子どもの学力を上げるには
子どもの学力を上げるにはどうしたらよいのかと質問される機会がありました。どの立場で考えるかによっても答は違うと思いますが、このことについて少し考えてみたいと思います。
「子どもが自分で学びたい、力をつけたいと思って勉強する」ことが基本になることは間違いないと思います。問題はどうすればそうなるかということです。 学びたいと思うためには、学ぶことが楽しいと思うことが大切です。興味・関心を持たせるような題材を準備するなどの工夫が求められます。 力をつけたいと思うためには、力をつけることが自分にとってどのようなメリットがあるかが明確になることが大切です。しかし、このことは一つ間違えると学習の本質を誤ってしまうことにもなりかねません。学年が進むにつれて、いい学校に入りたい、将来就職に有利になるといった発想も目にするようになります。このような感覚を決して否定はしませんが、このことは、効率的に結果を求める姿勢につながる恐れがあります。試験に出るから覚える、出ないから覚えない、途中の課程はいいから早く答が知りたいといった誤った効率主義に陥ってしまえば、本当の力はつきません。また、効率を求めるようになると、結果がでないとすぐにやる気を失います。 では、どんなメリットが明確になればいいのでしょうか。自分が進歩した、進化したと感じること、「自己有用感」だと私は考えます。そのためには、子ども自身が進歩したと実感できるような評価の仕組みが必要になります。努力の結果が目に見えやすいように、できるだけ細かく目標を設定し、スモールステップで評価することが有効です。評価のサイクルを小刻みにすることで、進歩を早く実感できるようにもなります。 一方、子どもが学びたい、力をつけたいと思っても、どうすれば力がつくのかその方法がわからなければ何ともなりません。どのように勉強すればよいのか、何を頑張ればよいのか具体的にすることが大切です。単にこの問題をやりなさいという指示ではなく、いくつかの選択肢を与えるなど、自分で何をするか考えさせるような工夫も必要になります。このとき、何ができるようになる、何を目標にするかが明確になっていると、自分のやったことと成果の関係をきちんと評価できるので、学習意欲を高めることができます。先ほど述べたようにスモールステップで評価すれば、何ができて何ができていないのかを細かくチェックできるので、努力するべきことを明確にすることができます。 今まで述べたことは、子どもの学習意欲、目標・評価、学習方法の問題といってもよいと思います。意欲があるから結果が出ることもあれば、結果が出たから、興味・関心をもち意欲につながることもあります。単独の問題ではなく、互いに影響しあう問題です。どこかに偏るのではなく、バランスよくそれぞれを意識した取り組みをすることで子どもの学力は上がっていくと思います。 若手が育つということ
先週末、昨年度アドバイスをさせていただいた小学校の校長と若手6人の先生と食事をする機会をいただきました。初めて会ったときは、自信の無さや迷いがいろいろな面で感じられましたが、1年経ってそういったものがずいぶん影を潜め、かわりに言葉や表情から自信が感じられるようになりました。この1年間をやりきった充実感と自分が成長したという手ごたえがその自信の裏付けになっているようです。新年度もこのままやればうまくやっていけるというのではなく、失敗があっても前向きに取り組むことできっとなんとかできるという自信なのでしょう。そこには、子どもからも同僚からも学ぼうとする謙虚さが感じられます。まさに伸び盛りの若者らしい姿です。
会話の端々から、彼らがこの1年を振り返り、新年度のスタートをどのようにしようかいろいろと考えていることが伝わります。互いに気軽にそのことを話し合っていました。いろいろな学校で若手を見ていますが、意外と孤独で同僚に相談することもできなかったりします。この学校では、一緒に教材研究をしたり、アドバイスもみんなで聞き合うようにしたりしましたが、そのことが、彼らが気軽に相談できる雰囲気作りに役立ったのかもしれません。 彼らがこの1年間で大きな成長をした背景には校長の存在があります。今年度は学校の研修を若手中心のものとすることで、若手が互いに学び合い成長することをまず目標としました。そして、その結果ベテランにもよい影響がでることをねらいました。若手を同じフォーラムに参加させることで話をするきっかけとしたり、今回のような機会を設けたりして、互いの人間関係をつくることも意識されていました。彼らが学校の変革への基点となるようにこの1年間育てようとしたのです。 新年度も新人が何名か配属されるようですが、何かあったら彼らに相談するようにと校長は話をされたようです。新人の悩みを自分の経験をもとにきっとうまく受け止めてくれることと思います。 校長の期待に応えてみな大きな成長を遂げてくれました。人事異動で校長は新年度から現場を離れることになりましたが、彼らがきっと学校をよい方向へと進める原動力になってくれると信じておられました。まだまだやり残したこと、やりたかったことがあるとは思いますが、思いを託すに足る若手を育てたことには満足されているようでした。この校長の姿から管理職のあり方を学ばせていただきました。 1年間、彼らの成長に立ち会えたことと彼らを支えた校長の姿を見せていただけたことは私にとっても大きな学びにつながりました。ありがとうございました。 新年度になりました
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