活動中心の研修

市教育委員会主催、若手小学校教師対象の授業づくり研修を行ってきました。3時間弱の長時間のものです。

昨年も同様の研修を行いましたが、私の講義が中心で、参加者同士のかかわる時間は最後に40分ほど取っただけでした。参加者はとても熱心に参加してくれましたが、それでも長時間の講義だと集中力も切れてきます。今年は、これからの学校教育の方向性について30分ほどの講義をして、残りのほとんどの時間をグループ活動にしました。昨年の講義の内容は資料にして事前に配布しておきました。
最初のグループ活動は、アイスブレークも兼ねて、「困っていることや悩みごと」「上手くいったこと、楽しかったこと」を聞き合ってもらいました。講義中は顔があまり上がらなかった方も、この時間は楽しそうに参加してくれていました。日ごろ同世代の先生方と雑談することが少ないようで、よい機会になったようです。また、研修担当の指導主事にお願いして、地域や経歴ができるだけ多様になるようなメンバー構成でグループをつくっていただいたことも、よい結果につながったようです。地域や学校でいろいろな違いがあることに驚いたという感想が多く聞かれました。
メインの課題は「来年の新人へのちょっとだけ先輩からのアドバイス」で、グループごとに1枚のスライドにまとめるというものです。新人へのアドバイスとすることで、これまでの教師生活を肩に力を入れずに振り返ることができるのではないかと考えてこのような課題にしました。
持参してもらったタブレットを使い、クラウド上で共同編集しながらスライドを作成します。一つのファイルにグループごとに1枚のスライドを割り当てたものを準備していただき、作成途中でも他のグループのスライドを見られるようにしました。一部のタブレットは研修会場のネット環境に接続するために設定変更をする必要がありましたが、教育委員会のICT担当の方が、講義の間に手早く対応してくださいました。感謝です。一人一台端末の活用についてはまだまだこれからという学校も多いようなので、子どもたちの立場に立ってタブレットを使うよさを体感してもらいたいという思いもありました。
この課題では、アイスブレークの時と違って、テンションはそれほど上がりません。しかし、額を寄せ合っている姿から、集中して考えていることがよくわかります。ある程度完成してくると、余裕も出てきたのか他のグループのスライドを見る姿が見られ始めました。
興味深かったのが、授業に関することよりも、自身の心身の健康に関するものや保護者への対応についてのアドバイスが目立ったことです。また、中には、先輩のアドバイスを聞くことは大切だが、それらに振り回されないようにすることをアドバイスとして挙げているグループもありました。いろいろな方からアドバイスをされて困惑している姿が透けて見えます。これらのスライドには今の若い先生方の置かれている状況や悩みがよくあらわれているので、管理職研修などでも参考資料として活用できると思いました。私もとてもよい情報を得ることができました。

全部で12グループあるので、すべてのグループに発表してもらう時間はありません。とはいえ、ただ、「みんなのスライドを見あって」という指示で活動しても浅いものに終わってしまいます。実際の授業での全体での学びの場面の進め方をイメージできるように意識して進めてみました。まず、スライドを見て「聞いてみたいと思うグループは?」と問いかけてみました。ただ見るではなく目的を持たせるのです。スライドを次々見ている者もあれば特定の所で止まっている者もいます。その姿に応じて声かけや指名を考えます。手が止まっていれば、「このスライドをさっきから見ているね、何か気になるの?」「このスライドについて聞きたいの?」などと声をかけて、反応を引き出します。内容の発表の代わりに「どうやって内容を決めたの?」と過程を共有したり、「何を意識してつくった?」と思いを伝えてもらったりします。それを受けて、「なるほどね。みんな伝わった?」と制作者の視点を受けて、その考えが伝わったかどうか評価してもらいます。内容についても、「似たことを考えたグループある?」「似たスライドはないか探してみて」、「これまでとは違ったスライドはない?」と意識して他のスライドを見るように問いかけをしてみました。
進め方の意図については解説しませんでしたが、事後のアンケートでは私の意図に気づいている先生がかなりいて感心しました。活動が多かったことで楽しかったという感想を持つと同時に、普段の授業でも子どもたちの活動を大切にする必要があると気づいた方も一定数いました。
担当の指導主事には、作成したスライドとともに参加者のアンケートも一覧できるようにすることをお願いしました。仲間の気づきからも学べることがたくさんあるはずだと思うからです。子どもたちの振り返りを共有することの意味に気づいてくれると思います。
一方的に教えるのではなく、自ら気づくような研修を目指してみましたが、まずまずの手ごたえがありました。次の機会があれば、より多くの気づきと学びがあるような研修になるよう工夫したいと思います。
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