学習会で「コの字の机配置」「4人グループ」について話す

先日、学び合いに取り組んでいる市の中学校で学習会の講師をしました。若い職員が増え、「改めて、足下を見つめ直そう」ということで、「なぜコの字の机の配置なのか?」「なぜ4人グループなのか?」ということについて、4月のこの時期にお話をさせていただくことになりました。

コの字の机の配置のよさについては皆さんきちんと理解されているようでした。子どもが友だちを聞き手と意識して話す。聞き手が話し手をしっかり見て聞く。そのような子どもの姿をつくるためには、子ども同士が向き合うコの字の配置が優れているのです。その目指すところを活かすためのポイントをいくつかお話しました。
子どもの視線が子どもに向かなければコの字にする意味がありません。子どもが話しているときに、視線を他に奪うような行為は避ける必要があります。
教師が教室の前に立つと子どもどうしてもそちらを見ます。発言者が教師の方を向いて話し始めたら、友だちの方を向くように指示します。発言中に他の子どもの視線を感じたら、子どもの発言をじゃましないように目や手を使って、話し手の方を向くよう促します。教師がコの字の中に入ることで、視線を中に向けるようにするのもよいでしょう。子どもたちの姿勢を変えることなくやり取りができます。子どもと同じ目の高さまで教師が姿勢を低くすることも有効です。こうすることで、子どもの目線は教師ではなく友だちに向きやすくなります。
話している途中に教師が板書すると、子どもの視線は黒板に移ります(子どもの発言、意見をすぐに板書しない参照)。途中で問い返したりすることもできるだけ避け、途中で言葉をはさむ場合は、視線が大きく動かないようにコの字の中に入るようにします。
もう一つ大切なのが、聞き手が反応することです。友だちを見て話すということは、その反応を見るということでもあります。子どもたちが、うなずきながら聞く、よくわからなければ首をかしげるといった反応をする聞き手に育っていることが大切です。子どもの発表場面だけでなく、教師が話をする場面、授業以外の場面などいろいろな場面で、「○○さん、うなずきながら聞いていたね。△△さん、気づいていた? どんな気持ちがした?」「今うなずいてくれた人がいるね。納得した?」「首をかしげてくれたね。反応するのはとてもいいことだね。何か困ったことがあったのかな? 聞かせてくれる」と反応することを価値づけして聞く姿勢を育てる必要があります。
机をコの字の配置にすれば、子ども同士がかかわり合って話す、聞くようになるわけではありません。教師の意図的なかかわり方が必要になるのです。

4人グループについて、ペア活動との違いをお話ししました。ペアは1対1ですので逃げられない関係です。小学校の低学年では抵抗がありませんが、自我が発達してくる中学年以降はうまく成立しないこともよくあります。その点4人グループはペアよりも緩い関係です。子どもたちにとってよりかかわりやすい場となります。中学校ではペアよりも4人グループの方が使いやすいのです。
4人グループに限らず、学び合いを成立させるためのポイントは「聞く」ことです。一方的に教える、教えられる関係になってはいけません。子どもがわからなければ自分から聞き、聞かれたら一生懸命教える、こういうかかわり方が大切です。友だちに聞ける子を育てるためには、教わることへの抵抗感をなくすことが必要です。その第一歩として、個人作業の共同化があります。聞けなくても、友だちの手元を覗くだけでもよいのです。こうしてわかる経験を積むことで友だちに頼る、聞くことへの抵抗感をなくしていくのです。
4人グループのよさの1つに、活動量の確保ということがあります。子どもたちが活発に活動しているように見えても、実は発言しているのは一部の子どもだけで、多くの子どもは傍観者になっていることもよくあります。4人グループにすることで、子どもたちが積極的に参加する機会を増やすことができます。とはいえ、何でも4人グループにすればうまくいくわけではありません。課題の内容、課題の把握や出力、教師のかかわり方など、4人グループを活かすためにはたくさんの要素を考える必要があります(グループ活動を活かすために参照)。

先生方の考えを拾いながら進めたかったのですが、時間の関係もあり後半は一方的な講義になってしまいました。それでも、皆さん集中して話を聞いていただけ、とてもうれしく思いました。

学習会終了後、英語の若手教師が質問に来てくれました。GDM(「GDM英語教授法研究会」参照)を取り入れている方です。GDMのように、1時間に1つのことをいろいろな形で考え、基本的に個人で取り組むものであれば、最後まで頑張って理解することができる子どもも、教科書や問題演習のように一定時間でこなさなければいけない課題のときに、うまくまわりとかかわれなくて、結局教師が個別に対応しなければならなくなることがあるそうです。どう対応すればよいかという質問です。GDMのようにすべて英語で進む授業でも、最後まで頑張ればわかるという成功体験をしていれば頑張れるものです(子どもが積極的になるには参照)。しかし、限られた時間の中でこなす課題の時には、なかなかそうはいきません。自力では解決できない、うまく友だちとかかわれないのであればどうしても教師が助けてしまうことになります。しかし、教師に教えてもらって解決する経験を積むと、ますます教師に頼り友だちとかかわれなくなります。なんとか友だちとかかわれるようにする必要があります。「聞いてごらん」と友だちにつなぐことはきっとしているのだと思いますが、聞かれた側にわかるまでしっかり説明することを徹底することが必要かもしれません。先ほども述べましたが、最初は友だちの答を覗く、写すところから始めてもよいかもしれません。友だちとかかわることでうまくいくという成功体験を、まず積ませるのです。
とても真剣に授業に取り組んでいるからこそ出てくる質問でした。明確な答を出すことができなくて申し訳なかったのですが、私にとってはかかわれない子どもにどう対応するかを考えるよい具体例になりました。ありがとうございました。

いつものことですが、私がお話する以上に先生方から学ぶことが多い1日でした。先生方に感謝です。

入学式で思う

昨日は、中学校の入学式に来賓として参加しました。

いつものように式に参加する子どもたちのようすを観察していたのですが、校長式辞の際に面白いことに気づきました。式辞ですので、最初は型通りの言葉が並びます。続いて本題に入りました。中学生活を楽しいものにしてほしいという言葉に続き、その楽しさとは何かについての話になりました。そこで子どもたちの集中が明らかに上がるのを感じました。それまでも決して悪い態度であったというわけではありません。静かに聞いていたのですが、顔がより上がる、姿勢を直すというようにしっかり聞こうという姿勢を見せたのです。在校生だけでなく新入生も同様です。子どもたちは、話のどの部分が大切なのかちゃんと聞き分けているということです。優秀な子どもたちです。大切なことに集中するというのはとてもよいことです。その一方で、最近の子どもに感じる功利性にもつながることではないかと懸念を持ちました。過程を省いて早く結果をほしがる。コストをかけずに早くよいものを手に入れたいという消費者的な行動につながることのように感じたのです。実際のところはわかりませんが、このことを心にとめて彼らを見ていこうと思います。

入学式に続いて始業式です。私たち来賓は入学式で退場ですが、この市独自の制度である地域コーディネーターの方はそのまま始業式も参観されました。毎年のことです。機会があれば、少しでも学校の情報を得よう、子どもたちのようすを見ようという姿勢の表れなのでしょう。地域がかかわるといっても、決められた会議等に参加するだけという形式的な役職も目にします。そうではなく、本当に自分にできること、自分がなすべきことを考えて子どもたちのために、学校のために何ができるかを考えていることがよくわかります。保護者や教師だけでなく、こういう方々の支えがあってこそ、子どもたちがよりよく育っていくのです。私も微力ながら少しでもお役に立てるように努力したいとあらためて思いました。

介護に携わる方から学ぶ

昨日、介護に携わっている方とお話をする機会がありました。そこで、「いろいろな施設をまわったがその施設が一番自分にあう」といってくださる利用者が多いということを聞きました。「○○(施設名)だから、行く」。そう言ってもらえる施設だということです。学校も同じですね。「行かなければならないから行く」のではなく、「行きたいから行く」。そうありたいものです。
どうして、そう言っていただけるのか聞いてみると、雰囲気がよいということでした。笑顔がとても多い施設なのです。もう少し具体的に聞くと、職員と利用者だけでなく、利用者同士の関係もよいということです。新しく来られた方に対しても、利用者の方が積極的に声をかけてくださるというのです。なるほど、納得させられます。こういう話を聞くと、この雰囲気がどのようにしてつくられているのか気になります。さらに聞くと、利用者同士の相性なども考慮して座席も決めるなど、人間関係にとても配慮しているそうです。もう一つは、ムードメーカーになる職員の存在でした。この方は、「○○さんすごい」「すばらしい」「○○さんきれいだね」と、とにかく利用者をほめるのだそうです。介護施設の利用者は家族の世話になることが多く、家庭では肩身の狭い思いをしているのだと思います。だからこそ、ほめられることはとても力づけられることに違いありません。この方に、「どうして、ほめようと思ったのですか。教えてもらったのですか?」とたずねてみました。すると、「いろいろやってみて、利用者さんが一番笑顔になるのはほめたときだったから」という答でした。これには感動しました。「利用者さんの笑顔が見たい」という思いで接することで、「利用者から学ぶ」ことができるのです。この姿勢であれば、利用者に選ばれる、愛される施設になるのもうなずけます。

ここでの話は、学級経営や授業にもつながることです。介護の職員を教師に、利用者を子どもに置き換えるとよくわかります。教師と子どもだけでなく、子ども同士の関係をよくする。認め、ほめることで子どもたちに自己有用感を与える。目指す子どもの姿を明確にして、その姿が見られるように工夫し、子どもの姿から教師も学ぶ。異業種とはいえ、その構図はとてもよく似ていました。介護も教育も「人を前向きにする」という意味では同じなのです。

この日お話を聞いた方は、どなたも介護の仕事に対して誇りと熱い思いを持っておられました。こういう方々に介護の現場は支えられているのだと実感しました。学校現場も同じですね。素敵な方々からとても大切なことを学ぶことができました。ありがとうございました。

年度当初の動きを整理する

この時期学校ではいろいろな会議が続いていると思います。職員会議では担当者からの諸連絡やそれに伴う印刷物がたくさん配られます。入学式や始業式に続く何日は、検診など日ごろとは異なる日程で動きます。子どもへの連絡事項も多くなります。
ここで、勧めたいのが情報の整理です。年度当初の動きに関する情報の中から自分の学年・学級に関係するものだけを抜き出し、子どもに伝えるもの、保護者に伝えるものをそれぞれまとめるのです。日程と場所、移動の方法、提出する書類。新入生であれば、式での並び方も示しておくとよいでしょう。日ごとの持ち物(翌日の分も合わせて書いておく)など、連絡すべきこと、伝えたいことを別の紙に書き出すのです。それと同時に自分のためのチェックシートもつくり、期限などもあわせて書いておきます。パソコンやスマートフォンのスケジュラーなどを利用してもよいでしょう。
年度当初はあわただしく、確認もおろそかになりやすいときです。自分の手で作り直すことで、子どもや自身の動きを見通せます。情報をコンパクトにしたものを印刷して配っておけば、確認も容易で連絡漏れも防げるのです。

年度の初めは、学級づくりにとって一番大切な時です。黄金の3日間、1週間という言葉もあります。一方でイレギュラーな日程で落ち着かないときでもあります。できるだけ落ち着いて学級づくりに専念するためにも、それ以外のことに教師も子どもも振り回されないようにしたいものです。余裕を持ってスムーズに動くためにも、スタート前に少し時間をかけてこの時期の日程、連絡事項などの年度当初の動きを整理しておくことを強く勧めます。

グループ活動を活かすために

グループ活動を取り入れる授業が増えてきています。グループ活動を活かす場面やポイントについて考えてみたいと思います。

まず、どのような課題に取り組むのかが大きく影響します。
課題は何を求めているのかゴールがはっきりしている必要があります。授業者自身がゴールを明確に意識できていないまま、「○○についてグループで考えて」と指示する場面によく出合います。それまでの活動で、「考える」に対してどのようにアプローチして、何を出力すればよいかを子どもたちがわかっていればいいのですが、そうでなければ、ただ「思いついたこと」をおしゃべりするだけの活動になってしまいます。解決すべきものが何かがはっきりしていなければなりません。「○○についてどう思う。自分の考えを発表し合って」といった問いかけも同様です。「私はこう思う。あなたはどう?」と、ただ、発表するだけで考えが深まる活動にはなりません。根拠を求める課題、根拠を聞きあう必然性のある課題でなければなりません。子どもが育つまでは、「友だちの考えを聞いて、なるほどと思った意見をメモして」「自分の考えにつけ加えて」「一番納得した意見に印をつけて」「納得した理由を聞かせて」といった指示や、働きかけも必要になります。

数学などで「問題を解く」ことはゴールが明確で取り組みやすいものです。個人で問題を解くとき、グループにして「わからなかったら友だちに聞いてもいいよ」とすることで、かかわりあいながら取り組むこともできます。個人作業の共同化です。それに対して、グループで1つの問題を解くときには注意が必要です。比較的易しい問題だと、すぐに答がわかる子どもができます。額を寄せて考え合うことなく、わかった子どもがミニ教師となって教え始めます。聞く側が説明を聞いて、自分の言葉で説明できることを目指せばよいのですが、友だちの答を写して満足してしまうこともよくあります。全員が悩むような、ジャンプの課題を用意できればよいのですが、毎回それも難しいことです。答を出すことではなく、説明できることをゴールとする必要があります。グループ活動のあとは、答そのものではなく、どう考えたかといった過程や解き方の説明を発表させるようにすることが大切です。そうすることで、説明に対して、「それってどういうこと?」「よくわからない。助けて」と聞き返す場面が生まれてくるのです。

「○○って何?」と知識を問う場面で、グループ活動をおこなうこともよくあります。知識ですから考えても仕方がありません。調べることが活動になります。ゴールがはっきりしているので、取り組みやすい活動です。これも、個人で調べて見つからなければ友だちに聞くという個人作業の共同化とグループで1つのことを調べる場合があります。前者は、友だちの調べた結果を写すのではなく、どうやって見つけたか、どこでわかったのかということを大切にする必要があります。学び合うためには、単に結果を問うのではなく、そこに至る過程を共有することを意識させなければなりません。一方後者は、それぞれが調べたことを持ち寄って、それをもとにまとめるようなものである必要があります。資料や事典などで調べればその説明が載っていて、それを写せば終わるようなものではいけません。いくつかの知識をもとに、自分たちの言葉で説明するようなものである必要があります。
また、効率的に調べさせるためにグループを活用することもあります。考えるためには根拠となる知識が必要です。素早く必要とする知識を集めて全体で共有化し、今度はそれをもとに考える課題にグループで取り組むのです。

グループ活動に入る前の子どもの状態も大切な要素です。
課題を提示して、全体で子どもに問いかけても反応がない場合があります。意見が出なくて授業を進められなくて「じゃあグループで考えて」とすぐにグループ活動に移ることがあります。子どもたちがグループ活動になれていると、それらしく話し始めたりします。しかし、こういう場面では、子どもがどういう状態なのかをしっかり把握したうえでグループ活動に入るべきかどうか判断する必要があります。
子どもが反応しないのは、課題をきちんと把握できていないことが原因であることが多いようです。何をすればいいのか、何を答えればいいのかよくわからないので、反応できないのです。このような状態でグループ活動に入っても、何をしていいのかわからないのですからうまくいきません。それでも子どもたちが育っている学校では、何をすればよいのかを自分たちで考えることから活動を始めます。子どもたちに救われている授業です。子どもは立派ですが、授業としては「???」です。
また、課題が自分たちのものになっていないときも、子どもたちの反応は薄くなります。なぜこの課題に取り組むのかわからない、子どもたちとって必然性のない課題であれば、課題に対して意欲的にならないのです。この状態でグループ活動に入ると、課題自体は把握できているので活動は進みますが、何らかの答がでるとそれ以上追究しようとはしません。教師が一方的に課題を提示するのではなく、子どもとのやり取りの中から課題が生まれてくるように働きかける必要があります。
逆に、子どもが課題を自分のものとして真剣に考えているときにも、反応が現れないことがあります。すぐに答が出ないような課題に対して深く考えていれば、すぐに反応できないのです。こういう状態であれば、できるだけ早くグループ活動に入るべきです。すぐに口を開かないかもしれませんが、次第に額を寄せ合って相談し始めます。
子どものようすから課題に対する状態を把握することが大切です。見てわからなければ、確認するための方法を用意する必要があります。「わかった?」と聞いてもあまり意味はありません。もし聞くのなら「困ったことない?」と答えやすい言葉を選びます。「何を求めればいいのか」とゴールを確認する。「どうすればうまくいきそう」と見通しを全体で共有するといったことが必要です。

これとは逆に、グループ活動に入る前に子どものテンションが上がっていることがあります。子どもが課題に対して意欲的になっているのですから、グループ活動に早く移ればよいように思いますが、往々にして危険な状態であることがよくあります。子どもたちのテンションが上がるのは、根拠を求められない無責任な状態であることが多いからです。英語の授業で寸劇をグループでおこなう、つくるといった活動などでよく見られます。課題の提示で教師が見本を面白く見せます。活動が見えやすいので子どもたちは興味を持ってくれます。見本と同じ寸劇をやらせるのであれば、ただやればいいだけです。そこに、考えたり工夫したりする余地はありません。寸劇をつくる場合はどうでしょうか。この場合はその内容を考えるのですから、学び合いが成立するように思います。しかし、寸劇の内容を決める段階では、「面白そう」「こんなのはどう」と根拠なく思いつきで意見を言うことができます。内容を決めて英語に訳する段階では落ち着きますが、それまではテンションが上がるだけの、教科としてはあまり意味のない活動になっているのです。
先ほどの課題の話とも重なりますが、ただ活動するのではなく、発音やイントネーションの目標を設定することや、寸劇の流れはこちらで決めておいて英語に訳するところから始め、教科の内容と直接関係ない活動は省くといった工夫が必要になります。
テンションが高いことは、意欲的でよいことではありません。根拠を必要としないグループ活動は子どもを無責任な状態にしてテンションを上げるだけです。根拠がなければ足が地についた議論をすることもできません。そこでは学び合いは起こらないことを強く意識しておく必要があります。

全体での追究場面で、意見が分かれることがあります。子どもから出た意見が焦点化され、新たな課題が生まれてくる場面です。こういうときの子どもたちのようすは様々です。議論が白熱してきて活発に意見が飛び交うこともあります。自分の考えは持っていたのだが、話を聞いているうちに「わからなくなっちゃった」と混乱してしまう子どもも出てきます。子どもたちが考え込んで意見が出なくなることもあります。意見が飛び交っていればいいように思うかもしれませんが、議論についていけない子どももできます。次第に一部の子どもだけで議論が進んでしまいがちです。混乱しているということは、考えているということです。しかし、整理できていないわけですから挙手して発言することはできません。こういう場面は全体での話し合いをいったん止めてグループに戻すことが有効です。自分たちから出てきた考えや意見から課題が生まれているのですから必然性もあります。グループにすることで気軽に考えを聞きあえ、考えを深めていくことができます。
また、グループや個人の活動の後の発表で、考えてもいない視点や事柄に基づいた意見が出たときもグループ活動に移るとよい場面です。今までそのような視点で考えていなかったのですから、考える時間が必要です。その視点や事柄をもとにドンドン進まれても、ついていけません。「同じところに線を引いたグループはいる? いないね。すごいね。もう一度グループになってこの図で考えてみて」とその視点をもとに考える場をつくるのです。

発表の仕方もグループ活動のあり方に影響します。答をグループで一つにまとめる形をとると、どうしても力の強い子の意見が通ってしまいます。納得できない子どもに無理やり従わせることは意味がありません。意見の対立があってもそれが学級全体に広がることもありません。また、発表者を事前に決めると他の子どもが傍観者になってしまうこともよくあります。結論は極力各個人に任せるようにしてほしいと思います。グループの考えを聞くのであれば、あらかじめ発表者を決めるのではなく、その場で指名するようにするとよいでしょう(グループ活動の後の発表参照)。小型のホワイトボードなどを使って発表させるのであれば、ペンを何本も用意することで、みんなで書き込むようにすると共同の作業となります。発表もみんなでつくるような工夫が必要です。

グループ活動は、子どもたちが中心となっておこなうので、教師のコントロールはおよばないように思うかもしれません。しかし、課題の設定や発問の「てにをは」一つでも子どものたちの動きは変わっていきます。子どもたちの学び合いが生まれるようにするためには、細かな指示や直接教えること以外に、本当に多くの仕掛けや働きかけが必要なのです。ここに書いたことはグループ活動を活かすためのほんの一部分です。この他にも大切なことはたくさんあります。グループ活動を活かすために必要なことは何かを常に意識し、工夫し続けてほしいと思います。

子どもの発言、意見をすぐに板書しない

子どもの考えや意見、答などを発表させたあと、すぐにその内容をまとめて板書をする場面を目にします。中には、発言の途中で板書を始める方もいます。長い発言なので忘れてしまわないようにということなのでしょう。しかし、教師が板書することで、子どもは友だちの考えを聞いて理解しようとするのをやめ、板書されたことで理解しようとするようになります。教師がまとめてしまえば、不完全な発言を子どもの言葉で修正するという活動もなくなってしまいます。友だちの方を見て話を聞いていたのに、教師が板書を始めると黒板の方を向いて目で追う、ノートに写し出すといったこともよくあります。また、板書したりしなかったりすると、子どもは板書される考えがよいと判断します。ますます板書を写そうとするようになります。どのようにするとよいのでしょうか。

まず原則として、子どもが発言している途中では板書をしません。もし、発言が長いようであれば言い終わってから、「なるほど、しっかり話してくれたね。どう、みんな○○さんの考えわかった」と確認します。何人かが理解できているようであればその子どもに、ほとんどなければ本人に、もう一度説明させます。まずは子どもが友だちの発言を理解すること、理解してもらおうとすることを大切にするのです。その上で、もう一度説明させることで、じっくりと理解する機会をつくるのです。今度は、一度聞いた後ですから、途中で止めながら、「ここまで、どう? 納得した」と確認してもよいのです。
どうしても板書したいことがあれば(「何を板書するか」参照)、「ちょっと待って」と発言を止めておこないます。時間をかけずに、メモでよいのでポイントを絞り、できるだけ子どもの言葉をそのまま書くようにします。時間をかけると子どもの聞く意欲も、発言意欲も低下します。また、子どもの言葉を修正したり、まとめたりすると、子どもは自分の発言がまずかったのかと考えたり、教師の言葉を使って言い直そうとしたりして、子どもが混乱するからです。
いずれにしても、板書を見る、写すといった作業と友だちの発言を聞く場面ははっきりと分けることが大切です。

発言が終わったあとすぐには板書せずに、まずその考えを他の子どもにつなぐこと意識します。先ほども述べたように、教師が板書をすると子どもの思考は途切れます。「なるほど、今の○○さんの考えどう。なるほどと思った?」と学級全体に広げ、つないでいくのです。子ども同士でその意見をもとに発言を続けることで、板書に頼らず自分たちで理解し、納得することを目指すのです。こうなれば、あえてまとめを板書する必要はありません。もし、まとめが必要だと思えば、ノートに自分でまとめさせればよいのです。子どもが育っていないので、不安だというのであれば、まとめを子どもに発言させる方法もあります。何人かに発表させて確認するのです。「みんなの意見でいいと思ったところはどこ」と発言のよかったところやポントンに絞って確認するのもよいでしょう。板書をするのなら、できるだけ子どもの言葉のまま、もし修正するのなら「今言ってくれたことは、△△ということでいいかな」と子どもに確認をしながら書くようにします。

子どもの発言をすぐに板書することは、子どもの考えや発言を教師の言葉に置き換えることにつながります。自分たちで理解し考えを深めることを大切にするならば、子どもの発言や意見をすぐに板書しないとう判断もあるのです。

実物投影機でノートを映す(その2)

実物投影機でノートを映すときは、作業が終わったあとが多いと思いますが(「実物投影機でノートを映す(その1)」参照)、途中で使う方法もあります。子どもたちの多くが見通しを持てていないときや、作業の途中で手が止まっているときにヒントとなりそうなノートを見せるのです。このとき、ノートの内容の説明をする必要はありません。作業をやめさせてノートを見せるだけでいいのです。見せるノートはまだ途中でもかまいません。また、全体を見せる必要もありません。「ちょっと作業をやめて。○○さんのノートを映すよ」とポイントなる部分だけをズームアップして見せればいいのです。何人かのノートを見せたあと、「自分のやり方でもいいし、みんなのノートを参考にしてもいいからね」と作業を続けさせます。余計な説明を加えないことで、自分の力で情報を読み取ろうとするようになります。もちろん「よくわからなければ、友だちに聞いてもいいよ」とすることで、かかわりあうきっかけとすることもできます。

子どもたちが自分で読み取る力がまだ育っていないならば、「こんな図を描いているよ。このあと、○○さんはどうするのかな?」「最初に、こんな式を書いているね。これは何を計算しているのかな?」「これは、どの資料を見たのかな?」と、読み取る視点だけを示してもよいかもしれません。
本人に説明させるのも悪くはないのですが、どうしても時間がかかります。映されたノートを見て見通しを持てた子どもは早く作業に戻りたいと思います。ここは、テンポよく進めたいところです。

「わからなければ、友だちに聞いてもいい」といっても、なかなか聞けない子どももいます。まずは、友だちのノートを覗き込むことができるだけでもOKです。映されたノートを見ることで、友だちのノートを見るよさを知ればそのきっかけとなります。説明せずにただ見せることには、こういうねらいもあるのです。

意図的に使うことで、実物投影機でただノートを映すことも、とても効果的な手法となります。ICT機器は、こういう手間がかからず、効果的な場面で利用することを心がけたいものです。

新年度になりました

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