子どもたちが活躍する授業について考えていただく
昨年度末に、私立の中学校高等学校の授業評価報告会で、子どもたちの厳しい現状について報告しました。
子どもたちと先生方の関係は良好で、先生方の授業に対する姿勢や基本的な指導について肯定的です。しかし、それにもかかわらず子どもたちの授業への意欲や積極性が低いことが大きな課題です。授業評価から見えてくるのは、「授業で活躍できる」場面が少ないことや話を聞いているだけの「受け身から脱却」できていないことでした。特に高等学校では授業進度のことが気になるために、先生が一方的に説明して板書を写させて終わる授業が多いようです。子どもたちが積極的になるためには自己有用感が大切になります。「結果を出す」「ほめられる」といった場面があることで、自己有用感を味わうことができますが、受け身の授業ではその場面をつくることが難しくなります。子どもたちが活躍する場面をつくることが必要です。子どもが活躍する授業といえば、最近何かと話題になるのが「アクティブ・ラーニング」です。アクティブ・ラーニングの視点を意識してどうすればいいのかについてお話ししました。 まず手をつけてほしいのが、「受け身の時間を減らす」ことです。子どもたちが「先生の話も聞かずに板書を写している」「先生の解説を黙って聞いている」「問題の答を知るだけ」という状態をなくし、「進むことを優先するのではなく、全員の子どもがわかる・できるを保障する」授業に変えることです。そのことを意識して、先生方にグループで「どんなことをすればいい?」「できそうなことは何?」「どこで困りそう?」「何がわからない?」といったことを聞きあっていただきました。私が思った以上に先生方から意見が出ています。みなさん、以前は子どもを活躍させるような工夫をいろいろしていたように見えます。いつの間にかそういった工夫をしなくなったようです。先生方から「教科書を終わらせないと」という声を何度か聞きましたが、そういったことが原因なのかもしれません。 ここで、他の学校での子どもたちの様子を動画で紹介しました。子どもたちが課題に対して、自分たちで相談しながら取り組んでいる姿や、一人で黙々と集中している姿です。この子どもたちは、以前はこの学校の生徒たちとあまり大きな違いはありませんでした。先生方が変わることによって、その姿を大きく変えたのです。どうやって、このような姿になったのかを考えていただきました。 結論から言えば、先生方が子どもたちの姿を変えたい、変わってほしいと思うかどうかの問題です。この学校でのきっかけは、授業中に「寝る子どもをなくしたかった」ことです。子どもたちが変わるにつれて、先生の言葉が「子どもがダメだ」から「自分たちの授業の問題だった」と変わっていきます。「子どもはすごい」「準備は大変だけれど子どもの姿がエネルギーをくれる」といった言葉が聞かれるようになりました。子どもの笑顔が増え、授業に集中しています。子どもたちは、「頑張ればわかると信じて」授業を受けているので集中が切れないのです。子どもたちの原動力は「わかりたい」「できるようになりたい」であって、「楽しい」「おもしろい」はその先にあるのです。 最後にどのようなことをやってきたのか簡単に整理して終わりました。 ・笑顔で子どもを受容する ・子どもに問いかける ・隣同士で相談 ・グループで相談 ・問題を解くのにわからなければ聞いてもいい ・先生が答を言わない ・他のグループにも協力する ・自分たちの考えや活動をみんなの前で発表 ・友だちや先生が認めてくれる 報告会の後で、管理職の方と今後についてお話をしました。私からは大きく2つのことを提案させていただきました。一つは、先生方はいろいろな工夫をする力はあるがそれをやろうという意欲が低いので、トップダウンで授業改善の方向性を示すこと。もう一つは、先生方が互いに授業を見あってよいところを学び合うことです。 ボトムアップで進めることができればいいのですが、現在の状況を見るとその時間的な余裕はないように思います。先生方の持つポテンシャルは決して低くないので、それをいかにして引き出すかが課題です。管理職の決断を待つことになります。 |
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