現職教育と指導案の検討会

昨日は中学校の現職教育で講演をおこないました。それに先立ち先生方と授業を見学しました。前回訪問から2週間ほどしか経っていませんが、それでもいくつか変化が見られました。

3年生はどの学級も相変わらずよい状態なのですが、ここにきて4月の頑張りの疲れが出たのか、学級の中に1人2人集中力が切れる生徒が目につくことがありました。単に体力的な問題なのか、精神的な問題なのかはわかりませんが、学級担任の観察が必要かもしれません。連休明けにはアンケート形式の心理検査も実施される予定ですので、これをうまく活用していただければと思います。

2年生は、3年生と変わらないほど集中している授業がいくつもありました。新学年ということで上手くリセットできたということでしょう。その反面、集中できていない授業も目立ち始めています。教師が一方的に話す時間が長かったり、作業が終わった者への指示がなかったりすると、とたんに集中力を失くすのです。また、子ども同士が上手くかかわれている授業でも、ポツンとかかわれない子どもがいることがあります。こういう子どもを上手くつなげることを意識してほしいと思いました。

1年生は、学級集団の形にまだなっていないという印象です。いくつかの異なる集団がまだ一つになっていないのです。発言者の方を向こうとする集団もあるのですが、2週間前と比べるとその数が減ってきているように感じます。よい行動を評価し、強化することができていないと感じました。一方、子どもたちがしっかりと集中している場面も部分的には見られます。これは例外なく、子どもたち全員が指示に従うまで授業者が待って、徹底している時でした。教師が望めばそのように姿を変えることができる子どもたちだと思います。

この時期ならではの場面をたくさん見ることができました。先生方が時間をかけて子どもたちへの指示を徹底させているのです。先生方それぞれの授業の進め方があります。その進め方や授業規律を子どもたちにきちんと伝えるには時間がかかります。だからこそこの時期は、多少授業の進み方が遅くなっても徹底させるのです。そういった意志を強く感じさせる先生が何人もいたことをとてもうれしく思いました。

この日は教務主任が先頭を切って提案授業をおこないました。この授業の検討会が行われなかったのが、とても残念に思われる授業でした。この授業については別の機会にお伝えしたいと思います。

現職教育ではこの1年の進め方について主任から説明がありました。研究授業については指導案作成を簡略化して、「生徒にどうなってほしいのか=ゴール」「見てほしいところ」に絞り、実際の活動に力を使ってほしいと提案されました。実質を大切にしようという姿勢は好感が持てます。今年度もたくさんの方が授業を公開します。互いに授業を見あえる学校であることはとても素晴らしいと思いました。

私からは、「学級経営・授業の基本の確認」ということで、この時期にしておくべきことを具体的に話させていただきました。ベテランやできている方にとっては言わずもがなのことばかりですが、ここでしっかりと押さえておかないと1年間苦労することになるからです。
子どもとの人間関係をつくる基本は、「笑顔」で接することです。そして、人間関係をつくり上げた上に安心・安全な教室とすることが求められます。子どもをしっかり見ること、学級の規律、授業規律をはっきりと伝えそれを徹底することをいくつかの具体的な場面を例にしてお願いしました。
説明しながら、ああこれは○○先生の授業で見ることができた場面だなと思うことがたくさんありました。この学校は、基本ができている先生がたくさんいることを改めて確認できました。こういった先生方のよさを、互いにもっと学びあえるようになれば素晴らしいと思います。

現職教育終了後、研修部の先生と話をする時間を持てました。今年度異動したばかりの主任ですが、この学校のよいところをまず自分自身が吸収しようというとても素直な姿勢を見せてくれます。こんなことを意識して授業を変えたら、このように子どもたちが反応したととてもうれしそうに報告してくれました。副主任はまだ若手ですが、子どもたちを自分が受け止めることから始めようとする姿勢の方です。よいチームワークが期待できます。
この日、教務主任の授業を見ることができなかった方がいたことや検討会を持てなかったことが残念だったので、今後若手の方に授業のレポートを書いてもらい、授業者のコメントも加えて全体に配ることを提案しました。前向きに検討してくれそうです。

このあと、来月にある学校訪問での指定授業者の指導案の検討会が行われました。社会科と数学科でしたが、それぞれ勤務時間も終わった遅い時間にもかかわらず5名ずつの先生方が参加してくださいました。これだけで、授業者には心強いことだと思います。
社会科は、今年度異動して来たばかりの先生が授業者です。1年生の地理の気候で授業をする予定ですが、内容の検討の前にまず地理は何を学ぶ教科であるかを全体で確認しました。その上で、資料の活用について、資料をもとに何が言えるかを考える演繹的なアプローチとなぜそうなったかを考える帰納的なアプローチがあることを確認しました。どんな資料がよいだろうかという話から、教科書の資料について考えることになりました。教科書はたくさんの資料の中から本当に選りすぐったものを掲載しています。なぜこの資料がこの場所にこの大きさで載っているのか、その意図を考えるだけでも立派な教材研究になります。教科書の吹き出しに書かれた疑問を考えるだけで、ねらい迫っていくことができます。教科書を読み込むことがまず教材研究の第一歩であることを確認できました。
時間をかけた割に、肝心の指導案の姿が見えてくるところまで詰めることができなかったことは申し訳なかったのですが、教材研究についてとても大切なことを学び合えたと思います。指導案をつくる方向性は見えてきたと思います。みんなで協力して、面白い指導案ができるのではないかと期待しています。

数学科の授業者は6年目の先生です。連立方程式の応用の導入の授業です。連立法的式の立式と解くことを分けて考えたいという方向性を事前に明確にしていました。自分で勉強してその方がよいと判断したのです。方向性が明確なので、足が地についた話し合いができます。この授業のねらいを、「わからないものは文字に置き換えればわかりやすい、うまくいく」と子どもたちが言葉にしてくれることとし、立式することを活動の中心にして解くことには時間を使わないことにしました。
ここで参加してくれたベテランがとても素晴らしいアドバイスをたくさんしてくれました。立式だけなら、未知数が2つでなくてもできる。問題を拡張して3元の連立方程式を立てさせてもいい。子どもたちにとってリアリティのある課題なら、子どもたちの野外学習の部屋割りはどうだろうか。参加した全員がなるほどと思うようなことばかりです。とても面白そうな授業になりそうです。
また、自然と子どもたちの現状に話がおよび、しっかり参加して理解してくれるのだが定着が今一つよくないことが課題としてでてきました。直前の復習ではなく、数時間前の復習をすると、「あれ、できたはずなのに」と子どもが口惜しがったといった報告もありました。こういったやり方もあるのだと参考になったようです。以前いた先生がやっていた「音声計算練習」も話題になりました。授業のことをみんなで話す機会を持つことのよさを感じられたように思います。
最後にベテランの方が教科書はなぜこの値を使っているのだろうかと、とてもよい質問をしてくれました。その質問もさることながら、ベテランでもこうして日々教材研究をしていることをさりげなく若い先生に伝えてくださったことをとてもうれしく思いました。

互いに授業のことを話し合う雰囲気が学校の中に広がってきているのを感じます。今年度この学校が大きく前に進むエネルギーを感じた1日でした。次回の訪問が本当に楽しみです。

私学で、今後の方向性について打ち合わせ

昨日は私立の中高等学校で授業見学と打ち合わせをおこなってきました。

今回は若手の教科指導部の先生方と一緒に子どもたちの授業中の様子を見学しました。授業規律に関しては、先生方が子どもたちにどうあってほしいかを明確にしないと成立しません。この日も、先生方がどんな子どもの姿を見たいのかが伝わってこない場面に多く出会いました。子どもの姿をもとになぜそのような姿になっているのかを一緒に考えてもらいましたが、とても素直に聞いていただけました。今までそのような視点で考えたことがなかったということでした。授業に関して他から学ぶ機会が少なかったのでしょう。逆に言えば、授業についていろいろな視点で学ぶ機会があれば大きく伸びる可能性が高いということです。

高校2年生全体に対する校長講話の時間も見学しました。集合時の指導は、学級委員に整列させるように盛んに指示していました。学級委員は命令されているように感じたのではないでしょうか。一方、一般の生徒たちは、自分たちには関係のないことと思っているようでした。リーダーを育てる意図でそのようにしているのかもしれませんが、これでは教師、学級委員、一般生徒の関係が悪くなります。学級委員は先生に叱られた、一般生徒が協力してくれない。一般生徒は、仲間であるはずの学級委員に指示された。そんなネガティブな感情を持つ可能性があります。そうではなく、学級委員に整列の指示確認をお願いする。一般生徒にも学級委員に協力するようお願いし、教師が学級委員をサポートしていると感じさせる。こういう接し方が必要です。「子どもたちになめられてはいけない」という思いが、高圧的な態度につながっているのでしょうが、しっかり受容する姿勢を見せていれば、決して子どもたちはなめたりバカにしたりしません。
その後だったせいもあるのでしょうが、校長が講話で子どもたちに発言を求めてもなかなか反応できませんでした。相手が校長なので、おかしなことを言ってはいけないというプレッシャーもあったのでしょうが、日頃から安心して間違えることができない環境なのだと思いました。校長の話を聞こうとしている生徒はたくさんいます。この子どもたちを評価してあげる場面がほしかったのですが、学年の先生からはよくないことの指摘で終わってしまいました。学年の先生から、我慢して聞くことも大切という価値観が強く感じられました。そうではなく、「他者の話から学ぶことは楽しい、何か学べるはずだ」という価値観に変えてほしいと思いました。

教科指導部の先生方とじっくりお話する時間をいただきました。先生方が一番心配していたことは、学校全体で目指す子どもたちの姿を共有できるかどうかということでした。一人ひとりの授業観が違うことは当然ですが、学校という組織として考えれば基本となるものは共有すべきです。私学であれば、建学の精神がそれに当たるはずです。歴史ある学校ですが、今でもまったく色褪せない素晴らしい建学の精神を持っています。しかし、残念ながらこの学校の先生方はそのことを意識して授業をしているように思えません。トップダウンで建学の精神に基づくことを強く訴えることも可能ですが、できればボトムアップで「こういう子どもたちの姿が見たいね」と先生方に思ってもらえる方がこの学校の現状からはよいように思いました。まずは、教科指導部の先生方を中心として、子どもたちのよい姿をつくり出す授業に挑戦して広げることから始めようとなりました。その第一弾として、新任の先生方による授業研究の場を活かすことにしました。提案授業をする先生を教科指導部の先生方を中心にバックアップし、授業検討会を活性化することで授業について先生同士が学び合う雰囲気をつくりだすことを目指します。教材研究を合同でおこなったり、事前の模擬授業を有志でおこなったりする。3+1授業検討法で授業検討をおこなうことで、授業研究を前向きにとらえる雰囲気をつくる。この方向で具体化することを教科指導部の先生方にお願いしました。
教科指導部の先生方からは、この話とは別に授業に関する質問やアドバイスをたくさん求められました。先生方の向上意欲を強く感じました。特に若い先生方は、具体的なアドバイスを求めているように思います。彼らの向上心をうまく活かしたいと思いました。

いよいよ本格的に授業改善に向けて動き出します。校長は決して焦らず、一歩一歩進めればいいと考えています。まずは、学校内に授業について話し合う雰囲気をつくることから始めたいと思います。
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