教員研修に関する講演

教員研修のあり方について講演をおこないました。
小中高の先生方が100名あまり参加してくださいました。小中高の先生が一緒に参加する会というのは珍しく、焦点をどこに当てるか悩みながらの講演でした。

教員研修で大切なのは、学校全体として何を目指すのかできるだけ具体的にした上で、そのためにどうすればよいのか具体的な方策をもつこと。
教員を伸ばすということは、一人ひとりのよさを引き出すこと。
教員に要求することは、すぐ具体的にできること、その効果を実感できること。
教員の変容を肯定的に評価すること。
そして、学校の評価は最終的には子どもの姿で語られるべきこと。

このようなことを思いつくまま話させていただきました。私の思いがどれほど参加者に伝わったかわかりませんが、何人かの方が感想や報告を発信してくださいました。ありがたいことです。また、思いがけず古い友人にも会うことができました。私も大変勉強になるとともに楽しい時間を過ごすことができました。このような機会をくださった方々に感謝です。

授業観察

昨日は中学校で授業観察をおこなってきました。転任、新任の先生方と一緒に校内をまわり授業の様子を観察しました。この学校での取り組みの目指す方向を知っていただくためには、口頭で目指す子どもたちの姿伝えるよりは、実際に見ていただいた方がよくわかると思ったからです。
当り前のことですが、すべての学級で目指す姿が見られるわけではありませんが、比べてみることで明確になる部分もたくさんあります。教室には入らず、廊下から子どもたちの姿だけを見て、今どういうが面で子どもたちは、どんな状態なのか考えてもらいました。教師を見ないことで、子どもを見ることに専念できます。
全員が同じ状態であれば、まず間違いなくそれはその教師が見たい子どもの姿です。それに対して、ばらばらの状態であるときはまず間違いなく、その場面で見たい子どもの姿を明確にして授業をしていないときです。
このこと意識して見てもらうことで、自然に先生方が目指している子どもの姿が伝わったと思います。
授業場面ごとに見たい子どもたちの姿を明確にして授業をしていただくようにお願いしました。

授業を見ていておもしろい場面が二つありました。
一つは先生が机間指導をしている場面です。一人ひとりのノートをしっかり見ながら、声をかけています。ところが、しばらくすると一部の子どもたちの集中力が落ちてきました。そのことに気づいたのでしょう。移動の間に顔を挙げて教室全体を見回してから次の子どもの指導に移り始めました。すると集中力を失っていた子どもたちがふたたび課題に取り組み出しました。教師がつねに学級全体を見ていることの大切さを参観者に伝えることができました。

もう一つは、社会科の時間で、先生が説明している場面です。授業者は比較的小さな声で話しているのですが、生徒全員が顔を食い入るように見ています。すごい集中力でした。ところがしばらくすると一人の生徒が集中力をなくしてきました。学級全体としてはまだ集中していますが、このままだと全体の集中力が落ちていくかもしれません。また、集中力をなくしている生徒のことも気になります。そう思って見ていると、授業者は子どもたちに資料集を見て、話に関連したことを探すように指示しました。もちろん子どもたちはすぐに資料集を見始めます。先ほどの子どももまわりが動きだすと、少し遅れて資料集を手にとりました。そのあと、授業者は彼のそばに行き、見つけたことを発表させました。集中力をなくしていた生徒を注意するのではなく、授業の流れの中で自然に参加させました。素晴らしい授業力に感心しました。

一緒に授業を見た先生方は子どもたちの姿からどんなことを学んでくれたでしょうか。ある先生は、この日気づいたことを早速自分の授業に取り入れようとしていました。次回訪問時に一緒に回った先生方がどのように変化しているかとても楽しみです。

学校が大きく動き出す

昨日は、中学校で授業アドバイスをしてきました。連休の谷間に訪問した学校です。連休明けの子どもたちの変化が気になっての訪問です。

3年生は、相変わらずよく集中できていましたが、ちょっと気になることにも気づきました。例えば、指名された生徒が解答を板書しているときに、解き終わった生徒がまわりと雑談して騒がしくなる。教師が板書で黒板を向いているとき、ごそごそする。このようにすることがない時間に緩みが見え始めています。教師が話し始めるとすぐに集中するので、今のところそれほど心配することではありませんが、早めに手を打っておいた方がよさそうです。問題が解けたら次に何をするのかといった、指示を明確にするようにお願いしてきました。
また、全員がよく集中しているということは、昨年あまりやる気を見せなかった生徒が頑張っているということです。教師から見るとみんな頑張っているという評価になりやすいのですが、そういった生徒をきちんと評価することもお願いしました。みんなが頑張っているため、急にやる気を出しても試験の相対的な結果に反映されないこともよくあります。結果が出なくてやる気をすぐになくすかもしれません。そのことも念頭に置いてのお願いです。

2年生は、一番心配していたのですが、前回訪問時よりも学習においては落ち着く傾向を見せていました。担任の学級経営が実を結びだしているようでした。しかし、どの学級も苦労していると感じた前回と比べて、うまくいってきている学級とそうでないところの差が見え始めたようでもあります。簡単なことでいいので、学年全体で指導することを明確にして取り組むようにお願いしました。

1年生は、連休明けで緊張も解け、さすがに緩む場面が増えてきました。受け身の時間が続くとごそごそしたりして集中力をなくします。一方的に教師の説明が続く授業、教師が子どもを見ていない授業では、その傾向が顕著です。今は子どたちが集中している時間が長いので気づいてない方もいるようです。このことを意識するようにお願いしました。

授業を見ていて、とてもよい場面が2つありました。
一つは国語の時間です。子どもが作業をしているときに、なかなか手をつけない生徒が後ろに一人いました。ぼつぼつ何か働きかけないといけないと思ったとき、授業者が教室をぐるりと回りながら、自然にその子に近づきました。絶妙のタイミングです。ところが指導をし始めてしばらくすると、作業が終わった生徒がざわざわし始めました。教師が見えなくなったためでしょうか。このまま指導をしていると学級全体が集中力をなくすと思ったとき、「できた人は、まわりの人と確認して」と指示を出しました。個別指導をしていても、きちんと学級全体を把握していたのです。まだ若い先生ですが、とても感心しました。

もう一つは、理科の時間です。顕微鏡の使い方を板書して、説明をしている場面です。子どもたちは驚くほど集中して聞いています。だれも、鉛筆を持って写したりしません。授業者もしっかりと子ども一人ひとりを見ています。話し終わると、「写していいよ」と指示を出しました。その指示を待って、子どもたちは一斉にノートに写し始めました。1月の間に、きちんと授業のルールが浸透しています。もう一つ感心したのが、「写していいよ」だけでなく、「自分が大切だと思ったところ、ポイントだと思ったところに線を引いてね」という指示を同時に出したことです。ただ箇条書きにしているだけで、ポイントがはっきりしない板書だと思っていたのですが、このための伏線だったわけです。
この先生も若手です。

若手の先生が育っていることがとてもうれしく思いました。
それだけではありません、お話しをした転任者の複数の方が、この学校は教師の人間関係がいいので楽しいと言ってくれました。昨年度は、どちらかといえばそのことで苦労したので、本当にうれしく思いました。今年度に向けてやって取り組んできたことが実を結びだしたのでしょう。学校力アップに向けて大きく動き出したことを感じた1日でした。

子どもの活動から考える

教材研究を始める第一歩は、目の前にある教材は子どもにどんな力をつけるためにあるのか、このことをきちんと考えることです。そこをはっきりさせずに、どんな発問をするのか、説明をするのか、活動をさせるのかといった各論に入っても迷路に迷い込んでしまいます。その上で、その力がついたということは、子どもがどんな場面で何ができればよいかを明確にします。問題を解ける。発問に対して、答えられる。あることがらを説明できる。できるだけ具体的にします。

つぎに、子どもたちがそうなるためにどのような活動をする必要があるかを考えます。どんな説明をするかという教師の活動ではなく、子どもの活動です。教師が説明することも必要です。その場合、その説明に続いてどんな活動をさせるか考えてみます。説明した事を使って問題を解かせる。説明を理解するために友だち同士で説明させる。・・・

そこで、その活動に子どもたちがうまく取り組めるようにするために、教師はどのような働きかけをするとよいのかを考えます。教師の説明はついては、ここでもう一度見直します。友だち同士説明させるなら、発問を工夫して子どもが自身で気づけるようにできないか。問題を解かせるなら、問題を解く過程で気づかせることはできないかと考えます。

例えば、国語の物語の教材を考えてみます。天気が主人公の気持ちを表していることから、読み取りをする場面を考えてみましょう。
教師が、天気が変化していることから、これは主人公の気持ちを表していると説明する。そこで、ではそれぞれどんな気持か考えてみようと発問する。
この流れに対して、子どもが天気から主人公の気持ちを考えるのであれば、子どもがそこに気づくような発問や流れはないかと考えます。「天気」がキーなので、「天気」に注目させることはできないか。そこで、「この段落と前の段落で何が違う」といった発問を考えます。
子どもから「天気」も「主人公の気持ち」も出てきたら最高ですが、「天気」しか出ないことも考えます。「天気」は一旦置いておいて、2つの段落での「主人公の気持ち」を考えさせる。「主人公の気持ちはどう」と問いかける。というように発問を考えていきます。
この流れが正解ということではありません。最終的に、この流れより最初の方がよいという判断をすることもあると思います。教材を使って学ぶのは子どもです。子どもは活動することで、学んでいきます。大切なのは、教材を使う子どもの活動をどうすればよりよいものにできるかという視点で考えることです。教師の活動の合間に子どもの活動があるのではなく、子どもの活動の合間に、教師が何をするかという発想を持ってほしいと思います。

「教材研究」を追加しました

新しく「教材研究」というカテゴリーを設けました。教材研究はいろいろな側面があって簡単には伝えられないのですが、悩んでいる方も多いと思いますので、私なりの考えを書いていきたいと思います。

教材研究の前に

若い先生から、教材研究をどうやればいいのかわからないということをよく聞かれます。どのレベルから話をすればよいか迷うこともよくあります。一つひとつの教材についてどのようにして授業の流れをつくるのか、そのための資料や参考になるものの見つけ方なのか、そもそも授業の作り方なのか。
実は具体的に教材研究について話す前に、次のようなことを先生に問いかけたりお願いしたりします。

例えば国語であれば、「物語は子どもにどんな力つける教材、説明文は、詩は、文法は」といったように、教材のカテゴリーごとの大きなねらいを明確にすることです。ときには、「国語ってどんな力をつけるの、社会は」と教科の意義を聞くこともあります。この教材観・教科観というものがしっかりしていないと、一つひとつの教材に対して何を大切すればよいのか、教材のどこに注目すればよいのかはっきりしないからです。

また、多くの教科で学年ごとに同じカテゴリーの内容を学習します。子どもの成長にともない何が新たに加わっていくのか、何が必要なくなっていくのか、何が変わらないのか。このことをしっかり意識するようにお願いします。
新たに加わるということは、その内容に取り組めるベースがその時点でできているはずだということです。そのベースはいつどのようにして身についているのか考える必要があります。
変わらないものはその教科の根幹をなすものです。つねにそのことが身についているか問い続ける必要があります。
こういったことを意識することで、大切にすること、こだわりすぎないことが明確になります。
小学校であれば6年生までの教科書を一度は目を通しておくこと、特に高学年であれば、中学校の内容も、中学校であれば、小学校高学年の内容と高校の内容も把握しておく必要があります。

とはいえ、すぐにしっかりした教材観・教科観をもったり、広い視点での教科内容の把握ができるようになるわけではありません。日々の教材研究に取り組む中で、個々の教材が子どもにどのような力をつけることをねらっているのか、それが過去の学習内容や、これからの学習内容とどうかかわっているのかを常に問いかけることで身につけていってほしいと思います。

研修の打ち合わせ

中学校で今年度の研修の打ち合わせを行いました。

子どもたちのかかわり合いを大切にし、相談したりグループで活動したりすることを積極的に取り入れている学校です。昨年度研究発表をおこないましたが、その後も続けて授業改善に取り組んでいます。

話題になったことの一つが新たにこの学校に赴任してきた方への対応です。すべての学校や先生が実際にペアやグループでの活動を積極的に取り入れているわけではありません。また話に聞くだけではどのようにしていけばよいかわかりません。ベテランほど自分のやり方が確立しているので、今までの自分の方向性と異なるとどうしていいかわからなくなってしまいます。公立の学校では人事の移動に伴い多かれ少なかれ起こる問題です。結論としては、早い時期に彼らに他の先生方の授業を見ていただき、この学校での取り組みがどのようなものか理解してもらうことになりました。具体的には、私と一緒に校内をまわりながら、授業中の子どもたちの様子を観察し、意見を交換するというものです。子どもたちの活動と教師の働きかけ、その意味を考えてもらうことでこの学校の取り組みを理解してもらおうというわけです。

また、若い先生のことも話題になりました。この学校の若手はずいぶん伸びてきました。しかし、研究発表も終わり、自分たちはこれでいいと思ってしまうと成長は止まります。彼らに、よりよい授業を目指し続けてもらうには、今できていること、まだできていないことを自覚してもらうことが大切です。次回訪問時、今の彼らの課題をしっかり見つけたいと思っています。

早い時期に研修担当者と学校の現状と課題について話し合う機会を持てたことは大変有意義でした。この1年もこの学校の先生方と一緒にたくさんのことを学べそうな予感がしています。

よいスタートを切った学校

連休の谷間に、中学校の授業研究に参加しました。

新学年のスタートはどうのようであるか気になっていましたが、特に新3年生が集中して授業に参加していました。2年生のときと比べて、ずいぶんよい状態です。4月は子どもたちも気持ちを切り替えるときです。そこを先生方がうまくつかんでよいスタートを切ったのだと思います。学年内の横のつながりがよいのでしょう。学級による差が少なかったのも印象に残りました。
1年生もうまく人間関係をつくることができたようです。学級の一体感が育ちつつあるようでした。友だちの発言をしっかり聞こうという雰囲気を感じました。
新2年生は、まだ子どもたちがまとまっていないようでした。1年生のとき、学級によって雰囲気がかなり異なっていました。子どもたちが昨年度の学級の状況を引きずっているため、学級としてまとまりなく感じるのかもしれません。ここからが各担任の頑張りどころです。担任個人の問題ではなく学年の問題として協力しあってくれることを期待しています。

授業研究は、生徒に焦点をあてて検討会を開きました。ともすれば、教師の指導面に目が向きやすくなるのですが、司会者の上手な進行で、子どもたちの活動を中心にしっかりと意見交換ができました。新しく赴任された先生も、グループでの協議にすぐに溶け込み、とてもよい雰囲気で進みました。昨年から始めたグループ討議も1年間でしっかり定着したようです。

3月の時点で心配な面もいくつかあったのですが、全体としてとてもよいスタートを切れているようでした。先生も子どもも4月は気持ちを切り替えるときです。うまく波をつかめたようです。また前年度にやってきたこと、学んだことを一からトライできるときでもあります。うまくスタートを切れたのは、昨年度に先生方が地道に努力し学び続けたことがその根底にあると思います。

学校がよい方向に向かう手ごたえをしっかり感じた1日でした。次回の訪問がとても楽しみです。

家庭訪問

家庭訪問は保護者も教師も気を使うものです。学校によっては廃止するところもあるようですが、子どもたちが普段生活している環境を知ることはとても意味のあることです。せっかく時間を使って実施するのですから、形式的なもので終わらず学級経営に役立つものにしましょう。

家庭訪問は、子どもの生活環境を知ることが大きな目的の一つです。
家だけでなく、そのまわりの環境もしっかり観察することが大切です。遊び場が近くにある。コンビニが近くにある。そういったことも子どもの生活に影響を与えます。また、最近は玄関先で話をすますことも多いと思いますが、花が飾ってある、靴が揃えられているといったちょっとしたことからでも家庭の雰囲気をつかむことができます。きょろきょろしてはいけませんが、しっかりと観察することが大切です。
許されるのであれば、子どもが勉強している場所を見せていただくことはとても有益な情報を得られます。もし見せていただくのであれば、事前にその旨を保護者に伝えておくことが必要です。その場で突然お願いしても困ってしまわれます。ときにはなぜ部屋を見せたと親子でトラブルになることもあります。家庭訪問でお願いすることがあれば、必ず事前に伝えておくようにします。

保護者との話ですが、基本は聞き手にまわることです。保護者と担任の信頼関係を互いに築くチャンスです。今度の担任は話をしっかり聞いてくれると思ってもらえることが大切です。笑顔でしっかりとうなずき、受容的な態度で接することを心がけます。
また、相手のホームグランドですので、学校で話すのとはまた違ったことを聞くことができます。子どもの家庭での様子を中心に聞きましょう。家へ帰ったら最初に何をしているか、どこで遊んでいるか、どこで勉強しているか、など項目は事前に整理しておきます。保護者同士で何を聞かれたか情報交換されたりもしますので、共通のものを決めておくとよいでしょう。
こちらから話すのは学校での子どもの様子です。ポイントを押さえてよいところを中心に伝えるようにします。これも事前に整理しておくとスムーズに進みます。
最後に要望等を聞くことになると思いますが、その場では答えづらい質問や要望が出てくることがあります。そのような質問にはその場で答えることはせずに、持ち帰って検討すると伝えましょう。その際回答の方法を確認しておきます。電話でよいのか、文書がよいのか、後日訪問がよいのかをきちんとしておかないと対応が悪いとトラブルになることもあります。そして、学校に戻ったらすぐに上司に報告し、翌日にはいつまでに回答するかだけでも伝えましょう。ここでの対応をしっかりすることが信頼につながります。
また、時には質問や要望というより学校や同僚への批判を聞かされることもあります。言いたいだけであって何か対応を期待しているのではありません。「なるほど、そのように感じられているのですね」としっかり受容だけはして、こちらの意見等は差し控えておきましょう。同調するのも、逆にそんなことはないと説得するのも意味のある行動ではありません。このようなことで保護者と仲良くなったり、議論して関係を悪くしたりしてもしょうがありません。

家庭訪問には地域の事情が色濃く反映されます。お茶やお菓子はいただいた方がいいのか手をつけない方がいいのか。座敷に上がった方がいいのか、玄関先で済ますのか。その学校固有の暗黙のルールがあることもあります。わからないことや気になることは先輩や同僚にきちんと確認しておくことが大切です。
訪問時間は長くはとれません。個人の情報をメモするカルテ作り、聞くこと話すことなど事前に整理して臨んでください。このカルテは家庭訪問以外にも面接や生活指導時にも活用できます。

家庭訪問は感度を高くして、子どもたちの家庭生活に関する情報をできるだけたくさん集めることと、保護者との関係づくりのためによい聞き手になることを意識して臨んでください。

特定の子にとらわれすぎない

学級にはいろいろな子がいます。落ち着かなかったり、ルールを守れなかったりして教師が注意をしなければいけないこともあります。こういった、いわゆる気になる子にかかわる時間はどうしても他の子より多くなりがちです。注意してほしいのは、全体の場で彼らにかかわる時間をとられすぎないようにすることです。

彼らとかかわっているとき、他の子どもたちが自分と関係ないと感じていれば、それは空白の時間です。子どもたちは勝手なことをしたりして、集中力をなくしてしまいます。また、特定の子にいつも時間をとられていると、「あの子のせいで、また」とその子に対して悪い感情を持ってしまいます。

ではどうすればいいのでしょう。状況にもよりますが、基本は全体の場ではあまりかかわりすぎないことです。たとえば、まわりの子にちょっかいをかける子であれば、口頭で軽く注意をする。何度も繰り返すようであれば、そのそばに立ってけん制する。1回あたりの時間はできるだけ少なくして、できれば目や動作で注意をうながすようにする。子どもたちがその時間を意識しないように、簡潔に済ますのです。
一人ひとりを大切にしなければいけませんが、そのために大多数の子どもにマイナスあたえていけません。
全体の場でどうしても時間をかけなければいけない状況であれば、個人の問題ではなく必ず学級全体の問題として扱います。一人ひとりが自分の問題としてとらえなければ貴重な時間を使ってはいけないのです。(学級全体の問題か個別の問題か参照)

特定の子にとらわれすぎて、学級全体の集中力をなくしたり、雰囲気を壊さないように気をつけてほしいと思います。

連休前後に学級の状態をチェック

春の大型連休が近づいてきました。新学年がスタートして子どもたちの緊張も取れてくる頃です。よそいきの仮面をはずして、本音の部分も見せるようになってきます。そして、連休になれば、子どもたちにいろいろなことが起こります。
新しい友だちとの交友関係が深まる。家族でのいろいろな行楽で気が緩む。学外の友だちと久しぶりに会う。中学・高校の新入生であれば、部活動で先輩後輩のつながりができてくる。受験生であれば、勉強に意欲的に取り組む。・・・
うまくリフレッシュし連休明けに元気な顔を見せてくれればいいのですが、気が緩みすぎて、なかなか元に戻らない。4月にうまく学級になじめていなかった子が学校に来られなくなる。・・・
連休明けは、いろいろな問題がでてくる時期でもあります。
この時期の子どもの様子をしっかり観察し、学級の状態をチェックしてみましょう。

・4月スタート時に子どもたちに示したルールはきちんと守られているか。
守られてはいない。守られてはいるが緩んできた。
→連休明けがリスタートするチャンスです。もう1度4月のスタート時のつもりで、きちんとルールを確認し、守れるように指導しましょう。

・子どもたちの人間関係はどうなっているか。
小グループ化が進んでいる。
→小グループができること自体が悪いことではありません。連休の前後でグループの変化を見てください。変化があった時は、グループから離れた子を観察してください。人間関係がうまくいかない前兆かもしれません。

グループには入れない子がいる。いつも孤立している子がいる。
→一人でいることが多いからといって、すぐにそれが問題というわけではありません。まず、声をかけて状況を聞いてください。その際、連休中の予定も確認してください。そして、「連休が明けたらその話を聞かせてね」と結びます。もし学校に行きたくないような状況になっても、こうして子どもとのつながりを作っておくことが、よい方向に作用することがあります。

・学習意欲が高まっているか。
学級全体でやる気が高まっている。
→やる気が高まるのはいいことですが、予定通りできずに落ち込んでしまうこともあります。最低限これだけはやるという目標と、ここまでやりたいという目標の2つをもつように、事前に指導しておくとよいでしょう。連休明けには、目標を達成できたかどうかを確認してください。達成できていない子には、個別に話を聞いて、アドバイスをしましょう。

やる気があまり感じられない。
→まず最低限の目標を持たせるようにしましょう。教師から具体的にこれだけはやっておくということを指示することもときには必要です。連休明けは、目標を達成できた子を大いにほめて、学級全体にやる気を広げるようにします。

連休は教師にとってもちょっと一息入れたい時でもあります。その前に、今年の学級経営で大事にしていることを思い出し、チェックしてみてください。小中高、学年によっても視点は異なります。ここに挙げたものは例に過ぎません。チェックの結果、気になることがあればそれに応じて、全体に話をする、個別に話を聞くなどの対応をしてください。そして、担任も上手にリフレッシュして(部活動などで忙しい方も多いとは思いますが)、連休明け、子どもたちの様子の変化をしっかりと見てください。子どもの変化に応じて子どもへの指導・対応を修正していくことで、この後、学級経営が軌道に乗っていきます。

係活動の指導

学級ではいろいろな係が決められていると思います。学校全体で決められているものもあれば学級独自に決めたものもあると思います。係活動は子どもが、学級・学校という小さな社会の中で自分の役割を果たすことで自己有用感を持ち、互いに役割を果たすことの大切さを実感し、責任感を持ってくれるようになることを狙っています。
では、担任として子どもたちの係活動をどのように指導していけばよいのでしょうか。

一つは、係の仕事をできるだけ具体的にすることです。口頭で簡単に説明して済まさずに、きちんと文書で明確にしておくとよいと思います。子どもたちは自分で何をすべきかの判断はなかなかできません。こちらの期待した動きができなくて、つい注意してしまうことになってしまいます。子どもにとってみれば、「そんなの知らない」「言われていない」のに何で注意されるのとなってしまいます。わかりやすく箇条書きで指示して、チェックしやすいようにするとよいでしょう。
また、することだけでなく、この係に対する教師の思い、願いを書いておくのもよいと思います。教科の連絡係であれば、「学級の全員にきちんと伝わり、誰も忘れ物をしないようにしてほしい」などと伝えます。こうすることで、「自分はちゃんと黒板に書いた。見ない人が悪い。自分の仕事は果たした」から、「どうしたら、みんな見てくれるか。忘れないでくれるか」へと子どもの意識を変えていけるようになります。

もう一つは、評価です。自分のしている仕事が認められたいのは子どもも同じです。目立たない仕事でもきちんと見ていると子どもに伝えることです。教科の準備をだれも忘れなければ、全員をほめるだけでなく、「教科係がしっかり連絡してくれているからみんな忘れなかったんだね。ありがとう。みんなも『ありがとう』と言おう」と感謝することです。仕事をきちんとしただけで評価されたのではなく、それに友だちが応えてくれたからこそほめられたことをしっかり伝えてください。こうすることで、役割を果たすとは、その仕事をすることではなく、その仕事を通じてみんなの役に立つこと、自分がやればいいだけでなく、みんなとのかかわりが大切なことをわかるようになります。

最後の一つは、過度の責任追及が起こらないようにすることです。子どものことです。係の仕事を忘れたり、ミスしたりします。そのために他の子どもたちに迷惑がかかることもあります。そのとき、子どもたちが「係が悪い」と一方的に非難することのないように気をつけることが大切です。係の仕事を明確にすれば、その責任も明確になります。係が機能するようになればなるほど、ミスも明確になり、責任追及も起きやすくなります。ミスした本人には、係の仕事がみんなに影響する大切な仕事であることを改めて伝え、「だからこそしっかりお願いね」と励ますことです。個人の責任を果たせと迫るのではなく、みんなのための大切な役割だからしっかりやらなければという意識を持たせるのです。
また他の子どもにも、ミスを非難するのではなく、忘れているのに気づいたら声をかけるといったサポートする姿勢を持つことの大切さを伝えてください。

子どもによっては、負担になったり、積極的に取り組めないこともある係活動ですが、一人ひとりの仕事に対して感謝し、助け合う雰囲気を作ることで、前向きに取り組んでくれるようになります。係活動を通じて子どもたちの社会性をうまく育てたいものです。

どの子にも声をかける

子どもたちに声をかけることは、担任が常に意識していることだと思います。学級全体に対してはもちろん、日ごろから子どもたち一人ひとりとコミュニケーションをとることは学級経営を円滑におこなうために大切なことです。学級で何か問題が起こったとき、担任と子どもの間によい関係が築けていることが、指導力を発揮するための大前提です。そのためにも、どの子ともきちんとコミュニケーションをとることが大切です。

ところが、担任としては平等に声をかけているつもりなのですが、実際には偏りが出てきます。良くも悪くも目立つ子、気になる子に集中してしまうのです。比較的おとなしく問題行動の少ない子にはどうしても声をかける機会が少なくなります。こういった子どもたちが教師とのコミュニケーションを必要としていないわけではありません。日ごろ目立たないからこそ、積極的に声をかけることが大切なのです。

そこで、お勧めしたいのが名簿を見ながらの振り返りです。1日の終わりや週の終わりに、名簿を見ながら一人ひとりにどんな声掛けをしたか、どんなかかわりを持ったか思い出すのです。できればその内容をメモしておくと面接や所見を書くときにも役に立ちます。
実際に振り返ってみると、全員とはコミュニケーションが取れていないことに気づくと思います。そのことに気づけば、翌日は意識的にコミュニケーションをとれていなかった子に声をかければいいのです。こうすることで、きちんと学級の全員とコミュニケーションをとれるようになります。

一人ひとりを大切にしよう、全員に声をかけようと思うだけではできません。チェックする工夫をすることで、はじめてきちんとできるようになるのです。

情報交換の勧め

子どものいろいろな姿を知るためには情報収集が大切です。(子どもの姿を知る参照)
そのため方法の一つとして、日ごろから同僚の教師と情報交換をすることを意識してほしいと思います。

大切なことは、情報をもらうことばかりに気をとられて、こちらから提供することを忘れないことです。
たとえば、掃除区域の担当の教師には、当番のメンバーが変われば、そのことをきちんと伝える。担当の子どもに関して気になることがあれば、事前に伝えて、掃除の様子を観察してもらう。こちらから情報を提供するとより意識して子どもたちを見てくれます。
教科担任や部活動の顧問に対しても、同様です。学級で起こっていること、個別の子どもの情報をできるだけ積極的に伝えます。

「最近学級が落ち着かないのだけれど、先生の授業ではどうですか」
「○○さん、友だち関係がうまくいっていなくて元気がないので、気にかけてもらえますか」
「△△君、この間の試験で失敗して落ち込んでいます。部活動は元気にやっていますか」
・・・

自分の学級経営がうまくいってないことなどは、担任として言いづらいときもありますが、きちんと伝えることで、サポートしてもらえたり、よいアドバイスをもらえたりもします。他の教師に見せる姿から問題解決のヒントが得られたりします。

また、逆の立場になってみれば当然ですが、自分の学級以外の子どもたちの姿もよく観察して、気づいたことがあれば担任に伝えることを意識してください。
些細なことでもいいのです。気になることだけでなく、「元気よく挨拶してくれた」といったよいことも伝えるようにします。自分の学級の子がほめられるのは担任としてうれしいことです。「○○先生がほめてくれたよ。先生もうれしかった」。こういう言葉かけができることは、学級経営上非常に大きなメリットがあります。この先生もあなたの学級の子どもを意識して見てくれるようになるでしょう。

積極的に情報交換をすることで、より多くの視線が学級の子どもにそそがれ、より多くの姿が伝わってくるようになります。自分では見ることのできない姿を知ることが、子どもたちをより深く理解することにつながり、きめ細かな学級経営を可能にしてくれます。

家庭での子どもたちの生活を把握する

担任は子どもの学校での様子は把握していますが、家庭での生活はなかなか把握することはできません。そこで、定期的にアンケート等による実態調査をすることを勧めます。(子どもの姿を知る参照)
最近は学校評価が定着してきたので、学校全体で定期的に調査していることも多いと思います。重複する必要はありませんが、担任としての学級経営上の重点項目に関連した項目を加えたり、時期を工夫して、必要な情報を適宜収集するようにしてほしいと思います。

質問項目は、基本的生活習慣にかかわること、学習面にかかわること、家族やまわりとのかかわりなどを、子どもたちの発達段階や学級経営の観点から絞ってくことになります。

基本的生活習慣であれば、「起床・就寝時刻」「歯磨きの習慣」「朝食をとるか」「誰といつ、どこで、何をして遊んでいるか」「テレビの視聴時間」「読書習慣(時間・ジャンル)」「ケータイメールの利用状況」・・・

学習面であれば、「家庭での学習時間」「家庭での学習内容(予習・復習・教科)」「わからないときどうしているか」「通塾状況」・・・

家族やまわりとのかかわりであれば、「食事はだれと一緒にとっているか」「誰とよく話すか」「困ったとき誰に相談するか」「家の手伝いはしているか」

その他、「小遣いに関して(金額・もらい方・使い方)」・・・

これらすべてをたずねる必要はありませんが、子どもに意識してほしい項目を意図的入れておくとよいでしょう。
たとえば、お手伝いをしてほしいと思うのなら、ただ「やっているか」だけをたずねるのではなく、「頻度」「内容」「満足感」など、より詳しくたずねると、やっていない子どももやろうかなと思うようになります。
また、一人ひとりの様子を把握するためにも記名でおこなうべきでしょう。指導すべきことが見つかったとき、学級全体に対して働きかけるのか、個別に働きかけるのか。子どもに直接働きかけるのか、保護者に働きかけるのかの判断もしやすくなります。

表計算ソフトなどをうまく活用すると、いろいろな項目の相関を簡単に調べることができます。学習時間とゲーム時間に負の相関があれば、家庭学習の大切さを強調するだけでなく、ゲーム時間を減らすことを意識するといった、指導の方向性も見えてきます。

早い時期に調査をおこなって学級の特性を知ることは、1年間の学級経営の方向性を決めるにも役立ちます。また、何度か実施することで、子どもたちの変化の様子や指導の結果を知ることもできます。普段担任が見ることのない家庭での子どもたちの生活の様子を把握することは、学級経営にとってとても意味のあることです。

早い時期に個別に話をする

新学年が始まった4月は、とてもあわただしい時期です。とても忙しいのですが、できるだけ早い時期に子どもと個別に面接をおこなうことを勧めています。

まだ子どもたちのことをよくわかっていないのに何を話せばいいのか。子どもたちも学級に慣れていないこの時期に「なぜ?」と思うかもしれません。
環境が大きく変わるこの時期は、どうしても子どもたちは不安定になりやすいときです。いつも以上に緊張して学校生活を送っています。子どもの今の状況を的確につかむために、個別に話すことはとても意味のあることです。
教師が何か話そうとする必要はありません。ほんの4、5分でいいのです。子どもの話を聞いてください。このとき、「学級には慣れた」といった具体的な質問ではなく、「どんな調子」といった、あいまいな軽い問いかけをしてください。何気なく出てくる答の中に、気になっていること、意識していることが隠れています。「まあまあ」といったあいまいな答であっても、「それってどういうこと」と問いかけることで具体的なことを聞き出せます。

「絶好調!」
「それってどういうこと」
「仲のいいやつと一緒のクラスになったし、勉強も頑張っている」
・・・

新しい学年になって頑張ろうとしている。
この学級は楽しい。
仲のよい子がいなくて、さびしい。
雰囲気になじめない。
よくわからない。
・・・

子どもたちは、思った以上にいろいろなことを話してくれます。簡単でよいので、一人ひとりメモしておいてください。この時期の話と次の面接での話を比較することで、子どもがこの学級の中でよい状態になっているのか、それともよくない方向に変化しているのかをつかむことができます。
また、ここで教師が話を聞く姿勢を見せることで、子どもとの人間関係をはやくつくることができます。「話を聞けてよかった。ありがとう」とIメッセージで終わることを忘れないでください。

5月病という言葉があります。ゴールデンウィークが明けた頃が不適応の子どもが出始める時期です。この面接で予防できるとは思いません。しかし、面接で「頑張っている」と話したのであれば、どこか無理をしていたのではないかと判断の手助けにはなります。また、初めて1対1で話すのが不適応を起こしてからでは、コミュニケーションもうまくとれません。このようなとき、面接で教師が聞く姿勢を見せていたと子どもが感じていれば、話もずいぶん違ったものになります。

この時期に全体の場で見せる子どもの姿は、よそゆきであったり、様子見であったりします。仰々しくする必要はありません。立ち話のようなものでもけっこうです。彼らの緊張をほぐし、殻を破りやすくするためにも、早い時期に学級の全員と個別に話をしてみてください。

学級全体の問題か個別の問題か

学級の中ではいろいろな問題が起こります。担任は一つひとつきちんと解決していく必要があります。このとき意識してほしいことが、その問題が学級全体にかかわる問題か、個別(個人)の問題かです。

「体調が悪い」と訴える子がいた。これは、個人の問題です。個別に判断し、保健室に行かせる等の対応をとります。では、「苦手な食べ物があるので給食を残したい」と訴えた場合はどうでしょうか。一見個別の問題のように感じますが、これは学級全体の問題です。「給食は残さず食べる」という全体のルールに影響するからです。ルールはみんなが守るべきことです。教師が守らせるのではなく、自分たちの問題として考えさせるべきです。教師が判断するのではなく、「みんなはどう思う」と子どもたちに問いかけます。子どもたちと一緒になって考えるのです。

授業を始めようとしたら泣いている子がいる。教師が「どうしたの」と聞いても、泣くばかりである。そこで、事情を知っている子がいないか聞く。そばにいた何人かが事情を話す。そうこうしているうちにどんどん授業時間に食い込んでいく。
これは、個別の問題を全体の問題にしてしまった例です。子どもが泣いている時点では、これは個別の問題です。話もできない状態であれば、ここで時間を使ってはいけません。「休み時間に話聞かせて」と切り上げて、授業に入るべきです。話を聞いて、学級全体で考えるべき問題とわかれば、あらためて取り上げればいいのです。

全体で考えるべき問題を教師が判断してしまうと、自分たちで考えずに教師の顔色をうかがうようになります。個別に対応すべき問題を学級全体に投げかけたり、全員の時間を使ってしまうと、その問題にかかわれない、参加できない子がでてきます。全員で考えるべき場面でも参加しくなってしまいます。
今起こっている問題は学級全体で考えるべき問題か、個別に対応すべき問題か、きちんと判断して対処することが大切です。

わかりやすい担任になる

子どもたちが安心して学級で暮らせる条件の一つに、学級担任がわかりやすいということがあります。行動や反応を予測しやすいと言い換えてもいいでしょう。

例えば、子どもが花瓶を割った時、今度から気をつけるようにやさしく諭すのでしょうか、それとも厳しく叱るのでしょうか。状況によって違うかもしれません。いろいろな考え方があるでしょう。どちらであるかは問題ではありません。大切なのは、子どもから見て同じような状況では、同じ対応をすることなのです。物を壊したらやさしく諭す先生なのか、厳しく叱る先生なのか。このような時はこのように行動すると子どもに予測できることが大切なのです。
花瓶を割った時にはやさしかったのに、ガラスを割った時には厳しければ子どもは戸惑ってしまいます。担任としては、ガラスを割った時はふざけていたので厳しく接したのかもしれません。しかし、それが子どもたちにきちんと伝わっていないと、担任の行動の基準がよくわからないと不安に思ったり、ひいきしていると非難したりします。
このことは、学級経営のあらゆる場面で言えます。特にどんな時にほめるのか、どんな時に喜ぶのかがはっきりしていると、どうすれば担任に認めてもらえるのかよくわかります。認められたいと思った行動は、ちゃんと認めてもらえるので、安心して学校生活を送れます。

子どもにとって担任がわかりやすいということは、好きとか嫌いとかという以前の問題です。たとえ納得していなくても、担任の行動にぶれがなければ子どもなりに対応できます。納得はしなくても理解してくれます。好きにならなくても、担任として認めてくれるのです。
好かれる担任になろうとする前に、子どもたちにわかりやすい担任になることが大切です。

学級懇談会

学級懇談会は、担任が学級での子どもたちの日ごろの様子を伝えたり、自分の学級経営に対する考え方を理解いただき、協力を求めたりするチャンスです。一方保護者の側からすると、子どもを預けている担任の人となりを知って安心したい。子どもたちに関する情報知りたい。よそのお子さんと比べて自分の子はどうなのか。そのようなことを知りたいと思っています。担任と保護者とでは求めるものが微妙にずれているように感じます。このずれを意識して、互いにとって有意義な時間となるようにすることが大切です。

学級懇談会では、教師が伝えることは資料等を使ってできるだけ整理し、コンパクトにまとめることで、保護者からの質問や意見を聞く時間をできるだけとるようにします。もし質問等がでなければ、子どもたち様子を紹介したり、予想していた質問を自分の方から「・・・のようにお感じになっている方はいませんか」とふってみることで、口を開いていただけると思います。
保護者同士の関係をつくるためにも、質問に対してすぐに教師が答えるのではなく、同じように思っている人がいないか確認したり、「○○さんの質問のような場合、どうされていますか」と他の保護者にも聞いてみたりするようにします。互いの顔が見えるように座席をコの字型にするなど、保護者同士のかかわりをつくる工夫をするとよいでしょう。

また、自分の子どもは他の子どもと比べてどうなのだろうと気になる保護者も多いはずです。起床・就寝時刻、学習時間、読書量、おこづかいの額など、保護者が知りたいと思うデータを事前に調査し、資料として提供することで、保護者との話し合いのきっかけもつくれます。ここで、資料をただ提供するだけではデータが独り歩きしてしまいます。担任として個々の結果をどうとらえているか、きちんとコメントすることが大切です。

学級懇談会は教師と保護者が情報を交換し、信頼関係をつくる場です。教師の一方的な説明で終わらないようにすることが大切です。

子どもとの距離感

学級経営で大切になることの一つに子どもとの距離があります。必要以上に子どもに近すぎても、また離れすぎてもうまくいきません。この加減が難しいのです。

一般的に若い教師は子どもとの距離が近すぎる傾向にあります。いわゆる友だち先生です。歳が近いので子どもも自分たちを理解してくれる存在として期待します。しかし、距離が近ければ近いほど、甘えも出やすくなります。自分たちの考えが通らないと友だちと同じような感覚で反発します。子どもたちに反発されると、学級経営は成り立ちません。そこで、教師が子どもたちに迎合すると、学級の規律はなし崩しになっていきます。逆に強く出れば、今まで近い存在であったために猛烈に反発します。

教師は子どもたちを指導する立場です。子どもたちよりも立場的に上であることを崩しては、指導は成り立ちません。しかし、立場が上だからといって高圧的ではいけません。一方的に子どもたちに指示してもついてきてはくれません。子どもたちを統率する存在ではありますが、決して支配する存在ではないのです。子どもたちに問いかけ、考えさせる場面をつくることが大切です。子どもたちの目線に立ち、気持ちを理解した上で、どう方向づけるかを考える必要があります。子どもたちが「先生は自分たちの話を聞いてくれる。受け止めてくれる」と信頼してくれることが指導の大前提なのです。

子どもたちの中に入ってぐいぐいと引っぱっていく。あまり口出しせず、学級のリーダーを中心に動かしていく。年齢や集団の特性によって適切な距離は変わってきます。子どもたちとしっかりコミュニケーションをとりながら、自分の学級における適切な距離を見つけるようにしてほしいと思います。
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