法的リスクマネジメントを考える

介護関係者向けの研修の打ち合わせを行いました。テーマは「法的リスクマネジメント」です。介護の現場では、いろいろなリスクがあります。何か事故があれば、その責任を必ず問われます。賠償問題などが起こったときには過失の有無や、予防措置を取っていたかなどが法廷で争われることもあります。私が担当しているこの研修も、事故の予防措置の一環として法的なリスクを回避するという側面もあります。訴えられた時に、会社としてきちんと研修を通じて事故の予防措置をしていると主張できるからです。しかし、見方を変えれば事故の責任を利用者や従業員にあるとするということにもなります。そうではなく、利用者も従業員も会社も、関係者すべてのリスクを軽減するものにする必要があります。

学校で起こる法的リスクの問題も同様だと思います。例えばテストの採点のために自宅に答案を持って帰ることを考えてみましょう。最近では校長の許可を得ないと持ち帰れないとする学校がほとんどだと思います。忙しい先生方に答案を持ち帰るなと言うことは現実的でないことはよくわかっているはずです。それなのに面倒な手続き取らせるのは、現実を無視した、管理的な発想にも見えます。しかし、決してそうではないのです。わざわざ答案を持ち帰る許可を取ったとすれば、そのこと意識していますので、帰りに寄り道をするといったことはしないと思います。時々新聞紙上で目にする、パチンコをしていて盗まれたといった問題は起きにくくなるはずです。また、ルールを守っていて紛失等の事故があったとしても、然るべき手続きを踏んでいたのですから組織のルールの問題となります。結果として個人を守ることになります。それに対して明確なルールがなく、個人の判断で持ち帰って事故が起こった場合、その責任がより大きくなると考えられます。面倒でもこういった手続きをルール化するのは、事故防止と事故が起こった場合の個人の責任を軽減するという効果があるのです。

法的リスクマネジメントを考えるにあたって、誰かの責任を回避するという発想ではなく、関係者全員にとってのリスクを軽減させるような仕組みを考えることが大切です。このことを改めて考えさせられました。

学び続けるエネルギーをもらう

先日友人たちと会食しました。参加した同級生たちは、この3月までに60歳になって一旦会社を退職し、引き続き同じ職に就くか関連会社で同様の仕事をするようです。活躍できる場を持っていることもあるのでしょう、みな元気でエネルギーに溢れていました。
一人の友人は、「これからは今まで蓄えてきたもので勝負する」と言っていました。その分野では著名なエンジニアで、教科書も執筆しています。第一線のエンジニアとして蓄えたノウハウに自信を持っていることが伝わってきます。また、別の友人はいつまで仕事を続けていけるかは、「時代にマッチアップできているかどうかで決まる」と言っていました。マスコミの仕事をしていて、雑誌などにも署名記事を書いています。依頼に対応できる発信力を保てるかが勝負というわけです。
私たちの年代になると今まで蓄えたものがベースになることは間違いありません。しかし、それだけではすぐに時代に取り残されてしまいます。その厳しさを知っているからこそ、エンジニアの友人は、今まで蓄えた最先端の技術、ノウハウで「勝負」するといったのでしょう。エンジニアの友人も、ジャーナリストの友人も、これからも学び続けていくことは間違いないでしょう。自分たちが時代に追いつかれるまでは走り続けるのだと思います。彼らが引退するまではまだ時間がありそうです。

教育の世界はどうでしょうか?社会の変化の影響は確実に学校にも押し寄せています。今までの授業のパラダイムは明らかに変わろうとしています。しかし、残念ながら今までの授業感に囚われて変わろうとしない方も目にします。その一方で、定年後再任用になってもセミナーなどで学び続けている方もたくさん目にします。ベースとなるものがしっかりとあるからこそ、新しいことに対応することができるのだと思います。学ぶ意欲(と体力・気力)があれば、ベテランの方がより高いところにいけるのかもしれません。
私はと振り返ってみると、教師として大した蓄積があるわけではありません。今も昔も多くの先生方や子どもたちから学び続けるしかありません。それはこれからも変わらないでしょう。学び続ける力を無くした時が引退する時だと思っています。

節目の年を迎えましたが、本当の節目はまだ少し先のようです。学び続けるエネルギーを友人たちからもらいました。

秋田喜代美先生から学ぶ

今年最初の教師力アップセミナーは東京大学大学院教育研究科教授の秋田喜代美先生の「子どもがつながる授業、質の高い学びのある授業をめざして」という講演でした。秋田先生のお話は、自分の考えや理論を強く主張するというよりも、自分の研究や学校現場で学ばれたことを私たちと共有し一緒に考えようというスタンスでした。とても納得性の高い、学びの多いものでした。

教育の質と関連して、子どもたちが大人になっときに必要な力を考えなければならないというお話をされました。全くその通りです。秋田先生が例に挙げられた、15年後に社会で必要とされる力を考えることはそれほどたやすいことではありません。教育に携わるものは、社会の流れや変化をしっかりと観察しその先を見通すことが必要ということです。ともすると、目先のことに追われてそのことを忘れてしまいます。心しなければと思いました。ここで、協調的な問題解決のテストが開発されたことが紹介されました。こういう力が求められてきているということでしょう。テスト対策をするのではなく、本質的にどうすれば私たちが願う力を子どもたちにつけるのかを考えることが求められると思います。
教育の質を2つの次元で説明されました。1つは「安心・居場所感でつながっている」、もう1つは「文化的価値ある対象に夢中になれる」です。前者は、私の授業アドバイスの基本となっていることです。しかし、後者については、そのためのアドバイスがなかなかできていないことが実態です。改めてこのことをきちんと伝えていかなければと思いました。
また、教師が選択肢をたくさん持つことが大切であるということも話されました。教師の理屈ではなく子どもの側の視点に立って授業を進めてほしいというメッセージだと受け止めました。子どもの状況に応じた対応をするためには、選択肢が必要となるからです。

授業の質を深める手立てとして3つのステップを示されました。

1 誰でも参加し良さを認め合う
子どもたちが考えたことが見えないとコミュニケーションが成り立ちません。子どもたちのつぶやきを拾い、広げていくことが大切になります。
2 学びを深め創り出す
内容が拡散して薄いと語ることが少なくなります。意見の違いを焦点化して、根拠や理由を考え深めることが大切になります。
3 思考や理解を吟味する
学びを確かなものにするためには、授業をやりっぱなしで終わるのではなく、子どもの言葉で学んだことや今後の見通しをまとめることが必要になります。

私としてはこの3つのことの大切さはよく理解しているつもりですが、こうしてお話を聞くと3つ目の「思考や理解を吟味する」ことをきちんとアドバイスの折に伝えきれていないように思いました。もっと意識しなければと改めて反省です。

授業では「待つ」と「聴く」が大切だということと合わせて、人と一緒に考え、自分たちの持っているものをベースに考えると、「自分たちの力でやり遂げた」という言葉が出てくるということが話されました。「私がやった」「自分でできた」という言葉を、私はずっと大切にしています。秋田先生から同じような言葉が紹介されたことをとてもうれしく思いました。
「教師の指示でする形式的な拍手ではなく、子どもたちから『自然』にでるものを大切にしたい」、「あらかじめ準備した明確に発せられる『プレゼンテーションの言葉』ではなく、その場で考えながら小さく、ゆっくりと発せられる言葉を聞き取ることを大切にしたい」という話には、大きくうなずきました。子どもたちがつながるために大切なことだと思います。

面白かったのは、ある公開授業のビデオを見て何人かの方に感想を聞いた場面でした。全く同じものを見ても、見る視点が全く違っていたのです。休息時間に知り合いの方の意見も聞きましたが、その方の授業観をよくわかるものでした。授業を見て感じることにその人の授業観が反映するのです。だからこそ、授業研究が大切だと改めて思いました。どの考えが正解か議論するのではなく、互いの授業観にふれあい学び合うことがよりよい授業をつくっていくためには必要なことだと思います。

学び合いを支える道具立てについても面白い話を聞くことができました。「個々の学びや立場を可視化するツール」「つなぐためのツール」「吟味のためのツール」と分類した上で、ホワイトボードや付箋紙を使った例を紹介されました。互いの考えを吟味して深めるためには、ただ話し合うだけではうまくいきません。道具の使い方もこのように分類して視点をはっきりするとより有効に活用できると思います。

秋田先生は教師の創意工夫が必要であることをいろいろな場面で強調されます。最近の教育関係の講演では、こうすればうまくいく、こうすればよいというノウハウ的な話が多くなっているように思います。教師に創意工夫を求める秋田先生の姿勢は、先生方の力を信じていることの裏返しだと思います。秋田先生の学校現場を見る目の温かさを感じました。

今回のセミナーの司会進行を務めた若手の教師は、事前に秋田先生の著書を読んで勉強したそうです。しかし、一度読んだだけでは難しくてよく理解できなかったようです。しかし、今回のお話しはとてもよくわかったそうです。もう一度読めばきっとよく理解できそうだとうれしそうに話していました。本から学ぶことも大切ですが、直接お話を聞くことでより一層理解が進むこともあります。教師力アップセミナーのねらっているところの一つです。
スタッフも含め、参加者にとって学びの多い講演でした。秋田先生本当にありがとうございました。

子どもから学ぶ

若い先生方に「子どもから学びましょう」とアドバイスすることがあります。その時に教師になったばかりのことをよく思いだします。当時、自分としては一生懸命に教えているつもりでも、子どもたちの成績はあまり伸びず、その原因を「これまでの学習が定着していないから」「きちんと家庭で復習していないから」と自分以外に求めてしまいました。しかし、本当にそうであれば、これまでの学習を定着させる活動や家庭学習をするように仕向けることをする必要があります。責任回避をするだけで、そのための行動を起こしませんでした。ある単元で子どもたちの成績が悪いと「この単元は、子どもたちは苦手なんだ」と子どもたちのせいにして諦めたこともありました。
しかし、先輩が、具体的にここがわかっていないからと、そのための問題練習をさせているのを知って、自分が子どものつまずきを本当にはわかっていないことに気づいたのです。
「なぜこの単元は苦手なんだろう?」「どこでつまずいているのだろうか?」と本当の原因を見つけてその具体的な解決策を考える必要があったのです。そのためには、問題ができたできなかったという結果ではなく、その過程をしっかりと見ることが必要です。
このことに気づいてから、机間指導ではどこでつまずいているかを意識して見るようにしました。また添削問題を自作しました。問題の内容や順番を工夫して、例え白紙に近い解答の問題があっても、その他の問題の正誤でつまずきの原因が見えるようにしたのです。添削の時に簡単なアドバイスを書き込んでからやり直させることで、どのようなアドバイスが効果的かも知ることができました。こうしたことを積み重ねて、子どもがどこでつまずくのか、それを解消するためにどのようにすればいいのかを知ることができました。
子どもたちは添削問題に真剣に取り組めばわかるようになることに気づくと、積極的に取り組むようになりました。わかるようになると授業の集中度も変わってきます。子どもの問題ではなく、私の問題だったのです。子どもたちのわからない、できないという事実を素直に認めて、そこから学ぶことをして初めて授業が改善されたのです。私を成長させてくれたのは間違いなく子どもたちでした。

子どもたちから学ぶということが言われます。それは、子どもを見て、単に何ができた、何ができないという事実を知ることではありません。その事実から子どもの目線でその原因を考えることが必要です。また、その原因や対策を知るために、意図的な働きかけも必要になります。子どもから学ぶということは受け身ではありません。積極的に働きかけ、それに対して子どもがどう反応し変化したかを知ることで初めて学ぶことができるのです。このことを意識してほしいと思います。

子どもたちの安心感

授業を考える時のキーワードの一つに「子どもたちの安心感」があります。この安心感について少し考えてみたいと思います。

子どもたちは、授業に安心して参加できることを望んでいます。不安な状態でいることは、子どもでなくても苦しいものです。では、安心感を持たせるためにはどのようなことに注意すればいいのでしょうか。
一つは、授業のゴールを明確にすることです。今からどこに行くかわからないのにただついてきなさいと言われれば、大人でも不安になります。行先は常に明確にすることが大切です。授業のめあてや、それを達成するためにどういう順番でどのようなことをやるのかステップを明確にすることが必要です。わかりやすく黒板の横に書いておくのも一つの方法です。それにもとづいて、今どこのことをやっているかを子どもにきちんと伝えておけば、授業の見通しと自分の位置がわかるので安心して授業を受けることができるのです。

子どもが恥をかく心配がないということも安心して授業に参加するために大切なことです。間違ってもバカにされない、何を言っても大丈夫という雰囲気をつくることを意識しなければいけません。例え間違った答でも笑顔で「なるほど」と受け止めることが大切です。同様に、まわりに認められることも大切です。「今の意見、なるほどと思った人?」「納得した人?」と友だちに認められる場面をつくったり、「同じ考えの人?」と子ども同士をつないで関係をつくったりすることが求められます。ペアやグループの活動で互いに認め合う場面をつくることも有効な方法です。子ども同士だけではありません。教師が子どもをほめて認めることもとても大切です。学級に子どもたちの居場所をつくることが求められるのです。

忘れてならないのは、子どもが授業の内容をわかることです。学習内容を理解できなければ、自信を失くし不安になるのは当然です。わかる授業を心がけるのは、安心感を持たせるという視点でも大切なことなのです。課題に取り組む時などは、どうしても差が出てきます。わかった子ども、できた子どもを中心に答を聞くのではなく、わからなかった子どもに寄り添うことが大切です。そのために意識してほしいのがスモールステップです。一気に答を求めさせるのではなく、細かく分けることで一つひとつのハードルを低くするのです。こうすることでハードルをクリアさせやすくできますし、例え自力でクリアできなくても次で挽回する機会を与えることができます。達成感を持たせやすくできるのです。

「子どもたちの安心感」をキーワードにして、ここに挙げた3つのポイント「授業に見通しを持つ」「学級に居場所がある」「授業の内容がわかる」を大切にすることで、どの子どもも安心して参加できる授業をつくることができると思います。ぜひ、このことを意識してほしいと思います。

新年早々、よい出会いがある

昨日、ある先生とお会いし相談を受けました。その方が大学院生時代に研究会で何度かお会いした方です。学校が地域や民間の力をもっと活かすことができるのではないかと考えられていて、情報を求められてのことでした。この仕事を続けていると、学生時代のことを知っている先生とたまたま出会うことがあります。成長した姿を見せていただけることは本当にうれしいことです。今回は、わざわざ連絡を取って会いに来て下さったのですが、さすがにこのようなことは稀です。ちょっと驚きました。

市町で状況は違うのですが、その方の勤務先の学校ではなかなか外部の力を学校に活かすことが難しいようでした。部活動の指導を外部に委託するといったことを提案しても、事故があった時の責任が取れないといったマイナス面ばかりが指摘されるようです。こういったことは学校独自で判断することはなかなか難しいと思います。行政がある程度方向性を示すか、校長会から提案するといった方法を取らないとなかなか実現できません。まだ立場的にも若手の域を出ていない教員の力で動かすことは難しいことです。だから私に相談してくれたのだと思います。残念ながら私は直接の答は持ち合わせていません。他の市町でどのような取り組みがあるのかをお教えするくらいしかできませんでした。

多くの場合、学校と外部のあり方について考えるのは管理職やミドルリーダーです。今回のように若い先生がそのことに関心を持つことは滅多にありません。ちょっと驚きました。話をいろいろと聞いていると、子どもたちだけでなく、企業や一般の方に対する教育にも興味があるようで、そのための勉強もしているそうです。視点が違っていたのは、そういったことが影響しているのでしょう。この先どのようにキャリアアップしていくかということを考えているので、教師を辞めて別の世界に入っていった私の経験も聞きたかったようです。これからどのような教師に成長していくのか、それとも別の世界に飛び込むのかはわかりませんが、前向きに自分の世界を切り開こうとしていることはよくわかりました。
自分のキャリアの着地点をそろそろ考えなければいけない年齢になった私ですが、この方に刺激を受けて、まだもう少しいろいろなことにチャレンジしてみたいと思ってしまいました。新年早々よい出会いがあったことに感謝です。

小学校の外国語活動の今後を考える

小学校の外国語活動は、「音声を中心に外国語に慣れ親しませる活動を通じて、言語や文化について体験的に理解を深めるとともに、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育成し、コミュニケーション能力の素地を養うことを目標として様々な活動を行う」ことになっています。「慣れ親しむ」「言語や文化の体験的理解」「コミュニケーション」がキーワードです。英語の力をつけることが目標とはなっていません。英語が専門でない小学校の先生方が教えることを考えれば妥当なことだとは思います。その一方で、実践的な英語力を子どもたちにつけるということが盛んに言われています。外国語活動の時間を下の学年でも必修化することや、教科化も打ち出されています(文部科学省「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」参照)。
現在行われている外国語活動の授業の多くは、とにかく子どもたちが英語を使ってゲームやアクティビティをすればよいというものです。英語力をつけるという視点で見れば、あまり効果があると思えないものがほとんどです。英語を使うというだけで、子どもたちの精神年齢からすればあまりに幼稚なゲームを行うために、外国語活動の時間をばかばかしく感じる子どもも出てきます。中学校に入った時点で英語嫌いになっている子どもも結構いると聞きます。

これまでの外国語活動の時間は、とりあえず小学校で英語を扱うという既成事実作りだったように思えます。「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」を見ると、小学校高学年では、そのねらうところが、将来的に英語力をつけるための基礎を身につけることに変わってきています。授業の担当者も含めて、その内容も大きく変わることになるのでしょう。多くの自治体で、「慣れ親しむ」「言語や文化の体験的理解」「コミュニケーション」を意識した英語活動のカリキュラムを多くのエネルギーをつぎ込んで、独自に作成しました。現場の先生からすると、せっかく外国語活動の授業に慣れたのに、また新しい流れに対応することが求められます。そろそろ、中途半端に現場に任せるのではなく、小中高を通じて一貫した英語教育のカリキュラムを明確に提示することが必要だと思います。
現場の先生方に大きな負担なく、子どもたちに英語力がつくようなカリキュラムが組まれることを願っています。

クイズの有効な使い方

子どもたちはクイズが好きです。ちょっとしたクイズですぐに盛り上がります。しかし、根拠なく無責任に答を想像しているから盛り上がるということも言えそうです。知らなければ答えられないような、単に知識を問うようなクイズは子どもたちが深く考えないことが多いので、授業では多用しない方がよいと考えています。
しかし、すべてのクイズを否定するわけではありません。クイズを効果的に使っている先生もたくさんいらっしゃいます。私が面白いと思う使い方や場面を紹介したいと思います。

既習事項の知識を定着させる場面では、クイズは有効です。既習事項ですから答えられてあたりまえです。子どもたちは積極的に参加してくれます。知識ですので、考える時間は不要です。1問に時間をかけずにテンポよく次々に出題するのがコツです。授業の最初にこのようなクイズをすることでウォーミングアップにもなります。ただし、子どもたちのノリがよいからといってあまり時間をかけてはいけません。あくまでも知識の定着や確認であって、思考しているわけではないからです。

この日学習する事項について、初めにクイズを出すことも授業を活性化するのに有効です。例えば、理科の実験などで、結果を2択か3択のクイズにします。根拠となるものがないので考える時間を与える必要はありません。直感でいいので選ばせるのです。答は実験すればわかるので教えません。子どもたちは選択することで、自分の選んだ答が正解かどうか気になります。当事者意識を持って実験に取り組みます。
また、子どもたちで答を確認することができないようなものはすぐに答を与えて、「えっ、どうして」と疑問を持たせることもよい使い方です。疑問や興味を持つことで、その理由を知ろう、考えようとするので、積極的に授業に参加します。

子どもたちが知らない知識や、根拠もって考えられないようなことは、教えることが基本になります。しかし、それでは子どもたちはただ説明を聞くだけで受け身になってしまいます。例えば、社会科で資料の絵を見て、○○となっている理由を考えさせたいとしましょう。知識が不足していることもあり、子どもからはなかなか意見が出てこないかもしれません。そこで、クイズにするのです。一から考えることは難しくても、選択肢を用意することで、答を吟味することができます。この場合は少し時間を与えて子どもに相談させます。選択肢が糸口になって、子どもなりに根拠を持って考えることができるからです。理由を発表させてもよいでしょう。この後で答を提示すれば、正解をただ受け入れるのではなく、その正解を選んだ根拠も自然に意識されます。積極的に思考するとともに、強く印象付けることができるのです。

クイズは一つ間違えると子どもたちのテンションばかりを上げ、学習への集中を乱すことにもなりかねません。有効な場面や使い方を意識して上手に活かしてほしいと思います。
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