特定の子にとらわれすぎない
学級にはいろいろな子がいます。落ち着かなかったり、ルールを守れなかったりして教師が注意をしなければいけないこともあります。こういった、いわゆる気になる子にかかわる時間はどうしても他の子より多くなりがちです。注意してほしいのは、全体の場で彼らにかかわる時間をとられすぎないようにすることです。
彼らとかかわっているとき、他の子どもたちが自分と関係ないと感じていれば、それは空白の時間です。子どもたちは勝手なことをしたりして、集中力をなくしてしまいます。また、特定の子にいつも時間をとられていると、「あの子のせいで、また」とその子に対して悪い感情を持ってしまいます。 ではどうすればいいのでしょう。状況にもよりますが、基本は全体の場ではあまりかかわりすぎないことです。たとえば、まわりの子にちょっかいをかける子であれば、口頭で軽く注意をする。何度も繰り返すようであれば、そのそばに立ってけん制する。1回あたりの時間はできるだけ少なくして、できれば目や動作で注意をうながすようにする。子どもたちがその時間を意識しないように、簡潔に済ますのです。 一人ひとりを大切にしなければいけませんが、そのために大多数の子どもにマイナスあたえていけません。 全体の場でどうしても時間をかけなければいけない状況であれば、個人の問題ではなく必ず学級全体の問題として扱います。一人ひとりが自分の問題としてとらえなければ貴重な時間を使ってはいけないのです。(学級全体の問題か個別の問題か参照) 特定の子にとらわれすぎて、学級全体の集中力をなくしたり、雰囲気を壊さないように気をつけてほしいと思います。 連休前後に学級の状態をチェック
春の大型連休が近づいてきました。新学年がスタートして子どもたちの緊張も取れてくる頃です。よそいきの仮面をはずして、本音の部分も見せるようになってきます。そして、連休になれば、子どもたちにいろいろなことが起こります。
新しい友だちとの交友関係が深まる。家族でのいろいろな行楽で気が緩む。学外の友だちと久しぶりに会う。中学・高校の新入生であれば、部活動で先輩後輩のつながりができてくる。受験生であれば、勉強に意欲的に取り組む。・・・ うまくリフレッシュし連休明けに元気な顔を見せてくれればいいのですが、気が緩みすぎて、なかなか元に戻らない。4月にうまく学級になじめていなかった子が学校に来られなくなる。・・・ 連休明けは、いろいろな問題がでてくる時期でもあります。 この時期の子どもの様子をしっかり観察し、学級の状態をチェックしてみましょう。 ・4月スタート時に子どもたちに示したルールはきちんと守られているか。 守られてはいない。守られてはいるが緩んできた。 →連休明けがリスタートするチャンスです。もう1度4月のスタート時のつもりで、きちんとルールを確認し、守れるように指導しましょう。 ・子どもたちの人間関係はどうなっているか。 小グループ化が進んでいる。 →小グループができること自体が悪いことではありません。連休の前後でグループの変化を見てください。変化があった時は、グループから離れた子を観察してください。人間関係がうまくいかない前兆かもしれません。 グループには入れない子がいる。いつも孤立している子がいる。 →一人でいることが多いからといって、すぐにそれが問題というわけではありません。まず、声をかけて状況を聞いてください。その際、連休中の予定も確認してください。そして、「連休が明けたらその話を聞かせてね」と結びます。もし学校に行きたくないような状況になっても、こうして子どもとのつながりを作っておくことが、よい方向に作用することがあります。 ・学習意欲が高まっているか。 学級全体でやる気が高まっている。 →やる気が高まるのはいいことですが、予定通りできずに落ち込んでしまうこともあります。最低限これだけはやるという目標と、ここまでやりたいという目標の2つをもつように、事前に指導しておくとよいでしょう。連休明けには、目標を達成できたかどうかを確認してください。達成できていない子には、個別に話を聞いて、アドバイスをしましょう。 やる気があまり感じられない。 →まず最低限の目標を持たせるようにしましょう。教師から具体的にこれだけはやっておくということを指示することもときには必要です。連休明けは、目標を達成できた子を大いにほめて、学級全体にやる気を広げるようにします。 連休は教師にとってもちょっと一息入れたい時でもあります。その前に、今年の学級経営で大事にしていることを思い出し、チェックしてみてください。小中高、学年によっても視点は異なります。ここに挙げたものは例に過ぎません。チェックの結果、気になることがあればそれに応じて、全体に話をする、個別に話を聞くなどの対応をしてください。そして、担任も上手にリフレッシュして(部活動などで忙しい方も多いとは思いますが)、連休明け、子どもたちの様子の変化をしっかりと見てください。子どもの変化に応じて子どもへの指導・対応を修正していくことで、この後、学級経営が軌道に乗っていきます。 係活動の指導
学級ではいろいろな係が決められていると思います。学校全体で決められているものもあれば学級独自に決めたものもあると思います。係活動は子どもが、学級・学校という小さな社会の中で自分の役割を果たすことで自己有用感を持ち、互いに役割を果たすことの大切さを実感し、責任感を持ってくれるようになることを狙っています。
では、担任として子どもたちの係活動をどのように指導していけばよいのでしょうか。 一つは、係の仕事をできるだけ具体的にすることです。口頭で簡単に説明して済まさずに、きちんと文書で明確にしておくとよいと思います。子どもたちは自分で何をすべきかの判断はなかなかできません。こちらの期待した動きができなくて、つい注意してしまうことになってしまいます。子どもにとってみれば、「そんなの知らない」「言われていない」のに何で注意されるのとなってしまいます。わかりやすく箇条書きで指示して、チェックしやすいようにするとよいでしょう。 また、することだけでなく、この係に対する教師の思い、願いを書いておくのもよいと思います。教科の連絡係であれば、「学級の全員にきちんと伝わり、誰も忘れ物をしないようにしてほしい」などと伝えます。こうすることで、「自分はちゃんと黒板に書いた。見ない人が悪い。自分の仕事は果たした」から、「どうしたら、みんな見てくれるか。忘れないでくれるか」へと子どもの意識を変えていけるようになります。 もう一つは、評価です。自分のしている仕事が認められたいのは子どもも同じです。目立たない仕事でもきちんと見ていると子どもに伝えることです。教科の準備をだれも忘れなければ、全員をほめるだけでなく、「教科係がしっかり連絡してくれているからみんな忘れなかったんだね。ありがとう。みんなも『ありがとう』と言おう」と感謝することです。仕事をきちんとしただけで評価されたのではなく、それに友だちが応えてくれたからこそほめられたことをしっかり伝えてください。こうすることで、役割を果たすとは、その仕事をすることではなく、その仕事を通じてみんなの役に立つこと、自分がやればいいだけでなく、みんなとのかかわりが大切なことをわかるようになります。 最後の一つは、過度の責任追及が起こらないようにすることです。子どものことです。係の仕事を忘れたり、ミスしたりします。そのために他の子どもたちに迷惑がかかることもあります。そのとき、子どもたちが「係が悪い」と一方的に非難することのないように気をつけることが大切です。係の仕事を明確にすれば、その責任も明確になります。係が機能するようになればなるほど、ミスも明確になり、責任追及も起きやすくなります。ミスした本人には、係の仕事がみんなに影響する大切な仕事であることを改めて伝え、「だからこそしっかりお願いね」と励ますことです。個人の責任を果たせと迫るのではなく、みんなのための大切な役割だからしっかりやらなければという意識を持たせるのです。 また他の子どもにも、ミスを非難するのではなく、忘れているのに気づいたら声をかけるといったサポートする姿勢を持つことの大切さを伝えてください。 子どもによっては、負担になったり、積極的に取り組めないこともある係活動ですが、一人ひとりの仕事に対して感謝し、助け合う雰囲気を作ることで、前向きに取り組んでくれるようになります。係活動を通じて子どもたちの社会性をうまく育てたいものです。 どの子にも声をかける
子どもたちに声をかけることは、担任が常に意識していることだと思います。学級全体に対してはもちろん、日ごろから子どもたち一人ひとりとコミュニケーションをとることは学級経営を円滑におこなうために大切なことです。学級で何か問題が起こったとき、担任と子どもの間によい関係が築けていることが、指導力を発揮するための大前提です。そのためにも、どの子ともきちんとコミュニケーションをとることが大切です。
ところが、担任としては平等に声をかけているつもりなのですが、実際には偏りが出てきます。良くも悪くも目立つ子、気になる子に集中してしまうのです。比較的おとなしく問題行動の少ない子にはどうしても声をかける機会が少なくなります。こういった子どもたちが教師とのコミュニケーションを必要としていないわけではありません。日ごろ目立たないからこそ、積極的に声をかけることが大切なのです。 そこで、お勧めしたいのが名簿を見ながらの振り返りです。1日の終わりや週の終わりに、名簿を見ながら一人ひとりにどんな声掛けをしたか、どんなかかわりを持ったか思い出すのです。できればその内容をメモしておくと面接や所見を書くときにも役に立ちます。 実際に振り返ってみると、全員とはコミュニケーションが取れていないことに気づくと思います。そのことに気づけば、翌日は意識的にコミュニケーションをとれていなかった子に声をかければいいのです。こうすることで、きちんと学級の全員とコミュニケーションをとれるようになります。 一人ひとりを大切にしよう、全員に声をかけようと思うだけではできません。チェックする工夫をすることで、はじめてきちんとできるようになるのです。 情報交換の勧め
子どものいろいろな姿を知るためには情報収集が大切です。(子どもの姿を知る参照)
そのため方法の一つとして、日ごろから同僚の教師と情報交換をすることを意識してほしいと思います。 大切なことは、情報をもらうことばかりに気をとられて、こちらから提供することを忘れないことです。 たとえば、掃除区域の担当の教師には、当番のメンバーが変われば、そのことをきちんと伝える。担当の子どもに関して気になることがあれば、事前に伝えて、掃除の様子を観察してもらう。こちらから情報を提供するとより意識して子どもたちを見てくれます。 教科担任や部活動の顧問に対しても、同様です。学級で起こっていること、個別の子どもの情報をできるだけ積極的に伝えます。 「最近学級が落ち着かないのだけれど、先生の授業ではどうですか」 「○○さん、友だち関係がうまくいっていなくて元気がないので、気にかけてもらえますか」 「△△君、この間の試験で失敗して落ち込んでいます。部活動は元気にやっていますか」 ・・・ 自分の学級経営がうまくいってないことなどは、担任として言いづらいときもありますが、きちんと伝えることで、サポートしてもらえたり、よいアドバイスをもらえたりもします。他の教師に見せる姿から問題解決のヒントが得られたりします。 また、逆の立場になってみれば当然ですが、自分の学級以外の子どもたちの姿もよく観察して、気づいたことがあれば担任に伝えることを意識してください。 些細なことでもいいのです。気になることだけでなく、「元気よく挨拶してくれた」といったよいことも伝えるようにします。自分の学級の子がほめられるのは担任としてうれしいことです。「○○先生がほめてくれたよ。先生もうれしかった」。こういう言葉かけができることは、学級経営上非常に大きなメリットがあります。この先生もあなたの学級の子どもを意識して見てくれるようになるでしょう。 積極的に情報交換をすることで、より多くの視線が学級の子どもにそそがれ、より多くの姿が伝わってくるようになります。自分では見ることのできない姿を知ることが、子どもたちをより深く理解することにつながり、きめ細かな学級経営を可能にしてくれます。 家庭での子どもたちの生活を把握する
担任は子どもの学校での様子は把握していますが、家庭での生活はなかなか把握することはできません。そこで、定期的にアンケート等による実態調査をすることを勧めます。(子どもの姿を知る参照)
最近は学校評価が定着してきたので、学校全体で定期的に調査していることも多いと思います。重複する必要はありませんが、担任としての学級経営上の重点項目に関連した項目を加えたり、時期を工夫して、必要な情報を適宜収集するようにしてほしいと思います。 質問項目は、基本的生活習慣にかかわること、学習面にかかわること、家族やまわりとのかかわりなどを、子どもたちの発達段階や学級経営の観点から絞ってくことになります。 基本的生活習慣であれば、「起床・就寝時刻」「歯磨きの習慣」「朝食をとるか」「誰といつ、どこで、何をして遊んでいるか」「テレビの視聴時間」「読書習慣(時間・ジャンル)」「ケータイメールの利用状況」・・・ 学習面であれば、「家庭での学習時間」「家庭での学習内容(予習・復習・教科)」「わからないときどうしているか」「通塾状況」・・・ 家族やまわりとのかかわりであれば、「食事はだれと一緒にとっているか」「誰とよく話すか」「困ったとき誰に相談するか」「家の手伝いはしているか」 その他、「小遣いに関して(金額・もらい方・使い方)」・・・ これらすべてをたずねる必要はありませんが、子どもに意識してほしい項目を意図的入れておくとよいでしょう。 たとえば、お手伝いをしてほしいと思うのなら、ただ「やっているか」だけをたずねるのではなく、「頻度」「内容」「満足感」など、より詳しくたずねると、やっていない子どももやろうかなと思うようになります。 また、一人ひとりの様子を把握するためにも記名でおこなうべきでしょう。指導すべきことが見つかったとき、学級全体に対して働きかけるのか、個別に働きかけるのか。子どもに直接働きかけるのか、保護者に働きかけるのかの判断もしやすくなります。 表計算ソフトなどをうまく活用すると、いろいろな項目の相関を簡単に調べることができます。学習時間とゲーム時間に負の相関があれば、家庭学習の大切さを強調するだけでなく、ゲーム時間を減らすことを意識するといった、指導の方向性も見えてきます。 早い時期に調査をおこなって学級の特性を知ることは、1年間の学級経営の方向性を決めるにも役立ちます。また、何度か実施することで、子どもたちの変化の様子や指導の結果を知ることもできます。普段担任が見ることのない家庭での子どもたちの生活の様子を把握することは、学級経営にとってとても意味のあることです。 早い時期に個別に話をする
新学年が始まった4月は、とてもあわただしい時期です。とても忙しいのですが、できるだけ早い時期に子どもと個別に面接をおこなうことを勧めています。
まだ子どもたちのことをよくわかっていないのに何を話せばいいのか。子どもたちも学級に慣れていないこの時期に「なぜ?」と思うかもしれません。 環境が大きく変わるこの時期は、どうしても子どもたちは不安定になりやすいときです。いつも以上に緊張して学校生活を送っています。子どもの今の状況を的確につかむために、個別に話すことはとても意味のあることです。 教師が何か話そうとする必要はありません。ほんの4、5分でいいのです。子どもの話を聞いてください。このとき、「学級には慣れた」といった具体的な質問ではなく、「どんな調子」といった、あいまいな軽い問いかけをしてください。何気なく出てくる答の中に、気になっていること、意識していることが隠れています。「まあまあ」といったあいまいな答であっても、「それってどういうこと」と問いかけることで具体的なことを聞き出せます。 「絶好調!」 「それってどういうこと」 「仲のいいやつと一緒のクラスになったし、勉強も頑張っている」 ・・・ 新しい学年になって頑張ろうとしている。 この学級は楽しい。 仲のよい子がいなくて、さびしい。 雰囲気になじめない。 よくわからない。 ・・・ 子どもたちは、思った以上にいろいろなことを話してくれます。簡単でよいので、一人ひとりメモしておいてください。この時期の話と次の面接での話を比較することで、子どもがこの学級の中でよい状態になっているのか、それともよくない方向に変化しているのかをつかむことができます。 また、ここで教師が話を聞く姿勢を見せることで、子どもとの人間関係をはやくつくることができます。「話を聞けてよかった。ありがとう」とIメッセージで終わることを忘れないでください。 5月病という言葉があります。ゴールデンウィークが明けた頃が不適応の子どもが出始める時期です。この面接で予防できるとは思いません。しかし、面接で「頑張っている」と話したのであれば、どこか無理をしていたのではないかと判断の手助けにはなります。また、初めて1対1で話すのが不適応を起こしてからでは、コミュニケーションもうまくとれません。このようなとき、面接で教師が聞く姿勢を見せていたと子どもが感じていれば、話もずいぶん違ったものになります。 この時期に全体の場で見せる子どもの姿は、よそゆきであったり、様子見であったりします。仰々しくする必要はありません。立ち話のようなものでもけっこうです。彼らの緊張をほぐし、殻を破りやすくするためにも、早い時期に学級の全員と個別に話をしてみてください。 学級全体の問題か個別の問題か
学級の中ではいろいろな問題が起こります。担任は一つひとつきちんと解決していく必要があります。このとき意識してほしいことが、その問題が学級全体にかかわる問題か、個別(個人)の問題かです。
「体調が悪い」と訴える子がいた。これは、個人の問題です。個別に判断し、保健室に行かせる等の対応をとります。では、「苦手な食べ物があるので給食を残したい」と訴えた場合はどうでしょうか。一見個別の問題のように感じますが、これは学級全体の問題です。「給食は残さず食べる」という全体のルールに影響するからです。ルールはみんなが守るべきことです。教師が守らせるのではなく、自分たちの問題として考えさせるべきです。教師が判断するのではなく、「みんなはどう思う」と子どもたちに問いかけます。子どもたちと一緒になって考えるのです。 授業を始めようとしたら泣いている子がいる。教師が「どうしたの」と聞いても、泣くばかりである。そこで、事情を知っている子がいないか聞く。そばにいた何人かが事情を話す。そうこうしているうちにどんどん授業時間に食い込んでいく。 これは、個別の問題を全体の問題にしてしまった例です。子どもが泣いている時点では、これは個別の問題です。話もできない状態であれば、ここで時間を使ってはいけません。「休み時間に話聞かせて」と切り上げて、授業に入るべきです。話を聞いて、学級全体で考えるべき問題とわかれば、あらためて取り上げればいいのです。 全体で考えるべき問題を教師が判断してしまうと、自分たちで考えずに教師の顔色をうかがうようになります。個別に対応すべき問題を学級全体に投げかけたり、全員の時間を使ってしまうと、その問題にかかわれない、参加できない子がでてきます。全員で考えるべき場面でも参加しくなってしまいます。 今起こっている問題は学級全体で考えるべき問題か、個別に対応すべき問題か、きちんと判断して対処することが大切です。 わかりやすい担任になる
子どもたちが安心して学級で暮らせる条件の一つに、学級担任がわかりやすいということがあります。行動や反応を予測しやすいと言い換えてもいいでしょう。
例えば、子どもが花瓶を割った時、今度から気をつけるようにやさしく諭すのでしょうか、それとも厳しく叱るのでしょうか。状況によって違うかもしれません。いろいろな考え方があるでしょう。どちらであるかは問題ではありません。大切なのは、子どもから見て同じような状況では、同じ対応をすることなのです。物を壊したらやさしく諭す先生なのか、厳しく叱る先生なのか。このような時はこのように行動すると子どもに予測できることが大切なのです。 花瓶を割った時にはやさしかったのに、ガラスを割った時には厳しければ子どもは戸惑ってしまいます。担任としては、ガラスを割った時はふざけていたので厳しく接したのかもしれません。しかし、それが子どもたちにきちんと伝わっていないと、担任の行動の基準がよくわからないと不安に思ったり、ひいきしていると非難したりします。 このことは、学級経営のあらゆる場面で言えます。特にどんな時にほめるのか、どんな時に喜ぶのかがはっきりしていると、どうすれば担任に認めてもらえるのかよくわかります。認められたいと思った行動は、ちゃんと認めてもらえるので、安心して学校生活を送れます。 子どもにとって担任がわかりやすいということは、好きとか嫌いとかという以前の問題です。たとえ納得していなくても、担任の行動にぶれがなければ子どもなりに対応できます。納得はしなくても理解してくれます。好きにならなくても、担任として認めてくれるのです。 好かれる担任になろうとする前に、子どもたちにわかりやすい担任になることが大切です。 学級懇談会
学級懇談会は、担任が学級での子どもたちの日ごろの様子を伝えたり、自分の学級経営に対する考え方を理解いただき、協力を求めたりするチャンスです。一方保護者の側からすると、子どもを預けている担任の人となりを知って安心したい。子どもたちに関する情報知りたい。よそのお子さんと比べて自分の子はどうなのか。そのようなことを知りたいと思っています。担任と保護者とでは求めるものが微妙にずれているように感じます。このずれを意識して、互いにとって有意義な時間となるようにすることが大切です。
学級懇談会では、教師が伝えることは資料等を使ってできるだけ整理し、コンパクトにまとめることで、保護者からの質問や意見を聞く時間をできるだけとるようにします。もし質問等がでなければ、子どもたち様子を紹介したり、予想していた質問を自分の方から「・・・のようにお感じになっている方はいませんか」とふってみることで、口を開いていただけると思います。 保護者同士の関係をつくるためにも、質問に対してすぐに教師が答えるのではなく、同じように思っている人がいないか確認したり、「○○さんの質問のような場合、どうされていますか」と他の保護者にも聞いてみたりするようにします。互いの顔が見えるように座席をコの字型にするなど、保護者同士のかかわりをつくる工夫をするとよいでしょう。 また、自分の子どもは他の子どもと比べてどうなのだろうと気になる保護者も多いはずです。起床・就寝時刻、学習時間、読書量、おこづかいの額など、保護者が知りたいと思うデータを事前に調査し、資料として提供することで、保護者との話し合いのきっかけもつくれます。ここで、資料をただ提供するだけではデータが独り歩きしてしまいます。担任として個々の結果をどうとらえているか、きちんとコメントすることが大切です。 学級懇談会は教師と保護者が情報を交換し、信頼関係をつくる場です。教師の一方的な説明で終わらないようにすることが大切です。 子どもとの距離感
学級経営で大切になることの一つに子どもとの距離があります。必要以上に子どもに近すぎても、また離れすぎてもうまくいきません。この加減が難しいのです。
一般的に若い教師は子どもとの距離が近すぎる傾向にあります。いわゆる友だち先生です。歳が近いので子どもも自分たちを理解してくれる存在として期待します。しかし、距離が近ければ近いほど、甘えも出やすくなります。自分たちの考えが通らないと友だちと同じような感覚で反発します。子どもたちに反発されると、学級経営は成り立ちません。そこで、教師が子どもたちに迎合すると、学級の規律はなし崩しになっていきます。逆に強く出れば、今まで近い存在であったために猛烈に反発します。 教師は子どもたちを指導する立場です。子どもたちよりも立場的に上であることを崩しては、指導は成り立ちません。しかし、立場が上だからといって高圧的ではいけません。一方的に子どもたちに指示してもついてきてはくれません。子どもたちを統率する存在ではありますが、決して支配する存在ではないのです。子どもたちに問いかけ、考えさせる場面をつくることが大切です。子どもたちの目線に立ち、気持ちを理解した上で、どう方向づけるかを考える必要があります。子どもたちが「先生は自分たちの話を聞いてくれる。受け止めてくれる」と信頼してくれることが指導の大前提なのです。 子どもたちの中に入ってぐいぐいと引っぱっていく。あまり口出しせず、学級のリーダーを中心に動かしていく。年齢や集団の特性によって適切な距離は変わってきます。子どもたちとしっかりコミュニケーションをとりながら、自分の学級における適切な距離を見つけるようにしてほしいと思います。 先輩の思い出
学級経営について書いていて、思い出すのが新任教師時代の先輩のことです。
先輩の学級の副担任として過ごした1年間で学級経営の基礎基本を学ぶことができました。若さと勢いだけであった私が、少しは広い視野を持てるようになったのも、その先輩のおかげだと思っています。 先輩は私が副担任として朝と帰りの短学活はもちろん、学級活動にかかわるにすべての時間に参加することを許してくれました。自分が担任になって思いましたが、学級経営をつぶさに人に見られるのは決して居心地のよい物ではありません。それでも、私の思いを受け止めてくれたことは本当にありがたいことでした。3年間の子どもの成長を考えて、今何をすべきか、何を話すべきか、多くを語らず自分の実践を通して教えてくれました。 せめてものお礼にと印刷物があればなんでも私が印刷しますと申し出ると、快く受け入れてくれました。机の上にメモと一緒に原稿を置いていってくれます。メモには原稿のねらいなどが書いてあります。事前に資料を見ることで、どう使うのか自分なりに想像してみます。そして、実際の場面で先輩の使い方を見ることで、いつ、どんな資料で、どのようなことをすればよいのか、実によくわかりました。思えば、1学級分の印刷など大して手間ではありません。わざわざメモをして人に頼むほうがよほど面倒です。私を育てるためにお願いすると言ってくれていたのです。 生徒や保護者との面談も状況が許す限り同席させてくれました。先輩の一人ひとりの生徒に関する記録もその時みせていただきました。今この生徒はどのような状況であるか、それに対してどう方向づけていくのか、事前にきちんと方向性を持って臨んでいました。しかし、自分から一方的に伝えたいことを話すのではなく、まず相手から話を聞くという姿勢をきちんと貫かれていました。聞くということの大切さを、このとき教わったような気がします。 学期末になると、「あなたも副担任として子どもたちを見ているので所見を書きなさい」と生徒名の入った一覧表を手渡されました。苦労して書いた私の所見を見ても特に何も言ってはくれませんでした。しばらくすると、「写し間違いがあるといけないから確認して」と、通知表を私の前に置いて行きました。通知表の所見欄は先輩が2段に仕切って、上に自分の所見、下に私のものが書かれていました。若いころガリ版と鉄筆でプリントをつくりすぎて、細かい字を書くのがつらいはずなのに、狭い所見欄に2人分の所見をびっしりと書いてありました。先輩の所見と自分のものを比べて読めば、私の子どもを見る力がどれほど浅く、足りないか、言われなくても痛いほどわかります。何も言わずに私に子どもを見る視点を教えてくれました。 あと2年先輩のそばで学ばせてほしい、真剣にそう願いました。しかし、先輩は笑って、「もう私からは卒業して、自分のやり方を考えてやらなければ。これは卒業祝い」と何冊もの本をプレゼントしてくれました。その中には本屋では手に入らないので、わざわざ取り寄せてくれた物もありました。翌年から担任を持つようになりましたが、この時いただいた本は本当に役に立つものばかりでした。 跳ねっ返りの私に、やさしく、時には厳しく、多くを語らず、実践で教えてくれた先輩。先輩のそばで学んだ1年が教師としての私を作ってくれたのだと思います。私の教師時代は、永久に追いつけない先輩の背中を追いかけていたような気がします。 子どもの姿を知る
朝教室に入って挨拶をした後、担任はまず子どもたちの表情を見ます。体調の悪そうな子はいないか、いつもと様子の違う子はいないか。いれば、その場で声をかけるか、帰りまで様子を見るかと考えます。始業時に限らず、常に子どもたちを観察して、子どもの状況を把握しようとしています。こうして、担任はだれより学級の子どもたちの状況を知るようになっていきます。ここで注意してほしいのは、その子どもたちも姿は、担任の目に映る姿でしかないということです。
他の先生から見た姿 友だちから見た姿 家族から見た姿 ・・・ 自分の目で見ることは大切ですが、他者から見た姿は異なっているかもしれないということは忘れないでください。そして、もう一つ子どもたちの姿を見る視点があります。それは客観データです。 いつ起きているか いつ寝ているか 朝食事をとっているか どのくらい遊んでいるか どのくらい勉強しているか 塾に通っているか 学校は楽しいか 授業は楽しいか ・・・ アンケート等によるこのようなデータは子どもたちの姿を浮き彫りにしてくれます。学級経営上ポイントとなる項目を絞って調査をおこない、子どもたちの生活の様子を客観的に把握しておくことは、子どもたちとの接し方や学級経営の方向性を考えるときにとても大切なことです。過年度のデータと比べることができれば、さらに学級の傾向を詳しく知ることができます。初めて出会う子どもたちのことを知るのには時間がかかります。そこで、早い時期に客観データをとることで、子どもたちを把握するスピードを上げることができます。また、その後も年に数回調査することで、学級経営によって子どもたちがどのように変化しているか評価することができます。 自分の目だけにこだわらず、いろいろな視点で子どもたちの姿を見て学級経営をしてほしいと思います。 教室環境の整備
担任としての大切な仕事の一つに教室環境の整備があります。
子どもたちが一日の大半を過ごす教室です。この環境が雑然としたものであれば、落ち着いて暮らすことができません。 掲示物はきちんとしているか。 ごみは落ちていないか。 机に落書きや傷はないか。 机や椅子はきちんと整頓されているか。 下駄箱の中にきちんと靴は入っているか。 ロッカーの中に荷物はきちんと入っているか。 共通の場所に私物は置かれていないか。 ・・・ 特に、下駄箱やロッカーの使い方などは、口頭で説明するのではなく具体的に靴や道具類の入れ方の手本を見せて、どのような状態が正しい状態かをきちんと教えることが大切です。 教室の様子は子どもたちの状態を表すバロメータでもあります。教師が毎日意識してチェックする必要があります。教師の環境が乱れるということは、子どもたちの生活態度も乱れているということです。放置しておくと、いくら注意をしても容易に改まらなくなってしまいます。 始業時、終業時に、子どもたちと一緒にチェックして、その場で直す。できれば、子どもたちの登校前と下校後に教室を見回るとよいでしょう。子どもたちがいない状態の方がよく見えることもあるからです。常に整った教室環境を維持することが、子どもたちの落ち着いた生活を保障することにつながります。 成長に立ち会えることの喜び
昨日、中学校の入学式に来賓として参加しました。
制服もまだ着なれない新入生のほほえましい姿と、先月卒業した生徒たちの入学時の姿がダブりました。この生徒たちも、3年の間いろいろな経験をして、大きく成長していくのでしょう。 体育館の後ろで新入生を見守っている新2、3年生も、頭が動く生徒すらいないほどしっかりと落ち着いた様子でした。彼らも立派に成長しています。 そして、もう一つうれしかったのが若い先生の成長です。縁あって、他校での講師時代からお付き合いのある先生です。初めて受け持った学年を先月無事送り出して2周り目の学年です。2列から4列への隊形の変更を指でそっと指示していました。目と指の指示だけで、子どもが戸惑うことなく行動しています。もちろん小学校での指導の成果もあると思います。しかし、担任としての関係もまだできていない状態で、声を出さずに指示できることは立派なことです。この担任であれば安心して新生活を送れると子どもたちも感じていることでしょう。 このような何気ない場面に、成長の証が見て取れます。若い先生の成長に立ち会えていることの喜びを感じました。 規律を守れなかった子どもの指導
社会生活において必要なことを学ぶことは学校の大切な目的の一つです。集団生活において規律を守ることもその一つです。しかし、子どものことです。時として規律を破ったり乱してしまうこともあります。叱りさえすれば行動があらたまるわけでもありません。叱り方によっては逆効果になったり、対処を間違えると集団の中で孤立してしまうこともあります。注意をして終わりではなく、上手に子どもたちの規範意識を育てていくことが大切です。
A君が授業に遅刻してきた。 「A君、どうしたの」 「ボールを片づけていた」 「ボールを片づけていたんだ。えらいね。それで・・・」 「遅くなった」 「遅くなったんだ。遅くなったことをどう思う」 「いけない」 「遅れると何がいけないの」 「授業が始まるのが遅くなる」 「そうだよね。始まるのが遅くなると誰が困る」 「みんなが困る」 「そうだよね。じゃあ、どうすればいい」 「あやまる」 「みんなの方を向いて、あやまろう」 「みんなも、これでいいかな」 子どもたちが行動を反省して改めるには、自分がやったことがどういうことなのか、なぜいけないのかを自覚させることが必要です。そのためには、教師が一方的に注意をして無理やり言わせるのではなく、子ども自身が、何がいけなかったのか、どうするべきだったかを言うことが大切です。集団の規律を乱したのですから、教師に対して謝るのではなく、みんなに謝るように指導します。 その上で遅れた本人だけでなく、学級全体の問題としてとらえることができるのが理想です。 「教室に戻るとき、A君がボールを片づけているのを見た人いる」 「何人かいるね。どう思った、Bさん」 「片づけしている」 「なるほど、それだけ」 「遅れそう」 「なるほど、遅れそうだと思ったんだ。同じように思った人」 「他にもいるね」 「A君は遅刻しちゃったけど、どうすればよかったのかな。みんなちょっと考えて」 ・・・ 「そうだね。教室に戻るときはみんなで声をかけ合うようにしようね」 叱られることは子どもたちにとって楽しい時間ではありません。これに時間をとられるのは、授業時間も圧迫しますし、あまりよいことではありません。毎回このような対応をとることは難しいと思いますが、ときにはきちんと時間をとって互いに規律を守ることについて学級全体で考えさせたいものです。 素早い行動を促す
年度初めは教室からの移動、集合など、集団での行動が多いときです。この時期に素早く行動できるようにしつけることはとても大切なことです。一度いい加減になったものをきちんとするのはとても難しいことだからです。
「早く」「急いで」行動して、と訴えてもなかなかうまくいきません。子どもの基準では素早く行動しているつもりなのに、教師から「遅い」「もっと早く」と注意されると不満に思ったりもします。そこで、子どもたちにわかりやすい目標を提示することがポイントになります。 「30秒で」「3分で」行動しようと指示すれば、どの程度素早く行動すればいいか子どもによくわかります。また、きちんと行動できたとき教師もしっかりとほめることができます。できなかったときでも、あとどのくらいだったかをきちんと示すことができるので、次はどのくらい素早くすればいいかよくわかります。 もう一つのポイントは最初のうちは行動をいくつかのステップに分けることです。 移動の前に廊下に整列する場合です。 「静かに素早く廊下に整列しよう」という指示には、たくさんの要素が入っています。そこで、 「今から廊下に整列するよ。静かに素早く行動しよう」 「まず口を閉じよう。3、2、1、はい」 「30秒で教室から出るよ」 「全員出たね。もう整列始めているね。えらいね。あと10秒で整列しよう」 一つひとつのステップが明確なので、子どもも行動しやすくなります。うまくいかなかったときも、どこがいけなかったか互いによくわかります。次第にステップを減らしていけば「廊下に整列しよう」という指示だけで素早く行動できるようになります。 年度初めは、学級は白紙の状態に戻ります。子どもの気持ちもリフレッシュされています。学級集団づくりの一番のチャンスです。素早い行動を促すことで、規律ある学級づくりのスタートを切ってほしいと思います。 子どもが教師に求めること
子どもたちが教師に求めることは何でしょうか。「どんな先生がいい」と聞くと、「やさしい」「話を聞いてくれる」「一緒に遊んでくれる」「わかるまで教えてくれる」・・・。いろいろな答えが返ってきます。しかし、このような子どもたちの言葉を頼りに学級経営をしていくと思わぬ失敗をしてしまいます。一番大切なことは子どもの口から語られることがないからです。
それは何かというと「安心して暮らせる環境」を保障してくれることなのです。学校は子どもたちが生活する唯一の外部、社会です。普段私たち大人も意識しませんが、「安心して暮らせる」ということは社会生活を送る上での大前提なのです。 そのために、社会には規律があり、それを守る組織があります。学級では、その役割を教師が担う必要があります。規律を示し、きちんと守らせることがまず求められるのです。 子どもたちが求める教師像を目指すこと間違いではありません。しかし、学級の規律を維持できなくて、子どもたちが落ち着いて学校生活を送れないようなら、そのような教師を子どもは求めません。たとえ厳しくて子どもとの距離をおいているような教師でも、「安心して暮らせる環境」を保証している教師の方を選びます。 子どもが一番望んでいることは、「安心して暮らせる環境」を保証してくれる教師であることを常に意識してほしいと思います。 目指す学級の姿を具体的にする
新しい学級を始めるときに、担任として「こんな学級にしたい」と話す教師が多いと思います。この1年、どのような学級を目指すかを子どもと共有することはとても大切なことです。このとき、「楽しい学級」「協力し合う学級」「規律ある学級」・・・というような抽象的なもので終わってはいけません。子どもが受けるイメージと教師のイメージがずれてしまうのです。
たとえば、「楽しい学級」から、子どもたちは、遊びの時間が多いと勝手に解釈してしまうかもしれません。「協力し合う学級」といっても、担当した者同士が協力し合えばいいと考えて、自分の分担区域の掃除を終えて戻ったときに教室掃除が終わってなくても、手伝わなくて当然といった態度をとるかもしれません。 このようなことを避けるために、目指す姿をできるだけ具体的にすることが大切です。このことは意外に難しいことです。 子どもたちがどんな場面でどのように感じれば「楽しい学級」といえるのでしょうか。どのような行動をとれば「協力し合う学級」といえるのでしょうか。担任として教室に立つ前にこのことをしっかりと考えておく必要があります。 また、具体的にすることできちんと評価することができます。「規律ある学級」の具体例を「始業のチャイムが始まる前に席に着く」と示していれば、子どもたちは意識して行動します。自分たちできちんできたかどうか判断できるので、達成感を味わうことができますし、教師がほめることでより自己有用感を高めることができます。 子どもたちと一緒に目指す姿を具体的にして、子どもたちと共有していくのも学級づくりには役立つことと思います。 目指す学級の姿を具体的することで、学級経営の方向性が明確になり、チェックや修正もやりやすくなります。できるだけたくさんの場面を考えてほしいと思います。 4月はリセットする
4月に新しい学級を担任するとき、どのようなことを意識するとよいのでしょうか。
私は過去を引きずらないことを大切にしています。リセットすると言い換えてもよいかもしれません。 担任する学級が決まると名簿を見ながら、どんな子がいるかまず見ると思います。以前にかかわりのあった子どもたちであれば、自分なりの情報を持っています。また、初めて出会う子どもたちでも、以前の担任や学校から多かれ少なかれ何らかの情報をもらっています。たしかに、子どもたち関する情報はしっかり持っておくことは大切なことです。しかし、この学級の子は、この子はこんな風だという先入観を持ちすぎるのも危険なことです。 新年度は、今年はこうしよう、今年こそ変わろうと思う時です。新たな気持ちで第一歩を踏み出そうとします。担任として子どもたちのそんな様子をまずしっかりと受け止めてほしいのです。一度先入観を捨てて、子どもたちの様子をしっかり見てほしいのです。 逆に子どもたちもこの先生はどんな先生なのだろうと様子をうかがいます。たとえよく知っている先生であっても、今年はどうだろうと観察します。昨年度学級経営がうまくいってなかったとしても、ここで違う姿を見せれば子どもたちの評価も様子も変わります。 また、自分なりの学級経営のスタイルができている先生もそれは一旦わきに置いておいて、子どもたちの様子を白紙の状態で見ることは大切です。学級集団をよく観察した上で、どのようなスタイルで学級経営をするのか考えてほしいと思います。 ベテランの学級経営がうまくいかない場面にたびたび遭遇しています。自分のやり方が通用しないと自信をなくしている方にも出会います。時代が変われば子どもは変わります。成長とともに大きな変化を見せます。目の前にいる子どもたちに応じた学級経営をつねに模索していかなければなりません。過去の成功体験を一旦捨てることも大切なのです。 担任として子どもたちと初めて出会うまでにいろいろな準備をすることと思います。しっかり準備はした上で、子どもたちを白紙の状態で受け止めていただけたらと思います。 |
|