うれしい報告をたくさん聞く

私立の中学校高等学校で先生方の報告・相談を受けてきました。

英語の若手は自分の学級や授業で子どもたちの雰囲気が硬いことについての相談でした。私も前回訪問時に学習規律はとてもよい反面、同様のことを感じ、今回そのことについてお話しようと思っていたのですが、自分でちゃんと気づいていました。学習規律がしっかりとできていると、多くの先生はそれで満足してしまいます。しかし、そこに留まらずに、課題に気づいて解決しようとする姿勢は立派です。子どもたちをしっかりと見ているからこそ気づけるのだと思います。この先生が短い期間に急激に成長をしている理由がわかります。
子どもたちに判断させる、委ねる場面をつくることを意識することをアドバイスしました。具体的には今までスモールステップで指示して活動させていたことを、活動のゴールだけを示して、そこに到達する方法は自分たちで考えさせるといったやり方です。ポイントは、全く白紙の状態で活動させるのではなく、これまでの活動を思い出して参考にさせることで、どのようにすればよいか考えやすくすることです。これまでの経験をもとに、少しずつ子どもたちが主体的に判断する領域を増やしてあげるのです。
また、子どもたちの雰囲気を柔らかくするためには、自信を持たせることも大切です。小さな進歩を見つけて認めることが重要になりますが、そのためには、子どもたちをしっかりと観察するだけでなく、進歩を見つける、認めるための活動を組み込むことが大切になります。例えば、英語の音読であれば、練習をiPadに録音しておいて、最初と最後を比べてみることで、自分でも進歩がはっきりと認識できるはずです。
前向きな先生ですので、私のちょっとしたヒントで自分なりのやり方を見つけてくれると思います。次回どのような進化をしているかとても楽しみです。

進路担当の先生からは、OBからのうれしい報告がたくさんあったことを聞かせていただきました。高校時代に学んだレポートの書き方など、この学校で新たに取り入れた学習内容が、大学でとても役に立っているという報告です。大学の先生からとてもほめられて、自信をつけているようです。在学中は意識していなかったこの学校での学びのよさを、大学に入ってから気づいたようでした。従来の大学受験対策のような授業を求める子どもたちが少なからずいたことに悩んでいた先生も、こういった子どもたちの声を聞くにつれ手ごたえを感じ自信をつけてきているようです。これからの子どもたちにつけたい力は何かを意識して授業を変えてきたことが、よい結果を生み出し始めているように思います。OBからの報告をビデオレターなどで、在校生に伝えてほしいと思います。
指定校推薦の選抜方法も新しいやり方に変えようとしています。従来の学習の評定や部活動の成績だけでなく、大学が志願者に求めている要件を明確にし、それにふさわしい子どもを選考しようというのです。具体的には、志望理由や希望校のアドミッションポリシーに自分が相応しいというアピール文章、プレゼン動画といった、AO入試に求められるものと同様のレベルものを提出させ、それらをもとに総合判断するというものです。こういった改革に抵抗を示す先生もいると思いますが、大学と志望者のマッチングが上手くいくことで、今後指定校推薦の枠も広がっていくことが期待できます。推薦の選考方法を変えることで、子どもたちの新たな能力や側面が見えてくると思います。子どもたちの姿で先生方の意識を変えていけると思います。
次年度以降、新たなプロジェクト型の外部プログラムの導入も検討されているようです。外部プログラムの導入時に注意すべきは、外部に任せっきりにしてしまわないことです。自分たちも積極的にかかわり、学校の実情に合わせて内容や進め方を調整することが必要です。外部を使うからといって楽になるわけではありません。このことをお伝えしました。

中学校担当の新人の先生から、以前のアドバイス後の報告を受けました。
前回、漫然と机間指導するのではなく、子どもをよく見て必要な支援をすることをアドバイスしました。それからは、机間指導をやめ、全体を見て、困っている子どもを見つけるようにしているそうです、困っている子どもに対し、自分が教えるのではなくまわりの友だちに聞くように働きかけた結果、子どもたちが自然にまわりと相談するようになったようです。
また、以前は教師主導のため、どの学級でも同じ授業展開だったのが、子どもの意見が出やすくなり、それを活かすことで学級ごとに異なる展開が見られるようになったそうです。子どもを見る、子どもの意見を大切にすることで先生も子どもも授業が楽しくなってきたようです。
今回、試験問題をどうつくればよいかに悩んでいるという相談を受けました。授業の内容と試験問題がうまく連動しないようです。着けたい力と問題の関係を意識することが大切です。この単元でどんな力をつけたいか、その力が着いたかどうかを評価するにはどんな問題であればよいのかをしっかりと考える必要があります。単元に入る前に、どんな試験をするのかを先に考えるのも一つの方法です。また、試験を意識しすぎると一問一答形式の授業や板書になりやすくなります。これが正解だと先生が示さずに、自分たちで納得する答を見つけるような授業にすることもアドバイスしました。子どもの発言はできるだけそのまま板書し、発言の共通な部分や根拠をつないで、子どもたちがブラッシュアップしていくように進めることで、考えが深まっていくと思います。
素直にアドバイスを受け止める先生で、先輩からもしっかり学ぼうとしています。これからも着実に進歩していくと思います。

何人かの先生とは評価についての話になりました。来年度より高等学校でも観点別評価が取り入れられます。中学校では今年度より、全教科共通の3観点の評価になり、特に「主体的に学習に取り組む態度」についての評価に関しては、いろいろとご苦労されているようでした。毎時間の振り返りを大切にすると共に、単元ごとの区切りなどで、これまでの振り返りを振り返ってみることで、 自身の変化や成長に気づかせる場面をつくるとよいでしょう。子どものメタ認知を働かせるためにも、振り返りを整理して見られるようにすることが大切です。一人一台のiPadを活かす方法を工夫してほしいと思います。

学校全体として新しい学習観、学力観をもとにしたカリキュラムの作成が意識されています。これまでの試みの成果も見え始めています。その一方で、前向きに変化に対応しようとする先生と、これまでの学習観、学力観に固執している先生との意識の差が広がりつつあるようにも見えます。よい方向に変わりつつある子どもの姿を共有することで、このギャップは埋まっていくのではないかと思います。子どもたちの姿から、これからの時代を生きるために必要な力は何かを、先生方感じ取ってくれることを願っています。
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