「ほめる」と「甘やかす」

以前は、子どもたちをほめるようにしてくださいとお願いすると、今一つピンとこない表情をする方がよくいらっしゃいました。最近では少なくなりましたが、それでも納得されない方が時々いらっしゃいます。話を聞いてみると、どうも「ほめる」ことを「甘やかす」と勘違いされているようです。悪いことをしても叱らないのでは、子どもがダメになってしまうと考えているようなのです。
悪いことをしてもほうっておけと言っているのではありません。子どもによい行動をとるように仕向けて、よい行動をとった時にすかさずほめるのです。そのためには、強く叱って反省させるのではなく、次にどのような行動をすればよいのかを考えさせるのです。そして、よい行動にかわったらうんとほめるのです。

悪い行動を叱っても、他の子どもは他人事です。そのため、叱って矯正しようとすると、どうしても見せしめ的にならざるを得ません。悪い行動をしないように考えるようになるかもしれませんが、嫌な思いをすることを回避するだけで、ポジティブにはなりません。結果的に、よい行動には結びついていきません。
一方ほめられることは子どもにとっては、望ましいことです。友だちがほめられるのを見て自分もほめられたいと思います。ほめられるような行動をとろうとするのです。よい行動が増えていきます。
遅刻を例に考えてみましょう。叱ることで遅刻が減ったとしても、子どもは時間までに集合するだけです。それに対して、早く来て準備をして待っている子どもをほめると、早く来ようとするようになります。結果として遅刻がなくなるだけでなく集合も早くなります。子どもたちの行動がよい方向へ変わっていくのです。

「甘やかす」のは、ただ放任しているだけです。「ほめる」ということは、ほめるような行動を子どもたちがするような働きかけをすることです。ほめる観点を持って、子どもたちがそのような行動をしてくれるのをよく見ることです。そこには教師の積極的な関与があるのです。

互いが向上する組織づくりを考える

先日、介護職員の研修について打ち合わせを行ってきました。そこで、研修に参加しない職員に対してどのようにアプローチするかが話題になりました。研修に参加しない方に不手際が多いというのです。参加されない方には研修がツールとして機能しません。かといって、上司から個別に指導していてもモグラたたきです。日ごろの仕事を通じて互いが向上する組織づくりを目指す必要があります。

そのための第一歩はミスに気づいた時にフォローし、注意し合える関係をつくることです。口で言うのは簡単ですが、現実にはそれほど簡単なことではありません。ミスを指摘されることはあまり気持ちのいいことではありません。指摘する方は、フォローはしても、相手に嫌われることをおそれて注意まではしづらいものです。互いに注意し合いましょうでは、実効性は低いのです。
では、どのようにすれば指摘し合える関係ができるのでしょうか。なかなかよい答は浮かびませんが、対策の一つとして心理的な障壁を下げることを考えてみることにしました。具体的には、ネガティブな言葉を使わないようにすることです。「○○しないように」ではなく、「○○しましょう」と言い換える。「ありがとう」の言葉を必ず添える。こういう習慣をつけるというより、もうルールにしてしまうのです。形だけで中身が伴わなければ意味はないという意見もあると思います。その通りです。しかし、形をつくることで中身が伴ってくることも事実です。
管理する立場の方には、指摘した方に「ありがとう」と声をかけるようにお願いします。指摘する側の方が心理的には厳しいものがあるからです。

これは学級集団づくりとも共通することです。ソーシャルスキルを身につけさせることで、互いの人間関係をつくり、よい行動をほめて強化するペアレントトレーニングを活用するのです。
大人の集団でうまく機能するかわかりませんが、挑戦してみたいと思います。
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