3年生の変化に驚く
中学校で授業アドバイスを行いました。前回訪問は新型コロナウイルス感染予防の休校が明けた直後でした。今回はその時と比べて子どもたちにどのような変化があるのか楽しみでした。
3年生は教室の前の廊下に立った瞬間に空気の違いを感じました。間違って他の学年のフロアに来てしまったのかと思うほどです。全員が真剣に授業に集中していて、程よい緊張感が漂います。これは程度の差こそあれ3年生のどの学級でも共通です。この数か月で何があったのかとても気になります。学年全体で進路意識を高める取り組みを積極的に行ったことがよい方向に作用したようです。例えば、今年はオープンスクールが開かれないため高校の情報が子どもたちに不足するので、学年の先生方が進路指導部と相談して「卒業生の話を聞く会」を8月に開催したそうです。身近な先輩の生の声は子どもたちの進路意識を高めるのによい影響を与えたようです。また。部活動の大会が自粛、縮小されたこともあり、例年よりも受験に向かって気持ちを切り替えるのが早まったようです。新型コロナウイルスが思わぬ形で影響しています。 この学年では授業を見ると学習についていくのが苦しい子どもがだれかよくわかったのですが、この日は気づけませんでした。どの子どもも前向きに学習に取り組もうとしているようです。受験に向かって気持ちが切り替わったのはよいのですが、だからといってすぐに学習の後れを取り戻せるわけではありません。彼らが授業についていけているのか少し不安です。先生の話を聞いて答や板書を写しているだけでは理解できずに、そのうち気持ちが折れてしまう心配があります。担任を中心にこういった子どもたちをよく観察し、必要に応じて個別に困りごとを聞く時間をとって精神的に支えることも必要だと思います。 例年以上にこのことを懸念する理由が、この日の授業の様子です。授業者の一方的な説明が多いのです。子どもたちが真剣に聞く姿勢をみせているので、授業者はついしゃべりすぎてしまいます。また、新型コロナウイルスの影響で、進度が遅れ気味な上に子ども同士をかかわらせることが難しくなっているので、答や解き方を教えることが中心になり、思考の過程や考えを共有する場面がほとんどありません。先生の説明を聞けば誰しもが内容を理解できるわけではありません。自分で考え、わからないことを友だちに聞き、友だちの言葉から理解する場面が必要です。この学年の子どもたちはそういった場面をつくればよい表情でかかわり合うことができます。先生との関係も良好です。今子どもたちが学習に対して前向きだからこそ、彼らを信じ、自分でできることは彼ら自身で学習するように仕向け、授業の中で考え、かかわり合い、出力する時間を確保し、子どもの言葉で授業を進めるようにしてほしいと思います。 今年度は行事が廃止、縮小されることが多かったようですが、このことも子どもたちの意識が学習に切り替わるのが早まった要因と言えそうです。その一方で、先生方は3年生が学校のリーダーとして活躍する場面がほとんどなく、そういった面での成長があまりないことを気にされていました。少ない機会をとらえて意識させるようにはしているようですが、なかなか難しいようです。私からは、「学校のリーダーとして後輩たちに何を残したいか?何をすべきか?」と問いかけて、子どもたちに自分たちがしたいこと、すべきことを考えさせる場面を作ることをお願いしました。受験勉強という個のことに追われて孤立し、孤独になる子どもも出てくるでしょう。他者とのかかわりで自己有用感を持てる場面が必要になります。子どもたちの残り半年の中学生生活が充実したものになるよう、先生方が力を合わせてくれることと信じています。 この日の2年生は授業に対するエネルギーが低いように感じました。たまたまこの日、生活指導面で学年全体が注意されたことが影響しているのかもしれません。先生方の授業スタイルは3年生と大きく異なりませんが、子どもたちの表情がほとんど動いていないのが気になりました。子どもたちに発言を求め、その発言について子どもたちの考えを問うような場面ではとてもよい表情を見せてくれますが、発言を受けてすぐに授業者が説明を始める時には表情は動きません。この学年でも子ども同士をかかわらせることを意識することが必要だと感じました。この状況は子どもたちの問題ではなく、先生側の問題だと思います。 1年生の社会科で授業研究が行われました。中国の経済発展の理由を考える授業でした。 ワークシートの地域ごとの農業の地図資料から特色を読み取ることをさせます。特色といった言葉は基本的に先生の言葉です。子どもたちの言葉になっていればよいのですが、まだ1年生です。特色とは何か、どのようなことを調べたり考えたりすればよいのかといったことを確認する必要があります。過去に特色を調べたり考えたりしたことがあればそれを思い出させたり、その時のまとめを振り返らせるとよいでしょう。見通しを持たせることが必要です。スクリーンには教科書のどのページの内容であるかも示されているので、子どもによっては資料を読み取るのではなく、教科書に書かれていることを抜き出したりしています。自分で読み取り、考えることを大切にするのであれば、教科書の該当箇所を指摘する必要はありません。 個人で考えることにかなりの時間を割きますが、子どもたちはとりあえず自分の答を書けばそこで手を止めてしまいます。多くの子どもにとって時間がムダになっています。考えを深める場面を意識する必要があります。授業者は、全体での発表で指名した子どもが「農業が盛ん」と答えると、そこから地域によって違うという視点を誘導しました。どう違うかを問いかけて挙手した子どもをすぐに指名します。地域という視点を持てなかった子どもは、そのことを自分で考える機会はありません。ここで一度考える時間を与えたいところです。個人で活動をする前に特色とはどういうことかを押さえたり、途中で止めてどんなことに目をつけたかを全体で共有して再度個人で考えさせたりすれば、時間のムダなくより多くの子どもが自分で資料を読み取ることができるはずです。 また、子どもの考えや答を聞く場面で、授業者の意図にそぐわないものや誤答を無視する場面が目につきました。授業者に聞いたところ他の学級でそれらを拾ったところ授業のテンポが悪くなったので無視したようです。しかし、このようなことが続くと子どもの発言意欲が落ちたり、自分で考えた答ではなく先生の求める答探しをしたりするようになります。テンポが悪くなると感じるのは、授業者が自分の考えた流れに誘導しようとしているのでそれと関係ない答はじゃまだからです。子どもの発言から授業をつくる発想を持ってほしいと思います。 授業の課題は、必要な知識を与える活動をして、それをもとに授業者が提示します。これでは子どもの課題にはなりません。必然的に授業者が求める答探しになります。また、子どもの発言は授業者の求めるものだけが取り上げられてまとめられていくので、自分で考えなくても困りません。子どもたちが受け身になることが心配です。 授業者は課題に対して必要な知識は与えなければいけないと意識しすぎているようです。この視点はもちろん大切ですが、むだなく知識を与えると授業者が考える答に誘導するだけになってしまいます。大切なのは課題を解決するのにどのような知識や資料が必要かを考えさせることです。子どもたちが疑問を持てば、解決したくなります。解決するためにどうすればよいかを考えることから活動を始めるのです。一人一台のPC環境が来年度より実現されます。この環境を活かすためにもこういった発想がこれからはより重要になってきます。 授業者は素直に他者の話を聞くことができる方です。今回の授業をきっかけに、授業はどうあるべきかを考えてくれると期待します。 生活指導担当の先生から、校則について相談されました。時代の変化に合わせて校則を変えることを考えているようです。よい姿勢だと思います。子どもと教師、保護者の調整をどうするかを悩んでいるようです。ICT環境が整備されアンケートの作成集計が容易になってきました。これからはICT環境を活かした活動をプロデュースする視点も大切になってきます。子どもたち自身の手で、保護者や先生も対象にした意識調査を行い、原案を考えさせるとよいのではないかとアドバイスしました。データをもとに考えるという、これからの時代に必要な課題解決力にもつながっていきます。 いろいろな学校を訪問するたびに、新しい時代に向けて学校が変わらざる得なくなっていることを実感します。先生方と一緒にこれからの学校のあり方について考える機会を得ていることに感謝します。次回の訪問も楽しみです。 夏休み明けの子どもたちの様子から考える
私立の中学校高等学校で授業を参観しました。新型コロナウイルス対策で休校していた間もオンラインで授業時間を確保できていたので、夏休みは例年通りでした。長い夏休み明けで子どもたちの様子の変化が気になりましたが、よくも悪くも大きな変化は見られませんでした。
中学校では、子どもたちは元気に授業に参加していました。ICT機器も積極的に使っている授業が多く見られます。気になるのは授業での子どもたちの活動の様子が学級や授業者によってかなり差があるということです。コロナの影響を意識して、座席を動かしたりせずに進めている方もいれば、自由に席を立って話をするのを容認している方もいます。前者ではどうしても子ども同士のかかわりが減る傾向にありますし、後者では新型コロナウイルスが気になる子どもが孤立したり、仲のよい子同士の小グループに学級が分断されたりします。前回訪問時に子どもたちが小集団化しているのではないかと気になっていた学級ではその傾向が強くなっているように感じました。 授業の進め方や活動のやり方を規定したり限定したりするのは勧めませんが、何を目指して子ども同士をかかわらせるのか、そしてそれにふさわしい活動はどうあるべきかを学校や学年全体で話し合い共有することが必要だと思います。 高校ではコースごとに様子は少し異なっていました。 一般のコースの1年生は、夏休み前と大きく変わっていません。落ち着いてはいるのですが学習に対するエネルギーが乏しいように感じます。先生の指示には素直に従い作業しますが、基本的に受け身です。授業中に表情が動く場面がとても少ないように思いました。授業アンケートの回答を見ても、テストで点を取れるのをよい授業と評価している子どもが多く、消費者的な意識が強いようです。ワークシートの穴を埋めることがよい点につながると考え、先生の話を聞くよりもワークシートを完成させることを優先している子どもが多いように見えます。中学校時代の学習観がそのまま授業態度に反映しているようです。子どもたちの主体性を引き出すためには、出力を求め、その出力を肯定的に評価することが必要です。iPadを使い調べ活動をさせても、どうやって調べたか、その結果どう考えたかといったことを問いかけることをせず、そのまま授業者が説明をして進めていることが多いようです。活動しても評価される場面がなく、活動しなくても困りません。これでは主体的に活動する意欲をどんどん失くしていきます。子どもたちが活動し、考えたことが授業に反映されることが大切です。このことを学年の先生方で共通理解すると同時に、子どもたちにも学ぶことの意味や意義を繰り返し伝えるようにしてほしいと思います。 2年生も昨年と比べて学習意欲が低下しているように感じます。友だちとかかわり合う場面ではよい表情を見せてくれますが、そういった場面が新型コロナウイルスの影響で少なくなっていることが問題です。直接話し合うことにこだわらずに、iPadを活用した文字や絵によるコミュニケーションも積極的に取り入れてほしいと思います。 3年生は入試の推薦の基礎資料になる最後の試験が終わったためか、授業に集中していない子どもが目立ちました。入試という目先のことではなく、将来のことを見据えて学び続けてほしいのですが、それは簡単なことではありません。学校全体で学ぶことの意味を伝え続けることが大切ですし、それを体感できる授業設計も必要です。大きな課題として先生方に意識してほしいと思います。 幅広いキャリアを志向するコースの2、3年生では、新型コロナウイルスの影響で子ども同士のかかわりが制限されていることで、昨年と比べていろいろな場面でエネルギーが下がっているように思いました。グループでの活動ができる環境では、今まで同様の姿を見ることもできるのですが、それでも新型コロナウイルスに対しての不安からか一部の子どもは積極的に参加できていないように感じます。参加できている子どもとそうでない子どもが分断されているように感じました。先生方はこういったことを考慮しながら、かかわる場面を作ろうと苦労されていますが、ソーシャルディスタンスのこともありなかなかよい方法が見つからないのが現状です。iPad上で使える共有ツールで子ども同士をかかわらせることを提案しましが、子どもたちにとって書くことへのハードルが高いことを心配されていました。問題は何を書く、出力するかということです。「書く」のは「答」「正解」「きちんとした文章」という思い込みが子どもたちにあります。それが、書くことへの抵抗になっているように思います。まずは、この考えに「○」か「×」といった判断を書かせる。「○○がわからん」といった疑問や困ったことを書かせる。単純に「?」といった記号だけでもよいので、出力させることが大切です。「△△さんがわからないって言っている。いいねえ」と出力を肯定的に評価することを繰り返していくことで書くことに前向きになっていくと思います。書くようになれば、友だちの書いたことに下線や印をつけて、「参考になった」「ありがとう」「いいね」とコメントすることでかかわりをもたせ、そのやり取りを肯定的に評価するとよいでしょう。こうすることで、書くことでもコミュニケーションがとれるようになっていきます。こういう時代だからこそ、新たなコミュニケーションの方法を模索することが必要だと思います。 1年生では、たまたま学級編成の関係でそうなったのかもしれませんが、3つの学級の状況がかなり異なっていました。ある学級は子どもたちのよい表情がよく見られ、例年ほどではありませんが、子どもたちの前向きなエネルギーを感じました。別の学級は、落ち着いてはいますが、受け身で授業を受けている子どもが目立ちました。もう一つの学級は、集中して話を聞いている子ども、顔が上がらない子ども、授業と関係なくまわりとかかわっている子どもと子どもたちの姿がばらばらでした。先生と子どもたちの関係ができる前に一部の子ども同士の関係が強くなっているように思いました。まずは先生と子どもたちの関係をしっかりつくり、その上で子ども同士のかかわりを学級全体に広げていくことをしないと、今後の学級経営が困難になるような気がします。 特別進学のコースでは子どもたちは前向きに授業に取り組んでいました。ただ、教科によっては昨年度までの考える時間が多い授業から、講義型に変わったために一部の子どもたちが戸惑っている姿をみる場面がありました。 その一方で、3年生の難民問題について深く調べて、自分の考えを書かせる授業では、子どもたちの素敵な姿を見ることができました。特定の地域の難民問題だけでなく、各地で起こっているもの、過去のこと、すべてをきちんと理解してから取り組むようにという条件を与えられて活動を始めたところでした。どこから手をつけてよいか困っているのか、子どもたちは厳しい表情で真剣にiPadに向かって取り組んでいます。途中で集中力が切れて投げ出すのではないかと心配になりましたが、最後まで集中力は切れませんでした。1年生からこういった負荷のある課題に取り組み続けているので、ストレス耐性が高くなっているようです。鍛えることで子どもたちが育つというよい例を見せていただきました。最終的にどのようなものが出力されるのか楽しみです。 このコースでは、考える授業に肯定的な層と、受験的な問題の解き方や知識を求める層に子どもたちが分かれているようです。後者の中には、友だちにバカにされたくないといった理由で偏差値の高い大学に入ることが目的となっている子どももいるようです。そのことを全面的に否定はできませんが、学ぶことや進学することの意味を問い直すことが必要だと思います。入学時から進路やキャリアについて考える機会を多く持つことが求められると思います。 進路に関しては、受験に必要な自己推薦文を書く力が育っていないことが課題となっていました。コースによっては各教科で意識して書かせることをしているので、それなりに書くことができるようになっているようです。外部での論文発表を経験している子どもなどはかなりレベルの高い文章を書くことができます。他の子どももそういった子どもに教わったり、書いたもの見せてもらったりして学んでいます。学級数が少なくかかわる先生がまとまりやすいので、協力し合いながら教科横断的に書く指導がされているようです。 一方、学級数の多いコースでは、学年全体でまとまることが難しく、計画的に指導されていないので受験が近づいてからの付け焼刃の対応になります。何度も指導する時間がないので、先生が大幅に手を入れることで何とか完成させることもあるようです。自己推薦文であれば、自分自身の経験や身に付けた物をきちんと意識することや文章力が必要です。1年時からポートフォリオを作り、書く経験を繰り返すことが求められます。このことは、単なる受験対策ではなく将来にわたって成長し続けるために必要になってくることです。学校全体で計画的に取り組んでほしいと思います。 先生方は新型コロナウイルス対策でどうしても一方的に教える授業になりがちです。そのせいで子どもたちも依然と比べて受け身になっているようです。しかし、新型コロナウイルスの対策が必要な今だからこそ挑戦できること、すべきことがあると思います。「新型コロナウイルスのおかげで、ICT機器など必要ないという先生がいなくなった。大きな一歩を踏み出せた」という発言もありました。負の側面ばかり見るのではなく、新たな授業スキームを作る機会だと思って、前向きに授業改善に取り組んでほしいと思います。 オンライン授業から学ぶ
オンライン公開による中学校数学のオンライン授業を参観しました。なんかややこしいですね。
2日間で4つの授業公開でした。公開にあたり、板書の画面、教師が見ている子どもたちの様子の画面、そして教師の動きを見せる画面の3画面を同時に配信するという工夫をしていました。この3つの画面を同時に見たり、場面に合わせてどれか一つに絞ったりといった柔軟な見方をすることができます。隙間なく参観者がいる教室で授業を参観するよりも、かえって情報が多いくらいでした。 今回の授業は、日ごろの授業と同等の授業をどうすればオンラインで実現できるのかを意識したものでした。日ごろの授業と同じように子どもたちの反応をみて進めたいために、大型のディスプレイを教師の前において、子どもたち全員の様子を見えるようにしています。黒板も子どもたちにしっかり見えるように、専用のカメラで配信できるようにもしています。私が初めてオンラインで研修をした時に、講師陣で試行錯誤した結果のシステムとほぼ同じ考え方です。大型のディスプレイを使えば、オンラインでも思った以上に参加者の表情はわかるものです。 私の感想を一言で言えば、いい方は悪いですが「通常の授業の劣化版」です。決して授業の質が低いわけではありません。どの授業も子どもたちに数学的な考え方を身につけさせることが意識された、とても工夫されたものです。教科の先生方が同じ方向に向かって、互いに研鑽していることがよくわかります。通常の環境でもこれ以上の授業はそれほど簡単ではないと思います。だからこそ、この先生方で通常の環境で授業をすれば、よりよいものになるだろうと思いました。言い換えると、オンラインのよさよりも難しさを感じることが多かった言うことです。 授業は、大きくは、個別に問題を解いて、グループ(ZOOMのブレイクアウトを利用)で考え方を聞き合い、全体で何人かの考えを取り上げ、それぞれの発表に対して「つかまえたこと」「疑問」「付け足し」を発表させて共有する流れです。 課題となる問題は、どの授業でも答えを出すのは難しくはないが、多様なアプローチがあるものでした。多様な考えに触れることで数学的な考え方を広げ、深めたいという先生方の思いがよく表れています。 どの先生も子どもの発言をしっかりと受容し、安心して自分の考えを発言できる雰囲気を作っています。グループでは自分の考えをしっかり持って友だちに説明できていました。特に2、3年生は数学的な見方が育っていると感じました。多様な考え方を認めることを意識して先生方が取り組んできた成果だと思います。考えを共有して、深める時間をできるだけ確保しようと事前に自分の考えをClassroomで提出している授業もありました。反転授業の発想です。 グループ活動に入ったあたりからオンライン授業の難しさを感じることが増えてきます。グループ活動の時間は、それぞれのグループで閉じているので、他のグループの様子はわかりません。他から刺激を受けたり、進み具合を見ながら自分たちのペースを調整したりできません。先生も、グループ全体の活動の様子はわからないので、グループの状況に応じて相談の時間を調整できません。あらかじめ設定した時間で強制的にグループを解除することになります。もっと話し合いたいのに、ちょうど議論が盛り上がっているのに突然打ち切られてしまいます。こういったことを起こりにくくするためには、グループ活動の時間を長めにとって、終了2、3分前予告する必要があります。しかし、そうするとどうしてもグループ活動の時間が押して、集団追究の時間が足りなくなってしまいます。とても悩ましいところです。 印象的だったのは先生方から出てきた「子どもたちを信じてまかせる」という言葉でした。「互いに学んでいけるはずだ」と、グループ活動を変にコントロールせずに子どもたちに任せているのです。この割り切りはとても大切です。実際、グループでの子どもたちはしっかりかかわり合えていたように思います。子どもたちがよく育っているのです。 全体の場でどの子どもの考えを取り上げるかも難しいところです。授業者の先生方もおっしゃっていましたが、オンラインで子どもの考えをリアルタイムに把握することはかなりハードルが高いものです。子どもの記述したものを共有するツールを使えばある程度可能ですが、それだけでは情報は不足します。通常の授業であればちょっと声をかけたり、途中の様子を見たりすることで情報を補えますが、オンラインではそう簡単ではありません。 ですから、あらかじめClassroomで提出させたワークシートをもとにどの考えを取り上げるかを考えて授業を組み立てている方もいました。 各グループでどのような話がされたかをすべて聞くのは時間的に厳しくなります。とはいえ、意図的に指名することは、各グループの状況をすべては把握できないのでそれもなかなか困難です。結果、取り上げる考えは挙手に頼るか、あらかじめ提出された解答から選ぶことになります。この問題を少しでも解決しようとしたのでしょう。ある先生は、途中でグループを切り替えていました。通常の授業では、座席を移動しなければいけませんが、オンラインでは簡単にシャッフルできます。シャッフルすることで、各グループで話されていたことを多くの子どもが共有することができ、多様な考えに触れることができます。交流の結果、どのようなことを考えたのか、できるだけ多くの子どもに聞きたいところですが、多くの時間は取れません。一人ひとりの振り返りを授業時間外か次の時間に共有することになると思います。オンラインのよさを活かし、効率的・効果的な共有方法を見つけてほしいと思います(既に実行されているのかもしれませんが)。 全体追究をこの学校ではとても大切にしているように思います。日ごろから子どもの意見をつないで、考えを深めることを意識しているように思います。指名した子どもの考えに対して「つかまえたこと」「疑問」「付け足し」と全体に問いかけ、先生ができるだけ言葉を足さずに発言を共有しようとしています。子ども自身に友だちの考えを価値付けさせようとしているのがよくわかります。通常であれば、子ども同士をつなぎながら進めていくのでしょうが、オンラインでは発言者以外のマイクはオフにしておく必要あります。そのため、つぶやきを拾うことができません(マイクオンでも、訳が分からなくなりますが)。表情や態度で指名するのにも限界があります。ちょっと理解できない考えに出合った時、そのことは表情に現れますがその後どうつなげるかが問題です。通常であれば、「ちょっとまわりと相談して」と投げかけることで子どもたちが動きだせますが、オンラインではかなり難易度が高いのです。そのため、どうしても先生が問いかけ、挙手する子どもの発言をもとに整理し、まとめていくことになってしまいます。先生と子どもが1対多の関係になってしまい、子どもの発言やつぶやき、疑問から考えが広がったり、深まったりする多対多の関係になりにくくなっているのです。この先生方ならば、通常の環境の授業であれば、間違いなく子ども同士をつなげる進め方をしたと思います。しかし、オンラインでは、発言をつないで進めるスキームを実現するハードルはかなり高いのです。 これとも関連しますが、子どもたちが全体に考えを伝える方法がかなり限定的だったのも気になるところでした。通常の授業では黒板に書きながら、体全体を使って説明したりできるのですが、口頭だけか、カメラに向かってワークシートをかざしての説明がほとんどです。紙のワークシートをベースにしているので、画面共有もしづらいのです。しかし、グループでの意見交換にホワイトボードの機能を使って上手に説明している子どももいました。こういったツールを使うことで、それらを保存し共有することも簡単にできます。先生方は子どもの発言を黒板にメモして共有していましたが、そういう板書の時間も節約することができます。これからの時代、オンラインで考えを伝えるスキルも必要になってきます。数学の授業だけの問題ではありません。学校全体でスキルの習得を意識することが必要でしょう。 どのようなツールを使うかは別として、オンラインでは話すことだけではなく、書くことによるコミュニケーションをスキームに加えていくことが重要だと思います。文字だけではなく、図などの視覚情報もリアルタイムに加えて考えを示すのです。通常の授業では結果や結論を共有することが多いのですが、オンラインでは途中の考えや試行錯誤の課程をそのまま共有することができます。友だちの作業を覗くことで考えを理解しあうことも可能です。友だちのいい所にスタンプを押したり、疑問や感想をコメントしたり、それを他の子どもが見たりすることで考えを深めることができます。SNSに慣れている今の子どもたちにはそれほどハードルの高いことではないように思います。オンラインだからこそ有効なスキームは何かを考え、積極的に取り入れることが大切です。 現場の多くの先生方から「早く通常の対面授業に戻りたい」という声を聞きます。その気持ちはとてもよくわかります。しかし、「対面の授業に戻りたい」が「今までの授業に戻りたい」では困ります。確実に時代は変わりました。対面だろうがオンラインだろうが、新たな授業スキームに移行していかざるをえません。 この学校では、もうすぐオンラインでの授業は終わり、通常の授業に戻るそうです。だからこそ、これまでのオンライン授業での経験を活かし、通常の対面授業をより進化させることを期待しています。これだけの授業に挑戦した先生方ですので絶対に可能だと思います。次の機会を心から楽しみにしています。 私も2日間で本当に多くのことを学ぶことができました。この機会を得たことを感謝すると同時に、ここで得たことを学校現場に伝えていきたいと思います。ありがとうございました。 個別最適化学習について考える
個別最適化学習という言葉が一人一台のPC環境整備の議論と共に語られることが増えています。多くの方は個別最適化学習という言葉に対してドリル型のソフトの活用を思い浮かべているのではないでしょうか。AIやビッグテータを活用してきめの細かい、精度の高いものになったとはいえ、発想は40年以上前のCAIと大きくは変わっていないように思います。個別の習熟度に応じたドリル学習=個別最適化学習と考えることに違和感があります。
ドリル型ソフトを否定するわけではありませんが、子どもたちにつけるべき力のゴールはその先にはありません。個別指導の学習塾が人気だそうですが、それと似たものをドリル型ソフトに感じます。個別指導塾ではわからないことをすぐ聞け、その場ですぐに教えてもらえ、ストレスなく効率的に試験対策ができることが魅力だそうですが、そこには誰かに答や解き方を教えてもらう受け身な子どもの姿が透けて見えます。ドリル型ソフトはその個別指導の教師がAIに置き換わっただけのように感じます。 教師時代先輩から、「個別にていねいに教えることが最善ではない。あなたが一生その子どもたちの面倒を見られるわけではない。あなたがいなくても学び続け、自分で問題解決ができる力をつけることがあなたの仕事です」と厳しく言われたことを思い出します。 どのように学ぶかも含めて自己決定する力をつけることが大切だと思います。教師やAIの指示に従うのではなく、例え指示にしたことをやるにせよ、自分でそれを積極的に選ぶという判断をしたかどうかが問われます。 個別最適化学習は、一人ひとりが自分に応じた学びを続けることをゴールにするべきだと思います。ハンディキャップを持った子どもたちや何らかの理由で登校できない子どもたち、そんな子どもたちを含めすべての子どもたちが、学校だけでなく、家庭や地域も含め自分に適した学びのありようを見つけて学び続ける、そこを目指すべきなのです。そのために有効な基盤となるのが一人一台のPC環境だと思います。 個別最適化学習についてどのようなドリルソフトを導入するかではなく、どのような学びの選択肢を用意すればよいのかをまず考えてから、一人一台のPC環境整備に取り組んでほしいと思います。 オンラインでの授業研修
私立の中学校高等学校で、事前に送っていただいた授業ビデオをもとに、オンラインの授業研修を行いました。
オンラインでの講演ではスライドを共有すると相手の顔が見づらくなるので、モニター用にもう一台端末を準備しました。しかし、今回は会議室に先生方が集まって1対1でテレビ会議システムをつなぐ形だったので、残念ながら先生方の個々の反応を見ることができませんでした。 本年度から本格的にICTの導入が始まる学校なので、これまであまりICTを活用して来なかった先生を意識した授業研修を目指しました。そこで、ICTに堪能な先生ではなく、最近使い始めた先生に授業をお願いすることになりました。授業の一場面を切り出した動画で見ていただき、ICTの活用をメインにその場面のポイントとねらいどころを解説するという形で進めました。切り出したのは、「大きく映す」「スクリーンに書き込む」「板書とスライドのすみ分け」「活動を前にポイントを確認」「個別に机間指導」「ていねいな説明」「生徒に考える時間を与える」といった場面です。 「大きく映す」 スクリーンに映すことで板書する時間を節約できますし、子どもたちの顔を上げて教師の話に集中させることができます。子どもの反応を見やすくなるので、それをどう活かすがポイントになります。 「スクリーンに書き込む」 スクリーンに映したものに書き込むことで、タイミングよく必要な情報を付加することができます。ただ、子どもたちは書き込まれたものを写そうとするので、話を聞かせるのか写させるのかを意識して進める必要があります。子どもたちが後から書かれたものを見て思考の過程を振り返れるような書き込みを意識することが大切です。 「板書とスライドのすみ分け」 子どもとの対話でアクティブに変化するものは板書が有効になります。一方、予め決まっている流れに沿って示すのであれば、スライドにして順番に映すことで十分です。子どもたちは板書されたものは写そうとしますが、これから一人一台のPCの時代になれば、スライドや板書は配信か写真に撮るのが主流になります。手を使って写す意味のある板書かどうかを意識することが大切です。 「活動を前にポイントを確認」 活動前に子どもにポイントを確認し発言を求めることで参加意識が高まり、見通しが持てます。しかし、発言したり反応したりしなかった子どもはポイントを理解できているかどうかわかりません。全員に確認することを意識することが大切です。何度確認するポイントはスライドにしておいて、「いつもの」と映し出してすぐに思い出させるようにしておくとよいでしょう。作業中にずっと映しておいて、いつでも確認できるようにすることも一つの方法です。 「個別に机間指導」 子どもをほめる言葉かけは重要ですが、できたことをだけをほめるのではなく途中までできていれば部分肯定する姿勢が必要です。また、「正解です」とノートを見て先生が正誤を判断すると子どもたちは先生に判断を委ねてしまうようになってしまいます。正解かどうかを自分たちで判断する力を育てることが重要です。机間指導しながら子どもたちの困り感をすくい上げ、学級全体で共有しながら自分たちで解決していくことを意識することが大切です。一人一台のPC環境になれば、オンラインで困り感を共有することも可能になります。今後、何を共有するのかが授業のポイントになっていきます。 「ていねいな説明」 作業の手をきちんと止めさせて、話を聞く姿勢をつくることが大切です。子どもたちの取り組みで、上手くいかなかったものを取り上げることで、困っていた子どもの参加意識を高めることができます。ただ、すぐに上手くいく方法を説明するのではなく、「どこで行き詰った」「その後どうした」と試行錯誤の過程を全体で共有する時間をとることが必要です。間違いを修正する経験を積むことが、問題解決能力を身につけることにつながっていきます。先生が無駄のない正しい道筋を与えると、子どもたちは自分で考えることをすぐに諦めて教えてもらうのを待つようになってしまいます。教えてもらうのではなく、自分たちで解決することを学習の基本にする必要があります。 「生徒に考える時間を与える」 例をもとに類推させるといった時間をとることは思考力をつけるのに有効です。その活動をもとに、考えたことを抽象化・一般化して整理することがより思考力を育てることにつながります。まとめは先生ではなく子どもたちにさせて、全体で共有する時間をとることが大切です。 授業をもとにこのようなことをお話しし、最後に一人一台のPC環境のもとでの授業の方向性について説明しました。 これからは「対話」を伴わない説明や解説は動画に置き換わっていくでしょう。子どもたちは自分のペースで納得いくまで見ることができるようになります。教室は子どもたちの疑問や困ったことから出発し、仲間とかかわりながら自分たちで解決する場となることが求められます。授業観が変わるとともに先生方に求められる能力も変わっていくのです。 会場からは、「子どもたちの考えをつないだり、焦点化したりといった力がこれからの教師には必要になるのですか?」との声が上がりました。その通りだと思います。ただ、それだけではなく、どんな課題や環境を与えれば子どもたちが主体的に活動し、考えを深めていくのかといった、学びの場をプロデュースする力(教材研究の力)も必要になります。このことをお伝えしました。 オンライン研修のノウハウが、まだまだ私に不足していると感じた1時間でした。こういった機会を活かし、今後研修をより一層効果的に進められるよう精進したいと思います。 先生方が3つのグループに分かれた
私立の中学校高等学校の公開授業を参観しました。1週間の公開期間はどの授業も自由に見ることができます。この日は全体の様子の確認と、先生方からの相談を受けました。
この日も高校1年生と他の学年との違いを感じました。1年生は板書を写したり、作業をしたりしていると、先生がしゃべっていても手は動き続けています。一方他の学年では、手を止めて先生の話を聞こうとする姿が見られます。授業に対する参加度が違います。今は先生がしゃべっている時間を多いのでこの違いが顕著です。一緒に参観している先生から、冗談半分で「教師が1時間の授業でしゃべる時間を20分ほどに制限なくちゃ」という声も聞こえてきました。今時、20分でも長いかもしれませんが…。 中学校の社会科の授業について報告と相談を受けました。 気候の学習で、今までは資料集の雨温図をもとに学習していましたが、今回は子どもたちに理科年表をもとに表計算ソフトを使って雨温図を作らせてみたそうです。すると、今まで以上に雨温図を理解し、特徴を捉えることができたそうです。資料を作るということはこれからの時代に必要な力です。これからの時代は、「どんな資料があればよい?」から、「どんな資料を作ろう?」へと一歩先に進んだ活動が必要になると思いました。 今回の課題は、旅行者に対していつどこへ行くとよいのか、レイアウトも工夫して立派な提案書を作ろうというものでした。資料を探してそれを元に何かを作るという課題は友だちとかかわれないと苦しくなる子どもが多いようです。3密対策で友だちとかかわりにくいので、互いの作業をネット上でリアルタイムに見えるようにすることや、どのような資料を使った、それはどうやって見つけたかといった過程を共有シートに書き込むことで、困った時に参考にできるようにするとよいでしょう。どの教科でもそうですが、結論を共有するのではなく、その過程を共有することを意識することが大切です。子どもたちに失敗や間違いを含めて、自分の活動の過程を残していくことを習慣づけてほしいと思います。 登校ができない子どもに対して、課題等の授業の内容をネットで伝えるようにしているそうです。友だちの学習の過程を、先ほど述べたように共有できるようにしておけば、家庭からでもそれを見ることで授業に参加するのと近い状況をつくることができると思います。ぜひ検討してほしいと思います。また、登校できない子どもに対して知識的なことを整理したプリントを配ろうとすると、他の子どもがそれを欲しがるがどうしたものかと相談されました。子どもたちは正解や結果に価値があると思っているのでそのように思うのです。ふだんの授業でも解答や結論はさっさと配って、その根拠を考えることに価値を置くようにするとよいと思います。根拠や過程を結論より大切にすることを学校全体で意識してほしいと思います。 この1週間の公開授業で感じたことに、子どもたちの笑顔が減っていることがありました。先生方の余裕がないため、子どもたちを認める場面やほめる量が減っていることがその原因のように感じました。どんな時でも笑顔を絶やさないように意識してほしいと思います。 新型コロナウイルスによる休校が明けて先生方は3つのグループに分かれているように思います。 ・休校中はICTを活用したが、対面の授業が始まってまた以前と同じ授業に戻った。 ・3密対策のため子ども同士がかかわる活動が制限され、今までやれていた授業ができずに困っている。 ・以前からICTを活用していたので、3密になってもそれほど困らずに自分のやりたい授業ができている。 大切なのは、どの先生がよいと比べることではなく、情報を交換しあって互いの授業改善につなげていくことです。危機感を持った先生を中心にまずこの状況を共有することになりました。私から全体にお話しする時間は取れないので、気づいたことをレポートにまとめさせていただきました。学校全体で課題を共有する一助になればと思います。 WITHコロナの時代の授業のあり方について考えるよい機会になった1週間でした。 課題意識を持って授業に取り組む
私立の中学校高等学校の公開授業を参観しました。1週間の公開期間はどの授業も自由に見ることができます。この日は前回気になった中学校の様子を中心に参観し、また希望の先生方からの相談にも答えました。
中学校は前回ある先生に子どもたちのかかわり方や授業規律について指摘しましたが、中学校全体でそのことを意識して授業に取り組んでいるようでした。中学校は規模が小さいこともあり、先生方のコミュニケーションがよいことがわかります。 授業規律がしっかりしていても、子どもたちに過度に守ることを意識させているように感じる学級がありました。子どもたちの笑顔が少ないように思います。やわらかい空気の中で授業規律が保たれることが理想です。子どもたちのよい行動をほめることで授業規律を保つことを意識してほしいと思います。 中学校では日ごろから子どもたちの発言を大切にし、考えをつなごうとしている先生が多いのですが、この日は発言を授業者が受けて、説明したりまとめたりしている場面に多く出会いました。無意識のうちに授業を先に進めること優先しているようです。一人一台のiPadがあるのですから、発言させることにこだわらず、iPadで考えを書かせオンライン上で共有するといった進め方も視野に入れるとよいでしょう。こうすることで授業者は子どもたちの考えを把握しやすいので「○○さんの意見と△△さんの意見が似ているように思うけど、どう?」「□□さんはちょっと違う意見のようだけど、どういうことか聞かせてくれる?」とすぐにつなぐことができます。意見を発表させなくても子ども同士が互いの考え知ることができるので、「納得した考えある?」「質問や疑問ある?」と問いかけることもできます。これが最善というわけではありませんが、3密対策や時間を効率的に使うことを考えると一つの方法になると思います。 国語の先生から「子どもたちに文章を読み取る力をつけたいが一人ではなかなかできない。ワークシートに沿って穴埋めさせているが、これで力がつくのか自信がない」と相談されました。文章の構成にそって筆者の主張を読み取ることは簡単なことではありません。力をつけていくためのステップを意識することをアドバイスしました。最初はワークシートの項目に従って穴埋めすることでよいと思います。大切なのは、項目を指示ではなく文章の読み取りのポイントとして意識させることです。「接続詞に注目することで段落の関係がわかる」「結論、根拠、例示・・・のどれか意識する」「何度も出てくる言葉、言い換えている言葉はキーワード」といったワークシート上の作業をメタなものとして意識させるのです。このようなワークシートでの作業を経験させてから、今度は記入枠の項目や指示を省いたものに変えていきます。何を書けばよいのかを自分たちで考えさせ、どんな項目を書こうとしたか、何に注目したかといったことを互いに聞き合い、自分たちでゼロから読み取れるようにしていくのです。 また、子どもたちの力に差があるので、課題への取り掛かりが見つからずになかなか手がつかない子どもがいることも悩んでおられました。子どもたちに課題に取り組ませるとある程度区切りがつくまで時間を与えることが多いのですが、そうすると手のつかない、途中で止まったままで時間が過ぎていく子どもがどうしても増えます。個別対応も一つの方法ですが、限界があります。早い段階で、どこで困っているか、何がわからないかを全体で確認し、同じように困った子どもをつなぎながら、動けている子どもに「なにをやった?」「どこに注目した?」と解決に向かってどのようにしているかの過程を共有するのです。ある程度見通しが持てそうな状態になったら、また作業に戻ります。結論ではなく困ったこと、過程を共有することを大切にするようアドバイスしました。 数学担当の先生からは、「今までは子ども同士で教え合うことで、中位の子どもがわかるようになる場面が多かった。しかし、教え合うことがやりづらくなったので、iPadで解答を共有するようにしたのだが、直接教えてもらえないのでわからない子どもが増えてしまった」と相談を受けました。そこで上位の子どもを鍛えることをアドバイスしました。子どもたちは、式を順番に書いてその結果が正しければそれで満足します。そこで、「どういう方針で問題を解いたのか?」「式の変形は何をしているのか?」「なぜそうしたか?」といった、行間を埋めることを書くように求めるのです。それを見合い、よかったところをマーカーで塗り、「どこでわかった」「どこがわからない」「どの説明がよかった」といったコメントを書いたり、「いいね」スタンプを押したりして子ども同士で評価させるのです。こうすることで、オンライン上でコミュニケーションが生まれ、子ども同士で問題解決ができるようになりますし、上位の子どもも説明を書くことでより力がつき、友だちに評価されることで自己有用感も増します。授業をいろいろ工夫している先生ですので、これをヒントに自分なりの解決方法を見つけてくれると思います。 今回、課題意識を持って授業に取り組んでいる先生とたくさんお話しすることができました。先生方の今後の成長が楽しみです。 子どもたちのかかわりたい気持ちをどうする
私立の中学校高等学校の公開授業を参観しました。1週間の公開期間はどの授業も自由に見ることができます。この日は前回見ることができなかった中学校を見ることと、先生方からの相談に答えることが中心でした。
中学校は、「友だちとかかわれることがうれしい」という休校明けの子どもたちの気持ちを強く感じました。高校生はそれなりに抑制が効いていたのですが、中学生はうれしい気持ちの方が強いようです。授業中にマスクを外して友だちとしゃべっている姿も目にします。マスクをしていても、前のめりで距離が近すぎる子どももいます。その一方で友だちとかかわることに不安を感じている子どもも一定数いるように思います。必要以上にかかわることを避けているように見えました。3密に関しては、適切な状態になるように授業者がもう少し意識してコントロールする必要があるように感じました。まずは安心安全な学級であることが基本です。 中学1年生は授業規律がまだ安定せず、小学校のままという感じがしました。出身小学校ごとに授業規律は異なりますので、中学校ではこうだよと、きちんと伝える必要があります。休校が続いたため授業を進めることをどうしても優先してしまうので、一度立ち止まって、まずは授業や学級の規律を身につけさせることを優先してほしいと思います。 中学校担当の先生にこの状況についてお話ししたところ、すぐに打ち合わせで検討したいと言っていただけました。素早い対応に感心しました。 高等学校では、前回同様に子どもたちが友だちとかかわりたいがかかわれないというストレスを感じている場面に出合いました。自分の考えを伝えたり、わからないことを聞いたりしたいのでしょう。まわりの子どもに視線を送るのですが声は出せません。iPadを使って意見や考えを共有することを積極的に行うことで、ストレスを減らすことができるのではないかと思います。 裁縫の授業で、子どもが個別にやり方の説明を授業者に求めている場面がありました。3密を意識して友だちに聞くことが憚られるので、直接授業者に教えてもらおうとしたのでしょうが、濃厚接触が気になります。実技では3密に関係なく、やり方の説明を細かく分けた動画を準備し、手元でいつでも見られるようにするとよいでしょう。自分のペースでわからないところを確認しながら進めることができます。一人一台の端末があたりまえになった時には、こういった環境を準備しておくことで自学ができるようになります。その代わりに、どのようにしてかかわりながら学ぶかが教室では重視されます。これからの授業のあり方を今から考え続けてほしいと思います。 英語のリスニング力をつけるためにどうすればよいのかという相談を受けました。ただ問題文を聞いて、質問の答えを選択し、正解を教えられても聞く力はつきません。聞けたことをまわりと確認してから聞き直し、少しずつでもよいので聞けたという実感を持たせるとよいでしょう。しかし、まわりと聞き合うことも現状では難しい状態です。話す代わりに聞けたことをオンライン上で共有する方法もありますが、リアルタイム性にはやや欠けます。相談者はいろいろと考え悩んでいるようでした。そこで、前回この学校の別の先生から教えていただいた、動画や音声のファイルをiPadに配布して家庭で繰り返して聞いておくというやり方を紹介しました。聞き取れたところ、よく聞き取れなかったところを事前にオンライン上で共有して授業に臨むことで、教室で再度聞く時にかなり聞き取れるようになると思います。よい実践を教科内で共有できていないことがもったいないと思いました。新型コロナウイルスの対策等で先生方の余裕がなくなっていることもその要因だと思います。今回の公開授業の参観者が例年と比べて少ないのも気になりました。先生方の余裕をつくるためにもICTをいろいろな場面で活かすことを考える必要があると思います。 公開授業でいろいろなことに気づく
私立の中学校高等学校の公開授業を参観しました。1週間の公開期間はどの授業も自由に見ることができます。この日は新しく赴任した先生方を中心に同行していただき、子どもたちの様子を共有しました。
休校中はオンライン授業を中心に一人一台のiPadを学校全体で活用していました。学校再開後、どのように活用されているか楽しみにしていました。 衝撃的だったのが高校1年生の授業でした。iPadどころか、プロジェクターもほとんど利用されず、一方的に先生がしゃべって板書している授業がほとんどでした。子どもたちの机の上にはiPadが置かれることすらされておらず、ノートに板書を写す作業が続きます。子どもたちが考える場面はほとんどなく、授業規律も怪しい状態でした。授業者は早く授業を進めることを意識していたのか、「どうなる?」「どう思う?」と子どもに反応を求めても反応が返ってくるのを待たずにすぐに自分でしゃべり続けます。たとえ子どもから反応があっても、「そうだね」と言って自分で解説を始めます。反応するまで待ったり、他の子どもにつなげて考えを共有したりする姿勢がみられませんでした。 一方高校2、3年生ではiPadは多くの教室で普通に使われていました。ただその使い方にはかなりばらつきがありました。資料の提示や配布のツール、調べるツール、課題の結果を共有するツールと様々な活用が見られます。しかし、iPadを使いながらも教師が板書して手書きで写させる場面も多く見ました。 学校全体で授業の進め方と合わせてiPadの活用を整理する必要を感じました。 一つは板書とノートの関係をiPadの活用を意識して変えていくことです。 事前に予定している板書はスクリーンに映すかiPadで配信すれば十分です。手書きで写すことに時間をとるのではなく、集中して先生の話を聞くことに時間を割くべきです。板書は子どもたちの意見や考えをアクティブに整理するのに活用するとよいと思いますが、それも手書きで写すことにはあまり意味はありません。写真に撮らせれば十分でしょう。 一方手で写すことが意味のある場面は当然手を使わせるべきです。ただそれも、紙のノートにこだわる必要はないと思います。 漢文で返り点の練習のための例を板書している場面がありました。先生は黒板に○を縦に書いて返り点をつけたものをいくつも書いていきます。子どもたちは、上から順番に○を書きながら返り点が出てくるたびに○の横に写していきます。二が出てくればそれを書き、後から一を書いています。これならばそのまま配信すれば十分です。本来ならば、先に〇だけ写し、まずレ点、次に一二点を一から順番に、続いて上下点を上から順番にと、返り点の意味を意識しながら写させなければ手を使う意味がありません。先生は指示をしたのかもしれませんが、板書で黒板に向かっているので子どもたちの様子は見ていません。これでは時間の無駄です。子どもたちには〇だけ書いたものを配信してスクリーンに例を映し、それから写し方を指示して手で作業させれば、自然に返り点の規則が見えてくるはずです。先生は子どもの写す様子を観察していればよいのです。 この教材で子どもたちに何を活動させればよいかを考えることが大切です。ICT機器を活用するにしても、やはり教材研究が大切なのです。 もう一つは、子どもたちの考えを深めるためにどうするかです。 子どもたちがそれぞれの課題の結果をiPad上で見合うことだけでは考えは深まりません。それを元にグループや全体でその課程や根拠を聞き合う場面が必要です。今回の訪問ではその場面をほとんど見ることができませんでした。3密対策のため、子ども同士で話をさせたり、全体で意見を交流したりすることが憚られることもその要因でしょう。実際、以前から子どもたちをグループや全体の場面でかかわらせること重視していた先生からは、今回の3密対策で授業がとてもやりにくくなった、子どもたちはしゃべりたいのにしゃべれないフラストレーションがたまっているといった言葉が聞かれました。 考えを共有したり深めたりする方法は聞き合うだけではありません、ICTはそこにも活かせるはずです。ネット会議システムでグループを作り、子どもたちにイヤホンを使わせればグループで話すことも可能ですが、さすがにそこまでは難しいのなら、ネット上で考えを共有させる方法を工夫すればよいのです。課題の答や結果しか書かせていないのなら、それを共有して、そこに質問を書かせればよいのです。線を引いて「よくわからない」「どうして?」といったことを書かせて、それに答えさせるのです。課題の結果ではなく、その過程や根拠をiPad上に残させるようにすれば、やり取りはより活発になると思います。過程や根拠に「いいね」をつけあうことで自己有用感も高めることもできます。子どもたちに小グループや全体で自由に見合うことをさせ、先生はそのやり取りや書き込まれたものを全体で価値付けすればよいのです。 また、今回の休校をきっかけに、ICT機器をうまく使うことで、子どもたちが自分で学習できることがまだまだあることに気づいた方もいらっしゃいます。 英語を聞き質問の正解を選んで解答を教えられることを繰り返しても、リスニング力はつきません。何度も聞くことで聞く力がつくのですが、一斉授業の枠組みではそれも容易ではありません。CDを焼いて配り家庭で聞いてくるようにと指示しても、手間なためなかなか聞いてはくれません。今やCDプレイヤーがない家庭もけっこうあるということです。そこで、音声ファイルをiPad上で配信して聞いてくるようにと指示したところ、多くの子どもたちが積極的に取り組み事前に何度も聞いて授業に臨んだそうです。これならば手間がないので、やる気になるようです。ちょっとした手間が障害になっていたのです。やる気と手間のバランスが変わるだけで、子どもたちは学習に積極的に取り組むのです。 発表のスライドをネット上で共同作業させている先生もいらっしゃいました。しゃべることが制限されても、オンラインツールでそれに近い共同作業はできるのです。学校でも活用できるインフラが整ってきています。それを活用するだけでも障害は乗り越えることができるのです。 私がまだ気づいてないだけで、この学校でも多くの先生がいろいろな工夫をしていることと思います。そういった工夫を学校全体で共有する仕組みを作ることを担当の先生にはお願いしました。 新しく赴任された先生方には、子どもたちとのよい関係づくりと、認めることでつくる授業規律のつくり方を中心にお話ししました。子どもたちをしっかり見ることと子どもたちの状況に合わせて授業をつくることを意識してもらえればと思います。次の機会があれば、子どもたちに考えさせるためにどうするのかについて、詳しく話をしたいと思っています。 子どもたちの様子や先生方からの質問から、いろいろなことに気づけた有意義な1日でした。 授業と学びコラムに投稿しました
「授業と学び研究所」の「授業と学びコラム」に「変化を進化につなげることを意識しましょう(大西)」を投稿しました。
変化と進化について、ダーウィンの進化論の誤用が話題になっていますが、学校が進化するための視点について述べさせていただきました。 是非お目通しください。 学校再開後の授業アドバイス
中学校の授業アドバイスを行ってきました。学校が再開してちょうど2週間たった週明けでした。
全体的に気になったのが、速く進めたいという気持ちが先生方の授業に表れていることでした。意識はしていないのかもしれませんが、一方的な説明が多く以前と比べて早口であったり、指示の確認がなかったり、子どもが聞く姿勢を取れていないのにしゃべったりしています。説明が中心で進んでいる授業が多く見られました。どこの時間を削って、何に時間をかけるべきなのかを工夫することが大切です。 一部の先生を除いて、プロジェクターをあまり活用していません。先生が手で板書したことを子どもたちが写している場面を多く見ました。速く進めようという焦りか、子どもたちがまだ書き終っていないのに授業を進めていることもあります。子どもたちの発言や考えを書き留める板書ならよいのですが、あらかじめ決められた内容であればスライドで順番に示すだけで時間は大幅に節約できます。板書を写すのも、リアルタイムに手で写すことに意味がないのであれば、スライドを印刷したものを後から配ればよいのです。この授業で大切なことは何か、どんな力をつけたいのかを今まで以上にしっかりと押さえ、そのために必要な活動は何かを考え、ムダな時間を省く工夫が必要です。 また、教科書の内容を全部授業で扱わなければいけないという思い込みもなくすことが必要です。岐阜聖徳学園大学の玉置崇教授もおっしゃっていましたが、教科書は自学自習できるように配慮されています。子どもたちを信じて、思い切って委ねるという発想もあるのです。大切なのは、子どもたちに教科書を使って学ぶ方法を教えることと、その意欲を持たせることです。それは理想論で、家庭環境も含めて自学自習が困難子どももいるという声もあるでしょう。そういう方に私は声を大にして言いたいことがあります。「あなたの授業ではそういう子どもたちをちゃんと拾い上げて、学習内容を習得させているのか?」「教室にいて単に履修していることで良しとしているのではないか?」ということです。新型コロナウイルス出現以前でも、100%の習得は不可能です。100%でなくても今やれる工夫をし、自学自習が困難な子どもには、彼らに応じた工夫をすることが大切なのではないでしょうか。個別最適化という言葉が言われていますが、これもその一つだと思います。 教科によっては、単元そのものをカットするという発想もあると思います。教科を通じて子どもたちにつけたい力は、その単元でなくても他の単元でもつけることが可能なこともあります。例えば国語であれば、小説でつけたい力はすべての小説の教材を扱わなくても身につけることは可能だと思います。いずれにしても、今まで以上に教材研究が大切になっているということです。 先生方が手を抜いて工夫していないと非難しているのではありません。空き時間に教室の消毒をするといった、余分な仕事が増え余裕がないのです。そのことは、授業中の様子からもうかがえます。以前と比べて笑顔や子どもたちをほめる言葉が少なくなっているのです。子どもたちを受容する言葉も減っているように思いました。先生方の負担を減らすために消毒等のお手伝いをしてくれる方を手配していると聞くこともありますが、すべての地域というわけではありません。こんな時期だからこそ、先生方に少しでも授業に専念できる環境を整えてほしいと願うのは贅沢なことなのでしょうか? プロジェクターを上手く活用し、スライドを学年担当の先生と共有している教科もありました。教材研究の時間を相対的に減らし、指導内容を共有するよい工夫です。この日の授業では、最後に子どもたちにまとめを書かせたのですが、それを上手く全体で共有する時間がありませんでした。このことについて授業者から相談がありました。子どもたちが板書を写すのに時間が取られていたので、先ほど述べたような板書のスライド化と配布の話をしました。まとめの共有については、先生用のタブレットを使って子どもたちの書いたものを撮ってスクリーンで共有する方法をお伝えしました。手軽さや解像度に問題があれば、先生方が持っているスマホの方が高機能で使い易いかもしれません。個人の物を使うのは本来お勧めできないのですが、ルールを変更しても使えるものは使うという発想も大切だと思います。 今まで比べて子どもたちに発言させる機会が減っています。書くことが相対的に増えていると思います。書いたものを共有する方法を工夫してほしいと思います。一人一台のPC環境が学校にやってくればこういった問題もかなり解決されると思いますが、その時を待つのではなく、今できることを工夫することで大切です。整備されてない環境でも挑戦することで何が大切か、また何があればよいのかを知ることができ、一人一台のPC時代の授業づくりに直結していきます。次のステップへとつながっていくのです。 各学年の様子はそれぞれに異なる課題を感じるものでした。 3年生は子どもたちの落ち着きがないように感じました。休校中に学習への取り組みに差ができていたのでしょうか、授業が情報過多になっていることもあり、先生の話を聞いているうちに集中力をなくす子どもが目立ちます。その一方で、個人作業になると友だちとかかわろうとする姿が目立ちました。グループ活動が難しく受け身の時間が多いことが子どもたちのエネルギーを下げることになっているように感じました。授業についていくのが苦しくなっている子どもだけでなく、部活動の大会がなくなり目標を失くしている子どももいます。こういう子どもたちをケアするためにも、先生が個々の子どもたちとかかわる時間をつくることが必要に思いました。 また、今回の新型コロナウイルスの影響で経済的な不安を感じている子どもも増えていると思います。進路指導面では、各高等学校独自の経済支援の情報などが子どもたちにわかりやすい形で提供できることをお願いしました。 2年生は、指示されたことややるべきと思っていることはきちんとやることができていました。逆に言えば、指示や作業の意味が不明確だったりすると、集中せずに授業に参加しません。先生の話を聞かずに、板書を写すだけといった学級も目にしました。学校が再開して2週間でこの状態というのは少し心配です。この学年の子どもたちは、消費者的な態度をとることがあります。先生によって態度を変えるようになる危険性があります。子どもたちに何が大事かを伝え、子どもたちのよい行動を価値付けすることをもう一度学年全体で取り組んでほしいと伝えました。 1年生は一見すると落ち着いて見えますが、学習規律がかなり危ない状態に見えました。もちろん席を立ったりすることはないのですが、先生や友だちの発言をきちんと聞いていないように見えます。顔をあげない子どもが目立ちますし、顔を上げていても先生や発言者を見ていない子どもがほとんどでした。先生方がこのことに気づいていないのか、気づいていても授業を進めることを優先してしまっているのかはわかりませんが、子どもが集中していないのに話し続けます。この状態を続けると学級のコントロールが効かなくなり、早晩荒れてくることが心配されます。子どもたちとの関係をきちんと構築し、中学校の学習規律を定着させることが必要です。まずは、どういったことが大切かを伝え、それができたことをきちんとほめることから始めてほしいと思います。叱ってできない子どもを減らすのではなく、ほめることでできる子どもを増やす発想で、学習規律を定着させてほしいと思います。 次回は9月に訪問しますが、子どもたちのよい姿をたくさん見られることを期待しています。 オンラインで学校と打ち合わせ
オンライン会議システムを使って、私立の中学校高等学校と打ち合わせを行いました。
自宅から遠距離にある学校(片道4時間以上かかる)なので、打ち合わせのためだけに出向くのは時間のムダが多いのですが、オンラインだと移動時間もなく、出席者の時間調整もやりやいので助かりました。打ち合わせは、主に新型コロナウイルス対応の休校から現在に至るまでの学校の様子を共有し、今後の研修をどのようにするかを中心に行いました。オンライン会議システムを使うことで、対面での打ち合わせとほとんど変わらないコミュニケーションがとれました。学校の研修についても、今後オンラインという選択肢が増えたことを実感しました。 この学校では、今年度から生徒一人一台のICT環境を中1と高1に導入します。校内のWiFi環境が整えば、他の学年もBYODを視野に入れた活用を考えるようです。現在のICT機器の活用は、教師の提示が中心ですが、今後クラウドサービスの活用が進むことが期待されます。とはいえ、具体的にどのように活用すればよいのかはまだよく見えていません。中高等学校では、教科色が強いため教科会にお任せになる部分も多いようです。この取り組みをどう学校全体で共有し深めていくかが課題です。 ICT環境の整備に関して事務職員の方が積極的に関わり、先生方の負担を軽減しようとしていることが印象的でした。私立ということもあるのでしょうが、組織としてうまく機能していると感じました。 公立の学校では、機器導入や活用サポート等も先生の仕事になっていることが多いようです。今後ICT環境が急速に整備されますが、先生方の仕事増、負担増につながることを危惧しています。教師が行うべき仕事とそうでないものとをきちんと仕訳して、必要な人員の予算をつけることが必要です。導入しても稼働しないという事態に多くの学校がなるのではないかと心配です。 今後の研修について、学校で方針をまとめていただいて、再度打ち合わせをする予定です。オンライン会議であれば、こまめに打ち合わせを行うことができるのも魅力です。 緊急事態宣言が解除された途端に会議や連絡のための出張が復活したと嘆いている方がたくさんいらっしゃいます。ほとんどの会議はオンラインで十分対応可能ですが、なぜか学校は対面へのこだわりが強いようです。対面のよさもありますが、トータルコストを意識すべきです。学校は時間がコストだという感覚が薄すぎるようです。これからは授業も対面とオンライン、オフラインの役割を考え最適化することが求められます。新型コロナウイルスへの対応が先生方の仕事のやり方を見直す機会になることを願っています。(なかなか学校の壁は厚く高いようですが…) 私学には公立と比べて新型コロナウイルスによる変化に素早く対応をしているところが多いようです。地方でも選ばれる私学となるためには、この対応力の差が大きな影響を与えることになります。これからの数年が正念場です。わたしもできるだけこの学校のお役に立てるよう頑張りたいと思います。 授業と学びコラムに投稿しました
「授業と学び研究所」の「授業と学びコラム」に「学校を進化させましょう(大西)」を投稿しました。
学校が再開される中、先生方はこの事態に対応すべくいろいろな工夫して授業を行っています。早く以前のような授業ができるようになってほしいと願うのではなく、こういった工夫を共有して学校全体の進化へとつなげてほしいと思います。 是非お目通しください。 新学習指導要領の評価について研修
先日、休校中の私立の中学校高等学校でオンラインの研修を行ってきました。
テーマは「新学習指導要領の評価について」です。観点別評価、特に「主体的に学習に取り組む態度」について詳しくお話をしました。出入りがありましたが参加人数は延べ50名を越していました。自主参加にもかかわらず、多くの方に参加いただけました。 緊急事態宣言がまだ解除される前で、オンライン授業やクラウドを利用した課題のやり取りを先生方が学校や自宅から行って対応している時でした。研修をお願いされた時は、テーマはICTのオンライン活用や休校再開後の授業についてだと想像していましたが、お願いされたのは新学習指導要領の評価についてです。最初は意外に思ったのですが、休校への対応がある程度落ち着き余裕ができた今だからこそ、先を見て必要なことを研修しようという担当者の思いを聞き、なるほどと納得しました。学校再開後WITHコロナの学校運営を軌道に乗せるために忙しい日々を送ることになりますが、一歩先を見て次に備えることを忘れないでほしいと思います。 研修は、まず、新学習指導要領の目指すところ、「育成すべき資質・能力の3つの柱」と評価の観点についてお話し、3つの評価の観点で何が大切かについて考えていただきました。 「学びに向かう力人間性等」が大切だという意見がほとんどでしたが、いざそれをどう評価するのかというと皆さん困っている様子でした。 「学びに向かう力人間性等」は、観点別学習状況評価になじまない「感性、思いやり等」と観点別学習状況評価として見取れる「主体的に学習に取り組む態度」とに分かれること、前者は個人内評価として所見等を通じて伝えることを説明しました。今回は「主体的に学習に取り組む態度」の評価に的を絞り、中教審答申のキーワードを使って解説しました。特に、「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」を身につけるための「学習に取り組む態度」「自らの学習を調整しようとする態度」の2軸で見ることと、そのため「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」が身についていなければ調整力を働かせているとみなされないことをポイントとしてお伝えしました。 日常的に指導や支援を行わずに評価することのないようにと中教審の資料等に示されていますが、実際に行うとなるとそれほど簡単ではありません。子ども自身が調整力を働かせるような仕組みとそれを教師が効率的に支援する仕組みが必要となります。そこで注目されるのが、ポートフォリオです。単に振り返りを記録するだけでは調整力は働きません。節目ごとにその記録をもう一度振り返り、自己評価し次のステップへと向かうようにすることが大切です。教師は日常の振り返りは特に気なる子どもを中心に、節目ごとの振り返りで全員を見るようにすることで効率的に指導支援を行うことができます。紙でもできないことはありませんが、デジタルであれば記録の集約と再構成がしやすいため、より効果的に活用できると思います。来年度に向けて準備するようお願いしました。 学校現場は新型コロナウイルス対応で手一杯と思いますが、新学習指導要領への対応も待ったなしです。酷なことを申し上げるようですが、新学習指導要領への対応もおろそかにならないようにお願いしたいと思います。 授業と学びコラムに投稿しました
「授業と学び研究所」の「授業と学びコラム」に「保護者の声に耳を傾ける姿勢を見せましょう(大西)」を投稿しました。
学校が再開されると、学校の安全対策への疑問や不安・不満が起こってきます。それをキチンと受け止め、解消していくためには受け身ではなく、学校自らが保護者の声を聴こうとする必要があります。学校が信頼を得るためにも、学校が聞く耳を持っていることを伝える努力をしてほしいと思います。 是非お目通しください。 授業と学びコラムに投稿しました
「授業と学び研究所」の「授業と学びコラム」に「子どもの姿で伝えよう(大西)」を投稿しました。
学校が再開に向かって動き始め、先生方は感染対策に追われていることと思います。子どもたちだけでなく、保護者にも学校の安全対策をしっかりと理解してもらうことを意識してほしいと思います。 是非お目通しください。 署名協力のお願い9月入学の是非はともかく、拙速に移行することには強く反対します。 今大切なのは、日々の子どもたちの学びを支えることに全力を注ぐことです。 目の前にいる子どもたちの今をどうするかを第一に考えるべき時だと思います。 「9月入学、本当にいまですか?」にアクセスいただいて、この主張に賛同できる方にはぜひ署名をお願いしたいと思います。 授業と学びコラムに投稿しました
「授業と学び研究所」の「授業と学びコラム」に「ピンチをチャンスに変えよう(大西)」を投稿しました。
新型コロナウイルスはとても苦しい状況を学校にもたらしました。この状況を少しでも良い方向に活かすことを考えてほしいと思います。 是非お目通しください。 すこし未来の学校を考えよう
学校に出かけて子どもたちの姿を見ることができなくなって、2か月以上経ちます。2か月前は、このような事態になるとは全く予想もしていませんでした。日常のありがたさは失くしたからこそ分かるものだと実感しました。学校が再開されても子ども同士が楽しそうにかかわる姿を見ることは当分できないかもしれません。当面は学校で見聞きしたことではなく、今私が考えていることをこのホームページと「授業と学びコラム」で発信していきたいと思います。
緊急事態宣言が延長されると同時に、この状態からの出口を意識した動きも目立ってきました。「新生活様式」といった言葉も生まれてきましたが、学校も以前に戻ろうとするのではなく、「新学校生活様式」に変わっていくことが必要だと思います。目先の新型コロナウイルスに対応した学校生活のみを考えるのではなく、その先を見通したものになることが大切です。新型コロナウイルス騒動の収束後は、元の学校生活に戻るだろう、戻そうではなく、さらに前に進んだ学校に変わっていることが求められるのだと思います。 国はGIGAスクール構想を前倒しにて今年度中に一人一台を実現しようといます。だからといって、その環境がない今オンライン授業などはすぐに実現できません。下手をすれば、環境整備が実現した時には新型コロナウイルス騒動は落ち着いて、オンライン授業の必要性はなくなっているかもしれません。だからこそ、目先の対応だけにとらわれず、これから起こる環境の変化を活かした真の「新学校生活様式」を考えることが大切です。 そのための第一歩は、ICTに関する研修の時間を取ることです。多くの先生が自宅待機をしている今だからこそ、あえてオンラインで研修を行うことに挑戦するのです。休校になってすぐにICT研修をオンラインで行った学校では、今までこの種の研修に前向きでなかった先生の多くが積極的に参加したそうです。変わらなければいけないという気持ちに先生方がなっている今がチャンスなのです。子どもたちが学校にいないので予定した授業研究の現職教育を延期や中止する学校も多くあります。子どもたちと違って先生一人に一台のPC環境はほぼ整備されています。自宅でのネットワーク接続を許可すればすぐにでもオンラインでの研修は可能になります。この非常時です。ネットワーク接続のルールを一時的に変更することは決して無理なことではないはずです。先生方がオンライン研修を受けてみることで、子どものたちと同じ視点で気づけることはたくさんあります。研修を通じて、子ども一人に一台のPC・タブレット環境での新しい授業の姿が見えてくると思います。 LMS(Learning Management System)を活用して課題提示、提出、チェック、返却を行うようになった学校の先生が、「学校が再開したらこれを活用しない手はない。事前に課題を与えた授業展開を含めどのように授業を変えていこうか」と考え始めたそうです。その一方でこんな話も聞きました。ある学校で休校中の非常勤講師の給与保障するための業務として、学校再開後ICTをどう授業に活用するかのレポートを書いていただくことをお願いしたそうです。すると、ICTの活用に対応はできないので退職させてくださいと申し出られて困ったというのです。極端な例ですが、新しい学校環境に前向きに対応するというのは、思った以上に敷居の高いことなのかもしれません。機器を扱える先生がいないことを理由にICTの活用に否定的な学校の話も聞きます。最初から扱える先生はいません。まずはやってみることです。やってみると意外と使えたという言葉もよく聞きます。やってみて課題に気づき、それを何とかしようとみんなで相談することで、よりよいものとなっていくのです。 難しく考える必要はないと思います。最初から上手くいくはずはありません。失敗して当然です。失敗の先にある、少し未来の学校を創造することを楽しんでほしいと思います。 「授業と学びコラム」のご紹介
「授業と学び研究所」の「授業と学びコラム」では、この事態だからこその「学校経営」「ICT活用」「子どもとのつながり方」「地域との連携」などについて、私を含め6名のフェローが発信しています。
是非一度訪問して見てください。 |
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