめることがうまくできない、ほめ方を教えてくれという相談がよくあります。中には、「悪いところばかりの子どもをどうやってほめるの?」と質問する方もいます。子どもたちをほめるには、難しいことなのでしょうか、どのようなことに気をつければいいのでしょうか。

まず、ほめる観点が具体的であることが大切です。「積極的に取り組んでいる」ことをほめるのであれば、それがどのような子どもの姿でわかるのかを明確にすることです。そして、どのような場面で見られるかを明確にしておくことです。具体的な姿を意識して、その姿が見られる場面をつくることで、子どものよい姿を見つけることができるのです。見ようとしないと見られないのです。

また、教師の中に絶対的な基準があって、これができればほめるという発想だと、どうしても能力の高い子、よい子ばかりがほめられることになります。教師にはどうしても完璧を求める傾向があります。最終目標は高くてよいのですが、そこに足りないところを見つけて指摘するのではなく、出来たところまでをほめるのです。こうして、一人ひとりの成長したところ、できたことをほめるようにすればすべての子どもをほめることができます。

「Aさん、プリントが配られてすぐに名前を書いたね。えらいね」
「Bさん、すぐに鉛筆を持ったね。やる気があっていいね」

こんなことでも、普段なかなかできない子であれば、ほめていいのです。全員を同じ基準で見るのではなく、個人内相対評価をしてあげることが必要です。

教師が子どもたち一人ひとりのほめたい姿を明確にして、その姿を見ようとすれば、ほめることは難しくないはずです。
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