学校マネジメントを考える

学校マネジメントという言葉がよく聞かれるようになりました。マネジメントをどうとらえるかは、人によって差があると感じます。学校にはマネジメントはなじまないという方もいれば、これからは積極的にマネジメントを取り入れなければならないという方もたくさんいます。では、今までは学校マネジメントという考えはなかったのでしょうか。

マネジメントとは、目的を達成するために人・物・金・情報をいかに活用するかということですが、これはどの組織でも当然考えなければいけないことです。うまく機能しているかどうかは別にして、学校でもこのことは考えてきたはずです。だれをどの学級の担任にするか、行事の担当をだれにするかなどは、マネジメントという言葉で意識されていなくても、立派なマネジメントの一部なのです。

では、なぜ今までマネジメントが大切なこととして意識されてこなかったのでしょうか。その理由は、大きく2つあるように思います。

一つは学校が達成すべき目的(たとえば子どもたちの心身の健やかな成長?)に対してその達成のための目標がなかなか具体的にできないことです。教育の特性として、目標が抽象的になりやすいのです。結果、目標が達成できたかどうかのチェックも曖昧になってしまいます。そのため、そもそも具体的な目標をきちんと設定しなかったり、設定しても行動計画が立てられない。チェックできないので行動計画が改善されない、責任が明確にならないといった状態になってしまいます。どこに向かっているのか、どこにいるのかわからないようでは、マネジメントどころではありません。

もう一つは、学校では人・物・金・情報に関する自由度が低いことです。人に関しては、一般の教員は学級担任、教科担任、部活動顧問を振り分けるとほとんど余裕がありません。定員を勝手に増やすこともできませんから、どこかに人を厚くしてパワーアップをしたくてもなかなか難しく、教員の負担を増やさずに何かをやることはとても困難なのです。
物とお金に関しては学校が独自に予算を請求したり、自由に裁量して使える範囲は全体の予算の中で非常に限られています。情報に関しても、組織的に情報を集めたり、共有化するということがされにくい体制があります。
マネジメントをおこなうにも道具や材料がとても少ないのです。打てる手が限られているため、マネジメントをしようという意識が薄いのです。

では、なぜ今学校マネジメントという言葉が言われるようになってきたのでしょうか。それは学校を取り巻く状況が少しずつですが変わってきているからです。

一つは学校と地域の連携が進み始めたことです。その結果、地域の方が学校経営に積極的に協力するようになってきました。当然、第三者にもわかりやすい、客観的な目標の設定と評価が必要になってきます。学校評価の導入です。目標とその達成を明確にすることが求められるようになりました。これはマネジメントそのものです。また、人の問題に関しても、地域の方がボランティアとして学校の活動に協力してくれるようになってきました。学校として活用できるリソースが増えてきています。地域の方と一緒になって新しい教育活動に取り組んでいる学校が増えています。

もう一つはICTの活用です。学校評価にしてもそうですが、新しいことを始めればそのための労力はどうしても必要です。しかしICTをうまく活用することで負担を減らすことができます。最近多くの学校で導入されている校務支援システムは、教師の事務作業の効率化をはかることで、多少なりとも余裕を生み出してくれます。うまく活用することで教師間の情報の収集や共有化も促進できます。また、ホームページの活用は学校と地域の情報共有に大きな効果が期待できます。

大きく状況が変わったとはいえないかもしれません。しかし、こういった変化をうまくとらえ、マネジメントを工夫している学校は大きな成果をあげています。また、学校独自で使える予算をつけている市町村も増えてきました。環境は間違いなくよい方向に向かってきています。従来の思い込みを捨てて、あらためてマネジメントを考え直すことで、学校がよりよい方向に向かっていくことと思います。

教科書を離れた教材研究

多くの学校が今日から夏休みになったことと思います。部活動の大会で忙しい方もいらっしゃると思いますが、普段よりは心の余裕があるのではないかと思います。
日ごろの教材研究は、明日の授業をどうするかに追われて、腰を据えておこなうことがなかなかできません。夏休みは普段とは違った視点で教材研究をするチャンスなのです。

たとえば、教科書を離れた教材研究です。教科書以外の素材を探すといってもいいでしょう。

国語であれば、教科書以外に扱うとすればどんな物語がいいだろうと探します。図書館でいろいろな本を探して日を過ごすのもいいと思います。
算数・数学であれば、文章題や応用問題をオリジナルでつくります。
理科や社会であれば、教科書や資料集以外の資料を探します。旅行の好きな方は旅先で資料になりそうなものを探すのもいいでしょう。
英語であれば、授業で使えそうな会話やシチュエーションを考え英語にします。
・・・

自分で探した、つくった素材を授業で使ってみることで、子どもが関心を持つ要素、問題に必要な条件などいろいろなことがわかります。授業時間の関係などの理由で実際には授業で使うことはできないかもしれませんが、このような教材研究は教科書や資料を理解する力をつけます。自分で考えることで、教科書がなぜこの物語を載せたのか、なぜこのような数値で問題をつくったのか、なぜたくさんある中からこの資料を使うのか、・・・。その理由がわかるようになります。教材のポイントが明確になるのです。

ノルマがあるわけではありません。いつまでにやらなければいけないというわけでもありません。気持ちに余裕のあるときだからこそ、ちょっと違った視点で教材研究をしてみてはいかがでしょうか。きっと新たな気づきがたくさんあると思います。

先生の意欲と子どもの気持ちのズレ

昨日は私立の中高一貫校を訪問し、高等学校の授業をいくつか参観させていただきました。

先生からは教えよう、わからせたいという意欲が、子どもたちからはわかりたい、できるようになりたいという気持ちがそれぞれ感じられるのですが、うまくかみ合っていないと感じる部分もありました。
先生の意欲は、説明や板書へのエネルギーへと転換されていきます。いきおい先生のしゃべる量はどんどん増えていきます。一方子どもたちは、先生から発する情報が多くなるので理解して整理する余裕がありません。結局、理解することより発信された情報をノートに書き留めることに専念してしまいます。先生は、子どもたちが手を動かすことで授業に参加していると判断して、問題と感じていません。しかし、子どもたちは黙々と作業をしているだけで、わかりたいという気持ちはしだいに下がっていきます。

教師はこれを教えたい、わからせたいという意欲をしゃべることで満たしてしまう傾向があります。そうではなく、どういう活動をすればわかったと感じるのか、どうすればそのことを知ることができるのか、子どもの側に寄り添って授業をつくる必要があります。教師の望む自分の姿は感じられたのですが、どういう子どもの姿を見たいのかをあまり感じることができませんでした。
校長先生はこのことを十分理解されていました。この状態を改善するには、いろいろなアプローチがあると思います。この学校がどのようなアプローチを選ぶのか大変興味のあるところです。わたしもよい形でお手伝いができればと思っています。

研究発表が終わっても進化する

中学校の授業アドバイスをおこなってきました。

最初に見た授業は講師の先生の美術の授業でした。体調を崩されて休職されている方の代わりの先生です。この暑い中、子どもたちはどんな様子だろうかと心配だったのですが、どの子も驚くほど集中していました。講師の方の力もありますが、子どもたちが育っていることが何よりの理由でしょう。休職された先生が担任をしていた学級ですが、学級経営もしっかりできていたことがうかがえます。
この後見たどの学級のどの授業でも、子どもたちはしっかりと集中していました。授業の内容については気になる点もあるのですが、「どんな先生でも崩れない子ども」に育っていました。

研究発表が終わった翌年で緊張感が薄れる時期です。また、中心だった先生の何人かが異動になったこともあり、昨年のよい状態を維持できるか心配していましたが、この時期にこれだけよい状態であるということは、杞憂だったようです。
校長先生に、「昨年のよい状況を維持していますね」とお話ししたところ、「昨年より進化していると思っています」と笑顔でお答えいただきました。校長先生は日ごろから子どもたちの様子や先生方の頑張りを見ているからこそ、このように答えられるのでしょう。今後この学校がどのように進化していくか、ますます楽しみになってきました。

若手への授業アドバイス

昨日は、小学校で若手の先生への授業アドバイスをおこなってきました。
互いの授業を見合い、最後に全員で授業についていろいろ話をしました。

ほぼ全員に共通した悩みは、子どもが積極的に活動する、参加するにはどうしたらよいかでした。作業や知識を聞く場面ではそうでもないのですが、資料から気づいたことを発表する、算数の考え方を発表するような場面では、なかなか友だちの発表を聞こうとしないのです。

この状態をつくり出しているのにはいくつかの要素があります。

1つは、参加しなくても子どもたちが困らないことです。教師の説明やまとめを聞くことで理解できるのであれば、真剣に聞く必要はありません。下手に手を挙げて指名されて間違えるよりは、じっとしている方が安全なのです。いつも教師がまとめたり説明するのではなく、子どもたちの言葉で授業を進めることが大切です。

もう1つは、課題に手がつかないために、参加意欲をなくしていることです。自分の考えを持てているときは、参加できるので積極的になります。課題を解決するための足場をしっかりつくってから取り組ませるようにする必要があります。
また、友だちの考えを理解できたかを聞いてあげたりすることで、自分の考えを持てなくても授業に参加できるようにすることも効果的です。

このような話を皆さんとしました。

どの先生も自分の授業の課題を意識していて、少しずつですがクリアしてきています。
これから授業をするたびに、今まで以上に多くの課題が見つかっていくことと思います。しかし、それこそが成長の証です。最後にこのことをお話しました。彼らの今後の成長がとても楽しみです。

一人ひとりのほめる観点を意識する

子どもを一人ひとり見ることは大切だとよく言われます。また、子どもはほめて伸ばすということもよく言われます。ところが、通知表の所見を書くとなると、なかなか言葉が浮かんでこなかったり、悪いところしか思い出せなかったりすることがあります。意識的に一人ひとりのよいところを見つけようとする姿勢を持たないと、全員をきちんと見て、ほめることはできないのです。

教師は学習や生活態度に問題があると、それを直そうと注意をします。よい行動があるとそれをほめるようにします。ところがこの絶対的な基準をそのまま学級に当てはめると、ある子どもは教師から注意をされてばかり、ほめられるのは特定の子どもだけで、大多数の子どもは、ほめられることも注意されることもほとんどない。このようなことになってしまいます。こういう学級経営をしていると、所見で書くことが思い浮かばなかったり、悪いことしか思い出せなかったりするのです。

大切なのは絶対的な基準ではなく、個人内での相対評価を意識することです。一人ひとりを思い浮かべ、この子がこんな行動をとったらほめてあげようという、ほめる観点を個人別に作るのです。
大したことでなくてもよいのです。宿題をよく忘れる子は、「宿題をやってくる」、いつも授業に遅れる子は、「授業に遅れない」。おとなしくて積極的に発言しない子は、「授業中に発言する」。学習のよくできる子は、「友だちに聞かれたらきちんと教える」。このようなものでよいのです。
宿題をやってくるのは当たり前のことです。だからそんなことはほめてはいけないと考える方もいるかもしれません。大切なことは、子ども一人ひとりが成長することです。できないことを指摘するのではなく、その子にとっては進歩であればそのことをほめるのです。

ほめる観点を教師が意識すると、その場面を見ようとします。自然に一人ひとりを見る機会が増えていきます。また、なかなかほめる場面に出会わなければ、そういった場面をつくろうとします。自然に子どもの成長を促すための働きかけを教師がすることになるのです。

一人ひとりの「ほめたいことリスト」をつくってみませんか。そして、学期末などの節目にどれだけほめることができたかチェックします。できた子には次のほめたいことを考え、できなかった子には次の働きかけを考えたり、ほめたいことをもう少し達成しやすそうなものに変えたりして、リストを更新します。
子どもの足りないところを指摘するのではなく、できたことをほめる発想をしてほしいと思います。

若い先生はアドバイスを求めている

10月の教師力アップセミナーで、野口芳宏先生に解説・講評いただく国語の授業の撮影に参加しました。

学期末の忙しい時期にもかかわらず、快く公開授業を引き受けていただき、授業者には本当に感謝以外の言葉がありません。
まだ5年目の若い先生ですが、とても意欲的です。グループでの活動ではなかなか自分から話せない子がいるので、今回はペアでの話し合いに挑戦するということでした。ペアでの活動の後にグループでの活動を入れましたが、ペア活動が効いたのか、非常によい話し合いができていました。いくつかのグループでとてもよい意見が出ていましたが、残念ながら全体で話し合い深めることは時間切れで次に持ち越されました。次の時間もぜひ見たいと思わせるものでした。

授業後、参観者と授業者で懇談しました。私以外の参観者は他地区の校長、教頭、プライベートで参加の指導主事とこの学校の研修主任です。子どもたちの様子からどのようにすればもっと活躍させられたか、教材のどこにこだわれば、もっと深い読み取りにつなげられたか。具体的なことがたくさん語られました。私にとってもとてもたくさんのことを学ぶことができました。当日、野口芳宏先生がこの授業に関してどのような話をされるかとても楽しみです。
興味をもたれた方は10月10日(月・祝)の教師力アップセミナーにご参加ください。(申込みはこちら

研修主任から、授業者は管理職の方が具体的に授業について指摘してくださったことをとても喜んでいたと聞きました。参観者の専門教科が全員国語ではなかったと聞いて驚いてもいたようです。授業者は今まで管理職の方に授業を見ていただいても、このような具体的な指摘やアドバイスをもらうことがなかったようです。専門教科が違うからだと納得していたのかもしれません。そのためか、今回の経験が新鮮だったようです。
この学校の管理職の方が授業について具体的な話をしなかったのは、できないからではないと思います。管理職が授業についてあれこれ言うのは、プレッシャーになるので嫌がられると思っているからでしょう。ところが学校現場で感じるのは、多くの若い先生は教えてもらいたい、アドバイスをしてほしいと思っていることです。
管理職の方は、若い先生の授業をどんどん見て、アドバイスをすればいいのです。もし、嫌がられていると感じるのなら、それはアドバイスの内容が相手に納得できるものではなかったからです。こうしろと命令するのではなく、相手に寄り添って一緒に考える姿勢でアドバイスをすればきっと多くの先生は受け入れてくれるはずです。それでもダメなら、別の工夫をすればいいのです。
若い先生がどんどん増えている今、若い先生の授業力を延ばすのは管理職の大切な仕事だと考えて、どんどん行動を起こしてほしいと思います。

進歩する条件

昨日は中学校で授業アドバイスをおこなってきました。

昨年小学校から中学校へ異動してきた先生の授業を、久しぶりにまとまった時間見ました。
子どもがミスしやすいところをきちんと押さえていました。この時間のねらいやポイントが明確です。きちんと教材研究をしていることがよくわかります。
子どもから出たつぶやきも拾って、授業にきちんと活かしていました。これも、子どもからこんな言葉が出るといいと教材研究の段階で意識しているからできることだと思います。
また、ポイントを子どもたちがちゃんと理解しているか、机間指導で○つけをすることでしっかりチェックしていました。子どもたちがミスしやすそうな問題に絞って○つけをしていることからもよくわかります。
教師が板書をしているときは、全員がしっかりと写していました。板書を説明しているときは、集中して聞いています。教師が指示しなくても子どもたちは自分たちでちゃんと場面を判断していました。きちんと指導されていることがよくわかります。
子どもたちは、柔らかい雰囲気の中で集中して授業に参加していました。先生のやさしい笑顔が印象的でした。

昨年は初めての中学校ということもあり、戸惑いが表情にでて、重い雰囲気の授業が多かったのですが、格段の進歩です。しかし、その進歩は突然のジャンプではなく、課題を一つずつゆっくりとクリアしていった結果です。
この先生は、私が学校を訪問するたびに、アドバイスを求めてくれます。授業をたった2、3分眺めただけのときや、まったく見なかったときでも。今の状態から少しでもよくしようと授業を見た感想を聞く。わからないことや課題、悩みに対して積極的にアドバイスを求める。そこに向上しようとする姿勢があらわれています。そして、一番素晴らしいことは、アドバイスを素直に受け入れてくれることです。最初のうちはなかなか進歩が見えませんでしたが、それでも地道にやり続けてくれました。基本的なことが一つずつできるようになり、それにつれて進歩の度合いも大きくなってきました。基本的なことができるようになるとともに、より高度な課題がたくさん見えてきます。自分でも気づくことが増えてきます。授業がうまくいくようになってそこで止まる先生も多いのですが、この先生はずっと課題を持って授業に取り組んでくれました。

自分に欠けていることを素直に認める勇気を持ち、すぐにうまくできなくてあきらめずにやりつづけることが進歩するための条件です。このことをこの先生の姿からあらためて学ばせていただきました。まだまだ課題はたくさんあります。だからこそ、より大きな進歩が望めるのだと思います。

教師にとっての基礎基本の定着を考える

最近若い先生方の授業を見ていて気になるのがチョークの持ち方です。鉛筆と同じように持って板書しているのです。黒板に正対して子どもを見ない先生が多いことに疑問を持ち、細かく観察していて気づきました。
子どもたちを見ながら板書しようとすると、体を開いて斜めに書くことになります。鉛筆のように持っていると斜めでは力が入りません。親指と人差し指の2本の指でチョークを持つことが必要になります。

自分のことを振り返ってみると、誰かに教わったという記憶がありません。ある先生は、自分は小学生に授業の中できちんと教えているとおっしゃっていました。私も学校で教わったのかもしれません。
また、子どもの様子をしっかり見ながら板書できるようにと、真正面を向いたまま手を裏返して書けるように練習もしました。いろいろと工夫しているうちに自然に身についたのかもしれません。

いずれにしても、誰かに教わるか、自分で工夫して身につけることが必要なのでしょう。ところが、最近の若い先生のチョークの持ち方がおかしいということは、教わっていないし、板書中に子どもを見ようと工夫していないということです。指導する側、若い先生自身、双方に問題があるということです。

ある校長は、「そんなことは私がきちんと指導している」と力強く話されました。しかし、そのことに気づいていない管理職もいらっしゃいます。
今の時代、基礎基本の定着は子どもたちだけの問題ではなく、教師に対しても必要なことのようです。教師にとっての基礎基本は何か、それをどのようにして定着させるのか。そんなことは教えなくても知っているはずだという思い込みを捨てて、学校経営に携わる方が真剣に考えるべき問題のように思います。

PTA対象の講演

昨日は小学校のPTA対象のセミナーで講師を務めました。テーマは「いじめる側やいじめられる側にならないための子育て」でしたが、私にとっても勉強するよい機会をいただきました。

この依頼をきっかけに、いじめそのものではなく、その根っこにある問題は何かについて考えてみました。いじめる子はなぜいじめるのか、いじめられる子はなぜいじめられるのか。そこから、親がどのように子どもに接することがいじめを防ぐことにつながるのかを考えてみました。

結論としては、やはり、子どもが自己有用感を持つ、自分がまわりに認められると感じることが大切であるということです。自分が認められていれば、他の人を認められる。結果としていじめが起きにくいということです。まず家庭で子どもをしっかり認めてあげることをお願いしました。
また、子どもたちに想像力をつけることも大切だとお伝えしました。自分や友だちの行動の原因や結果を想像する力があれば、軽率な行動は避けられ、他者を思いやることができるようになるはずです。子どもと一緒に考えるような機会をつくるようお願いしました。

「ありがとう」の言葉がたくさん交わされることを目指せば、結果として子どもにとって居心地のよい家庭となります。そのような家庭で育った子どもがいじめにかかわることは少ないと思います。

参加されたお母さん方には、本当に真剣に話を聞いていただけました。子育てに真剣に向かい合っている方ばかりなのでしょう。きっと家庭を「ありがとう」の言葉で満たしてくれることと思います。私も程よい緊張感の中で、楽しく話をさせていただきました。とてもよい機会をいただき、ありがとうございました。

学習計画を考える

長期休業などで、子どもたちに学習計画を立てさせることがあると思います。なかには学習計画を立てて満足してしまう子もいます。子どもたちにとって意味のある学習計画とはどのようなものなのでしょうか。

子どもたちの学習計画は、何時から何時まで勉強するといったものがどうしても多くなります。時間が来たから勉強するぞと机に向かい、それから何をするか考え始めます。これではなかなか取り組めませんし、すぐにやる気をなくします。
計画はできるだけ具体的にするように指導します。国語をやる、漢字の練習をする、漢字の練習帳の何ページをやる。後にいくほど具体的になっています。具体的であればあるほど、それだけ実行できる可能性は高くなります。
何をどれだけやるかが明確であれば、机の前で時計を見て時間がたつのを待っているのではなく、早く終わらせて次の行動に移ろうとするとして集中力が生まれます。早く終われば遊んでもいいのです。

ここで、もう一つ注意してほしいのは、やったことで満足するのではなくその結果どのような力がついたか、何ができるようになったかという成果を意識することです。そのためには具体的に何ができればよいのかの目標と成果を明確にする必要があります。漢字の練習であれば、練習帳の何ページの漢字が全部きちんと書けるようになるといった成果を明確にすることです。

この目標と成果を明確にするためには、学習計画全体を通じての目標、成果を具体的にすることが大切になります。休みを通じてどんな力をつけたいのか、その成果をどんな形ではかるのかです。目標は漢字力をつける。その成果は、問題集のテストで何点とれたかで確認する。そのために、練習帳を毎日何ページやる。こういう発想です。
子どもたちが自分でこの目標と成果をつくれないようであれば、教師の側で最低限のものを用意することが必要かもしれません。休み中の課題と連動してもよいですが、その場合、成果を具体的にチェックする方法をプラスする工夫がほしいと思います。

また、子どもたちが立てる計画は、気合を入れすぎて無理をしたり、確実にできることを意識して押さえ目になったりします。そのために、チェックポイントを設けるようにします。たとえば1週間ごとにチェックし、うまくいっているなら上方修正、うまくいっていないなら、目標達成のために計画を立て直すのか、目標自体を修正するのか考えます。

とはいえ、なかなか計画通りに実行できないのも子どもたちの常です。子どもたちのやる気を持続させるためにはいくつかの工夫が必要です。
目標に対してどこまで進んだかを視覚的にわかるようにすることも一つの方法です。予定をこなせたら、マスをぬりつぶしていく、シールを貼るといったやり方です。こうすることで、達成感を味わうことができます。
また、いつも目標をクリアできないとやる気がなくなりますが、最低限でもここまではというラインを設定することで、達成感を味わいやすくするという方法もあります。たとえば、目標10ページに対して6ページを最低ラインに設定します。集中力が切れかかっても、6ページはクリアしようという気持ちが働きます。6ページできれば、とりあえず最低ラインをクリアした達成観が得られるので、あと1ページくらいはと意欲が戻ってきます。

これらのことすべてを子どもたちに求めることは難しいと思います。しかし、子どもたちの発達段階に合わせてできること、やれそうなことにチャレンジさせてください。とりあえず、学習を時間ではなく、具体的に何をするかでとらえさせることで、子どもたちの学習に対する取り組み方が変わっていくと思います。

悩み事の相談

若い先生は子どもから悩み事を相談されたときに、どうしても気負いすぎる傾向があるように感じます。解決を焦りすぎるあまり、子どもの気持ちにきちんと寄り添うことを忘れて、子どもとの関係を崩してしまうこともあります。どのようなことに注意をすればよいのでしょうか。

子どもから、悩み事や相談事が出たときに大切なのは、すぐに答えを出そうとしないことです。悩み事があるときは、基本的に子どもの中に負の感情があります。大切なことは子どもが感じている負の感情をきちんと受け止め、共有することです。
いきなり「もっと詳しく」「なぜ」と矢継ぎ早に質問をすると、子どもには問い詰められているように感じてしまいます。また、「こうしたらどう」とすぐに教師がアドバイスをはじめても、自分のことをしっかり理解してくれていると感じていなければ、なかなか素直に聞けません。
深刻な話であればあるほど、柔らかい笑顔で、「それってどういうことかな。もう少し聞かせてくれる」と余裕を持って聞くようにします。子どもから自分を否定するような言葉がでてきても、まず受け止め、「話してくれてありがとう」「気づかなくてごめんね」と子どもに対して教師が寄り添う姿勢を見せます。

「最近みんなとうまくいっていないんです」
「それってどういうこと」
「なにか、みんなが私のこと無視しているように感じるんです」
「そうか、みんなが無視しているように感じるんだ。それはつらいね。話してくれてありがとう。気づかなくてごめんね」

このように、子どもの言葉をしっかり復唱して子どものつらい気持ちを共感してあげるのです。ここで、「そんなことないよ。みんなあなたのことを無視なんかしていないよ。気にしすぎだよ」と励ますつもりで子どもの負の感情を否定しまうと、自分の言葉を否定されたと感じ、わかってくれないと心を閉ざしてしまいます。

子ども気持ちをしっかり共有した上で、解決に向かって進むのですが、ここで注意してほしいのは、教師が一方的にアドバイスしないことです。子どもに寄り添って、一緒に解決するという姿勢が大切です。

「どうすればよいか一緒に考えようね。みんなと言ったけど、全員かな」
「○○さんは、ときどき声をかけてくれる」
「そうか、全員じゃないね。よかったね」
「じゃあ、どうなれば、あなたの悩みは解決するのかな」
「みんなが声をかけてくれる」
「なるほど、みんなが声をかけてくれるようになるとうれしいね。みんなってどのくらいだろう」
「うーん、1人だけはいやだけれど、何人かいればいい」
「そうか、1人はいやだけれど、何人かいればいいんだね。あなたにできそうなことはない」
「無視されるのは怖いけど、声をかけてみる」
「そうか、声をかけてみるといいね。それじゃ思い切ってやってみようよ」
・・・・

子どもの状況が完全にネガティブなことは稀です。その中でポジティブなものを探すことが、気持ちを切り替えるきっかけになります。できないことではなく、できていることを探すのです。その上で、自分がどうなりたいかを子どもに気づかせます。ゴールをイメージして、そこに至るスモールステップを意識させます。この例の場合は、「みんな」というゴールの途中に「何人か」というスモールステップを設定させています。そして、そのために何をすればよいかを考えさせます。

悩み事の相談は、子どもに寄り添い、一緒に考える姿勢が大切です。子どもが「どうなりたい」「どうする」のかを自分の口で言えるようにサポートすることを第一に考えてほしいと思います。

授業研究に参加

昨日は中学校の授業研究とアドバイスをおこないました。私が参加した研究授業は、1年生の理科の調べ学習でした。

授業を参観した先生方は、子どもたちの様子をしっかりと観察していました。子どもたちの活動が授業者のねらったものになっていたか、何に集中していたかなど、検討会でもしっかり話ができていました。

授業者は「小学校6年生にもわかる説明」という条件をつけて、子どもたちが単に調べて満足するのではなく、その内容を理解して自分の言葉で説明できるようになることをねらっていました。しかし、調べる項目を書きこんだワークシートを準備したせいか、子どもたちは、教科書や便覧の該当項目を写してワークシートを完成することで満足してしまいました。グループでのかかわりも、どこに書いてあるかという情報は聞くのですが、その内容に関して聞き合っている姿は見られません。最後にまとめを見せ合って、確認をするのですが、ほとんど内容に差がなく学び合いにはなりませんでした。授業者のねらいと子どもたちの活動がずれてしまいました。
このことに気づいても授業時間中に修正することはなかなか難しいのですが、私からは次のようなアドバイスをさせていただきました。

ある程度子どもたちの作業が終わった段階で、中間発表をさせます。その上で、その説明で本当に「小学校6年生にわかる」かを問いかけます。具体的にこの部分はどう説明すればわかる。理科用語はどう説明しよう。「小学校6年生もわかる説明」という課題をより具体的にして再度課題に取り組ませるのです。こうすることで授業者のねらいに近づくことできるはずです。

子どもたちの活動の途中で中間発表を入れることで課題や論点を明確にすることができます。その上で再度課題に取り組むことで、より深い学びにつなげることができます。

授業者が単なる調べ学習ではなく、より深く内容を理解する授業にチャレンジしてくれたおかげで、参加した私たちもたくさんのことを学ぶことができました。うまくいかなくてもそのねらいと現実のズレから多くのことを学べるのです。学校内に、先生方がチャレンジする雰囲気があることを大変うれしく思いました。

個人の気になる点をどう直させるか

どの子に対しても、気になる点があります。ここを直してほしい、もう少しこういうところに気をつけてくれたらもっとよくなるのに。こういったことを伝えるには、面接などの一対一の場面が有効です。とはいえ、ストレートに直しなさいと言ったからといって、なかなか治るものではありません。反発する子もいるかもしれません。どのようにすればよいのでしょう。

基本は子ども自身にそのことを認めさせ、どうするかを言わせることです。
宿題をよく忘れる子どもの場合を考えてみましょう。子どもがそのことを問題と自覚しているのなら、自分から「困っている」と言ってくれるでしょう。もし、そうでないならばその指摘から始める必要があります。

「そういえば、国語の宿題を2回続けて忘れたね。それってどういうことなのかな」
「うーん。忘れないようにしようと思っていたんだけど・・・」
「忘れないようにしようとは思っていたんだ。えらいね。それで」
「家へ帰ってマンガを読んだり、ゲームをしていて忘れちゃった」
「そうか、忘れちゃったのか。やろうとは思っていたけど忘れちゃったんだね」

いきなり宿題をやらなければダメと注意するのではなく、まず、事実をきちんと伝えてその理由を考えさせます。原因がわかれば、どうすればよいか考えさせればいいのです。この場合は忘れないようにするにはどうすればよいかを考えさせるのです。

「じゃあ、忘れないようにすればいいんだ。どうすればいいかな」
「うーん。ちゃんとノートには書いているんだけど、見るのを忘れちゃう」
「そうか、見るのを忘れちゃうのか。どうすれば見るのを忘れないんだろう」
「忘れないように気をつける」
「なるほど、気をつけるのか、えらいね。ところで、気をつけるってどうすることか、教えてくれる」

子どもは「頑張る」「努力する」といった漠然とした言葉で対応を答えがちです。なかなかきちんと具体的なことを考えません。こういった言葉に対しては、「どうすること」「どういうこと」と問い返し、具体的にしていく必要があります。

「うーん。家に帰ったら必ずノートを確認する」
「なるほど、家に帰ったら必ずノートを確認するんだ。いいね。それで、いつも宿題はいつやるの」
「日によって違う。遊んでからやったり、晩ご飯のあと」
「そうか、日によって違うんだ。遊んでいたら忘れたりしない」
「忘れることもあるかもしれない」
「せっかく確認しても、忘れたら困っちゃうね。何かいい方法はないかな」
「忘れないうちに、早くやる」
「早くやるんだ。いつやるの」
「帰ったらすぐにやる」
「そうか、帰ったらすぐにやるんだ。帰ったらノートを確認して、すぐに宿題をやるんだね。ちゃんとやれるといいね」
「うん、やる」

子どもはどうしても安直な方向に流れていきます。なかなかきちんとしたことを約束しようとはしません。時間はかかりますが根気よく子どもの口からよい答えが出てくるのを待つ姿勢が大切です。どうしても出てこないときいは、「こんなやり方はどう」と提案してもよいでしょう。しかし、無理やり従わせようとはしないようにします。あくまでも子どもが自分で決めることが大切です。
このあと、しばらくしてから、実行できているかどうかを必ず聞くようにします。きちんとやれていればほめてあげ。うまくいっていなければ、またその理由から聞いてあげるのです。そのままにしていると、教師との約束をいい加減にするようになってしまいます。
子どもの行動を変えることは時間がかかります。根気よくつきあってあげる姿勢を大切にしてください。

面接の基本は聞くこと

1年間のうちに何度か子どもたちと個別に面接する機会があると思います。時期によってもねらうところは違ってきますが、基本となることを整理しておきたいと思います。

基本は、聞く姿勢を大切にすることです。
一人ひとりに対して、こうしてほしい、ここを直してほしいということはあるかもしれませんが、教師の側からこうしなさいと押し付けないようにしましょう。まず情報を集めることから始めます。

最近はどんな調子?
どんな生活している?
前にこんなこと話していたけど、その後どう?

漠然とたずねることで、自分が生活のなかで気にかけていることを話してくれることが多いようです。また、以前の面接時に話してくれたことなどをきっかけにするのもよいでしょう。
これでいろいろ話してくれるときは、聞き手になればいいのですが、言葉がなかなか出てこないこともあります。こういうときは、なにか話しづらいことがあるのかもしれません。

楽しかったことは何?
何か困ったことある?

少し具体的に聞くことにします。話しやすいように「楽しかったこと」から始めるとよいでしょう。この話題があまり弾まないようであれば要注意です。また、教師に思い当たることがあってもストレートにそのことを聞かないようにします。「困ったこと」と聞くと話しやすくなります。話してくれないけど、何かあると感じたなら、「最近元気ないように感じるときがあるんだけど、私の思いすごしかな? 思いすごしならごめんなさいね」というように、教師が気にかけていることを伝えてください。それでも、話してくれなければ、一旦引いてください。まずは、あなたのことを教師は見守っているというメッセージを伝えることまでにしておき、次の機会を待ちます。

面接で子どもからでた相談や悩み事はその場で解決できることもあれば、時間をかけなければならないこともあります。多くの子どもから同じようなことが出てきたら、学級全体で取り上げる必要があるでしょう。のんびりと構えてはいけませんが、過剰に反応して拙速になってはいけません。落ち着いて対応するようにしましょう。

面接は個々の子どもの状況や学級の状態を知ると同時に子どもとの人間関係をつくることも大きな目的です。受容的に聞く姿勢を大切にし、子どもの話をたくさん聞くことを目標にしてください。

板書計画を考える

板書計画をしっかり立てるということがよく言われます。計画という言葉にも表れているように、どのタイミングで、何を書くかが重要になります。教師がまとめて板書して、子どもがただそれを写すのであれば、プリントにして配ればよいのです。

1時間の授業の流れの中で、黒板をどのように活用するのか、その視点を明確にしておく必要があります。

言葉では消えてしまうものを、板書することで残す。
板書を全体で考えるためのツールとして活用する。
結果をわかりやすく整理する。

大きく分けるとこのようになると思います。
課題や指示などは、子どもが見ただけでもわかるような工夫が必要です。また、この時間で前提となる知識や考え方をあらかじめ板書して、いつでも参考にできるようにすることも子どもが課題に取り組む上で効果的です。

メインとなるのが全体での活動における活用です。

子どもから出た意見を板書するのかしないのか。
そのまま書くのか、教師が整理して書くのか。
どこに書くのか。
書く場所を教師が決めるのか子どもに決めさせるのか。

このようなことを、課題や授業の流れに応じて考える必要があります。
教師が子どもの発言内容にかかわりなく予定したとおりに板書すると、子どもは板書だけに注目して友だちの発言を聞かなくなります。あえて、板書しないという選択もあるのです。
子どもの発言を認めたり価値づけする道具としても意識するとよいでしょう。子どもの言葉をそのまま板書し、発表者の名前を書く。こうするだけでも認められた気持ちになります。近い意見を並べて書く。異なった意見は離して書く。どこに書くかを意識することで、互いの発言をつなぐこともできます。どこに書くかを子どもたちに考えさせることで、他の発言と比べながら聞くようになります。
似たような考えを○で囲んで、タイトルをつける。対立関係を色で示す。いろいろと工夫することで、板書を見ながら考えが整理され、新たな意見が出るようになっていきます。
子どもたちにこの場面でどのような活動をしてほしいかを考えながら計画を立てることが大切です。

授業の最後にその時間の学習内容をまとめることが多いと思いますが、板書するのがよいのか子どもたちまとめさせるのがよいのかの判断が必要です。子ども自身にまとめさせるときに、まとめの視点だけを板書しておく方法もあります。教師がまとめる場合も、あえてポイントに色をつけたりせずに、各自に線を引かせるといった方法もあります。子どもにまとめさせたときは、全体やまわりの子どもと確認し合うことで、よりよいまとめになっていきます。
また、同じ写すのでも黒板をできるだけ見ないで写しなさいと指示する方法もあります。
いずれにしても、何も考えずに子どもが写すような使い方は避けるべきでしょう。

板書計画は、大体の方向性や絶対外せないような内容は考えておく必要がありますが、あまり細かく立てすぎると子どもの考えを活かせなくなってしまいます。子どもと一緒に作っていくという視点を加えて、柔軟にとらえるようにしてほしいと思います。

うれしい驚き

昨日は授業研修の講師を務めました。市内の小中学校から集まった16名の先生方との授業研究です。今回は代表者が研究授業をおこない、それを全員で参観して協議するという形式でした。

授業は中学3年生の社会科でした。教師と子どもたちの関係がとてもよく、明るい学級でした。授業を見ていてその理由がよくわかりました。子どもたちに対する教師の否定的な言葉が少ないのです。できるだけポジティブに評価しようとしています。
今回の授業はグループを使っての話し合いが中心でした。子どもたちは元気に話し合っていますが、自分の答や意見の主張が目立ちました。少数意見をしっかり聞こうとするグループもありましたが、多数決をとって終わるグループもありました。実は、学級活動や道徳ではグループをよく取り入れているが、社会科の授業では今回が初めてということでした。今回の研修をきっかけに、子どもたちのグループ活動の質が上がっていくことと思います。
また、グループではよく発言している子どもも全体ではなかなか発言しようとはしませんでした。子どもたちは正解を発言することを求められていると感じているようです。結論を聞くのではなく、出た意見を聞くようにすると変わっていくと思います。

驚いたのは、参加者による、授業後の4人グループでの話し合いです。どの先生も実によく子どもを見ていました。各グループでの話し合いの様子、子どもが課題に取り組むときの戸惑いなど、細かなことも見逃していません。子どもの事実をもとにした足が地についた話し合いでした。

参加できない生徒がいたのは、6人とグループの人数が多かったから。それなら司会者をつくるか、4人くらいに減らしたらよいのでは。
対決的な話し合いになっていたのは、グループの結論を求めていたから。グループで一つにまとめることにこだわらない方がよいのでは。
考えを書くという指示であったが、子どもはどうすればよいかわからず戸惑っていた。2回目は経験しているので、すぐに取りかかっていた。例を挙げて具体的に伝えるべきだったのでは?
・・・

充実した話し合いでした。皆さんの意見に私がつけ足すことはほとんどありませんでした。子ども同士のつなぎ方、結果ではなく過程や根拠を問うことについて少し話させていただきました。

この年3回の研修を始めて5年目になります。参加者は毎年入れ替わりますが、年々話し合いのレベルが上がっていると感じます。子どもを中心に見て、少人数で話し合う形の授業研究が、この研修会を通じて市内のほとんどの学校に広がったという話をうかがいました。みなさん、自分の学校で質の高い授業研究をおこなっているに違いありません。だからこそ、ここでの話し合いがとても素晴らしいものになったのだと思います。
グループごとにまとめ方も工夫していました。きっと、お互いの学校の工夫を伝えあっているのでしょう。この研修会が市内の学校の学び合いのきっかけになっていることを大変うれしく思いました。

先生方のレベルアップに負けないように私もレベルアップしなければと気持ちを新たにしました。よい刺激をいただきました。

学習内容の定着

子どもたちが学習内容をきちんと理解したからといって、すぐに活用できるわけではありません。2×2が4になることがわかったからといって、九九は言えるようになりません。定着させるための活動が必要になります。

反復練習が有効なものに対しては、授業時間内に時間を設けて練習する。宿題や試験というプレッシャーをかけて家庭学習させる。このようなやり方が一般的です。この場合大切になるのが、子どもたちへの動機づけです。指示されたからやる、やらなければいけないという、ネガティブな動機ではなかなか集中しませんし、定着もしません。いかにして子どもに前向きに取り組ませるかがポイントになります。
そのためには目標や指標を上手に与えることが有効です。九九が何秒で言えるといったやり方です。このとき、何秒で言えるかではなく、何秒で言えたかを計測する方法もあります。いずれにしても、合格したか、何秒だったということだけで評価するのではなく、以前と比べてどれだけ進歩したかを見ることが大切です。たとえ目標に達成しなくても、自分の努力の結果が見えることでやる気を継続させることができます。気をつけてほしいのは、1回だけやって終わってしまはないことです。そのときに結果を出せなくても、再挑戦できるような仕組みをつくってください。そうしないと、できなかった子どもは、達成感を持てないまま、次第にやる気をなくしてしまいます。

また、目標設定をグループに対しておこなうというやり方があります。例えば、グループ全員の九九にかかった時間の合計が何秒といった指標を導入します。こうすることで互いに励ましたり助け合いながら取り組むことができます。このとき、全員が何秒以内というような設定にすると、特定の子だけが達成できないという状況が生じてしまいます。できない子が非難されないような雰囲気づくりが大切になります。それぞれの能力に応じて貢献できるような目標設定を心掛けると有効な方法です。

一方、考え方のように反復練習しにくい、試験などになじみにくいものには、活用して定着するという方法があります。
例えば、資料の見方であれば、資料からわかったことではなく、そのための視点を整理しておきます。そして、別の資料をつかって練習をします。このとき、できるだけ身近な資料を用意すると子どもたちの意欲が増します。
考え方のように抽象度が高いものは、1度や2度練習したからといって定着するようなものではありません。他の課題や、単元でも意図的に活用する場面を作ることが大切です。資料の見方であれば、資料を見る場面があるごとに、子どもたちにその視点を問いかけます。こうして、意識して活用させることで定着を図ります。

教材研究はどうしても、子どもたちに理解させることに目が向きがちですが、学習内容の定着という視点も大切です。定着させるためにどのような活動が必要なのか、逆にこの課題は、どのようなことを定着させるのに有効であるか。このようなことも意識してほしいと思います。

保護者対応について考える

ある会議で、教師の保護者対応が話題になりました。

保護者とのトラブルは、最初の対応がまずいためそれが尾を引くケースが非常に多いようです。

教師(特に若い)が、上から目線で話をする。
電話応対等、社会人としての基本マナーを知らない。

教師は子どものためにと一生懸命に働いているのに、こんなことが印象を悪くして、話をこじらせているようです。確かに昔は保護者から尊敬される立場でしたが、今は教師だからといって特別ではありません。へりくだる必要はありませんが、相手を尊重した接し方が必要です。保護者が学校に話をすることは、ほとんどが子どものことです。子どもを間に挟んで保護者と学校が対立してもいいことは何もありません。互いに自分の考えを相手に納得させようとするのではなく、「子どものために一緒に考える」というスタンスをまず共有するようにしてほしいと思います。このことを大前提とした上で互いの考えを「聞きあう」ことで、多くのトラブルは避けることができると思います。

一方、電話応対等のマナーについては、きちんと研修する必要があります。最近では、就労経験のある保護者がほとんどです。当然基本的なマナーはよくご存じです。教師にそのつもりはなくてもマナーを知らないために、対応がぞんざいであるとか、軽んじていると感じさせてしまうことがよくあるのです。
例えば、「ご苦労さま」という言葉です。「ご苦労さま」は目上の人が下に対して使う言葉であるとして、外部や目上に対しては「お疲れさま」を使うように教育している企業がほとんどです。学校内ではだれも気にしなくても、保護者にうっかり使ってしまえば、上から目線と取られてしまいます。本当は、「わざわざありがとうございます」という謙虚な気持ちで使っているのに、軽んじられたと気分を害してしまう保護者も出てきます。こんなつまらないことが、トラブルのきっかけになることもあるのです。

また、保護者との対応に関してネガティブな言葉使わないことも大切です。例えば、保護者から「苦情」があった、「苦情」対応をするといった表現です。確かに内容的には「苦情」といっていいことかもしれませんが、「苦情」といった時点で、すでに関係をネガティブにとらえています。詳しく話を聞く前にこういう言葉を使ってしまうと無意識に防衛的な態度をとってしまいます。しかし、最初は、話を聞いてほしい、納得させてほしいというレベルの話であることがほとんどです。教師が防衛的になって、こちらの立場を主張し、相手の話を否定してしまうことで本当に「苦情」になってしまうのです。こうなるといくらその場でこちらの主張を通しても、結局はよそへ「苦情」を持ちこむだけで、余計に深刻なトラブルになるだけです。
ところが、ポジティブな言葉に言い換えるだけで、気持ちはずいぶん変わります。「苦情」を「相談」といいかえるだけで、ニュートラルな気持ちで接することができ、余裕を持って話を聞くことができるようになります。

保護者対応は学校にとって大きな問題となってきましたが、ちょっとした研修や気づかいでほとんどの問題は避けられると思います。この「ちょっとしたこと」を学校としてどう徹底するかが問われているように思います。

公開授業を見学

先日、今年度よりICT活用の研究指定を受けた小学校の公開授業を参観してきました。

ICT活用ということも影響してか、授業者は若手の先生ばかりでした。自ら手を挙げて公開されたそうで、その意欲に感心しました。今回は、ICTをどのように活用しているかということより、授業として何を目指しているのか、子どものどんな姿を見たいと思っているのかに焦点を当てて見させていただきました。

見させていただいた3人に共通していたのは、場面ごとの活動を意識しているのですが、1時間の授業全体で子どもたちのどうなってほしいかが明確でなかったことです。子どもたちは、作業には取り組むのですが、どこへ向かっているのかがよくわからない状態でした。
ICT機器のような道具を意識するとどうしても起こりやすいことです。一旦ICTを横に置いて授業構想を立ててみるとねらいがはっきりしてきます。その上で授業の各場面で子どもたちにどのような活動をさせたいのか、そのポイントは何かを考え、そこにICT機器を活かしていけばよいのです。

当日は、最後に、この研究をサポートされる大学の先生のお話がありました。直接聞くことはできませんでしたが、そのレポートを読ませていただき、さすがと感心させられました。この学校の現在の問題点をわかりやすく指摘し、その改善への方向性もとてもシンプルに語られています。先生方が前向きに研究をとらえられるように、意識されていることがよくわかります。私にとっても大いに勉強になりました。
まだまだ研究は始まったばかりです。熱意のある先生方と素晴らしい研究者のコラボレーションで、きっと大きな成果をあげられることと期待しています。
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