長年、浅井北小学校を見守り続けてきた桜の木には、いつもと変わらずつぼみが大きく膨らみ、花も咲き始め、私たちに命の輝きとたくましさを静かに教えてくれています。本日、無事に卒業式が挙行することができました。式辞の一部を掲載させていただきます。今年度制限のある生活の中で、新しい道を切り拓いてきたきた子どもたちに「未来」についてどう考えるかを中心に話をしました。ご一読いただければ幸いです。
(前略)・・・あたり前であったことがあたり前でなくなったこの一年。とりわけ、この一年は皆さんにとって、小学校生活最後の大切な一年でした。ともすれば、目標や希望を失いかねない状況の中でも、常に皆さんは浅井北小学校の最高学年としての自覚を持ち、学校の先頭に立って様々なことに挑戦をし、新しい道をひらいてきました。通学班では、密を避けての登下校、低学年の子を気づかい安全に登下校できるようにしていました。皆さんと交わしたマスク越しの朝の挨拶、笑顔に私はいつも元気をもらっていました。また、運動会では、「がんばる君がみんなを笑顔に」の合言葉通り、一人一人が率先して全校の先頭に立ち、活躍することで、みんなが笑顔となり、心をつなげることができました。そして、学校生活の中では、下級生にとってよきお姉さん、お兄さんでした。
私がもっとも印象に残っている皆さんの姿は、修学旅行での姿です。バス車内でのビデオによるクイズ大会に始まり、行く先々での真摯な学びの姿、お世話になった方々への感謝を伝える行動、そして、互いを気遣い、仲間とともに過ごす楽しさを素直に表す姿に、胸を打たれました。私は修学旅行後、皆さんに「看板」についての話をしました。覚えていますか。「看板」の価値は自分ではなく、見た人が決める。みんなで掲げた浅井北小という看板は、歴史を感じさせながらも手入れの行き届いた思いやりを感じさせる看板として、行く先々で出会った人たちの目に映り、心に残るものであったよと話しましたね。この看板は、今、こうして目の前にいる皆さん一人一人がつくりあげた価値ある尊い看板です。どうぞ、そのことを誇りに思ってください。
できることを探し、新しい道を切り開いてきた皆さん、皆さんの思う未来の姿はどのようなものですか。今日は、未来について考えた一人の科学者について紹介をします。
その人の名は「アラン・ケイ」アメリカの計算科学者です。彼は「パーソナルコンピューターの父」と言われています。今から六十年ほど前、コンピューターは工場の機械のようにとても大きくて値段も高く、複数の人たちで動かすのが当たり前の時代でした。将来、コンピューターが持ち運びのできる大きさになると思う科学者はほとんどいませんでした。そんな中で、アラン・ケイは、「形も大きさもノートと同じぐらいで、子どもたちでも手軽に操作できる情報機械」の仕組みを考えていたのです。それは、当時の人たちにとってはあり得ない、まさに夢のような話だったのです。しかし、その後、皆さんも知っているようにパソコンは現実のものとなり、新型コロナが流行した今年度は、先生と皆さんがオンラインで交流したように、世界中の人たちをつなぐ大切な道具となっています。
「できるはずがない」とみんなが思ったことを現実にしたアラン・ケイは、未来についてこのように語っています。「未来を予測するもっともよい方法は、その未来を作り出すことだ」と。これはまさに「できるかどうかわからなかった」学校生活の未来について、皆さんが「こうなりたい」という願いをもち、知恵と工夫で作り上げたことにつながります。また、彼は「未来は、あらかじめひかれた線路の延長線上にあるのではない。それは我々自身が決定できるようなものであり、我々が望むような方向に作ることのできるものである」と言っています。皆さんの未来は与えられるものばかりではなく、自分で自由に創っていけるものなのです。
しかし、自分の未来を切り開くことは、決してたやすいことではありません。迷ったり、悩んだりすることがあるでしょう。そんなとき大切にしてほしいことは、今年度皆さんと考え続けてきた「これならできる」と考えるしなやかな心をもつということです。「できない」「無理だ」とやれない理由を探すのではなく、「今、やれること」を自分で考え、たとえ小さな一歩であっても、「できた」と幸せに感じること、そして、できる限りの努力をした、と自分自身に言える生き方を、ぜひしてほしいと思います。失敗は、未来に進むための大切な経験です。失敗を経験し、考えることで、未来は近づきます。失敗をおそれず、あきらめずに歩み続けてください。
・・・・・(中略)・・・・・
「これならできる」と考えるしなやかな心、そして支えてくれる人々への感謝の気持ちを忘れなければきっと、人生は豊かになり、未来を切り拓く力がわいてくるでしょう。どうぞ、自分の信じる未来に向けて、勇気と感謝をもって大きく羽ばたいてください。皆さんなら、新しい未来を、歴史を作れる人になれるはずです。
最後に、本日は出席していただきませんでしたが、常に地域の宝として子どもたちを温かく見守り、支えてくださった地域の皆様の温かいご支援があったからこそ、今日の日を迎えることができました。卒業生や学校を支えてくださった多くの方々に、深く感謝申し上げますとともに、巣立ちゆく卒業生の皆さんの未来に、幸多かれと祈念して、式辞といたします。
令和三年三月十九日
一宮市立浅井北小学校長
太 田 暢 子