成長に立ち会えることの喜び
昨日、中学校の入学式に来賓として参加しました。
制服もまだ着なれない新入生のほほえましい姿と、先月卒業した生徒たちの入学時の姿がダブりました。この生徒たちも、3年の間いろいろな経験をして、大きく成長していくのでしょう。 体育館の後ろで新入生を見守っている新2、3年生も、頭が動く生徒すらいないほどしっかりと落ち着いた様子でした。彼らも立派に成長しています。 そして、もう一つうれしかったのが若い先生の成長です。縁あって、他校での講師時代からお付き合いのある先生です。初めて受け持った学年を先月無事送り出して2周り目の学年です。2列から4列への隊形の変更を指でそっと指示していました。目と指の指示だけで、子どもが戸惑うことなく行動しています。もちろん小学校での指導の成果もあると思います。しかし、担任としての関係もまだできていない状態で、声を出さずに指示できることは立派なことです。この担任であれば安心して新生活を送れると子どもたちも感じていることでしょう。 このような何気ない場面に、成長の証が見て取れます。若い先生の成長に立ち会えていることの喜びを感じました。 規律を守れなかった子どもの指導
社会生活において必要なことを学ぶことは学校の大切な目的の一つです。集団生活において規律を守ることもその一つです。しかし、子どものことです。時として規律を破ったり乱してしまうこともあります。叱りさえすれば行動があらたまるわけでもありません。叱り方によっては逆効果になったり、対処を間違えると集団の中で孤立してしまうこともあります。注意をして終わりではなく、上手に子どもたちの規範意識を育てていくことが大切です。
A君が授業に遅刻してきた。 「A君、どうしたの」 「ボールを片づけていた」 「ボールを片づけていたんだ。えらいね。それで・・・」 「遅くなった」 「遅くなったんだ。遅くなったことをどう思う」 「いけない」 「遅れると何がいけないの」 「授業が始まるのが遅くなる」 「そうだよね。始まるのが遅くなると誰が困る」 「みんなが困る」 「そうだよね。じゃあ、どうすればいい」 「あやまる」 「みんなの方を向いて、あやまろう」 「みんなも、これでいいかな」 子どもたちが行動を反省して改めるには、自分がやったことがどういうことなのか、なぜいけないのかを自覚させることが必要です。そのためには、教師が一方的に注意をして無理やり言わせるのではなく、子ども自身が、何がいけなかったのか、どうするべきだったかを言うことが大切です。集団の規律を乱したのですから、教師に対して謝るのではなく、みんなに謝るように指導します。 その上で遅れた本人だけでなく、学級全体の問題としてとらえることができるのが理想です。 「教室に戻るとき、A君がボールを片づけているのを見た人いる」 「何人かいるね。どう思った、Bさん」 「片づけしている」 「なるほど、それだけ」 「遅れそう」 「なるほど、遅れそうだと思ったんだ。同じように思った人」 「他にもいるね」 「A君は遅刻しちゃったけど、どうすればよかったのかな。みんなちょっと考えて」 ・・・ 「そうだね。教室に戻るときはみんなで声をかけ合うようにしようね」 叱られることは子どもたちにとって楽しい時間ではありません。これに時間をとられるのは、授業時間も圧迫しますし、あまりよいことではありません。毎回このような対応をとることは難しいと思いますが、ときにはきちんと時間をとって互いに規律を守ることについて学級全体で考えさせたいものです。 素早い行動を促す
年度初めは教室からの移動、集合など、集団での行動が多いときです。この時期に素早く行動できるようにしつけることはとても大切なことです。一度いい加減になったものをきちんとするのはとても難しいことだからです。
「早く」「急いで」行動して、と訴えてもなかなかうまくいきません。子どもの基準では素早く行動しているつもりなのに、教師から「遅い」「もっと早く」と注意されると不満に思ったりもします。そこで、子どもたちにわかりやすい目標を提示することがポイントになります。 「30秒で」「3分で」行動しようと指示すれば、どの程度素早く行動すればいいか子どもによくわかります。また、きちんと行動できたとき教師もしっかりとほめることができます。できなかったときでも、あとどのくらいだったかをきちんと示すことができるので、次はどのくらい素早くすればいいかよくわかります。 もう一つのポイントは最初のうちは行動をいくつかのステップに分けることです。 移動の前に廊下に整列する場合です。 「静かに素早く廊下に整列しよう」という指示には、たくさんの要素が入っています。そこで、 「今から廊下に整列するよ。静かに素早く行動しよう」 「まず口を閉じよう。3、2、1、はい」 「30秒で教室から出るよ」 「全員出たね。もう整列始めているね。えらいね。あと10秒で整列しよう」 一つひとつのステップが明確なので、子どもも行動しやすくなります。うまくいかなかったときも、どこがいけなかったか互いによくわかります。次第にステップを減らしていけば「廊下に整列しよう」という指示だけで素早く行動できるようになります。 年度初めは、学級は白紙の状態に戻ります。子どもの気持ちもリフレッシュされています。学級集団づくりの一番のチャンスです。素早い行動を促すことで、規律ある学級づくりのスタートを切ってほしいと思います。 子どもが教師に求めること
子どもたちが教師に求めることは何でしょうか。「どんな先生がいい」と聞くと、「やさしい」「話を聞いてくれる」「一緒に遊んでくれる」「わかるまで教えてくれる」・・・。いろいろな答えが返ってきます。しかし、このような子どもたちの言葉を頼りに学級経営をしていくと思わぬ失敗をしてしまいます。一番大切なことは子どもの口から語られることがないからです。
それは何かというと「安心して暮らせる環境」を保障してくれることなのです。学校は子どもたちが生活する唯一の外部、社会です。普段私たち大人も意識しませんが、「安心して暮らせる」ということは社会生活を送る上での大前提なのです。 そのために、社会には規律があり、それを守る組織があります。学級では、その役割を教師が担う必要があります。規律を示し、きちんと守らせることがまず求められるのです。 子どもたちが求める教師像を目指すこと間違いではありません。しかし、学級の規律を維持できなくて、子どもたちが落ち着いて学校生活を送れないようなら、そのような教師を子どもは求めません。たとえ厳しくて子どもとの距離をおいているような教師でも、「安心して暮らせる環境」を保証している教師の方を選びます。 子どもが一番望んでいることは、「安心して暮らせる環境」を保証してくれる教師であることを常に意識してほしいと思います。 目指す学級の姿を具体的にする
新しい学級を始めるときに、担任として「こんな学級にしたい」と話す教師が多いと思います。この1年、どのような学級を目指すかを子どもと共有することはとても大切なことです。このとき、「楽しい学級」「協力し合う学級」「規律ある学級」・・・というような抽象的なもので終わってはいけません。子どもが受けるイメージと教師のイメージがずれてしまうのです。
たとえば、「楽しい学級」から、子どもたちは、遊びの時間が多いと勝手に解釈してしまうかもしれません。「協力し合う学級」といっても、担当した者同士が協力し合えばいいと考えて、自分の分担区域の掃除を終えて戻ったときに教室掃除が終わってなくても、手伝わなくて当然といった態度をとるかもしれません。 このようなことを避けるために、目指す姿をできるだけ具体的にすることが大切です。このことは意外に難しいことです。 子どもたちがどんな場面でどのように感じれば「楽しい学級」といえるのでしょうか。どのような行動をとれば「協力し合う学級」といえるのでしょうか。担任として教室に立つ前にこのことをしっかりと考えておく必要があります。 また、具体的にすることできちんと評価することができます。「規律ある学級」の具体例を「始業のチャイムが始まる前に席に着く」と示していれば、子どもたちは意識して行動します。自分たちできちんできたかどうか判断できるので、達成感を味わうことができますし、教師がほめることでより自己有用感を高めることができます。 子どもたちと一緒に目指す姿を具体的にして、子どもたちと共有していくのも学級づくりには役立つことと思います。 目指す学級の姿を具体的することで、学級経営の方向性が明確になり、チェックや修正もやりやすくなります。できるだけたくさんの場面を考えてほしいと思います。 4月はリセットする
4月に新しい学級を担任するとき、どのようなことを意識するとよいのでしょうか。
私は過去を引きずらないことを大切にしています。リセットすると言い換えてもよいかもしれません。 担任する学級が決まると名簿を見ながら、どんな子がいるかまず見ると思います。以前にかかわりのあった子どもたちであれば、自分なりの情報を持っています。また、初めて出会う子どもたちでも、以前の担任や学校から多かれ少なかれ何らかの情報をもらっています。たしかに、子どもたち関する情報はしっかり持っておくことは大切なことです。しかし、この学級の子は、この子はこんな風だという先入観を持ちすぎるのも危険なことです。 新年度は、今年はこうしよう、今年こそ変わろうと思う時です。新たな気持ちで第一歩を踏み出そうとします。担任として子どもたちのそんな様子をまずしっかりと受け止めてほしいのです。一度先入観を捨てて、子どもたちの様子をしっかり見てほしいのです。 逆に子どもたちもこの先生はどんな先生なのだろうと様子をうかがいます。たとえよく知っている先生であっても、今年はどうだろうと観察します。昨年度学級経営がうまくいってなかったとしても、ここで違う姿を見せれば子どもたちの評価も様子も変わります。 また、自分なりの学級経営のスタイルができている先生もそれは一旦わきに置いておいて、子どもたちの様子を白紙の状態で見ることは大切です。学級集団をよく観察した上で、どのようなスタイルで学級経営をするのか考えてほしいと思います。 ベテランの学級経営がうまくいかない場面にたびたび遭遇しています。自分のやり方が通用しないと自信をなくしている方にも出会います。時代が変われば子どもは変わります。成長とともに大きな変化を見せます。目の前にいる子どもたちに応じた学級経営をつねに模索していかなければなりません。過去の成功体験を一旦捨てることも大切なのです。 担任として子どもたちと初めて出会うまでにいろいろな準備をすることと思います。しっかり準備はした上で、子どもたちを白紙の状態で受け止めていただけたらと思います。 新年度になりました
いつもブログをご覧いただきありがとうございます。
今年度も日々の仕事から学んだことを発信し続けようと思います。 今年度より、新しく「学級経営あれこれ」というカテゴリーを設けました。若い先生が増え、学級経営について相談されることが増えてきました。私なりの視点で、学級経営に関することを思いつくまま書いてみようと思います。 なお、2010年度(平成22年度)に掲載された記事に関しましてはホームページ左下の◇過去の記事「2010年度」メニューをクリックすると閲覧が可能となっています。 また、ホームページ右上のカレンダーを操作することで、過去の記事をご覧いただくこともできますので、ぜひご利用ください。 |
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