子ども同士がかかわるために

先週は市の主催する「児童(生徒)同士のつながりを深める授業をめざして〜他者を意識させ、他者と関わらせるための効果的な手だて〜」というテーマの研修で講師を務めました。初任者全員が対象で、その他にオブザーバーとして初任者の指導員の方が数名参加されました。

前半は初任者の代表による小学校5年生の道徳の模擬授業をもとに、子ども同士をどうかかわらせるのかについて具体的にお伝えしました。模擬授業では他の初任者はコの字型の隊形になって子ども役です。
教材は、リレーの練習と図書委員の仕事がかち合った主人公がどちらを優先するのか悩むというものです。自分ならどちらを選ぶか、その理由も合わせて伝え合うという授業です。
授業者は子どもの言葉をしっかり受け止めることができます。実際の学級では子どもとの関係はきっとよいだろうと想像できます。グループで自分の決断を伝え合うのですが、ただ聞き合うことしか指示しないので、途中から雑談のようになりテンションが上がってしまいました。例えば、リレーを選んだ子どもの意見を聞く時には、他の子どもは図書委員の立場で納得するかどうかを話し合うといった活動にする方法もあります。みんなに自分の決断を納得してもることを目標にすると考えがもう少し深まったのではないかと思います。全体での発表も、一人ひとりの意見を順番に聞くだけなので、今回のテーマの子ども同士のつながりという点では物足りないものがありました。

私からは、授業形式で話を進めながら、具体的に子ども同士をどうつなぐとよいのかをお見せすることにしました。子ども役としてかかわりあえたかどうかを全体で確認し、かかわれた方にどの場面でかかわれたのかを問いかけました。同じ場面でかかわれた方同士をつなぎ、他の場面でかかわれたという方の意見と比較したりしながらかかわりに必要なことは何かを考えていきます。それに対して、かかわれなかった方には、その場面で自分はどうだったのかを問いかけ、かかわりが上手くできなかった理由に目を向けてもらいました。子ども役を経験することで、かかわり合いのポイントに気づけたのではないかと思います。また、うなずいたり、表情が変わったりした方を指名することで、挙手に頼らずに表情発言をもとにつなぐこともお見せしました。
グループでの活動の後の全体での共有は、結論以外にもどんなことを話したのか、友だちの意見を聞いてどんなことを感じたのかといったことを問いかけることで、子どもたちの思考の過程を明確にできたり、より深めていくことができたりすることもお伝えしました。
子ども同士をかかわらせるために、具体的にどのようなことを意識し、どのように働きかけるとよいのかのヒントになれば幸いです。

後半は子ども同士をかかわらせるための手立てについてお話ししました。初任者が対象ということもあり、かかわり合うための前提となる学級づくりを中心に話をさせていただきました。子ども同士がかかわる機会を増やすという視点でグループ活動を積極的に取り入れる方が増えていますが、子ども同士が安心してかかわり合える関係や雰囲気ができていなければ、グループにしたからといってかかわり合うようになりません。安心安全な学級づくりが大切です。そのためには授業規律がきちんと守られていることや互いに認め合う関係がつくられていることが大前提です。特に子ども同士が認め合うためには教師がまず子どもを受容し、認め、そして意図的に他の子どもにも認めさせる場面をつくる必要があります。また、教師がどのような姿を子どもたちに見せるのかを意識することも大切です。学級づくりの基本と子どもをつなぐための視点についてお話ししました。

2学期はもうすぐそこまで来ています。2学期からの学級経営や授業に何か一つでも取り入れていただければとてもうれしく思います。

数学の本質を問いかける書籍

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明治図書出版より発刊された、「中学校新学習指導要領 数学の授業づくり」(玉置崇著)を読了しました。
新学習指導要領では「主体的・対話的で深い学び」の実現や、各教科の「見方・考え方」を働かせるといったことが謳われています。何となく言われることはわかるが実際に授業をどうすればよいのかわからないと困っている方がたくさんいると思います。また新しい教科書が出てくれば、それに従って授業を勧めればよいのだろうと楽観的に考えている方もいるのではないかと思います。

本書は、玉置先生のかつての実践等を例にして、新学習指導要領でねらっていることを実現する授業の姿を具体的に示してくれています。具体的な授業場面を新学習指導要領の視点で説明することで、なぜこのような視点がこれからの教育に求められるのかも明確になっていると思います。新学習指導要領の目指す授業の具体的な進め方の大きなヒントを得られると思います。

新しい学習指導要領では、これまでになかったことが突然求められているのではありません。授業の本質は何も変わっていないと思います。玉置先生のかつての実践が、新学習指導要領の視点でみてもその価値が変わらないことからもよくわかります。逆に、数学的な「見方・考え方」や数学の本質が何かを十分に理解していなければ、本書を読んだといっても、紹介された具体例以外の場面で、何を問いかけ価値付けすればよいのかはすぐに見えてこないと思います。教科書や指導書に書かれたことの底にある、数学の本質は何かを意識することが大切になるでしょう。

本書は新学習指導要領の目指す数学の授業がどのようなものかを具体的にしてくれるとともに、数学の本質や数学を学ぶ意味は何かを読者に問いかけていると思います。中学数学を教える立場の方には是非一読をお勧めします。

市の研修で、仲間と教材研究するよさを感じる

市の少経験者の研修でコーディネーターとして参加しました。2年目、3年目の教員が対象の1日研修です。参加者が小学校低学年、高学年、中学校の3つのグループに分かれ、午前中は道徳の指導案の検討をし、午後にそれぞれが模擬授業を行うというものです。

今回各グループ3人ずつと少人数でしたが、かえって中身の濃い検討会になったようです。今回の模擬授業はどれもよく練られていると感じるものでした。
共通していたのは、登場人物の誰に寄り添わせて考えさせればよいのかをよく考えていたことです。あることに関して、異なる人の立場で考えることで多面的な見方をさせようとしたり、それぞれの行動は違っても根っこにあるのは同じ思いであることに気づかせようとしたりしていました。
模擬授業の子ども役も一生懸命に演じ、子ども役を通じて気づいたことをしっかりと伝えてくれました。子ども役を経験することで気づいてくれたことがたくさんあったようです。

私からは、「あなたが○○だったらどうする?」「あなたは○○のことどう思う?」「○○はどういう気持ち?」「○○が△△したのはどうして?」といった登場人物に関する問いかけ方の視点をお伝えしました。
道徳の教科書ができましたが(中学校は来年度から)、教科書に設問がしっかりと書かれているので、かえってやりにくく感じている方も多いようです。「手品師」という小学校のすべての教科書で採用されている教材の各社ごとの扱い方の違いを紹介して、教科書がこれだけ違っているのだから、先生方が自分の考えに従って自由に発想してよいのではとお伝えしました。

忙しい先生方ですので、なかなか教材研究に時間が取れないのが実態でしょうが、今回仲間と教材研究する楽しさ面白さを味わえていただけたのではないかと思います。このような時間を作れる余裕を持てることを願っています。

教材研究の大切さに改めて気づく

先日、模擬授業をもとにした市の研修会を行いました。今回の模擬授業での検討をもとに次回は実際の学級で授業を行います。教材は小学校1年生の道徳でした。

この教材は、ジャングルジムでさるくん、くまくんが遊んでいるところにやってきたねこちゃんが、くまくんに、さるくんと遊んでいるからと拒絶されることから始まるお話です。イラストとセリフで話が進んで行きますが、場面ごとに3人の登場人物の心情を理解する必要があります。授業者はある場面での3人の気持ちを細かく確認したり、場面を越えて特定の登場人物の気持ちを問いかけたりして状況把握をしました。
子ども役は参加者の先生方です。こちらは教材の意図や授業者のねらいがわかるのでかえっておかしな反応をしてしまいがちです。小学校1年生であれば、子どもたちは私たちの想像の斜め上を行く反応をしたりします。想像することも容易ではなく、リアルに演じることは難しいものです。
子ども役は状況把握の場面で、戸惑いを見せていましたが、気持ちを問う人物や場面が何度も入れ変わったことが原因のようでした。大人ですから、どうということもないはずですが、素直に子どもの視点に立っていたからでしょう。状況把握をする時に、どのようなことが大切かに気づけたようです

この日の主課題は、3人が仲良く遊ぶようになるきっかけとなった場面での、それぞれのセリフを3人のグループで考えるものですが、くまくんが「ごめんなさい」、残りの2人が「いいよ」という以外のセリフが浮かばないと困っている方もいらっしゃいました。子どもの立場で考えられていることがよくわかります。

授業検討ではそれぞれのグループから、自分たちが感じたことをもとにこうしたらよいのではないかという提案がなされました。子どもの気持ちに立ったからこそ見えるものがあったようです。子ども役を経験することのよさを実感していただけたのではないかと思います。

今回の教材は、小学校1年生のイラストが中心のものでした。言葉が少ないので余計に教材研究が必要です。私も事前に眺めただけでは気づかなかったことをこの模擬授業と検討会の時間を通じてたくさん気づけました。
さるくんとねこちゃんが遊んでいるときに、くまくんが、昨日は自分がさるくんと遊んでいたので、ねこちゃんは違うところで遊んでと言う場面があります、続いて、さるくんがどうしてねこちゃんと一緒に遊ばないのか、楽しくないから帰るという場面になります。この場面をしっかり押さえないと、単にさるくんが正義の味方のようになってしまいます。イラストをみると、さるくんがくまくんに言い返している時に、ねこさんは困った顔をしています。
次の場面ではジャングルジムから帰る2人をくまくんが見送っているのですが、さるくんは泣いているねこさんの手を引きながら困っています。この場面にはセリフがありません。ねこさんは最初にくまさんに拒否された時には泣いていませんでした。この違いを意識する必要があるように思いました。さるくんとくまくんがけんかのようになったことが原因で泣いているとも取れます。また、さるくんが怒って帰ると言ったことも決して良いことではないのです。少なくとも、ここの場面で、それぞれがどのような気持ちになっているのかをきちんと押さえて置かないと、仲直りをする場面のセリフが浮かんでこないと思います。
イラストは言葉の説明がないだけに微妙な描き分けで違いを伝えようとしています。小学校1年生の教材と軽く見ずにしっかりと分析する必要があることを痛感しました。3人が仲良く遊んでいる場面でも、さるくんは少し離れていて、くまくんとねこちゃんが楽しそうに遊んでいます。このことに注目すると「くまくんはさるくんと遊びたかったんだよね。でもねこちゃんと楽しそうに遊んでいるよ。何があったんだろうね?」と子どもたちを揺さぶることもできそうです。

今回の模擬授業を通じて私も含めて参加者全員が多くのことが学べたと思います。授業者が次回の授業をどのように工夫してくれるか今からとても楽しみです。よい学びの時間となりました。

元PTA会長の斎藤さんとコラボで研修を担当

夏休みになると先生方の研修会がたくさん開かれます。私も例年たくさんのお声がけをいただきよい経験をさせていただいていますが、先日元PTA会長さんで、学校RRとして一緒に漫才をしている斎藤早苗さんと二人で研修を担当するというこれまでにない貴重な体験をさせていただきました。もちろん学校RRの漫才も披露しました。
学校の総合力を上げることがテーマで、学校事務中心に一部管理職を交えた方が対象でしたが、事務の方を対象にした研修はほとんど経験がなく、このこともとても刺激的でした。
学校RRの漫才は、斎藤さんとのネタ合わせを中心に打ち合わせを行うのですが、今回はどのような構成で研修を行うかがメインで、漫才の練習の時間をあまりとることはできませんでした。でも、そこは経験値も増えたので、少ない練習でも満足のいくできでした。
斎藤さんと私では、学校の外部という点では共通ですが、立ち位置はかなり異なります。どんなことを伝えたり、考えてもらったりすればよいかについて、保護者ならではの視点からとても貴重な意見をいただけました。
最終的にプログラムは、以下のようになりました。

講演1:学校マネジメントとチーム学校(大西)
講演2:保護者の視点から学校や先生に伝えたいこと(斎藤)
みんなで考えよう(ワークショップ):学校の総合力を上げるために何ができるか
対談(斎藤、大西):外部の力を活かして学校の総合力を上げる
漫才:学校RR

斎藤さんは私の講演内容を随所で上手に引用し、自分の講演に取り込まれました。事前に打ち合わせしていたとはいえ、その場ですぐに取り込むことは並大抵ではありません。しかも保護者の視点からしっかりと内容を深められていました。元PTA会長恐るべし。

「事務の方は学校や子ども、保護者にとって大切な仕事を担っている。また事務だからこそ持っている情報もたくさんある。それを発信し共有してほしい。徴収金のそれぞれの意味や使われ方など、保護者にどんどん発信すればいい。ホームページを使えば可能だ」といった斎藤さんの主張は、自身がPTA会長時代にPTAの部屋というコーナーで発信し続けた経験を下敷きにした説得力のあるものでした。
知り合いの先生から、保護者の視点からの話はとても新鮮で刺激的だという感想をいただきました。その通りだと思います。私は学校に所属していないとはいえ、広い意味で学校の内側の人間であることをあらためて気づかされました。保護者という今まで経験のない方とのコラボはとても新鮮で刺激的で、私自身の視点を広げるよい機会となりました。

これを機会に、今後、斎藤さんとセットで研修を引き受けます。斎藤さんはやる気満々です。もちろん学校RRの漫才も追加料金なしでついてきます(笑)。オファーをお待ちしています。
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