授業者の意識が子どもたちの姿をつくる
前回の日記の続きです。
4年生の国語は、戦争を題材にした物語の授業でした。 発言意欲が旺盛でよく手が挙がることから、子どもたちと授業者の関係がよいのがわかります。友だちの方を向いて聞くこともでき、発言に対してよく反応します。授業者が子どもの言葉をしっかりと受容して聞いていることと、友だちの話を聞く姿勢を取らせることを意識していることがこの雰囲気をつくっているようです。 授業者が一人ひとりの意見を受容し、子どもの発言で授業が進んで行くのですが、子どもたちは自分の考えを言いたいという思いが強いようです。テンションも上がり気味で、意見はなかなかつながりません。 一通り発言させた後で、意見をまとめて次の発問につなげますが、子どもの考えがつながらず深まらないままです。一つの意見に対して、「なるほどと思った人?」「同じように考えた人?」とつないだり、「○○に注目したんだ」と価値付けをしたりすることが必要です。子どもの意見を整理しながら焦点化し、もう一度考えさせるとよいでしょう。 子どもたちに配給の様子などを説明するために、タブレットを操作してディスプレイに資料を映しますが、まだ操作に慣れていないために、子どもから目が離れてしまいます。中には集中できていない子どももいます。注意するかどうかは別にして、子どもたちの状況を把握することは必要です。ICTを活用する時に意識してほしいことです。 6年生の算数は分数の計算の授業でした。4人グループの隊形で授業が進みます。 子どもたちは体を前に向け、授業者の指示を落ち着いてよく聞いています。指示が終わるとすぐに問題に取り組みます。何をすればよいのかよくわかっている証拠です。個人で作業をするのですが、しばらくすると自然に聞き合いが始まります。教えている子どもの声はあまり大きくありません。程よいテンションです。グループがしっかりと機能していることがわかります。 授業者が「さあ、やってみようか」と低めのテンションで声をかけると、子どもたちは素早く前を向きます。特に指示をしなくても子どもたちが動けるようになっています。さすがは6年生です。よい授業規律ができています。 挙手に頼らず指名し、指名された子どもが立ち上がると子どもたちは一斉に振り返ります。その姿から、集中して聞こうという意欲が感じられます。指名された子どもの説明は計算の方法だけでなく、なぜその数を掛けるのかといった理由もきちんと説明されていました。自然に拍手が起こります。 授業者が、「みんな一緒だった?」とポイントなる数を掛けたことだけを簡単に確認すると、子どもたちはうなずいて反応します。授業者は再度説明することはしません。子どもたちが友だちの発言をよく聞くことの理由はこういうところにもあると思います。「分数の性質がわかっていれば、計算は困らない」とまとめて授業を終えました。 子どもたちのとてもよい姿を見ることができましたが、そのために授業者がどういうことを意識しているのかが伝わる場面でした。 この続きは次回の日記で。 子どもたち全員が考える場面をつくる
前回の日記の続きです。
2年生の国語は物語の授業でした。 授業者が範読します。会話文では感情を込めて大きな声で読みますが、国語の範読ではあまり感情を込めない方がよいでしょう。登場人物の心情は文章から子どもたちが読み取るべきだからです。子どもたちに読ませる時とは逆にややトーンを落として読むとよいと思います。 授業者は範読に一生懸命のあまり、本文から目が離れません。教科書に集中できていない子どもが目につきますが気づけませんでした。子どもたちの様子を常に意識することが重要です。 子どもたちの集中が続かない理由の一つに、範読を聞く時の目的が明確でないことがあります。授業者は範読の後個人で音読をさせましたが、そうであれば、音読を意識した指示をしておくことが必要です。主人公の気持ちを考えながら範読を聞くように指示して、音読の時には気持ちを込めて読むようにさせるといった方法もあります。また、「後で気持ちを込めて読んでもらうよ」と、次にやることを先に指示をしておくことも一つの方法です。活動の目的や目標を常に意識するようにしてほしいと思います。 読み終った子どもは手を上げて合図を送ります。授業者はそれに対してわかったよとサムアップで返します。一人ひとりをきちんと見ていることを伝えるよい方法だと思いますが、待っている間にすることがないため、どうしてもごそごそし出し子どもがいます。次の指示をしておくことも必要でしょう。子どもたちは読み終えていない子どもが少なくなってくると、自然に姿勢がよくなります。状況をよくわかっています。全員が読み終った時には、しっかりと前を向いて聞く準備ができていました。よい授業規律ができていました。 今読んだ部分の話の内容を問いかけると、一部の子どもたちがその場で反応します。授業者はその答を受容しながら進んで行きますが、全員が答えているわけではありません。答えない子どもがわかっていなければ本文で確認するといったことが必要です。わかっているけれど答えなくてもよいと思っているのであれば、参加する気持ちが弱いのですから、参加を促すことが必要です。「わからなければ、教科書で確認してごらん」「隣同士で確認しよう」と活動させたり、挙手に頼らずどんどん指名したりするとよいでしょう。 子どもたちは記憶をもとに答えますが、大事なところはきちんと本文に戻って考える必要があります。空中戦になっていることが気になりました。子どもたちに読み取らせたいことを明確にして、本文をもとにしっかり考えさせる時間を取ることをしてほしいと思います。 2年生の算数のTTでの授業は、テープ図の導入の場面でした。 ブロックを並べる作業が終わった子どもたちが、することが無くてだれています。中には並べたブロックを崩してもう一度やり直して時間をつぶしている子どももいます。授業者とT2が机間指導をしていますが、黙ってチェックするだけなので、子どもたちの意欲は上がりません。机間指導をするのであれば、「すごい」「はやいね」「きちんと並べているね」といった声かけをして、子どもたちの意欲を高めることを意識してほしいと思います。 授業者は子どもたちが作業をしている時に話しますが、作業を止めないので子どもたちは聞いていません。「並べられた?」と声をかけて、一部の子どもが「うん」と答えたのを聞くと、全体でブロックを黒板に並べながらブロックの色の使い方の説明を始めました。当然ながら子どもたちの集中は切れたままで、ほとんど顔が上がりません。そのまま一部の子どもの反応で説明が進みます。まず、子どもたちに集中させるために、姿勢を整えて顔を上げさせることが必要です。 広げた教科書とノートで机がふさがれているので、重ねて手前に置き、上部に空いた細い隙間を使って一列にブロックを並べるように指示しました。まだ、2年生ですので手元から遠い狭いところでの作業はやりにくそうでした。白と赤のバラをブロックと対応させて並べさせ、続いてブロックを合わせる操作をしますが、狭いためバラバラにしてしまったり落したりします。課題を黒板に貼っておけば、教科書やノートはしばらく必要がありません。しまっておいて机を広くして作業させるべきでしょう。狭い場所での作業ということもあり、ブロックを使った作業にずいぶん時間を使ってしまいました。 ブロックでなくてもと言って、テープを取り出し黒板に貼ります。突然天下りでテープが出てくるので子どもは戸惑います。「ブロックを並べるのは大変ですね」と説明しますが、子どもたちは今までと同じことをしているだけなので特に大変だとは思っていません。続いて「何個分かわからないね。どうやったらわかるなか?」と問いかけますが、何個分かわからないことが問題だとも思っていません。授業者はテープで「ここからかここまでがいくつ?」と全体の数を問いかけますが、数人が反応するだけで他の子どもは反応しませんでした。子どもたちが自分で考えて理解する場面がなく、授業者の説明を聞いてやり方を覚えることになってしまいました。 ブロックからテープ図への移行を子どもたちが自然に考える場面をつくるとよいでしょう。例えばブロックを四角で表わし、□□□と一つずつ書くと面倒だからと、長い長方形をかいて縦線を引かせます。こうすることで、テープ図とブロック図の中間の図ができます。縦線を引いて何個あるか考えるのは面倒だからと縦線を省略しようとすることで自然にテープ図を導入できます。ここで、数が数えられなくなるのでどうしようと問いかけることで、数字であらわすことの必然性が出てきます。子どもたちとやりとりしながら考えていくことで、自然にテープ図を導入できるような流れを工夫してほしいと思います。 この続きは次回の日記で。 |
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