ワクワクを感じた校内研修

私立の中学校高等学校の校内研修にコメンテーターとして参加しました。中学校、高等学校のコースごとの現状報告とワーキンググループの中間発表の2部構成です。

今年開設した高等学校の主体的な探究活動を重視するコースでは、生徒が学校での活動について語ったものを自分たちで動画にしてPTA懇談会で発表したようです。機器の不調でその動画をしっかりとは見ることができませんでしたが、障がい者や海外との交流など、社会とつながる活動から生きた知識を学ぼうとしていることを感じました。自分のアイデンティティを持つという言葉が印象的でした。

従来の特別進学コースをリニューアルしたコースでは、具体的な目標を明確にした活動を意識しているようです。英検取得などの目標を意識した授業を展開しています。また、卒業生とのインタビューを冊子にまとめるなど、卒業生とのつながりを活用した進路指導を進めています。また、昨年までは、他のコースより授業時数が多かったのですが、今年から他のコースと同じとすることで終業時刻が同じになり、部活動への参加がしやすくなったようです。文武両道が意識されています。学生生活の充実と進路指導を意識した改革が進んでいるように感じました。

従来の一般のコースをリニューアルしたコースでは、生徒が落ち着いて前向きに学校生活を送っていることが報告されました。学校全体で取り組んでいる毎時間のリフレクションシートについて、当初は書くのが大変だという声が多かったようです。慣れるまでは時間も手間もかかるが、学校全体で取り組めば次第に素早くしっかり書けるようになっていくといろいろな学校で聞きます。この学校も全体で取り組んでいるので、次第に定着してきているようです。
コースを2分割してカリキュラムは同じだが実質別の2コースとして運営していますが、小集団化することで子どもたちの仲間意識や教師のチームワークがよくなっているようです。こういった試みは私がかかわらせていただいている他の学校でも検討されています。規模の大きい学校では検討に値すると思います。
学力をどのようにして伸ばすのかがこのコースでの課題の一つですが、子どもの自主性・主体性を高めることをその解決の糸口として考えています。これは正しい方向だと思います。一人ひとりの状況に応じて異なるアプローチを用意して対応しようと、意欲的に取り組んでいます。今後どのようになっていくかをしっかり見守っていきたいと思います。

キャリアを意識したコースでは、子どもたちによい人生を送ってほしいということを大きなテーマとして掲げています。体験から学ぶことを重視し、校外学習やインターンシップ、文化祭等の行事の充実、外部検定への挑戦といったことを軸としてカリキュラムを展開しています。生徒も積極的に参加し、楽しく学校生活を送っているようです。中でもインターンシップは子どもたちの進路を意識したものに変えるように検討されています。具体的には、これまでは面白そうなところ、行きたいところを選んでいたのを、将来を意識して各自が目指す目標にあったところを選択するように指導するようです。積極的に事前指導を行い、ていねいに時間をかけて取り組んでいくようです。
また、評価基準をコースごとではなく学校全体で統一するようになったため、このコースでは評定が従来より低くなる生徒が増えそうです。大学入試の推薦等で不利になりそうですが、推薦やAO入試で重視される表現力を高めることで対応するように考えているようです。表現力は社会に出ても役に立つスキルなので、この方向性はよいと思います。一方で、力のある生徒たちも一定数いますので、彼らを伸ばす取り組みも考える必要があります。多様な課題がありますが、生徒たちの前向きな気持ちを上手く引き出すことで乗り切ってほしいと思います。

中学校では、未来を生きるために力をつけることを目標としています。未来は不確定だからこそ、未来生きる子どもたち自身がつくっていくという考えです。従来の私立中学校の偏差値ランクから脱却して、この学校だからこそできる学びを大切にしたいという思いを強く感じました。
具体的にはプロジェクト学習を柱にしたカリキュラムを考えています。ゼミ形式の活動から始め、プロジェクト学習へとつなげていきます。学校独自のカリキュラムとしてLanguage Arts(言語技術)で論理的思考や正しい日本語を身につけ、未来ゼミでこれからの時代に必要となる力を身につけます。続いて、地域社会や異文化を理解しコミュニケーションを取れる力をつけるプログラムでグローバル社会を生きる力を身につけていきます。今後どのような成果が出てくるのか楽しみにしたいと思います。

「放課後学びカフェ」ワーキンググループでは、高等学校で授業時数を減らして浮いた時間を、子どもたちの自由な学びの時間とする試みです。生徒が「自分の情熱を語れるか?」という課題意識が根っこにあるようです。単に受け身で勉強するのではなく、自分の興味関心を持てるものを見つけるための試みです。3年間でいろいろな体験を積み、自分の目指すもの見つけることを願って、放課後にいろいろな活動ができる環境をつくろうとしています。先生方が思い思いのプログラムを準備し、子どもたちに好きに選んで参加してもらうのです。中には、ウクライナ在住記者とZOOMで話をするといった面白い企画もあります。一方、先生方のボランティア的な部分もあり、魅力的な企画をどれだけ提供できるかが課題です。外部の力を利用することも含め、今後どのように展開していくか、思い切った方策が必要かもしれません。

今年度より外部が提供する「グローバルコンピテンス」プログラムを実施しています。他者の視点や世界観を理解した上で、自分は何者であるのかを明確にして他者とコミュニケーションする力をつけていくといったものです。このプログラムでどのような力がついてくるかをしっかりと見極めていくことが必要でしょう。今後が楽しみです。

「言語力・論理力」ワーキンググループは、つくば言語技術教育研究所のLanguage Arts(言語技術)をもとにカリキュラムをつくっています。AIに負けない力をつけることを目指して、「型を学ぶ」⇒「型を活かす」⇒「思考と表現を自分の言葉で話す」という3つの段階で構成しようとしています。学校の実態に合ったカリキュラムとするにはまだまだ試行錯誤が必要だと思いますが、地道に改善を続けてほしいと思います。

「修学旅行」ワーキンググループは時間のない中、大胆な改革を打ち出しました。修学旅行を各自の学びの先につながるものとしてとらえ、多様な目標に対応する全部で8つのコースに分けることを提案しました。引率教師の人数に制限がありますので、担当者一人ひとりの役割と責任が重くなります。それでも、あえて踏み切ったことを評価したいと思います。交通機関や宿泊施設の手配のタイムリミットが近づく中での決定、発表だったため、事前に全体のコンセンサスを取る時間がなかったことで若干混乱がありましたが、是非前向きに進んでほしいと思います。

私からは、これだけ新しいことや、変革が多方面で同時進行していることをどのようにとらえるのかについてお話ししました。正直自分が先生方の立場であれば、「大変だ、やり切れるのか」と後ろ向きにとらえるかもしれません。しかし、社会から求められる学校の姿は大きく変わろうとしています。ICT機器の活用に対しても数年前までは後ろ向きの方もいらっしゃいましたが、どのように活用しているかは別にして、活用することそのものに否定的な方は今ではいません。学校改革は社会から求められ、逃れることはできないことです。どうせなら、何が起こるか、どうなるかとワクワクしながら挑戦し、たとえ失敗しても笑い飛ばして再挑戦するぐらいの方が楽しいし、最終的に結果もついてくると思います。少なくとも、この日発表された方からは、ワクワクを感じることができました。すべての先生方がワクワクして過ごすことを願っているとお伝えしました。
この学校にかかわらせていただきずいぶん時間が経ちました。初めておじゃましたころと比べると、当時では想像できないくらいに学校の様子は大きく進化しています。私自身も、この学校が今後どうなっていくのかとてもワクワクしています。皆さんと一緒に学校の変化、子どもたちの変化を楽しみたいと思います。
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