学校ホームページへの情報公開を考える
先週末、ある小学校で大量の体調不良の児童がでたと報道がありました。この時点では原因が特定されていなかったようですが、対応を見るとノロウィルスの感染が疑われているようです。このような報道があった時、保護者だけでなく一般の方も学校ホームページを見て、情報を集めようとします。この学校では、学校の対応と家庭への対応のお願い、また家庭に向けに文書、メルマガを配布、配信したことを伝えていました。翌日には、学校での対応のより詳しい情報とメルマガで配信した内容を掲載していました。
どこまで学校ホームページに掲載するかは判断が難しいことです。保護者でなくても、地域の方からすれば、「どのくらいの数の体調不良が出ているのか」「どのような対応を取ったのか」「家庭への指示は具体的にどのようなことであったのか」など知りたいことはたくさんあると思います。一方。報道を見て興味本位で情報を求めている者に余計な情報を与えて、妙に騒がれても困るので、基本的には保護者に個別に情報を提供して、ホームページでは概略だけを伝えるだけに留めたいという判断もあると思います。学校や教育委員会は判断に悩まれたのではないでしょうか。 注意してほしいのは、配布物やメルマガなど多面的に情報を発信しても、その一部だけを見て判断されるということです。今回少し気になったのが、ホームページに掲載された家庭での対策です。吐瀉物の処理の仕方などが具体的に書かれているのですが、言葉足らずのところがあったのです。学校では塩素系消毒薬で殺菌したことが書かれています。ノロウィルスの疑いがあるとは発表していませんが、ノロウィルスの可能性を考慮しているということです。ノロウィルにアルコール消毒は効かないからです。これはスタンダードプリコーション(標準予防策)に基づく正しい判断です。しかし、家庭での対策は消毒薬としか書かれていませんでした。おそらく家庭への配布物やメルマガでは正しく塩素系消毒薬として、作り方(塩素系の消毒薬は、家庭では利用する時に塩素系漂白剤を薄めて使う)と合わせて伝えていると思います。しかし、ホームページだけを見た方は間違えてしまうかもしれません。もっと怖いのは、保護者でない方が、このことだけで学校はいいかげんな情報を伝えていると批判することです。もしこういうことがあると、学校側は情報を公開することに消極的になってしまうかもしれません。 学校ホームページに何をどこまで情報公開するかはとても難しい判断だと思います。誰が見ているかわからないので、慎重になります。しかし、中途半端なことをして誤解をまねくよりも、できるだけ包み隠さず公開した方がよいと私は考えます。批判や中傷もあるかもしれませんが、日頃からきちんと伝える努力をしていると、それ以上に力強い味方が現れてくれることを何度も見てきたからです。今回のような事件が起こるたびに、学校ホームページでの情報公開の難しさを考えずにはいられません。 活動のつながりを意識する
授業を見ていると教師が話をしているのに、子どもの視線が教科書やワークシートに向いていることがよくあります。プロジェクターや電子黒板で教科書を映している時でも同じような光景を見ることがあります。このような場合、教師の指示や活動の順番が間違っていることが多いように思います。
教科書の○○ページを開きなさいと指示した後、教師が説明を始めても一度教科書に移った子どもの視線はすぐには戻りません。教科書を開けば、誰しも何が書いてあるだろう、今日は何を学習するのだろうと気になります。気にならない子どもの方が心配です。それをそのままにして話をしても子どもの注意は教師に向かいません。少なくともいったん顔を上げるように指示して、全員の顔が上がってから話し始める必要があります。それよりも今見る必要がないのに教科書を開いたことが問題なのです。もし、プロジェクターや電子黒板で教書を映すのなら、手元の教科書を見る必要がありません。そもそも大きく前で映すのは子どもの顔を上げさせるためです。手元の教科書を見ることが必要になった時に、開くように指示をすればいいのです。 ワークシートを配るタイミングも同様です。ワークシートの説明するためには手元にあった方がいいと思うかもしれません。しかし、手元にあればやりたくなります。それを我慢して説明を聞かせると、子どもはおあずけ状態に置かれます。気になって落ち着きませんし、顔も上がりません。子どもが集中して聞いているか、理解できているか、子どもの反応から確認することもできないのです。 ワークシートを配らずに、できれば実物投影装置を使ったり、もし環境がなければ拡大コピーしたものや板書を使ったりして説明した方がずっといいのです。説明が終わって、「じゃ今から配るから、名前を書いたら始めていいよ」とすれば、配られてすぐに取り組むことができるので、おあずけ状態になりません。 子どもたちに指示した活動に対して、その次の活動はつながっていることが大切です。教科書を開いたのなら読む。ワークシートが配られたのなら取り組む。この間に直接関係のない活動を挟まないようにするだけで、子どもの動きが滑らかになり、集中力が増します。このことを意識してほしいと思います。 中学校で新年度のスタートを見る
昨日は中学校の授業アドバイスをおこなってきました。昨年度に続き多くの方が異動されました。この学校で今まで取り組んできたことを共有することが課題です。今年度の研修の進め方も工夫しなければなりません。この日は、まずは各学年のスタートの状態を学年主任と共に観察しました。
3年生はとてもよい状態でした。どの学級もわかりたい、できるようになりたいという意欲を感じます。子どもたちの視線が教師に集中しています。どの子もあきらめずに授業に参加しているのが印象的でした。学年主任も子どもたちのよい点をたくさん伝えてくれます。子どもたちの関係が良好で、男女を問わずよく話し合ってくれるとうれしそうに話してくれました。 初めて担当する先生に対しては、その先生のやり方を理解して慣れるのに時間がかかるものですが、以前からその先生の授業を受けているような雰囲気に既になっているのが印象的でした。全く初めて担当する先生も、とても素直に反応してくれると言っていました。1年生からずっと担当している先生は、今まで受け持っていなかった子どもも、経験のある友だちに教えてもらったり、助けてもらったりしてすぐに慣れてくれたと、子ども同士の関係のよさを実感していました。子どもたちは、指示待ちの受け身の態度ではなく、次に何をすべきかを意識しています。問題を解き終ってもぼっとしていません。日ごろから何をすればいいのかを指導されているのでしょう。教科書を読んだり、問題集を解いたりしています。指示に対しての反応もとても素早いものでした。話をうかがったどの先生も授業がとてもやりやすいと言っていました。3年生の姿は、この学校の目指す子どもの姿を体現してくれていると思います。これまでの2年間の先生方のかかわりが素晴らしかったのでしょう。とてもよいスタートを切れていると思います。 3年生になるとみんなが頑張るので、努力しても思うように相対的な成績(順位)が上がらず、落ち込む子どもが出てきます。全体がよいスタート切れているので、先生方には少し余裕ができると思います。個を見ることにエネルギーを使ってくださいとお願いしました。 2年生は、集中を見せる時はとてもよい状態でした。作業や課題にも真剣に取り組みます。昨年度末に少し目立ち始めた授業に参加できない生徒があまり気になりません。その一方で、受け身になると直ぐに集中力が切れるという特徴はあまり変わっていませんでした。先生が一方的に話していると、みるみる集中力を失くします。逆に言えば、子どもたちに活動させることを意識すればよい状態で授業が進むということです。担任の先生もかなりの数が入れ替わっているので、子どもたちの気持ちもリフレッシュされているはずです。今がチャンスだと思います。子どもたちの活動量の確保を学年全体で意識すれば、よい状態になっていくはずです。このことを学年主任にお願いしました。 また、若手の先生が時間を見て教育相談(個人面談)を始めていました。学年全体で取り組んでいるのかはわかりませんが、とてもよいことです。この時期は子どもがやる気を出すと同時に環境の変化で不安定になりやすい時でもあります。子どもとの人間関係をつくるためにも個別に話を聞くとよいと思います。忙しい時期ですが、必要な動きができていると思いました。 1年生の第一印象は小学生、それも中学年のような姿だということです。授業規律がまだきちんとできていません。授業を受けている子どもたちの姿を見るとバラバラです。出身小学校での様子をそのまま引きずっているようにも思います。例えば友だちの発言をその子の方をきちんと向いて聞く子どもがどの学級にも1/4から1/3くらいはいます。しかし、他の子どもは前を向いたままなのです。このこと自体は大した問題ではありません。この時、授業者が友だちを見ている子どもを評価しないのが問題です。また、友だちの発言をつなぐこともしません。せっかくよい文化を持ってきてくれている子どもたちがいるのに、これではすぐに消えていってしまいます。 これに限らず、先生方が子どもたちへの指示が通るまで待てていません。子どもたちの行動が遅いため待ちきれないのです。このような時は、指示に対する評価をスモールステップで行うとよいでしょう。「教科書の○○ページを開いて」という指示であれば、「教科書を出す」「開く」「目的のページを見つける」それぞれの段階をほめるのです。「○○さん、もう教科書を出しているね。素早い行動だね。うれしいね」「おっ教科書を開こうとしているね。早い、早い」「△△さん、もう○○ページを開いているね」というようにすれば、動きの遅い子どもたちでもほめることができます。教師が子どもたちの素早い行動を望んでいることをほめることで伝えるようにすることが大切です。全体に、挙手や発言、課題に取り組む様子などの子どもたちの外化を評価していません。そのためよい行動があっても、広げることができていないのです。固有名詞でほめることが大切です。 1年生の先生方に対して総じて感じたのが、余裕がないということです。異動したばかり、初めて担任をもった、そういう方が多いので仕方がないと思いますが、この時期に押さえるべきことは少し時間がかかってもしっかりとしておく必要があります。学年主任にはこのことをお願いしました。 今年度新しく研修主任になった方と打ち合わせをおこないました。異動したばかりで学校のことがよくわからない中での担当で、戸惑いもあるようでした。3年生の担当で、子どもたちのよさに気づいています。単に子どもたちがよいのではなく、このように育てるにはこれまでにやってきたことがあるはずだとわかっておられます。これはとてもよいチャンスだと思いました。以前からいる方にとっては当たり前のこととして意識されていない子どもたちへのよいかかわりを明確にすることができるからです。新しく来られた方の視線でこの学校の取り組みを見直すことで、どのようなかかわりが子どもたちを育てているのかを具体的にすることができるはずです。1年間の研修を通じて、この先生の視点でこの学校のスタンダードというべきものをまとめて提案していただくことをお願いしました。経験も豊富で授業に対する感覚もとても素晴らしい方なので期待できそうです。 今年初めて担任を持った先生に少し時間を取ってもらい話をしました。余裕のない状態であることはわかっていますが、「笑顔を忘れずに授業規律、学級規律を確立することを大切にしてほしいこと」「わからないことはあって当たり前だから、臆せずに先輩に聞くこと」、そして、忙しいことはわかるが、「朝少し早く来て教室で登校してくる子どもたちを見ること、雑談をすること」「帰りの会が終わったあと教室に少し残って子どもたちがすぐに部活動に向かうかを確認すること、机の中などの個人スペースの様子を見ること」。こういったことをお願いしました。何をすればよいか、どこから始めたらよいかわからない状態だとは思いますが、優先順位を子どもたちと接することにおいて行動してほしいと思います。 予定していなかった若い先生が2人相談に来られました。「よいスタートを切れていると感じているが、これでよいのか」と確認を求める方。6年目という次は原則異動の年なので、恥ずかしくないだけの教科力を身につけたいと、授業に関して悩んでいることを質問してくれた方。私にとっても刺激となるよい話をたくさん聞くことができました。彼らの成長を感じることができるとても幸せな時間でした。 また、数学科に関してはベテランがほとんどいなくなったので、彼らの教科力をアップするために勉強会を開くことを提案しました。玉置崇先生編著の「中学校数学授業のネタ100(1年〜3年)」(明治図書)(数学の授業アドバイスを助けてくれる本参照)の読書会です。次に指導する単元を有志で勉強するのです。うれしいことにすぐに前向きな答が返ってきました。この学校に訪問する楽しみがまた一つ増えました。 今年度転任されてきた校長からたくさんのお話を聞くことができました。異動したばかりにかかわらず、子どもたちの様子をとてもよく把握されています。時間をつくっては教室を見回っていることがよくわかります。授業をとても大切にされている方です。前任校での取り組みなど、参考になるお話をたくさん聞くことができました。とても楽しい時間を過ごすことができました。よい出会いに感謝です。 この学校のよい点を再確認するとともに、新たな課題も見つかりました。この1年で子どもたちと先生方がどのように成長していくかとても楽しみです。先生方と共に私も成長できるように頑張りたいと思います。 専門学校の登校指導
先日東京に出張した時に面白い光景を見ました。朝、白衣のような制服を着た方が何人も立って道行く若者に笑顔で挨拶しているのです。一体どういうことだと思いましたが、どうやら近くにある専門学校の先生方が学生に登校指導をしているようです。そこは狭い道路で車がすれ違うのがやっとです。登校する学生がわがもの顔で歩いていると交通のじゃまになるのです。小中学校ならまだしも、専門学校でも朝の交通指導が必要な時代になってしまったようです。
感心したのが、先生方がとても素敵な笑顔で挨拶することです。学生への配慮もあるでしょうが、一般の通行人も気持ちがよくなるような笑顔です。おそらく接客をともなう仕事の専門学校なのでしょう。プロの笑顔のすごさを感じました。一方の学生は明るく挨拶はするのですが、先に挨拶するのは先生です。中には友だちとの話に夢中になって、声だけの学生もいます。私がその学校の教師ならつい指導したくなるような状況でも、先生方は決して表情を荒げたりしません。とにかく笑顔で挨拶をし続けるのでした。登校指導には苦情に対して指導していることをアピールするという要素もあるかもしれません。しかし、先生方の姿は指導ではなく気持ちのよい挨拶で学生を迎えようという思いを感じさせられるものでした。見ている私もよい気持ちになりました。 一般の小中学校でも登校指導をしているところは多いと思います。地域の方から苦情をいただくこともあると思います。その時に子どもたちを指導することばかりに意識がいってはいないでしょうか。中には、登校指導は指導をしていることを地域にアピールするパフォーマンスだと言ってはばからない人もいます。地域の方は、先生方がどのように子どもたちと接しているか、どのように指導しているかとてもよく見ています。そして、もっとも敏感に感じているのが、ほかならぬ自分たち地域の人間に先生方がどのような気持ちで接しているかです。登校「指導」ではなく、子どもたちや地域の方と気持ちのよい挨拶をすることを第一の目的にしてほしいと思います。気持ちよい挨拶ができるようになれば、自然とまわりを気遣った安全な登校となるはずです。専門学校の先生の姿からこんなことを思いました。 データの考察を考える
学校評価や全国学力学習状況調査など、私たちはデータをもとにいろいろなことを考察します。これは学校のことではないのですが、先日こんなことがありました。
「住宅の購入・建築における条件の重視度」というアンケートをもとに、低価格住宅に自分たちの強みを加えれば確実に売れるということを力説する方がいました。20代、30代、40代、50代、世代ごとに2位以下は変わるが、どの世代も「価格」が1位になっているというのがその理由です。それだけ聞けばなるほどと思うのですが、どうも引っかかります。大きな買い物ですが多くの人は値段が安い方がよいに決まっています。しかし、それだけなのでしょうか。 実はこのアンケートは複数回答可だったのです。「価格」を選んだ人はどの世代も80%から90%です。しかし、どの世代でも80%を超して選ばれた項目が複数あります。「耐震性能」はどの世代でも80%を超しています。その他にも、20代では「周辺環境」「防災対策」「生活環境」「セキュリティ」、30代では「日当たり」が80%を超しています。70%を超える項目は、どの世代でも10はあります。つまり、住宅の購入・建築には非常に多くの条件が重視されているということです。その中でも「価格」が一番共通して重視されているということなのです。このアンケートから価格が安ければ売れるとはとても言えません。ではその方はなぜこのように判断したのでしょうか。すべての世代に1番だったのでどの世代でも売れそうだと判断したのでしょうか、それとも意図的に他の要素を無視したのでしょうか。実際のところはわかりませんが、アンケートの元データを見せてもらわなければ私もそういうものかと思っていたかもしれません。 この例は極端かもしれませんが、学校評価や全国学力学習状況調査の考察だけを読んでいるとその判断の根拠がよくわからないことがあります。私が学校評議員をしている学校では、ほとんどのデータを評議員に公開してくれます。おかげで学校の考察もよく理解できるし、私なりの判断を付け加えることができます。とてもありがたい対応です。しかし、元データを公開しろとは安直に言えません。今回の例のようにおかしな結論が独り歩きする危険性もあるからです。学校評価が義務付けられ、全国学力学習状況調査の結果の公表の圧力が高まっています。一部の結果に引きずられてとんでもないことを言いだす人が出てくるかもしれません。 今日は全国学力学習調査がほとんどの学校で実施されていることと思います。この結果をどのように考察し公表するのか、学校現場は厳しい視線にさらされています。拙速な判断を避けてほしいと願うのは私だけでしょうか。 研究会で学ぶ
昨日は今年度最初の愛される学校づくり研究会でした。新しいメンバーも増え、今年度も充実した会になりそうです。
自己紹介の後、前回のフォーラムの振り返りと来年度のフォーラムを意識しての今年度の研究の方向性について話し合いました。 午前の部は「劇で語る! 校務の情報化 パート2」でした。これに関しては、校務支援システムのよさは広く認知されてきたが、いかにして各学校に応じた形で運用できるようにするかが課題となってきたという話になりました。次回に向けて校務支援システムをよい形で導入し、定着させるための工夫を話題にするというアイデアが出てきました。また、学校ホームページに関して、毎日更新することが目標ではなく、対象を意識して何が伝わったかが問われる時代になってきました。この視点から、具体的にどのような工夫をしているかがその場でたくさん話されました。カテゴリーとキーワードをうまく組み合わせることで教育目標や目指す子どもの姿が伝わる例や、教職員を意識した発信の仕方、伝え方の工夫についても面白い話をたくさん聞くことができました。この内容だけでも十分に外部に発信する価値があると思いました。 午後の部は、「楽しく授業研究をしよう」でした。3つの模擬授業をもとに授業検討法の提案を行いましたが、授業検討法もさることながら、素晴らしい授業を見ることができてよかったという感想が多く寄せられました。先生方にとってよい授業を見るということはとても価値のあることです。来年もぜひ授業を公開したいと考えています。今年度は年に数回の授業検討だけでなく、日常的に授業改善に取り組むことをテーマにしていくことになりました。日常的であるためには、手軽に、気軽におこなえることが大切です。先生方からは若手の授業改善についてどのような工夫をしているかを聞くことができました。授業について第三者に語り、聞き手はそれをまとめるといったことを職員全員に課すという取り組みなど、なるほどと思わされるものがたくさんありました。このことについては、愛される学校づくり研究会のコラムを通じてお伝えしたいと思います(来週より連載開始)。 研究会の後半は、文部科学省に出向されている会員からの最近のトピックと新年度の学校の取り組みなどの発表でした。 地方の教育行政改革の法案の流れや、教育行政や地域と学校のかかわり方の話題、土曜授業・学習についてなど最新の情報をお聞きすることができました。学校の現場の人間にとって心外な言葉ですが、議員からは「教育村」という言葉がよくでてくるようです。教育現場に対する不信感が現れています。対決姿勢ではなく、協力して進めるというスタンスで改革が進んでいってほしいと思うのは私だけでしょうか。 新年度の取り組みの中で、いかにして人を活かすかについて参考になる話がありました。バランスのよい人ばかりではありません。授業力があっても職員同士の軋轢を引き起こす方もいます。その人のよいところを活かすポジションをどうつくるかに腐心されたことが伝わるお話でした。欠点を指摘して矯正しようとするより、そのよさを活かして活躍させることが組織を活性化させます。簡単ではありませんが、その視点が大切だとあらためて確認することができました。 また、皆さんの話に共通していたのは、校長が学校の課題や目標を明確にし、職員だけでなく、子どもや保護者とも共有しようとしていることでした。ポイントの1つは、課題や目標を簡潔な言葉で言い表すことです。その言葉をいろいろな具体例と共に繰り返し伝えるのです。特に保護者には直接伝える機会は限られているので、学校ホームページの記事などで、子どもの姿だけでなく、その姿が課題や目標とどのように関連しているかを伝えようとすることが大切です。こういったことにも気づかせていただきました。 この日もたくさんの学びがある、充実した時間を過ごすことができました。学び合える場を持てることに感謝です。 私学で授業見学
昨日は私立の中高等学校で授業を見学してきました。お昼を挟んで2時間ずつ子どもたちのようすを見せていただきました。全体的な印象は子どもの声がほとんど聞こえないことです。先生から答えが出ることを待っています。子どもとのやり取りも基本一問一答です。教師の都合で授業が進んでいます。子どもたちが考えている場面がないのです。子どもたちはおしゃべりもせずに静かにしていますが、集中はしていませんでした。午後になると、受け身に疲れたのか倒れている生徒も目立っていました。このことを誰よりも校長がよく理解しています。どのようにして授業を改善していくかが課題です。
教科指導部の主任の先生と多くの時間一緒に回らせていただきました。子どもたちとのコミュニケーションを大切にしたい、知的な喜びを感じさせたいという強い思いを持っている方です。自身の授業に対する改善意欲もとても旺盛です。客観的に子どもたちの様子をもとにその原因や対応について話をしていても、自分の授業に引き寄せて反省をされたり、どうすればよいか具体的に質問をしたりしていただけました。最初にこのような前向きな先生に出会えたことはとても幸運でした。こういった先生方がいらっしゃるのであれば、きっと学校がよい方向に変わっていくと思います。副主任の先生や若手の先生とも一緒に回りましたが、共通しているのはとても素直なことです。若手の先生は、子どもたちの様子を外から見ることで、初めて教壇に立ったころは子どもが聞く態勢を取ってから話すことを意識していたのに、今はその基本をおざなりしていることを素直に認めてくれました。私の話もしっかりとメモして活かそうとしていました。きっと成長されることと思います。 また、自主的に公開授業をおこなっている先生もいました。グループを活用した授業に挑戦されています。授業で目指す子どもの姿が明確になれば、とても素晴らしいものになっていくと感じました。自主的なものにもかかわらず、何人もの先生が参観していました。この雰囲気を学校全体に広げることができれば大きな力になっていくと思います。 一緒に授業を見た先生方と話をさせていただいて感じた課題は、この学校の目指す子ども像、授業像が全員で共有されていないことです。もっと言うと多くの先生方が子どもたちの力、可能性を信じていないことです。そのため、考えさせることよりもやらせることに力点がいっています。子どもが笑顔で自ら学ぼうとすることよりも、静かに聞いていれば十分だと思っているのです。子どもを認める場面もありません。そもそも子どもに出力することを求めていないのですから当然です。具体的な方策はいくつもありますが、先生方の意識を変えてもらうことが先決です。まずは、教科指導部の先生方全員で課題を共有し目指す姿を明確にすることから始めたいと校長に提案しました。ゴールデンウィーク中になりますが、次回はできるだけ多くの教科指導部の先生と一緒に授業を見て、その上で部会を開いていただき、話を聞かせていただきたいと考えています。 この学校の子どもたちが持っている可能性はとても高いと感じました。特に1年生は、中学生も高校生もその様子から、学びたい、わかりたいという意欲が伝わってきます。まだまだこの学校での取り組みは始まったばかりですが、今後の展開がとても楽しみになっています。子どもたちの可能性を引き出せるようできる限り先生方のお手伝いをしたいと思います。 家庭訪問雑感
小中学校では授業も始まり、1年の内で最も大切と言われる1か月の真っ只中だと思います。PTA総会と合わせて授業参観、学級懇談が行われている学校も多いことと思います。子どもの家庭環境を知るためにゴールデンウィークの前後に家庭訪問を行う学校もあるでしょう。しかし、最近は家庭訪問をする学校が減ってきているようです。保護者が日中働いていて、仕事の都合をつけなければ対応できない家庭が増えたため、結構負担になっていることも理由の一つです。わざわざ休みを取っても、教師と話ができる時間はとても限られています。家庭にとってたったこれだけのために、時間の都合をつけるのは負担が大きいという判断も十分納得できます。先生にとっても、忙しいこの時期にあえて家庭訪問をするよりも、別の機会に十分な時間を取って話す機会をつくるほうがよいという考えもあります。
私は時期をずらして夏休みに家庭訪問をした経験があります。相手が高校生だったので、子どもの家庭環境を知るという意味では、保護者の同席は必要ありません。絶対家にいるという日と時間をいくつか申告させて、その中から選んで訪問しました。子どもが日ごろ学習している場所を見せてもらうことが一番の目的です。学習している場所は家庭の中でも特に子どものテリトリーです。面白いことに、そこへ先生が来るということは、子どもにとってはお客を招くという意識になるようです。多くの子どもが日ごろとは違う、客を招く主人といった態度で迎えてくれたことを覚えています。子どもたちの別の面を見ることができました。 宿題等をちゃんとやれない心配がある子どもは、夏休み終了の1週間くらい前に訪問しました。1週間くらいあれば宿題は何とかなります。家庭訪問をきっかけに、学習に取り組んでもらうことを意識したのです。他の学級と比べて宿題の提出率が高く、夏休み明けの実力試験で下位の生徒が少なくなりました。相対的な問題ですが、夏休み前終了前に少しでも学習に取り組めば、何もしていなかった者との差は大きくつくことは想像できると思います。 先日、ある学校が今年からこの時期の家庭訪問を中止することを学校ホームページに掲載しました。家庭訪問を止めることの是非はともかく、その理由をきちんと知らせる姿勢に好感が持てます。教員の移動時間が多くかかり、授業も8時間分削ることになります。兄弟姉妹がいる方であれば、時期が重なりますのでその調整に時間がかかります。かわりに夏休みに入ってすぐに保護者との個別懇談会を設けるという連絡です。理由と代替案が示されています。また、早い時期に保護者と個別に話せないマイナスについては、「PTA総会」「学校公開日」などの機会を利用して担任に声をかけていただくようにお願いすることで対応しようとしています。 実はこの記事を掲載することになったのは、PTAの役員会で理由について質問があったからのようです。「行わないのは何かあったのかしら」と思われるのは当然です。しかし、疑問に思っても一般の保護者はなかなか学校に質問できません。例えPTA役員であってもこのような質問をするのは意外とハードルの高いものです。互いに意見を言い合えるよい関係であることが想像つきます。その質問を受けて、ホームページに記事を掲載する姿勢がよりよい関係づくりにつながっていきます。ほんのちょっとのことですが、とても重要なことだと思います。 家庭訪問を行うにしても止めるにしても、その意義や理由をきちんと説明して、そのことがよりよい学校と保護者との関係づくりにつながるようにしてほしいと思います。 全員が活動することを意識する
子どもたちの活動量を確保したいと考えると、全員一斉に活動することが一番確実に思えます。一斉に音読する、一斉に答える。こうすることで全員が同時に活動するのでムダがありません。しかしいつも全員で同じように活動できるわけではありません。音読も1人で読もうとすることで、全体で読むより集中して力がつくという側面もあります。そのため順番に音読させるというのもよくある活動です。問題は音読していない子どもが活動しているかどうかです。きちんと教科書を目で追い、友だちの音読を聞いていることが求められます。読み終わった子どももが気を抜かないようにすることも意識しなければいけません。音読していない子どもにとってムダな時間にならないようにすることが大切です。同じことではないにしろ全員が活動することを求めなければなりません。誰かが発表する時には、全員がきちんと聞いていればムダなく活動しているわけです。数人の子どもが活発に意見を交わしているが、他の子どもは議論についていけなくて参加できなくなっていることもよくあります。一見活発で子どもたちが活動しているように見えても、ほとんどの子どもの活動量は確保されていないのです。
一斉の活動でない場合は、それぞれの立場での活動を明確にしておき、きちんとできているかを確認することが大切です。先ほどの音読の例であれば、聞いている時に何をするかを指示しておくのです。例えばどこを読んでいるか指でなぞるように指示すれば、参加できていない子どももすぐに見つけることができます。誰の読み方がよかったかを注意して聞くように指示をして、最後に指名して確認するといったやり方もあるでしょう。 子どもたちの意見を聞く場面であれば、次々に意見を聞くのではなく、必ずその意見に対しての発問をするようにすると、子どもたちに聞く必然性が出てきます。よく聞くようにという指示だけでは、なかなか集中して聞きません。自分の意見と違うなら、まだ指名のチャンスがあると挙手しようとうずうずしたり、自分の意見と同じだと思ったら指名されるチャンスがなくなったとがっかりして集中力を失くしたりします。「今の意見に対してどう思う?納得した?どこで納得したか聞かせてくれる」「似た意見の人、どこが同じか聞かせてくれる」「ちょっと違うよという人、どこが違うか聞かせてくれる」というように、その意見を聞くことが必要になる発問をいつもしていれば、子どもたちに聞く必然ができ、集中するようになります。英語であれば、”Do you 〜?” と個別に質問して答えさせた後、答に応じて一斉に”He(She) 〜.” “He(She) doesn’t 〜.” と言わせたり、”Does he(she) 〜?” “What does he(she) 〜?” と質問したりすると聞く必然性が増します。 子どもたちの活動量を確保することを考えるのであれば、指名された子ども、代表となっている子ども以外の子どもたちに明確な指示を与え、その必然性を与えることや確認することが大切になります。全員が活動することを常に意識してほしいと思います。 教科内容以外のことをきちんと教える
以前は家庭で教えていたことを学校で教えなければいけなくなってきています。掃除の仕方などはその典型でしょう。今や箒のない家庭は珍しくないかもしれません。床の雑巾がけもあまり目にしません。雑巾の絞り方も知らない子どももいます。また、外庭の掃除などもマンションの子どもにとっては縁遠いものでしょう。挨拶だって、親がきちんと教えていなければ、頭を下げてきちんとすることはできません。食事の作法なども同様でしょう。学校で教えなければならないことは、実に増えているのです。ここで注意をしなければいけないことは、授業で教える教科の内容については、指導方法も含めてよく研究されていますが、こういった教科内容以外のことはきちんと体系立てて教えることがあまり意識されていないということです。
掃除であれば、机の移動の仕方、箒の持ち方、ごみの集め方、隅の掃き方、雑巾の洗い方、絞り方、たたみ方、拭き方など、教えなければならないことはたくさんあります。中学生だから大丈夫ということはありません。かえっていい加減になっていることもよくあります。 子どもたちの挨拶でも、個人差はあるのですが学校ごとに傾向があります。しっかりと目を合わせて明るい声で挨拶する学校、大きな声はだすけれどろくに目を合わせずこちらが挨拶した時にはもう後ろの方に行ってしまう学校、頭だけを下げて声も出さず目も合わせない学校いろいろです。挨拶の仕方も、場面別にきちんと教える必要があると思います。もちろん、教えることとそれを徹底させることはまた別ですが。 こういった学校生活における基本的なスキルをきちんと教えることを意識する必要があると思います。まず先生自身がきちんとやり方を整理して指導できるようにならなければいけません。 この時期、掃除をきちんとしよう、挨拶をしっかりしようとルールやマナーの徹底を意識している先生は多いと思います。しかし、細かいやり方まで確認していない方もいるのではないでしょうか。一度教えたから、教わっているはずだから大丈夫ではなく、基本だからこそこの時期に、「机の移動の仕方は?」「箒の使い方は?」「雑巾の使い方は?」「廊下ですれ違うときの挨拶は?」「職員室に入る時の挨拶は?」・・・と一つひとつ実際にやらせながら確認することが大切です。きちんと指導することを意識してほしいと思います。 介護技術研修で授業から学んだことが活きる
先週末は、介護技術の研修をおこなってきました。今回は「感染予防」がテーマです。私は介護技術に関しては素人ですので、実務に携わっている専門家の助けを借りながらです。
今までのコミュニケーション研修ではこれが唯一つの正解というものはありませんでしたが、今回の「感染予防」の知識に関しては正解があります。知っていれば答えられますが、知らない、忘れていては答えられません。こういった知識は問うばかりでは、定着はしていきません。知識を使って課題を解決することが定着につながります。また、知識面はほとんどの方が一度は学習したはずの内容でした。一方的に説明しても聞いていただけない可能性があります。 そこで、研修の流れは、基本となる知識をグループで確認することから始めました。自分の中で知識が曖昧になっていることに気づいてもらい、仲間から教わって自分の中に答を持った上で全体での説明を聞くことで、参加意欲が高まり知識の定着度も高まります。その上で、知識と関連して、現場で起こりそうな事例についてどう対処する、考えるかを問いかけます。知識を活用する課題、答えるのに必要な知識を確認するような課題です。基本的な知識、一般的な知識は私でも解説できますが、現場に即した問題は専門家に助けてもらいます。学校でのゲストティーチャーを活用した授業での経験がここで活きました。この場面では、参加者から言葉を引き出し、専門家の回答とつなぐことに徹します。 実技の場面は互いに見せ合い、代表者に全体の場で説明してもらうなど、参加者が活躍できる場面をつくることを意識しました。よく知っている方はそのことをただ確認するだけでは、興味を無くします。そういう人が他者に見本を示すなど活躍することが大切です。 最後の課題は、具体的な場面でどのように対処するか、今回の研修での知識を使って考えるものです。この課題にきちんと答えることができるようになることが今回の研修の目標です。皆さんしっかりと必要な対応を考えてくれました。ポイントを確認して終了です。 2時間近い研修ですが、皆さんよく集中してくださいました。 この研修のように参加者に知識があることが前提になっていても、完璧ではないような場合はその進め方に工夫が要ります。学校での復習場面や受験対策の授業と共通するものがあります。知識の確認で、忘れていることを自覚させるとともに、恥をかかさずに前向きに知識を再取得させようとさせることが必要です。グループなどで確認し合うことが、大人でも有効でした。また、授業と同じくこの課題をクリアできればOKという、目標を明確にしておくと進め方がシャープになります。何を扱うか、切り捨てるかといった判断が楽になります。 今回の研修で、日ごろ先生方の授業から学んでいることがとても役に立ちました。教える内容に対する知識も大切ですが、進め方、構成がより大切であると改めて感じました。 式辞や訓話を考える
先日、ある方から、お子さんが今年入学した学校の校長の式辞について話を聞きました。始業式の式辞がホームページにアップされていて、それを読んで驚いたということです。その部分の抜粋です。
・・・校長先生は、長い時間悩んで、それぞれのクラスに一番良い先生を担任にしました。校長先生は、担任の先生だけでなく、○○小学校の先生方、主事さん方は、○○(地区名)の中でも、一番熱心で、優秀な人ばかりだと思っています。ですから、これでうまくいかなかったら、皆さんにも問題があると思います。・・・ 驚いた気持ちはよくわかります。想像ですが、過去にこの学校では担任批判のようなものがあったのかもしれません。しかし、学校の様子がまだよくわからない新入生の保護者からすれば、何も起こらない内から子どもに問題の原因を求めるような校長の姿勢には不信を持つのも当然だと思います。また、同じ地区の他の学校の教師が見てもあまりよい気はしないでしょう。 校長の式辞や訓話を学校ホームページに載せることは一般的になりました。校長がどのような教育をしようとしているか保護者に理解してもらうよい手段です。保護者と子どもの家庭での会話のきっかけにもなります。話したことは消えてしまいますが、ホームページにアップしておくことで、子どもが正しく理解せずに誤ったことを家族に伝えても誤解を生むことを防ぐことができます。こういったメリットをいつも感じていたのですが、肝心の話の内容に問題があれば、メリットは一気にデメリットになってしまいます。情報公開することで得られるはずの信頼が一気に不信に変わってしまいます。メリットが大きい分、デメリットもより大きくなるのです。 こういった事例に出会うと、やはり式辞や訓話などの公開はやめておこうと思うのでしょうか。それとも、だからこそよりよいものにしようと時間をかけて推敲し、練り上げるのでしょうか。こういったところにも、校長の姿勢が表れるのです。学校ホームページという強力なツールが現れたことで校長に求められることの質がより高くなったと感じます。私のまわりの校長が、例外なく式辞や訓話などを考えるのに多くの時間を割いていることの理由がわかったように思いました。 企業での新人研修(2日目)
昨日は企業の新人研修の2日目でした。
午前は学校ホームページで「何を変えられるか」という課題を考えてもらいました。学校ホームページは誰を対象としたものか、その対象にどのようになってほしいのかという視点で整理してみます。その上で、学校ホームページからその具体例となる記事を探すというものです。みなさん、まず母校のホームページを検索します。中には昨年の体育大会の記事が最新という学校もあります。ここからどのようにして記事を探すかが問題です。やみくもに探す人、J−KIDS大賞のようなサイトの上位校から探す人、個人が運営しているサイトのランキングから探す人、いろいろです。途中で探し方を共有し、グループで情報交換をしてもらいました。 参加者は、デザインや利便性といったところに目がいきます。保護者が見たくなるという視点です。しかし、最初はそこでひかれても、中身がなければ継続して見てはもらえません。「記事を見ることで、どう変わってほしい」という中身の持つ意味まで考えることができていません。また、「地域」の方を対象にした記事を探したものの、ボランティア募集の記事を見つけるにとどまった人もいます。 自分の中に、「学校ホームページで誰をどのように変えることができるか」の解答の明確なイメージがないため、取り敢えずホームページを見て探すというアプローチです。限られた時間では表面的にしか見ることができなかったのもいたしかたないことです。質の高いものは、単にネットを検索していてもなかなか見つかるものではありません。 実は、この新人たちは「愛される学校づくりフォーラム2014 in京都」に全員参加していたのです。ここで得た情報を活用してほしかったのです。学校ホームページに関する話題を思い出せばヒントになりますし、登壇された先生方の学校を調べて記事のカテゴリーや内容を吟味すれば、よい記事は見つかったはずです。細かいことを思い出せなくても、それこそインターネットで調べればすぐに情報は手に入ります。フォーラムのようなものに参加することの意味がわかってくれればと思います。 午後の課題は顧客とのコミュニケーションのロールプレイです。顧客と出会う前に何をするかをまず考えてもらいます。パンフレットを準備する、顧客の情報を集めるといったことが出てきます。ここで、「先輩にアドバイスを求める」という考えは出てきませんでした。自分でまず考えることが大切です。しかし、わからないことは聞くことが必要です。経験の少ない新人だからこそ、先輩にアドバイスを求めることが重要なのです。 グループで顧客の人物像を作ってロールプレイです。やり取りの様子を見ているとよい表情を作ろうとしたり、相手の目をしっかり見てうなずいたりしています。基本的なスキルはあるようです。互いの気づきをグループで共有してもらいましたが、非常に集中して話を聞き合っていたのが印象的でした。「相手の言葉をオウム返しで言うと、共感が得られる」といったとてもよい気づきが参加者から出てきました。仲間のよいところをしっかりと見つけることができていました。 代表の1組にロールプレイを再現してもらいました。代表も他の参加者もとてもよく集中していました。ロールプレイ終了後、参観していた社長にコメントを求めたところ、すぐさま全員の頭がそちらを向きます。社長は細かいことではなく、その集中する姿勢を評価してくれました。彼らがこれから伸びるために大切なことを評価するところはさすがです。ポイントをおさえたコメントでした。 最後に、私が顧客役になって代表者とロールプレイをしました。自ら手を挙げてくれる人がいたのはとてもうれしいことです。苦戦をしたのですが、簡単に引き下がらず粘りを見せてくれました。やった者しか学べないこともあったとは思いますが、見ていた側も第三者の視点だからこそ学べることにたくさん気づいたようです。顧客の願うものとこちらが提示するものがずれていたが、自分がその立場だったらどうだったどうろかと真剣に考えていたことがよくわかります。長時間にわたる研修でしたが、最後まで、いや終わりが近づくほどに高い集中度でした。 彼らが生徒だったら楽しい学級を作れるだろうなと思うような参加者でした。講師ではなく教師としての楽しさを感じさせていただいた研修でした。参加者の皆さんとこのような機会を与えていただいた企業に感謝です。 企業での新人研修(1日目)
昨日は企業の新人研修の講師をおこなってきました。ほとんどが新卒の方です。
今回の研修では、課題を通じて知識を得ることだけでなく、整理することを通じて「視点によって見え方が変わる」「視点を変えることによって見えなかったものが見える」といった視点の大切さについて気づいてもらうことを意識しました。また、グループで考えることは、他者の異なった視点に触れることになるので、考えを深めるのに有効です。グループワークを通じてこのことにも気づいてもらえたと思います。 最近の若者の特徴でしょうか、みなさんとても素直な反応をしてくれます。与えられた課題も真剣にこなそうとします。しかし、課題に対してはその答をストレートに求めようとします。ネットの利用でも周辺情報を集めることはあまりしません。課題の背景や、課題解決のための方法を考えることはあまり意識されていないように感じます。本日の研修では、そのことについても考えてもらう予定です。 今回の一連の研修で、「小中連携」「教科担任制」といった学校に関連する事柄について互いにレクチャーする課題があったようです。その課題の一環として全員の前でそれぞれがプレゼンテーションをしたそうです。その時互いに評価し合った結果を受けて、今回もう一度全員にプレゼンテーションをおこなってもらうことになりました。 今の大学ではプレゼンテーションは必須のものかと思ったのですが、学校や学部によってまちまちのようです。堂々と動きも加えて全体を見ながら話す方(試食販売のアルバイトをしていたそうです)もいましたが、思いのほか慣れていない人が目立ちました。しかし、受講者に聞いてみると、みなさん指摘されたことを何らかの形で改善しているようでした。前回は原稿を見ながらたどたどしかった方が多かったようですが、かなりの人が原稿を見ずに話せるように事前に練習していました。互いの成長を見あうことはよい刺激になります。同世代の集団で学ぶよさでしょう。 「・・・である」「・・・だそうだ」と結果や結論を述べるだけで、その根拠やその結果が意味するものについてはあまり説明できていませんでした。資料をまとめるだけで、自分が何を伝えたいのか整理できていないものも目立ちました。なぜその話題を取り上げたのか、そこから何を考えたのかといったものが伝わってきません。真剣取り組んでいたのでしょうが、姿勢が受け身だったのかもしれません。 「目的」という言葉がプレゼンテーションで使われていたので、全体に対して「目的」と「目標」の違いを確認してみました。驚いたことに、一人を除いて全員逆にとらえていました。彼らが受けた学校教育ではこのことを意識することがなかったということです。先生相手に同様の質問をしてもかなりの数が間違えます。総合的な学習の時間などで「目的」と「目標」を正しく意識して活動することの必要性を感じました。 本日の研修では、昨日の研修内容が消化できていないと苦労するように考えています。彼らがどのような姿を見せてくれるか楽しみでもあり、不安でもあります。彼らの姿が、私の昨日の研修の評価になるからです。私も彼らの姿からしっかり学びたいと思います。 今は子どもたちをほめる時期
ほとんどの学校で新学年が始まったことと思います。黄金の3日間、1週間という言葉があります。今まさにその真っただ中でしょう。子どもたちとの最初の出会いで、よい人間関係をつくる。子どもたちに学級のルールをきちんと伝え徹底させる。そういう時期です。
子どもの言葉をよく聞いて人間関係をつくるようにアドバイスをすると、子どもたちに迎合する「友だち先生」になることと勘違いをされることがあります。子どもたちの言葉を聞くとは、子どもからの発信を無視せずに受容するということです。そして、ポジティブに評価することです。子どもたちの言いなりになることではありません。人間関係をつくるとは、友だちになることではありません。子どもたちと信頼関係をつくることです。言い換えると子どもたちに安心して学校生活を送れる環境を保障することです。そのためには学級のルールを明確にし、それを徹底させることが必要です。このことに最大限のエネルギーを使うのが今なのです。 子どもとの人間関係をつくるために、この担任は面白そうだ、話を聞いてくれそうだと思ってもらうことから始めます。自分の人となりが伝わるようなエピソードを話すことも必要ですが、子どもの反応をしっかりと受け止めることがとても大切です。特に意識してほしいことは、Iメッセージでほめることです。子どもたちが自分の話に反応して笑ってくれたなら、「笑ってくれたね、うれしいな」「反応してくれたね、ありがとう」とIメッセージで返します。 同じことが学級のルールの徹底でも言えます。学級のルールを伝えたならば、そのルールを守ってくれた子どもを探します。そして、その子どもをほめるのです。「○○さん、みんなの見本になるようなとても素敵な挨拶をしてくれたね。ありがとう」と具体的に固有名詞を出してほめることで、「自分もほめられたい」「このようにすればほめられるのか」と、子どもたちがルールを守ろうとするようになります。できていないことを叱り続けても徹底したことにはなりません。徹底するとは、きちんと守らせることです。そのためには、守れたことをていねいほめて、よい行動を広げることが必要なのです。また、ほめるときは「いい挨拶だね。えらいね」とYOUメッセージになりがちです。YOUメッセージは上から目線に感じます。くどいようですが、この時期は人間関係をつくることを考えて、「ありがとう」「うれしい」とIメッセージでほめるように意識してほしいと思います。 教師が自分のことやこうなってほしいという学級への想い、みんなが守るべきルールをたくさん発信する時期です。それと比例して、子どもたちの反応やよい行動をたくさんほめる時期でもあります。思いを伝えることばかりにエネルギーをかけて、子どもたちをほめることを忘れないようにしてほしいと思います。 新入生の成長が楽しみな入学式
先週末は学校評議員をしている学校の入学式でした。最近は生徒数が減少傾向で、今年度の入学者数は100人を切っていました。かつてのたくさんの生徒がいたころを知っている方にとっては、さびしく感じられたかもしれません。
式での子どもたちの様子ですが、さすがに2、3年生は上級生らしくとてもよい姿勢で集中していました。特に2年生のよさが印象的でした。 面白かったのは新入生の様子です。校長式辞のときに、顔が上がっていない子ども、頭が動く子どもがかなり目立ちました。ところが、生徒会長の歓迎の言葉では、先ほど集中していない子どもも顔を上げます。全体の集中度が上がっているのが伝わってきます。これはどういうことなのか興味がわくところです。新入生は教師との関係があまりよくなかったのかもしれません。先輩への興味関心が強かったからかもしれません。 この学年団はベテランの主任と異動者が中心です。新しい個性が加わって、今までにない学年になるかもしれません。子どもたちが1年後、2年後とどのように変わっていくのかとても楽しみです。 今年度、この中学校の地域コーディネーターの方が1名増えて2名となりました。来賓控室では積極的に地域の方に挨拶と協力のお願いをされていました。11月に開催される「地域ふれ合い学びフェスティバル」では、たくさんの地域の方の協力が必要です。その陰には、こういった地域コーディネーターの方の、地道な協力要請や根回しがあるのです。昨年度は、子どもたちを前面に押し出し、大人たちは陰で子どもたちを支えることに徹していました。大人たちのそういった動きも、地域コーディネーターの方の働きによることが多いと感じています。地域に支えられている学校ですが、こういう方の存在があってのことだと改めて思いました。 入学式は毎年どんな子どもたちに出会えるか楽しみです。同じ地域の子どもたちですが、何かしらの違いがあるものです。その原因がどこにあるのかはわかりませんが、これまでに出会った先生方の影響が多いように思います。「子どもたちが成長した」の一言で片づけられないほど中学校の3年間で大きく変化することからも、先生の影響は大きいのだと思います。教師という仕事のやりがいと責任の重さを感じさせられます。 新しい1年が始まります。また1年、学校評議員として子どもたちの成長を見守る機会をいただけたことに感謝します。 私学で打合せ
昨日は今年度から研修を引き受けた私立の中学・高等学校で打ち合わせをおこないました。どのような進め方をするか、まず校長とイメージ合わせでした。
学力層は平均的な学校ということで、教師の対応によってももっとも大きく変わる子どもたちです。授業の質を上げることが子どもたちの成長に直結するという校長の認識に同感です。子どもたちが受け身でなく参加する授業、自己有用感を持たせるような活動を意識すれば大きく変わるはずです。授業改善を学校改革の大きな柱と位置付けることに大賛成です。 中学校、それ以上に高等学校は教科意識が強いので、授業に関して他教科と壁を作りやすい傾向にあります。確かに教科の内容に直結する教材研究も大切なのですが、それ以前の基本的な授業技術、子どもとのコミュニケーションスキルをきちんと身につけることが大前提です。まずこのことを先生方に伝えていくことが必要でしょう。 とはいえ、外部である私が主導で研修を進めることは避けたいと思います。公立の学校の先生は指導主事の学校訪問など、外部から授業を評価されることにある程度慣れていますが、私学の先生方はそのような経験がありません。そのため、外部の目で評価されることに臆病になる傾向があります。自分の授業に自信を持てていないと言ってもいいかもしれません。そういう状況で私から、一方的に「こういうことが必要だからこの方向で行きましょう」とアドバイスしても先生方が委縮するだけだと思います。目指す子どもの姿を先生方と共有するところから始め、こうしたい、こんなことを学びたいという気持ちになってもらうことが必要だと思います。この点について、校長も同じ考えでした。 研修を中心となって進める教科指導部の先生方とまず学校の課題を共有して、彼らを中心にして研修を企画して進めていきたいと思います。そのために、まず子どもたちの授業の様子を教科指導部の先生方と一緒に観察して、どういう状況であるかを共有することから始めます。この状態からどのような状態に変えたいのか、まず先生方に思い描いてもらうのです。先生方から目指す子どもの姿が出てくれば、それに向かって何が必要かを一緒に考えていくことになります。ここまでの状態に何とか4月中にもっていきたいと思います。授業が開始されたらすぐにおじゃますることにしました。 主任と一緒に研修の企画をつくることはよくあるのですが、先生方のチームと作っていくというのは、初めての試みです。どんなことが起きるのか、そこからどんなことが学べるのか、今からとても楽しみです。ワクワクする1年間になりそうです。 教育目標の公開で考える
4月になって新年度の教育目標などが職員に向けて発表されていることだと思います。これとほぼ同時に保護者や地域の方に向けてホームページで公開している学校が何校もあります。意識のある方は入学式やPTA総会などの前に見ることができます。とはいえ、これらの資料を見るだけで保護者や地域の方が理解できるものかどうかは疑問があります。言葉だけではどうしても具体的な姿が見えにくいからです。だから価値がないということではありません。逆に「教育目標が示すものは、子どもたちがどういう場面でどうなることか、具体的によくわからない」と疑問を持ってもらえればよいことなのです。授業でいえば予習したが、よくわからなかったという状態です。PTA総会などで、疑問を解決しようと意識して校長の説明を聞けば、よりよく理解できるはずです。教育目標を公開したからよいのではありません。公開することから、理解し、評価していただくことにどうつなげるか、そのプロセスが重要です。
ホームページで素早く公開するような校長は、教育目標を保護者に向かって説明する機会や、その具体的な場面をホームページで公開することを当然考えていることでしょう。学校公開日には、教育目標と授業の関係を明確して、子どもの姿で学校を評価してもらいたいと思っているに違いありません。しかし、保護者や地域の方はよほど学校のことがわかっていなければ、そのことには思い至りません。教育目標を見て、なんとなくそういうものかと思うだけで記憶にもあまり残らない可能性があります。これでは意味がないのです。また、校長だけでなく、各学級担任も保護者に対して、教育目標達成のために自分はどのような学級運営をするかきちんと伝えなければなりません。残念ながら、学校の教育目標についてたずねられて、きちんと説明し、それに向かってどのように行動しているか話せる先生にあまりお目にかかれたことがありません。職員にも教育目標を意識した教育活動を徹底することが求められます。 ・教育目標については、いつだれが具体的に説明をするか ・具体的な場面をどのような形で伝えていくか (ホームページの記事や学校公開日の授業、行事との関連など) ・教育目標と関連して学校の評価をいつどのようにしておこなうか 教育目標の公開と同時に、こういったことをきちんと伝えておく必要があると思います。教育目標を学校が保護者や地域の方と共有し、達成に向けて協力し合う関係をつくるには、公開すれば終わりではなく、達成に向けてのプロセスを共有することが求められます。 忙しい時期だからこそ学べる
初めて担任を持った方は、入学式・始業式に向けていろいろな準備に追われていることでしょう。職員会議や学年会などで連絡、指示された事柄をこなすだけでも目が回っていることだと思います。初任者などで担任を受け持たない方も、何かと慌ただしく過ごしていることと思います。
経験の少ない若い方に伝えたいのは、忙しい時期だからこそまわりを見るということです。隣の席に座っているベテランは何をしているのだろう、他の分掌はどんな仕事をしているのだろうとちょっとした時間の隙間にのぞいてみるのです。こまかい内容までわからなくてもいいのです。何のためにどんな仕事をする必要があるかを意識するのです。ベテランは先を読んで仕事ができます。今自分が手一杯でとてもそこまでやる余裕はなくても、すぐに必要となることです。この先何があるかが見通せているだけで、ずいぶんと違うものです。忙しい時期だからこそ、どんな仕事があるのか、必要なのかが見えてくるのです。 なかなか余裕がないかもしれませんが、時々は息抜きを兼ねて校舎内を見回るといいでしょう。教室の様子も学級によって異なっているはずです。いつでも子どもたちを迎えられるように掲示物などの準備が整えられている学級もあるはずです。一方、あえてほとんど何もしていない教室もあるかもしれません。新学期が始まってその教室がどのように変わるか見ることもよい勉強になります。自分たちでやらせるために、あえて担任が何もしていないのかもしれない。そんなことを想像しながら観察するのです。 新学期は最初の1週間が大切だとよく言われます。その貴重な時期に何をしなければいけないのかを学ぶ一番の機会なのです。書類作成や整理などの事務的な作業もたくさんあります。それと同時に子どもたちとかかわるために必要なこともたくさんあります。しかし、この学級経営に関することは経験がないとなかなかわかりませんし、具体的に教えてもらえません。5月になってどうも学級がうまくいかないと思っても、一番大切な時期はもう終わってしまっているのです。 ちょっと立ち止まってまわりの先生がどんなことをしているか観察してみてください。学級開きの時には、どんな話をするのか、またしたのか教えてもらってください。そこから、学級経営のヒントをたくさんもらえます。 また、担任を受け持たない先生は自分が所属する学年の先生が何をしているか、それこそ真剣に観察してください。自分が担任を持った時に必要なことの多くを学ぶことができます。若いころ、副担任をしている学級の担任の後を金魚の糞のようについてまわり、とにかく何をしているのか盗もうとしたことを思いだします。その先生から学んだおかげで、初めて担任を持った時、子どもたちのためにいつ何をしなければいけないのか、先を見通して学級経営をすることができました。 忙しい時期だからこそ、他から学ぶよい機会だととらえてください。この時期にしか学べない貴重なことがたくさんあることを意識してほしいと思います。 バスツアーの添乗員の話
先日バス旅行した方から、添乗員さんの話を聞きました。トラブルが多かったというその話は、学校にも通じることでした。
集合場所は駅の地下街の通路だったそうです。開店前なのでお店に迷惑にならないからのようです。しかし、通路を通る方もいます。50名近くの方が広がっていたので、通行の妨げになっていたようです。添乗員が広がらないようにちょっとお願いをすれば、このようなことにならなかったはずです。事実、隣のバスの添乗員さんはきちんと指示をしていたのでこのようなことはなかったようです。指示さえ出せば規律を守ることができる方がほとんどのはずです。リーダーしだいです。学校でも似たような光景をよく目にします。同じ学年でも学級担任の指示によって子どもたちの様子が異なります。自分の学級と隣の学級の違いに気づいて、修正していくことが大切です。 集合場所からバスまではかなり距離があったようです。人が多い駅の中を通って外の駐車場まで移動します。この添乗員さんは「私についてきてください」と言って歩き出しました。しかし、背が低いためどこにいるのか見えません。外は雨が降っているので、傘でますます見にくくなります。隣の添乗員は傘を上に上げて目印にしていたそうです。教師の中には、引率などの時には目立つ服装を心がける方も多いと思います。私も赤い帽子を持っていたことを思いだしました。 バスの入り口で座席表を見せて座席を指示します。この座席表はどちらが前かよくわかりません。運転手の位置が書かれているのでそちらが前であることはわかりますが、よく見ないと気づきません。赤字で「前」と書き込んでおくといった工夫がほしいところです。座席は何列目かで指示されているのですが、バスの座席番号は通し番号になっています。座席番号では何列目かがわからないのです。後ろの座席の方は、列を数え間違える危険性もあります。事前にバスの座席番号を調べておいて、座席表に書き込んでおくといった配慮がほしいところです。 バスに全員乗った後、新ためて自己紹介をしますが、運転手を紹介しようとして名前が出てきません。運転手にたずねるという失態を演じたそうです。これも、事前にちょっと確認しておけば済むことです。こういうことが続くとお客様の信頼を無くしてしまいます。 教師でも同じですね。4月はこまごまとしたことが多い時期です。指示することもたくさんあります。事前に準備をして、間違いが起きにくいように配慮をすることが大切になります。 バスが休息所についた時に、休憩時間は伝えるのですが、次の休息所までの時間を伝えません。簡易トイレしかないところもあるのでその情報も必要です。また、雨が降っているので、バスはお客が濡れないように入口の横に止めました。しかし、帰りもそこに止めてもらえるかはわかりません。傘を持っていくべきかどうか悩みます。帰りはどこから乗れるかという情報も必要です。 いちご狩りが組み込まれていたのですが、ハウスの中です。中では傘は必要ありません。また、傘を持っていると練乳を持っていちごを取ることができません。傘立てがないかもしれないので少々濡れますが、みなさん傘を持たずにハウスに向かったそうです。しかし、ハウスの入り口にはしっかりと傘立てがあったようです。添乗員に確認すればいいことかもしれませんが、大勢いる時にはなかなか聞きづらいこともあります。お客にとって必要な情報が何かを考えて、きちんと伝えようとする姿勢が必要です。これも教師と共通するところですね。 さて、このツアーはいちご狩りの時間が60分と長いことが売りでした。しかし、添乗員からの指示は40分で戻るようにとのことでした。おかしいなと思いつつ、まあ40分も食べ続けられないからいいかと思って指示に従ったそうです。しかし、40分で戻ってみると全員そろいません。60分ほどで戻ってくる方が何組かいたそうです。どうやら添乗員に時間のことを抗議して、60分に延長されたようなのです。しかし、抗議をした方とそのまわりにいた方だけにしか伝えなかったようです。たしかに、解散したあとで連絡しにくかったかもしれませんが、全員ハウスの中にいたはずですから伝えようはあったはずです。このような対応では、60分もいなかったと思っても不快な気分にさせられます。 似たようなことが授業でも起こります。机間指導中に子どもから質問を受けてその場で答えてしまう場面を目にします。全体に伝えるべきことであれば、いったん作業を止めて集中させてから、あらためて全員に指示すべきです。 これは力量不足の添乗員がいかに信頼を得られないかという話ですが、教師も同じです。子どもの視点に立って、伝えるべきことを伝え、わかりやすく指示することが授業の基本です。この基本ができていないと、子どもたちから信頼を得られず学級経営もすぐにままならなくなります。4月の出会いでは特に大切なことです。このことにあらためて気づかせてくれる話でした。 |
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