子どもたちの安心感
授業を考える時のキーワードの一つに「子どもたちの安心感」があります。この安心感について少し考えてみたいと思います。
子どもたちは、授業に安心して参加できることを望んでいます。不安な状態でいることは、子どもでなくても苦しいものです。では、安心感を持たせるためにはどのようなことに注意すればいいのでしょうか。 一つは、授業のゴールを明確にすることです。今からどこに行くかわからないのにただついてきなさいと言われれば、大人でも不安になります。行先は常に明確にすることが大切です。授業のめあてや、それを達成するためにどういう順番でどのようなことをやるのかステップを明確にすることが必要です。わかりやすく黒板の横に書いておくのも一つの方法です。それにもとづいて、今どこのことをやっているかを子どもにきちんと伝えておけば、授業の見通しと自分の位置がわかるので安心して授業を受けることができるのです。 子どもが恥をかく心配がないということも安心して授業に参加するために大切なことです。間違ってもバカにされない、何を言っても大丈夫という雰囲気をつくることを意識しなければいけません。例え間違った答でも笑顔で「なるほど」と受け止めることが大切です。同様に、まわりに認められることも大切です。「今の意見、なるほどと思った人?」「納得した人?」と友だちに認められる場面をつくったり、「同じ考えの人?」と子ども同士をつないで関係をつくったりすることが求められます。ペアやグループの活動で互いに認め合う場面をつくることも有効な方法です。子ども同士だけではありません。教師が子どもをほめて認めることもとても大切です。学級に子どもたちの居場所をつくることが求められるのです。 忘れてならないのは、子どもが授業の内容をわかることです。学習内容を理解できなければ、自信を失くし不安になるのは当然です。わかる授業を心がけるのは、安心感を持たせるという視点でも大切なことなのです。課題に取り組む時などは、どうしても差が出てきます。わかった子ども、できた子どもを中心に答を聞くのではなく、わからなかった子どもに寄り添うことが大切です。そのために意識してほしいのがスモールステップです。一気に答を求めさせるのではなく、細かく分けることで一つひとつのハードルを低くするのです。こうすることでハードルをクリアさせやすくできますし、例え自力でクリアできなくても次で挽回する機会を与えることができます。達成感を持たせやすくできるのです。 「子どもたちの安心感」をキーワードにして、ここに挙げた3つのポイント「授業に見通しを持つ」「学級に居場所がある」「授業の内容がわかる」を大切にすることで、どの子どもも安心して参加できる授業をつくることができると思います。ぜひ、このことを意識してほしいと思います。 新年早々、よい出会いがある
昨日、ある先生とお会いし相談を受けました。その方が大学院生時代に研究会で何度かお会いした方です。学校が地域や民間の力をもっと活かすことができるのではないかと考えられていて、情報を求められてのことでした。この仕事を続けていると、学生時代のことを知っている先生とたまたま出会うことがあります。成長した姿を見せていただけることは本当にうれしいことです。今回は、わざわざ連絡を取って会いに来て下さったのですが、さすがにこのようなことは稀です。ちょっと驚きました。
市町で状況は違うのですが、その方の勤務先の学校ではなかなか外部の力を学校に活かすことが難しいようでした。部活動の指導を外部に委託するといったことを提案しても、事故があった時の責任が取れないといったマイナス面ばかりが指摘されるようです。こういったことは学校独自で判断することはなかなか難しいと思います。行政がある程度方向性を示すか、校長会から提案するといった方法を取らないとなかなか実現できません。まだ立場的にも若手の域を出ていない教員の力で動かすことは難しいことです。だから私に相談してくれたのだと思います。残念ながら私は直接の答は持ち合わせていません。他の市町でどのような取り組みがあるのかをお教えするくらいしかできませんでした。 多くの場合、学校と外部のあり方について考えるのは管理職やミドルリーダーです。今回のように若い先生がそのことに関心を持つことは滅多にありません。ちょっと驚きました。話をいろいろと聞いていると、子どもたちだけでなく、企業や一般の方に対する教育にも興味があるようで、そのための勉強もしているそうです。視点が違っていたのは、そういったことが影響しているのでしょう。この先どのようにキャリアアップしていくかということを考えているので、教師を辞めて別の世界に入っていった私の経験も聞きたかったようです。これからどのような教師に成長していくのか、それとも別の世界に飛び込むのかはわかりませんが、前向きに自分の世界を切り開こうとしていることはよくわかりました。 自分のキャリアの着地点をそろそろ考えなければいけない年齢になった私ですが、この方に刺激を受けて、まだもう少しいろいろなことにチャレンジしてみたいと思ってしまいました。新年早々よい出会いがあったことに感謝です。 小学校の外国語活動の今後を考える
小学校の外国語活動は、「音声を中心に外国語に慣れ親しませる活動を通じて、言語や文化について体験的に理解を深めるとともに、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育成し、コミュニケーション能力の素地を養うことを目標として様々な活動を行う」ことになっています。「慣れ親しむ」「言語や文化の体験的理解」「コミュニケーション」がキーワードです。英語の力をつけることが目標とはなっていません。英語が専門でない小学校の先生方が教えることを考えれば妥当なことだとは思います。その一方で、実践的な英語力を子どもたちにつけるということが盛んに言われています。外国語活動の時間を下の学年でも必修化することや、教科化も打ち出されています(文部科学省「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」参照)。
現在行われている外国語活動の授業の多くは、とにかく子どもたちが英語を使ってゲームやアクティビティをすればよいというものです。英語力をつけるという視点で見れば、あまり効果があると思えないものがほとんどです。英語を使うというだけで、子どもたちの精神年齢からすればあまりに幼稚なゲームを行うために、外国語活動の時間をばかばかしく感じる子どもも出てきます。中学校に入った時点で英語嫌いになっている子どもも結構いると聞きます。 これまでの外国語活動の時間は、とりあえず小学校で英語を扱うという既成事実作りだったように思えます。「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」を見ると、小学校高学年では、そのねらうところが、将来的に英語力をつけるための基礎を身につけることに変わってきています。授業の担当者も含めて、その内容も大きく変わることになるのでしょう。多くの自治体で、「慣れ親しむ」「言語や文化の体験的理解」「コミュニケーション」を意識した英語活動のカリキュラムを多くのエネルギーをつぎ込んで、独自に作成しました。現場の先生からすると、せっかく外国語活動の授業に慣れたのに、また新しい流れに対応することが求められます。そろそろ、中途半端に現場に任せるのではなく、小中高を通じて一貫した英語教育のカリキュラムを明確に提示することが必要だと思います。 現場の先生方に大きな負担なく、子どもたちに英語力がつくようなカリキュラムが組まれることを願っています。 クイズの有効な使い方
子どもたちはクイズが好きです。ちょっとしたクイズですぐに盛り上がります。しかし、根拠なく無責任に答を想像しているから盛り上がるということも言えそうです。知らなければ答えられないような、単に知識を問うようなクイズは子どもたちが深く考えないことが多いので、授業では多用しない方がよいと考えています。
しかし、すべてのクイズを否定するわけではありません。クイズを効果的に使っている先生もたくさんいらっしゃいます。私が面白いと思う使い方や場面を紹介したいと思います。 既習事項の知識を定着させる場面では、クイズは有効です。既習事項ですから答えられてあたりまえです。子どもたちは積極的に参加してくれます。知識ですので、考える時間は不要です。1問に時間をかけずにテンポよく次々に出題するのがコツです。授業の最初にこのようなクイズをすることでウォーミングアップにもなります。ただし、子どもたちのノリがよいからといってあまり時間をかけてはいけません。あくまでも知識の定着や確認であって、思考しているわけではないからです。 この日学習する事項について、初めにクイズを出すことも授業を活性化するのに有効です。例えば、理科の実験などで、結果を2択か3択のクイズにします。根拠となるものがないので考える時間を与える必要はありません。直感でいいので選ばせるのです。答は実験すればわかるので教えません。子どもたちは選択することで、自分の選んだ答が正解かどうか気になります。当事者意識を持って実験に取り組みます。 また、子どもたちで答を確認することができないようなものはすぐに答を与えて、「えっ、どうして」と疑問を持たせることもよい使い方です。疑問や興味を持つことで、その理由を知ろう、考えようとするので、積極的に授業に参加します。 子どもたちが知らない知識や、根拠もって考えられないようなことは、教えることが基本になります。しかし、それでは子どもたちはただ説明を聞くだけで受け身になってしまいます。例えば、社会科で資料の絵を見て、○○となっている理由を考えさせたいとしましょう。知識が不足していることもあり、子どもからはなかなか意見が出てこないかもしれません。そこで、クイズにするのです。一から考えることは難しくても、選択肢を用意することで、答を吟味することができます。この場合は少し時間を与えて子どもに相談させます。選択肢が糸口になって、子どもなりに根拠を持って考えることができるからです。理由を発表させてもよいでしょう。この後で答を提示すれば、正解をただ受け入れるのではなく、その正解を選んだ根拠も自然に意識されます。積極的に思考するとともに、強く印象付けることができるのです。 クイズは一つ間違えると子どもたちのテンションばかりを上げ、学習への集中を乱すことにもなりかねません。有効な場面や使い方を意識して上手に活かしてほしいと思います。 |
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