日ごとに春の息吹を感じる中、本日ここに、第７２回卒業式を挙行いたします。今年度は、新型コロナウィルスの影響で、様々な面で、卒業生の皆さんには、辛い一年間となってしまいましたし、今回の卒業式も普段とは違う形となり、心苦しい思いでいっぱいです。緊急事態宣言中でもありますが、一人一人の思いを受け止めつつ、気持ちだけは前向きな卒業式にしたいと思っています。
　卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。皆さんは、本校の第７２回目の卒業生です、先ほど、皆さん一人一人に卒業証書をお渡しいたしましたが、私が、昨年稲付中学校に赴任してから、運動会や面接練習等を経て、皆さんと話をするごとに、一人一人が着実に成長する姿を見て、稲付中学校の最高学年としての自覚と誇りをもって学校生活を送る卒業生の皆さんに改めて感謝の思いを抱きました。進路に向けての面接練習では、厳しいことも申し上げましたが、見事に乗り越え、次のステップへの第一歩を踏み出すことができました。
皆さんは、本日をもって、中学校３年間の全過程を修了しました。これは、中学校だけではなく、小学校と合わせて、９年間の義務教育を修了し、社会人としての基礎を身に付けて、自分で責任をとらなければならない独り立ちの出発点に立ったということです。
　四月からは、皆さんは、それぞれが選んだ別々の道に進みます。そして、自ら判断して行動することも多くなってきます。これからの社会を担う皆さんには、新型コロナウィルス対応のように、予測不能な答えのない問題に対応する力が求められています。その第一歩として、稲付中学校で学んだことは、必ず、皆さんの将来につながります。特に大切なことは、学ぶにあたって、「何を学んだのか」「どのように学んだのか」「学んだことをどう生かすのか」という視点です。さらに、制限の中での開催予定となりますが、２０２１年は、東京で、オリンピック・パラリンピックが開催される予定です。ますます進むグローバル化の波の中で、国際的視野を磨き、これからの日本を、そして、世界に貢献できる人になってほしいと心から願っています、
　さて、卒業にあたり、皆さんに、次の詩を贈ります。田舞徳太郎（たまいとくたろう）さんの「挑戦」という詩です。

　挑戦

　この世には二つに一つの選択しかない
　あきらめて生きるか
　挑戦し続けて生きるか

　あきらめて生きている人があまりにも多い
　自分を妥協し自分を偽り
　他人のせいにし言い訳を続け
　弱音をはいてあわれみを乞い人生を生きている

　あきらめ・・なんと安易な言葉だろう

　挑戦こそが人生だ
　困難にあえて挑戦し困難を乗り越え
　自分らしく生きる

　挑戦するから命が燃える
　挑戦するから魂が生きる
　挑戦こそが新しい道を切り開く

　昨年度から続く、新型コロナウィルスは、日本だけではなく、世界中の人々が様々な課題をつきつけられました。ＳＮＳ等での謂れのない誹謗中傷等、大人の世界は、あいかわらずどろどろしていて、矛盾しているところもたくさんあり、未来を担う若者が夢をもちにくい時代だといわれています。また、世界に目を向けても、紛争や争いごとは絶えず、教育を満足に受けられない子供もたくさんいます。そうした中で、卓球の張本智和選手、伊藤美誠選手、テニスの大阪なおみ選手、スキージャンプの小林陵侑選手、高梨沙羅選手、フィギュアスケートの紀平梨花選手など、日本人選手の世界での活躍もありました。紀平梨花選手は、練習は本当に大変で、今の活躍も、たくさんの経験を積んだ結果であり、遊びもほとんどせず、スケートの練習にあてていると述べています。一方、同じように努力しても、なかなか結果に結び付かないことのほうが、世の中には多くあることも、皆さんは少しずつわかってきていると思います。
けれども、挑戦しなければ、何も始まりません。挑戦すること、誠実なこと、前向きなこと・・をださいだとか、かっこ悪いだとかいう人がいます。その通りです。けれども、そんなださいこと、かっこ悪いことを懸命にやっている人がいるからこそ、世の中が正常に動いていることも忘れないでください。コロナ対応での医療従事者の方々の努力など、誠実に頑張っている人がいます。懸命に努力をして、時には報われない挑戦をしている人たちが世の中を支えていることも事実です。そういう人たちから、たくさんのことを学んでください。誘惑の多いご時世ですが、安易な方向に流されず、いつも自分と正面から向き合える人になってください。
　
　皆さんは、それぞれがとても素直で優しさと思いやりの気持ちをもっています。誠実さ、謙虚さ、勤勉さが今までの日本を支えてきました。その誠実さや素直な気持ちをさらに伸ばしてください。
皆さんは、保護者の方々、地域の方々、先生方や友達など、多くの方々の陰からの支えによって成長してきました。そして、これからは、誰からも必要とされるような豊かな感性と確かな力を身に付け、誰かのそして何かの役に立てるような人になってください。自分だけではなく、たくさんの人たちによって世の中が成り立っているということを忘れずに、常に前を向いて歩んでいける人になってください。素晴らしい未来を君たち自身の手で築いてほしいと心から願っています。
　
　結びになりますが、保護者の皆様、中学校時代は多感な時期でもあり、特に今年度は、新型コロナウィルス対応で、ご苦労されたこと、心を痛めることも多かったことと思います。その分、今年度は、複雑な思いとともに、喜びもひとしおではないかとお察しいたします。お子様が生きるこれからの時代は、変化の激しい時代になることは間違いありません。しかし、どんな困難な時代であっても、お子様たちは、本校で学んだことを基礎として、これからの人生を力強く生き抜いてくれるものと信じております。この３年間、ＰＴＡ活動や地域活動を通して、本校の教育にお寄せくださいましたご協力・ご支援に心から感謝を申し上げます。今後とも、地域で卒業生たちの成長を見守っていただきたくお願い申し上げます。
　本日の卒業式が、皆さんの輝かしい未来への第一歩となることを祈念し、本日の式辞といたします。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　令和３年３月１９日
　　　　　　　　　　　　　　　　北区立稲付中学校　石川　俊一郎