若い先生の可能性を感じる

昨日は私立の中高等学校で授業アドバイスを行ってきました。

中学校は、全体的に板書を写す以外の子どもの活動量が少ないように感じました。1年生は小学校の時のよい学習習慣がまだ残っています。作業が終わってよい姿勢で待つといったことができる子どももいます。しかし、先生方がそのことを評価していません。せっかく身についているよい習慣も先生が認めて強化しなければ次第に消えていきます。子どもたちのよいところを見つけて評価することを忘れないでほしいと思います。
2年生、3年生に強く感じるのは子どもたちが板書を写してそれを覚えるのが勉強だと思っていることです。授業者が話しをしていてもほとんどの子どもが板書を写すことを優先します。写し終れば、集中が落ちてしまいます。どうやら授業時間中に身につけようとするのではなく、試験前にまとめて覚えようとしているようです。今覚えても試験までに忘れるからムダのように思っているのでしょう。また、外化する場面がほとんどないことも課題です。知識は覚えるのではなく、使って身につけるということを子どもたちに伝えてほしいと思います。
子どものつぶやきを拾う場面を目にするのですが、発言者と授業者の2人だけの世界に入っていることが気になります。他の子どもはそこに全くかかわりません。授業で子ども同士の人間関係をつくることを意識することが必要です。
試験前なので、「試験に出しますよ」という言葉も聞こえてきます。これは利益誘導の発想です。子どもたちを消費者的行動に駆り立てます。学習や学びとはそういうものではありません。「何が大切か、何が役に立つか自分で判断する」「面白い、成長を感じるから学ぼうとする」といった視点を大切にして授業を組み立ててほしいと思います。

新しく採用された体育の先生の中1の授業を参観しました。つねに笑顔を絶やさない先生です。指示も大きな声で伝えます。ダンスの場面では「楽しく」「美しく」といった目標を明確にしています。子どもたちもとてもよい表情を見せています。しかし、全員前を向いて踊っているので、互いの表情は見えません。列やペアで向き合って踊るといった場面もほしいと思います。また、せっかく目標を明確にしているので、その評価がほしいところです。「ダンス中に子どもたちのよいところを名指しでほめる」「ペアで向き合って、終わったあとに互いのよいところをほめる」といったことも取り入れるとよいでしょう。
活動で使うマットを子どもたちに準備させる場面で、「力のある人」と子どもたち声をかけて運ばせます。人数が余るようなときに、こういった声かけをすることで積極性を引き出すのはよい方法だと思います。すばやく運んだ子どもたちは、とてもよい表情をしていました。残念なのは、そういう子どもたちに対して「ありがとう」の声かけがなかったことです。子どもたちのよい行動はできるだけ評価して学級全体に広げることが大切です。
マットに寝そべる時に頭を打たないように何度も注意します。事故につながることなので繰り返したのでしょう。解散してマットをはさんでペアをつくりました。子どもたちは素早く動くのですが、待機する姿勢がバラバラです。その指示がなかったからです。待機の時はいつもどうするかを4月の段階で徹底しておくか、今回の一連の指示の中に入れ込んでおくことが必要です。
子どもを一人選んで授業者がペアになって、今から行う運動について説明します。子どもたちがマット沿って広がった状態で行ったため、授業者の死角ができました。そこの子どもたちの集中度が低かったのが残念です。授業者の位置を変えるか、子ども同士のペアを使って説明するとよかったと思います。
運動を始める直前にも、もう一度頭を打たないように注意をします。しかし、何度も聞いているので聞き流している子どももいます。それよりも早く始めたいのです。指示ばかりをするとこういうことが起こります。ここは指示ではなく確認の場面です。子どもを指名して「何に注意をする?」と問いかけるのです。ペアで確認し合ってもいいでしょう。
腹筋の回数をペアが数えます。ペアの役割は足を押さえることとこれだけです。腹筋運動のポイントを明確にして、そのことをチェックさせたりするとよいでしょう。
目標や指示を明確に伝えることができる方なので、評価や確認を意識すると授業がぐっと締まると思います。また、体育はどうしても運動の得意な子どもが活躍して評価されることが多くなりがちです。できなかった子どもができるようになったという伸び代を評価することを忘れないでほしいと伝えました。若くてやる気のある方なので、変化が楽しみです。

若手の中1の数学の授業を参観しました。式の値の場面です。
すぐにしゃべる、多動気味の子どもがいます。授業者は子どもを否定せずに受け止めようとしています。しかし、他の子どもがその子どもの言動に対して過敏に反応します。否定的な言葉をかける子どももいます。子どもたちの言動は教師の子どもへの対応をなぞっている可能性があります。これは想像ですが、教師が否定的な言葉を使っているのかもしれません。教師が否定的な言葉を使わず、明確な基準を持ってその子どもに対応する必要があります。この授業者のように受容する態度は大切です。しかし、授業に関係ない言動までを受け止めてしまってはいけません。逆に、叱ってもあまり意味はありません。叱られても教師の関心を引ければそれでよいからです。授業に関係ない話は原則として無視をする。または、指を口持って行って声に出さずに「しーっ」と口を閉じるように伝えます。しゃべるのを止めたら、笑顔でうなずいてほめます。望ましい行動を強化するペアレントトレーニングの発想です。授業に関係のあることであれば、対応は大きく2つです。今全体で取り上げるべきことであれば、「よいことを言ってくれた」と全体に対してもう一度発言させて、公の舞台にのせます。もし、全体で扱うべきことでなければ、「あとでね」と発言を受け止めるだけにして、作業の時に個別に対応します。こういう対応は、どの子どもに対しても同じようにできますから、その子どもだけの特別な対応になりません。このような対応方法をお伝えしました。
上空3kmの気温は地上よりも18°C低いということをa-18と式で表わし、代入と式の値について説明します。授業者は地上の気温が24°Cの時の上空3kmの気温が何度になるかをたずねます。答を何人にも聞きいていきます。間違えた子どもがいても、その答を受け止めます。同じ答の子どもがいれば「同じだね」と正の字をつけていきます。なかなかよい対応だと思います。続いて、理由を聞きます。指名された子どもは、上空の気温は18°C低いからと説明します。授業者は24-18の式を子どもから引き出し、他の子どもも同じ式なったことを確認しました。間違えた子どもは計算を間違えたのか式を間違えたのかはわかりません。ここは、その子どもにも発言させたいところです。
さて、ここで、24-18という式は、最初に説明した子どものように式の意味から考えた子どもと、aが24だからと、代入の発想でやった子どもがいるはずです。それを同じとひとくくりにしてしまうと、子どもの思考は混乱します。ここは、式の値である6ではなく、代入を理解するための式にこだわるべきだったでしょう。平地の気温が24°Cだったら、どんな式になる。10°Cだったら、0°Cだったら、−3°Cだったらと次々に聞きます。最初の式と、これらの式を並べて気づくことを言わせます。aの代わりに、その時の気温の値を入れればいいことを押さえて、代入をまず定義します。ここでaを□で囲み、□の中に値を入れるイメージをつけます。この□が()と同じであることを確認しておくとよいでしょう。その上で、式を計算させて式の値を定義するのです。
授業者は、先に式の値を計算させたため、代入の押さえが弱くなってしまいました。そして、すぐに4xといった×が省略された式の値の計算に移りました。ここで4xを4×xと直して計算をすぐに始めましたが、まず代入することだけを押さえたいところです。X=2の代入であれば、xの代わりに2を入れると、42となってしまいます。ここで先ほどの箱のイメージを活かして、4(2)とします。これが代入のイメージなのです。「こんな式はおかしいね。どうして?」と子どもに問いかけ、文字の場合×は省略されていることを子どもから引き出し、文字に数を代入すると省略できなくなるから×が復活することを押さえるのです。4×(2)としてから、この()は省略できることを確認します。こうしておけば、負の数だけ()をつける。累乗の時に()をつけるといったイレギュラーな対応は無くなるのです。
-xにx=-3を代入する問題でも、-x=-1×xを先に押さえました。代入すると-(-3)としてから進めたいところでした。教科書はこの問題の横に「-(-3)=3となるね」と注を入れています。授業者はここ無視してしまいました。
子どもたちは、式の値を求めるところではなく、代入で混乱していました。授業者は問題練習の場面で、そのことに気づいていましたが、その修正はできませんでした。
机間指導中に、「いいよ」と声をかけていきます。声をかけられた子どもはうれしそうです。子どもをほめようという姿勢はとてもよいと思います。しかし、全員に声をかけているわけではありません、具体的にどこがよいかも明確ではありません。中途半端に声かけするのではなく、赤ペンを持って全員に○をつけてほしいと思います。「○付け法」です。学級は比較的少人数ですので、それ程無理なくできると思います。「○つけ法」に関する本もたくさん出ているので、是非勉強してほしいと思います。
子どもを認めよう、活躍させようという意識を感じます。あとは具体化と教科書の読み込みです。やる気と素直さを感じる先生なので、次回は一歩進んだ姿を見せてくれることと思います。

高等学校の様子は、明日の日記で。

魅力的な企画が進行中

昨日は、授業と学び研究所のミーティングでした。

学校でのICTの新しい活用の企画を続けていますが、今回はそれぞれでまとめてきたコンセプトを持ち寄りました。アイデアとしてはそれほど珍しいものではないと思われる企画でも、その活用方法を子ども、保護者、教師、行政といった側面から考えるととても面白い可能性が見えてきます。ありきたりに見える企画でも、ちょっとした要素や仕掛けを組み込むことで、学校にとって魅力的なものに変わります。逆に、大掛りなもの、今までの仕事の形をまったく変えてしまうようなものは、たとえそれがもたらす恩恵が大きくても、現場にとってはなかなか受け入れにくいものになってしまいます。大きな変化を否定するわけではありませんが、ちょっとしたことでも魅力的な提案はたくさんあると思います。今回、皆で持ち寄ったものは、根っこの部分は共通ですが、「なるほど、こんな考え方や活かし方もある」と納得のできるものばかりでした。これらを上手く組み合わせことでとても可能性があるものが生まれる予感がします。今後この企画を具体的なものにするために、デザイナーにシステムデザイン案を立てていただきます。起ち上げて1月あまりですが、スピード感ある仕事ができています。

こういった新しいICT活用の提案も面白いのですが、授業と学び研究所ですからやはり授業そのものについても発信していきたいという声が上がってきました。そこで、私たちならではの授業に関するセミナーを開こうということになりました。時期や内容はこれから詰めていきますが、私としては抽象論ではない実践的なセミナーになればと思っています。楽しみにしていただきたいと思います。

リーダー以外にも読んでほしい、リーダーのための本

画像1 画像1
玉置崇先生の著書「主任から校長まで 学校を元気にするチームリーダーの仕事術」の紹介です。

学校は鍋蓋組織とよく言われます。一般企業と違って中間管理職のポジションもはっきりとしません。あなたは主任だからチームのリーダーだよと言われても、いったいリーダーとして何をすればいいのか、具体的に教えてもらった経験がないという方も多いのではないでしょうか。リーダーのあり方が組織を変えるとはよく言われますが、部下の立場でリーダーへの不満を感じていても、いざ自分がリーダーとなった時に何をすればいいのかよくわからないことが多いように思います。日々学校におじゃましていますが、組織としてリーダーを育てる仕組みがきちんと備わっていないとよく感じます。

この本は、「仕事術」とありますが、こうやると仕事がはかどるといった類のことが書いてあるわけではありません。チームのメンバーがやる気を持って仕事をするために、リーダーは何を意識し、どのような姿勢で仕事に向き合えばいいのかが、具体的に語られています。学校の場合、リーダーといっても授業や部活動の指導など、他の先生と変わらない仕事を持っている方がほとんどです。負担感ばかりを感じるかもしれません。そんな中、ちょっと視点を変えるだけで、組織が円滑に動き出してチーム力がアップし、負担感も軽減されます。それこそ、学校が元気になっていくのです。

この本はチームリーダーを対象に書かれていますが、まだその立場にない方にもお勧めしたいと思います。ここに書かれているチームリーダーがなすべきことの中には、チームの一員として知っておくべきこと、意識すべきことがたくさんあるからです。また、学級を一つのチームと考えれば、学級担任はチームリーダーです。ちょっと視点を変えれば学級経営のヒントになることもたくさんあります。3章で書かれている、「職員の悩みを解決する話の聞き方」「職員のやる気を引き出す声のかけ方」「注意を促す時の声のかけ方」などは、小学校中高学年や中学校における、学級の子どもとの接し方に通ずるものがあります。

元気な学校をつくってきた玉置先生だから書ける、実践に裏付けられた、すぐに実行可能な具体的なノウハウやヒントが満載です。リーダーだけでなく、もうすぐリーダーになる方、そしていつかリーダーになる、すべての先生にお勧めしたい本です。

菊池省三先生と若い先生、学生から刺激を受ける

今年度第1回の教師力アップセミナーは、菊池道場主宰の菊池省三先生の「豊かなコミュニケーションによりお互いを認め合う学級づくり」と題した講演でした。

講演は菊池学級で育った子どもの姿をまず動画でたくさん見せていただきました。子どもたちが堂々と自己開示できていることが印象的でした。子どもが何を話しても安心、安全な学級がつくられていることがよくわかります。また、子どもの口から「価値語」と言われる言葉がたくさん語られていました。「価値語」とは「自分を見くびらない」「いい意味でバカになれ」「白熱する教室」・・・といった子どもたちに大切してほしい価値観や行動を言葉にしたものです。これが子どもたちに浸透しているのです。「価値語」は、子どもから自然発生的に出てくるものではありません。また、いくら「価値語」を教えても、それが具体的にどうすることなのかわからなければ絵に描いた餅です。菊池先生は子どもをポジティブに評価し「ほめ言葉のシャワー」を浴びせ続けます。教師が自らの行動で具体的に示すことや、子どもたちのよい行動を引き出し即時に価値づけすることが必要です。子どものよい行動を引き出すために、菊池先生は通常の係活動とは異なった係をつくっておられました。例えば、「ダンス係」は子ども同士がダンスバトルをする会を企画運営します。こういった活動が、「価値語」の意味を体感する場と実践する場になっています。
また、気なる子どもへの接し方についてもとても納得のいくお話が聞けました。たとえ一瞬でもよい行動をとった時にほめることや、子ども同士で気になる子どもをよい方向に変えるように働きかけるといったことは、本当にその通りだと思います。

子どもたちの具体的な姿を動画で見せながら語られるので、説得力はとても高く、多くの先生方に指示される理由がよくわかります。具体的にどのようにしているのか、細かいところについてもっと詳しく聞きたかったのですが、時間の関係もあってできなかったことが残念です。多くの著書があるので、それを読みなさいということですね。

たまたまかもしれませんが、動画に登場する子どもたちは、明るく自信にあふれていますがややテンションが高い傾向がありました。相手を「説得」するタイプに感じられます。学級として互いに認め合えるように育っているので問題にはならないのですが、進級や進学で他の学級の子どもと混じった時に、まわりの子どもとどのような関係になるのかちょっと気になりました。相手のことを思いやれる子どもたちなので上手くなじむのかもしれませんが、反発されるかもしれません。こういう学級経営が個人の取り組みではなく、学校全体のものとなってほしいと思います。

教師力アップセミナーの運営のお手伝いに、新たに若手の先生、学生が参加してくれました。特に岐阜聖徳学園の玉置ゼミからは、地元ではない方もたくさん参加してくれました。大学以外の場でも学ぼうという意欲が素晴らしいと思います。玉置ゼミの学生に共通して素晴らしいと感じたのは、人に接する姿勢です。受付では参加者に資料をきちんと両手で笑顔をと共にて渡していました。簡単なことのようですが、なかなかできないことです。研究発表などに出かけても、受付で笑顔に出会えないこともよくあります。また、玉置教授から学生に紹介された時、みな素敵な笑顔で応えてくれました。笑顔の内に素直さを感じます。よい指導者の下、きっと素晴らしい先生として教壇に立つ日がくることでしょう。何年か先に彼らと学校で出会う日がくることを楽しみにしています。

運営の反省会でのセミナーの感想の中に、菊池先生の話術の素晴らしさがありました。若い方は、上手な話術にあこがれる傾向があります。確かに教師として大切なことの一つなのですが、過度にそこを意識しないでほしいと思うのです。ある意味、話術は芸です。子どもたちにうける話をできることは悪いことではありませんが、あくまでも大切なのは何を伝えるか、どんな活動をするかという授業の中身です。話術は数ある授業技術の一つに過ぎないのです。この日の菊池先生のお話しであれば、具体的に子どものどんな行動をどのようにほめればいいのか、子ども同士が認め合うためにはどのような働きかけをすればよいのかです。もちろんこのことも意識してくれているとは思いますが。
玉置ゼミのサイトでは、学生が読書などの日々の学びを発信しています。学生らしい素直な視点に好感が持てます。今回のセミナーでどのようなことを学んだのか、発信が楽しみです。
菊池先生の講演と、若い先生、学生に大いに刺激を受けた一日でした。

「情報の伝達と共有」についての研修検討

先週末に、介護関係の研修の打ち合わせを行いました。「情報の伝達と共有」についての研修内容の検討です。

今回は情報をいかに文章で伝えるかということについて考えてもらうのですが、これは教師にとってもとても大切な問題です。教師は、日々の学級通信や通知表の所見、生徒指導の記録など、たくさんの文章を書きます。同じ子どものことを伝えるにも、伝える相手や目的によってその内容は大きく変わっていきます。この相手意識や目的意識がとても大切になります。
ちょっとした表現の仕方で、誤解を生むこともあります。直接顔を合わせてのコミュニケーションではないので、場合によっては誤解が生じたことに気づけないこともあります。また、保護者に伝えるつもりの文章を子どもが読んでしまう危険性もあります。こういう視点からも、文章で伝えることは、とても難しくいろいろな点に注意が必要なことがわかります。

介護の場合は、伝える相手は主に利用者の家族や同僚になります。伝えるべき内容も目的も大きく異なります。この違いを意識していただくことが研修の目的の一つです。
これとは別に、文章ですので誤字脱字などの問題もあります。すぐに完璧にできるようになることは不可能です。参加者に、日々意識して文章を書いていただけるような研修の進め方を考えます。

中学校で新学年のスタートの状況を観察する

連休前に、中学校で授業アドバイスを行ってきました。新学年のスタートの状況を学年主任と一緒に観察しました。

昨年度の1年生は、出身小学校の違いが態度に色濃く出ていました。しかし、今年度はそのようなことはありません。子どもたちは、学級の中で一体感を持って暮らしています。学年主任の話では、意図的に子ども同士がかかわるようなイベントを多く設けて、交流を促したということです。それが効果的だったようです。子ども同士の関係がよいのですが、気になる場面もあります。教科の内容に関係のないことでテンションが上がりすぎるのです。子どもの関係づくりと並行して、学習規律をきちんと整えることが必要に思いました。また、事情があって男女1列ずつ並べる机配置になっています。隣同士で相談する場面でも、隣が離れていることもあり前後の同性と話しています。理科の実験などでグループの形になっている時は、ちゃんと男女でかかわれています。事情はあるにせよ、一考が必要だと思います。
たまたま、ベテランと若手が隣同士で社会科の授業を行なっていました。共に子どもたちがとても集中して課題に取り組んでいました。ベテランの授業では、子どもの発言が聞き取りにくかったので、「もう一度聞かせてくれる」と再度発言させ、全員で復唱させて確認していました。子ども同士を上手につなげ、友だちに「聞いてもらおう」「聞こう」という姿勢を身につけさせるようにしていました。若手も以前はテンションが高くしゃべりすぎの傾向があったのですが、とても落ち着いて言葉の数も減っています。課題に工夫をしているので、子どもが集中して取り組みます。この時期に、これだけの状態というのはとても素晴らしいと思いました。こういった授業をほんの数分でいいので見学して、素晴らしい子どもの姿を学年で共有することお願いしました。
また、ベテランの授業で、気になる子どもにちょっとかかわりすぎている場面がありました。そのため子どもの集中が切れかかったのですが、授業者はそのことにすぐに気づき、全体で一度姿勢を正し集中を取り戻させました。見事な対応でした。しかし、経験の浅い方ですと気になる子どもにかかわりすぎて、他の子どもたちをほったらかしにしてしまうことがあります。ざっと見た感じですが、どの学級にも少し気になる子どもの姿があります。若手が多い学年団なので、このことに注意をするようお願いしました。

2年生は昨年度のよい状態を維持できています。子どもたちはとてもよい集中を見せてくれます。社会科の授業で、子どもたちが集中して課題に取り組んでいる場面がありました。授業者は、教室の隅でじっと子どもたちのようすを見守っています。これだけのことで素晴らしい集中を見せてくれる子どもたちです。しかし、先生によって子どもたちの様子にはっきりとした違いが出てしまう傾向あります。昨年から持ち上がってきた先生に対しては、先生が自分たちに何を求めているのかをよく知っています。一方的にしゃべり続ける先生は、顔が上がっていればそれ以上を求めません。そのため、その間、明らかに集中力が落ちている子どもが目立ちます。先生が問いかけたりすることで授業への参加を求めれば、この子どもたちであればすぐに集中できるはずです。もったいないと思います。学年主任はこの3月の卒業生の姿を目標にしています。彼らは、先生にかかわらず、とても集中して授業に参加していました。どんな先生でも姿が変わらないのです。そのためには、たとえ自分の授業でよい姿であってもそれで満足せず、どの先生の授業でも常によい姿勢で取り組むよう、子どもたちに働きかけることが必要です。このことをお願いしました。

3年生は、全体的に頑張ろうという意欲が感じられます。特に、指示が明確な作業や活動の目標や評価が明確になっている活動ではとてもよい集中を見せてくれます。新しく3年生の担当になった先生とも、よい関係を築けているようでした。ただ、この学年の子どもたちは互いによいかかわりができるのですが、一部の子どもがどうしてもその中に入れずに孤立する傾向があります。新しい学級になったばかりでそれほど目立たないのですが、そういう傾向にある子どもたちが上手く新しい学級で居場所をつくれているかどうかを、先生方が注意している必要があると思います。
数学の少人数の授業で、「与えられた整数にどんな数を掛ければ平方数になるか?」という課題で、子どもが発表している場面に出会いました。子どもたちが友だちの言葉をとても集中して聞いています。授業者も余計な説明はせずに、子どもたちに考えさせようとしていました。こういった姿に、3年生としての意識が高まっているのを感じました。
今年初めてこの学年を担当する若手の英語の授業では、子どもたちが集中して次に次に課題に取り組んでいました。わずかな時間にとてもよい関係を築き上げています。その理由の一つに、この授業者が活動の目標を明確にし、ペアなど子ども同士で行う活動では、相手の言葉を聞かないとできないような課題を与えて、互いに評価できるようにしていることがあります。また、終始笑顔を絶やさないので、子どもたちが安心して授業に参加していることも大きく影響していると思いました。
3年生の学年団には今年異動して来たベテランの先生も入っています。学校文化の違う地区からの異動だったので、戸惑っているようです。こういった場合、ベテランの方はどうしても過去のやり方にこだわってしまうことが多いのですが、この先生方は変わろうとしていることが印象的でした。
全体会終了後、積極的に質問に来てくれました。

社会科の先生は、市の共通テスト対策の授業をすることがあたりまえになっている地域からこられた方でした。知識を与えるのではなく、課題を与えて考えさせ、子どもの発言をもとにつくる授業がなかなかイメージできないようです。しかし、他の先生方の授業を見たりして学ぼうとしています。この日の授業では、授業者が大きな声で一方的にしゃべる時間が多く、知識を一問一答する場面が目立ちました。それでも、子どもに考えさせようとは意識しています。グループで考える時間を取ろうとしていました。しかし、知識をまとめることを課題としているので、子どもたちはあまり考えることはしていません。授業者はどのような課題を与えればいいのかまだよくわかっていないようです。子どもたちはグループで相談することに慣れているので、すぐに集中して取り組んでいました。鍛えられている子どもたちです。課題を少し工夫すればすぐに授業は変わっていくと思います。この学校の社会科は互いに相談する空気があります。積極的に相談することで、よい課題が見つかっていくと思います。本人も授業を変えようと意識して取り組んでいるので、きっとよい方向に変わっていくと思います。次回、授業を見るのが楽しみで。

英語の先生は、どのように進めればいいかを英語科の先生に相談したところ、プリントを使って「たくさん言わせればいい」と言われて、戸惑っていたようでした。ただ読ませる、言わせるだけで学力がつくとは思えなかったのです。しかし、この学校の英語の成績は、以前その方がいた学校よりもかなりよかったので、納得できないままにそのやりかたで取り組んでいたようです。おそらく先ほどの若手の先生に相談したのだと思いますが、授業の進め方や、目標・評価の与え方といったその授業のポイントについてはあまり詳しく説明しなかったようです。課題の内容も大切ですが、英語のような技能面の強い教科では、取り組ませる姿勢もとても重要です。一つひとつの活動に明確な目標を与えることを意識するようお願いしました。課題の内容については、いろいろな工夫ができます。その先生なりのものを考えてもらうためのヒントにするため、私の知っている事例をいろいろお伝えしました。この先生に授業技術や学級経営力があることは、授業の様子を見ればすぐにわかります。今回の異動を、これまでの自分の授業を見直すきっかけにしていただければ、大きく飛躍することと思います。
英語科はこれまで中心となっていた先生が異動され、リーダーシップをとる方がいなくなる心配があります。新しい方と共に、英語科全員で授業をどう進めていくかを話し合っていってほしいと思います。

この日の全体会はこれからの研修の進め方について、新しい研修主任から説明がありました。研修主任は意欲的にその仕事に取り組もうとしています。その一方で、具体的に自分がどのように先生方に働きかければいいか悩んでいました。自身が積極的に授業改善に取り組んでいる方なので、自分が先生方の授業から学んだことを発信することを中心にしてはどうかとアドバイスをしました。今年度どのように研修が進んでいくか楽しみです。
研修主任の話の後、この時期の授業や学級経営に関しての先生方の疑問に私が答えました。「体育における言語活動をどう考えればいいのか?」「指示に対して、子どもの動きが遅く待ちきれない時にどうするのか?」といった具体的な質問をいただきました。こういった質問をしていただけるのはうれしいことです。

昨年度までは異動が多く、現状をどう維持するのかがこの学校の課題でしたが、今年度は例年より異動者が少なく、人事面での影響をあまり受けていないようです。4月の段階で子どもたちのよい姿をたくさん見ることができています。今年度校長は、(子どもたちを)「磨く」を新しいキーワードとしたそうです。現状維持ではなく、もう一歩先に進むことができると確信したのだと思います。教務主任はスタートが勝負ということで、私の訪問を一学期に集中させています。スターダッシュと同時に、これまで以上に進化した子どもの姿が見られるようお手伝いをしたいと思います。次回の訪問が楽しみです。

顔を合わせて話し合う時間の大切さを考える

授業と学び研究所の会議に参加してきました。今回は学校における校務支援ソフトの今後のあり方や研究テーマについて検討をしました。

メンバー全員がアイデアを持ち寄り、一つひとつ検討をしました。最近はメーリングリストなどを活用して議論を行うことも増えてきましたが、やはり顔を合わせることで深い話し合いになることを実感しました。話が発散する場面もありますが、それが面白い発想につながったりと、まさにブレーンストーミング状態でした。細かい内容をここに書くことはできませんが、研究所のメンバーの質の高さもあって、校務支援ソフトのようにある程度成熟したソフトやサービスにも新たな切り口や可能性があることに気づかされました。

学校に出かけていて思うのが、こういったじっくり話し合う時間を先生方が取ることができていないことです。何と言っても忙しすぎるのです。強制的にでも時間をつくることをしないと、子どもたちについての情報交換の時間も取れなくなってしまいます。
中学校で、学校として一律の部活動休止日を毎週設けているという話を聞くようになりました。先生方に休養を取ってもらいたい、余裕を持って話し合う時間をつくりたい。そういうことだと思います。
職員室で先生方が授業や子どもたちのこと、時にはプライベートなことを話しているがもっと見られるようになってほしいと思います。
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31