中学校で新学年のスタートの状況を観察する

連休前に、中学校で授業アドバイスを行ってきました。新学年のスタートの状況を学年主任と一緒に観察しました。

昨年度の1年生は、出身小学校の違いが態度に色濃く出ていました。しかし、今年度はそのようなことはありません。子どもたちは、学級の中で一体感を持って暮らしています。学年主任の話では、意図的に子ども同士がかかわるようなイベントを多く設けて、交流を促したということです。それが効果的だったようです。子ども同士の関係がよいのですが、気になる場面もあります。教科の内容に関係のないことでテンションが上がりすぎるのです。子どもの関係づくりと並行して、学習規律をきちんと整えることが必要に思いました。また、事情があって男女1列ずつ並べる机配置になっています。隣同士で相談する場面でも、隣が離れていることもあり前後の同性と話しています。理科の実験などでグループの形になっている時は、ちゃんと男女でかかわれています。事情はあるにせよ、一考が必要だと思います。
たまたま、ベテランと若手が隣同士で社会科の授業を行なっていました。共に子どもたちがとても集中して課題に取り組んでいました。ベテランの授業では、子どもの発言が聞き取りにくかったので、「もう一度聞かせてくれる」と再度発言させ、全員で復唱させて確認していました。子ども同士を上手につなげ、友だちに「聞いてもらおう」「聞こう」という姿勢を身につけさせるようにしていました。若手も以前はテンションが高くしゃべりすぎの傾向があったのですが、とても落ち着いて言葉の数も減っています。課題に工夫をしているので、子どもが集中して取り組みます。この時期に、これだけの状態というのはとても素晴らしいと思いました。こういった授業をほんの数分でいいので見学して、素晴らしい子どもの姿を学年で共有することお願いしました。
また、ベテランの授業で、気になる子どもにちょっとかかわりすぎている場面がありました。そのため子どもの集中が切れかかったのですが、授業者はそのことにすぐに気づき、全体で一度姿勢を正し集中を取り戻させました。見事な対応でした。しかし、経験の浅い方ですと気になる子どもにかかわりすぎて、他の子どもたちをほったらかしにしてしまうことがあります。ざっと見た感じですが、どの学級にも少し気になる子どもの姿があります。若手が多い学年団なので、このことに注意をするようお願いしました。

2年生は昨年度のよい状態を維持できています。子どもたちはとてもよい集中を見せてくれます。社会科の授業で、子どもたちが集中して課題に取り組んでいる場面がありました。授業者は、教室の隅でじっと子どもたちのようすを見守っています。これだけのことで素晴らしい集中を見せてくれる子どもたちです。しかし、先生によって子どもたちの様子にはっきりとした違いが出てしまう傾向あります。昨年から持ち上がってきた先生に対しては、先生が自分たちに何を求めているのかをよく知っています。一方的にしゃべり続ける先生は、顔が上がっていればそれ以上を求めません。そのため、その間、明らかに集中力が落ちている子どもが目立ちます。先生が問いかけたりすることで授業への参加を求めれば、この子どもたちであればすぐに集中できるはずです。もったいないと思います。学年主任はこの3月の卒業生の姿を目標にしています。彼らは、先生にかかわらず、とても集中して授業に参加していました。どんな先生でも姿が変わらないのです。そのためには、たとえ自分の授業でよい姿であってもそれで満足せず、どの先生の授業でも常によい姿勢で取り組むよう、子どもたちに働きかけることが必要です。このことをお願いしました。

3年生は、全体的に頑張ろうという意欲が感じられます。特に、指示が明確な作業や活動の目標や評価が明確になっている活動ではとてもよい集中を見せてくれます。新しく3年生の担当になった先生とも、よい関係を築けているようでした。ただ、この学年の子どもたちは互いによいかかわりができるのですが、一部の子どもがどうしてもその中に入れずに孤立する傾向があります。新しい学級になったばかりでそれほど目立たないのですが、そういう傾向にある子どもたちが上手く新しい学級で居場所をつくれているかどうかを、先生方が注意している必要があると思います。
数学の少人数の授業で、「与えられた整数にどんな数を掛ければ平方数になるか?」という課題で、子どもが発表している場面に出会いました。子どもたちが友だちの言葉をとても集中して聞いています。授業者も余計な説明はせずに、子どもたちに考えさせようとしていました。こういった姿に、3年生としての意識が高まっているのを感じました。
今年初めてこの学年を担当する若手の英語の授業では、子どもたちが集中して次に次に課題に取り組んでいました。わずかな時間にとてもよい関係を築き上げています。その理由の一つに、この授業者が活動の目標を明確にし、ペアなど子ども同士で行う活動では、相手の言葉を聞かないとできないような課題を与えて、互いに評価できるようにしていることがあります。また、終始笑顔を絶やさないので、子どもたちが安心して授業に参加していることも大きく影響していると思いました。
3年生の学年団には今年異動して来たベテランの先生も入っています。学校文化の違う地区からの異動だったので、戸惑っているようです。こういった場合、ベテランの方はどうしても過去のやり方にこだわってしまうことが多いのですが、この先生方は変わろうとしていることが印象的でした。
全体会終了後、積極的に質問に来てくれました。

社会科の先生は、市の共通テスト対策の授業をすることがあたりまえになっている地域からこられた方でした。知識を与えるのではなく、課題を与えて考えさせ、子どもの発言をもとにつくる授業がなかなかイメージできないようです。しかし、他の先生方の授業を見たりして学ぼうとしています。この日の授業では、授業者が大きな声で一方的にしゃべる時間が多く、知識を一問一答する場面が目立ちました。それでも、子どもに考えさせようとは意識しています。グループで考える時間を取ろうとしていました。しかし、知識をまとめることを課題としているので、子どもたちはあまり考えることはしていません。授業者はどのような課題を与えればいいのかまだよくわかっていないようです。子どもたちはグループで相談することに慣れているので、すぐに集中して取り組んでいました。鍛えられている子どもたちです。課題を少し工夫すればすぐに授業は変わっていくと思います。この学校の社会科は互いに相談する空気があります。積極的に相談することで、よい課題が見つかっていくと思います。本人も授業を変えようと意識して取り組んでいるので、きっとよい方向に変わっていくと思います。次回、授業を見るのが楽しみで。

英語の先生は、どのように進めればいいかを英語科の先生に相談したところ、プリントを使って「たくさん言わせればいい」と言われて、戸惑っていたようでした。ただ読ませる、言わせるだけで学力がつくとは思えなかったのです。しかし、この学校の英語の成績は、以前その方がいた学校よりもかなりよかったので、納得できないままにそのやりかたで取り組んでいたようです。おそらく先ほどの若手の先生に相談したのだと思いますが、授業の進め方や、目標・評価の与え方といったその授業のポイントについてはあまり詳しく説明しなかったようです。課題の内容も大切ですが、英語のような技能面の強い教科では、取り組ませる姿勢もとても重要です。一つひとつの活動に明確な目標を与えることを意識するようお願いしました。課題の内容については、いろいろな工夫ができます。その先生なりのものを考えてもらうためのヒントにするため、私の知っている事例をいろいろお伝えしました。この先生に授業技術や学級経営力があることは、授業の様子を見ればすぐにわかります。今回の異動を、これまでの自分の授業を見直すきっかけにしていただければ、大きく飛躍することと思います。
英語科はこれまで中心となっていた先生が異動され、リーダーシップをとる方がいなくなる心配があります。新しい方と共に、英語科全員で授業をどう進めていくかを話し合っていってほしいと思います。

この日の全体会はこれからの研修の進め方について、新しい研修主任から説明がありました。研修主任は意欲的にその仕事に取り組もうとしています。その一方で、具体的に自分がどのように先生方に働きかければいいか悩んでいました。自身が積極的に授業改善に取り組んでいる方なので、自分が先生方の授業から学んだことを発信することを中心にしてはどうかとアドバイスをしました。今年度どのように研修が進んでいくか楽しみです。
研修主任の話の後、この時期の授業や学級経営に関しての先生方の疑問に私が答えました。「体育における言語活動をどう考えればいいのか?」「指示に対して、子どもの動きが遅く待ちきれない時にどうするのか?」といった具体的な質問をいただきました。こういった質問をしていただけるのはうれしいことです。

昨年度までは異動が多く、現状をどう維持するのかがこの学校の課題でしたが、今年度は例年より異動者が少なく、人事面での影響をあまり受けていないようです。4月の段階で子どもたちのよい姿をたくさん見ることができています。今年度校長は、(子どもたちを)「磨く」を新しいキーワードとしたそうです。現状維持ではなく、もう一歩先に進むことができると確信したのだと思います。教務主任はスタートが勝負ということで、私の訪問を一学期に集中させています。スターダッシュと同時に、これまで以上に進化した子どもの姿が見られるようお手伝いをしたいと思います。次回の訪問が楽しみです。

顔を合わせて話し合う時間の大切さを考える

授業と学び研究所の会議に参加してきました。今回は学校における校務支援ソフトの今後のあり方や研究テーマについて検討をしました。

メンバー全員がアイデアを持ち寄り、一つひとつ検討をしました。最近はメーリングリストなどを活用して議論を行うことも増えてきましたが、やはり顔を合わせることで深い話し合いになることを実感しました。話が発散する場面もありますが、それが面白い発想につながったりと、まさにブレーンストーミング状態でした。細かい内容をここに書くことはできませんが、研究所のメンバーの質の高さもあって、校務支援ソフトのようにある程度成熟したソフトやサービスにも新たな切り口や可能性があることに気づかされました。

学校に出かけていて思うのが、こういったじっくり話し合う時間を先生方が取ることができていないことです。何と言っても忙しすぎるのです。強制的にでも時間をつくることをしないと、子どもたちについての情報交換の時間も取れなくなってしまいます。
中学校で、学校として一律の部活動休止日を毎週設けているという話を聞くようになりました。先生方に休養を取ってもらいたい、余裕を持って話し合う時間をつくりたい。そういうことだと思います。
職員室で先生方が授業や子どもたちのこと、時にはプライベートなことを話しているがもっと見られるようになってほしいと思います。
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31