教務主任の研修で「学び合い」についてお話をする

先週末は、市の教務主任の研修で講師を務めました。この市では学び合いを取り入れようとしているのですが、まだ現場に浸透していないということで、他の市での実例の紹介とその意義やポイント等をお伝えしました。

「学び合い」というと特定の活動をイメージする方も多いのですが、子どもたちが「学び合う」という求める姿と、その実現手段を分けて考える必要があります。
教師が一方的にしゃべり続け、子どもは受け身で教えられたことを覚えようとしている教師主導の授業から、子どもが友だちとかかわり合いながら、自ら学ぼうとする子ども主体への授業へと変えることが求められています。子ども同士がかかわり合い学び合う授業の実現には様々な方法、要素がありますが、大切なことは、子どもたちが「互いに考えを聞き合う」「相手の考えを尊重する」ことです。
学び合いを進めることで、教師の学級経営力、授業力、指導力に頼らなくても、どんな教師の授業でも崩れない子どもの集団をつくることができます。その実現のためには、教師の授業技術を高めることよりも、子どもが変わる状況をつくることの方が大切だとよく言われます。ちょっと意地悪な見方をすれば、教師もよりも子どもの方が柔軟なので、子どもを変える方が速いということです。
グループ活動などの場面を授業の中につくることで、子ども自身が友だちから学ぶよさを身につけてくれます。教師の授業技術を高めることを求めなければ、そのルール等には工夫は必要です。4人組で、男女市松模様にする。グループで考えを1つにまとめない。グループに司会役などを設けない。聞かれていないのに勝手に教えない。教師は困っている子どもに対して個人指導をするのではなく、グループの仲間につなぐ。こういったことです。

「学び合い」がうまく機能している学校では、教師と子ども、子ども同士の関係がよくなり、授業中に笑顔がたくさん見られるようになります。学校の荒れもおさまり、不登校も少なくなるようです。落ち着いて授業に参加することで下位の子どもの学力も上がりますが、そこまで達成したところで壁に当たっている学校も目にします。子どもの学力を保障するためには、教材や課題が大切になります。これは、教師の教材研究とは切り離すことができません。状況をつくるだけでは足りないのです。また、教師が授業の進め方に困った時に、「相談して」とグループ活動にすれば取り敢えず子どもたちは活動をしてくれます。もちろんそれで学力がつくわけではありませんが、力のない教師でも授業が成立してしまいます。子どもが集中して授業に参加しているのに、学力が今一つ伸びないということになってしまうのです。

学校全体で「学び合い」に取り組むためには、ある程度共通の形をつくる必要があります。全員の先生に納得して実行してもらうことはとても難しいことです。従来の教師主導型で困っていない人に、やり方を変えろと言ってもなかなか聞いてもらうことはできません。しかし、力のある教師が学び合いを意識することで、今まで以上に素晴らしい授業に進化することもよくあることです。基礎があるからこそより高いとところに到達できるのです。
形をつくるために、校長の強いリーダーシップで強制する方法があります。まずは、若手で実践して子どもが変化する手ごたえを感じてもらって、学校全体に広げていく方法もあります。子どもたちの状況、先生方の意識によってその戦略は変わってくると思います。いずれにしても、授業改善の要である教務主任には、「学び合い」で目指す子どもの姿をまずしっかりとイメージし、現実とのギャップとその要因を探ることが求められます。今回の研修が「学び合い」を学校に広げることにつながれば幸いです。

向上し続けようという意欲を感じた懇親会

前回の日記の続きです。研究発表会の懇親会に参加させていただき、たくさんの先生と授業や学級経営についてお話をさせていただきました。研究発表会が終わるとほっと一息という学校も多いのですが、先生方からは授業をもっとよくしたいという意欲を強く感じました。

研究会当日に話をできなかった先生方ともお話をすることができました。
国語の若手の先生の授業は、題名に込めた筆者の思いを考えさせるものでした。一つ間違えると子どもたちに想像させるだけの展開になってしまいます。根拠を明確にすることが大切です。今までの読み取りをもとに考えるのか、本文の記述をもとに考えるのか、大きく2つの方法があります。授業者は本文をもとに考えさせたかったようです。題名に書かれている言葉を取り上げ、子どもたちに意識させましたが、子どもたちはそこから本文につなげて考えようとはせず、感覚的にとらえていたように見えました。その言葉に関しての記述をいったん本文から拾い出す作業をさせ、その文をグループで共有させてから考えるといったステップを踏むとよかったかもしれません。
他の授業と同じように、子どもとの関係がよくなっているので、子どもたちが気軽に発言します。授業者は子どものつぶやきを受け止めて説明しますが、子ども同士を直接かかわり合せるようにしてほしいと思います。まずは発言者に対して全体に向けて発言し直すように指導し、友だち伝える、友だちの言葉を聞くことを互いに意識させることが大切です。
3年生の国語の授業では、子どもが何度も何度も本文を見直している姿を見ることができました。本文を根拠に考えることが身についているようです。国語科として、本文を根拠として考えることを意識できていると感じました。

社会科はどの先生も課題を工夫していました。
1年生では、中部地方の各地の農業の写真を見せてどの地方のものかを考えさせる課題にグループで取り組んでいました。子どもたちが集中していたのが印象的でした。この問題を解決するには、各地方の農業の特色を知ることと、写真から特徴を読み取ることの2つの要素が必要です。子どもたちが育っていれば一気に取り組んでもいいのですが、場合によっては1つずつ取り組んだ方がよいかもしれません。写真を比較してどんな特徴があるかを言わせてから取り組む。逆に、中部地方の各地方の農業の特色をまとめさせてから、写真を見せる。こういうやり方です。一気に取り組ませて、途中でどのようにして考えているかを発表させても面白いでしょう。課題を工夫するだけでなく、子どもたちの成長に応じて進め方もいろいろと工夫してほしいと思います。
もう1つの1年生の授業は、中国の「経済成長によって抱えた課題」について考える授業でした。他の地域の学習でも同様のことをしていたようです。対象を変えて同じ課題に取り組むというのは、視点を育てるためによいことです。繰り返すということは、経験を活かすことでもあります。子どもたちに前回の活動で得た視点を事前に整理させたり、新たな視点を見つけさせたりすることを意識してほしいと思います。中国に関することは新聞記事などでよく目にするので、教科書や資料集だけではなく、最新の記事を用意するとよいでしょう。中国政府が最近とった政策やつくられた法律などのねらいから迫っても面白かったかもしれません。
気になったのが、グループでまとめる時に、ペンを持っている子どもが1人で書いていることでした。書いているのを他の子どもが全く見ていないグループもあります。まとめを1枚のボードに書かせるというのは、子どものかかわりをかえって失くすことになってしまうこともあるのです。実物投影機を使うことで、グループの考えをまとめさせてボードや模造紙に書く作業をなくすという方法もあります。それぞれのグループで話し合ったことを、各自のノートにまとめさせればいいのです。発表は口頭では難しければ、実物投影機でノートを映せば問題ありません。グループの他のメンバーに補足させることをすればまとめとして十分なものになるはずです。
3年生は、売り上げ不振に苦しんでいるマクドナルドの売り上げを伸ばす戦略を考えることが課題でした。以前にも戦略を考えることは経験しているそうですが、子どもたちは見通しを持てずに困っているように見えました。授業者は、マクドナルドに問い合わせをして用意した資料を与えていましたが、子どもたちはどこから手をつけていいのかわからなかったようです。以前の経験から、戦略を立てるためにどんな手順を踏んで考えるかをまず整理させてから始めるとよかったのではないかと思います。戦略を立てるために、どんなことを知る必要があるか、どんな資料が必要かを考えるのです。授業者は子どもたちから出てきそうなことをあらかじめ予想して資料を用意する必要がありますが、子どもたちが自ら求めた資料であれば、そこから発想しやすくなると思います。また、マクドナルドが過去に行った売り上げ増への方策とその結果がどうだったかを一覧にしても面白かったかもしれません。子どもたちが思いつきそうなことは取り組んでいるはずです。上手くいかなかった原因を考えることから、新たな発想をさせるのです。とはいえ、オリジナリティのある戦略を子どもたちがそうそう立てられるわけはありません。考えた後に、この一覧を見せて比較させても面白いかもしれません。
どれも意欲的な課題ですが、進め方の工夫の仕方で子どもたちの活動の結果は大きく変わってくると思います。互いの事例を共有し、学び合ってよりよい授業にしていってほしいと思います。

家庭科の先生の授業は、ボタンつけのポイントを自作のビデオで教える場面を見ました。子どもたちはとても集中して見ていますが、一部の子どもの集中が切れる時がありました。授業者もディスプレイの画面を見ていたため、そのことに気づいていないようでした。子どもの反応によって次の場面の展開は変わってきます。内容はよくわかっているのですから、子どもを見ることに専念してほしいと思いました。
ビデオを見せた後、復習として大きなサンプルで実際にやって見せます。ここでも子どもに背中を向けて実演していました。子どもたちはビデオを見た後はすぐにやってみたくなるはずです。この復習は子どもの意欲をかえって削いでしまう危険性もあります。ビデオを見せる時は、見終わった後に何をするのかをあらかじめ伝えておく必要があります。この場合であれば、見た後で実際にこのサンプルを使って誰かにやってもらうことにし、その
ことを伝えるだけでより意識してビデオを見ると思います。「みんなに聞きながらサンプルで実演するかから、よく見ておいてね」といったやり方もあるでしょう。ビデオの活用は見た後の課題を明確にしておくことが大切です。

時間の関係で授業を見ることができなかった先生が、何人もアドバイスを聞きに来てくれました。授業場面をもとに話ができなかったことはとても申し訳ありませんでした。今回の授業でどのようなことをねらったのか、実際はどうだったのかをお聞きしながらコメントしました。どの先生からも、子どもたちこうなってほしいという強い思いを感じることができます。こういう思いを持って実践を続けていくことが授業力向上への第一歩です。前向きなエネルギーを感じることができました。

3学期にも授業研究を行うとのことです。研究発表が終わっても、向上し続けようとする強い意欲が先生方からあふれています。楽しい時間を過ごすとともに、たくさんの元気をいただきました。このような先生方に出会えたことに心から感謝します。
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