教師にとっての基礎基本の定着を考える

最近若い先生方の授業を見ていて気になるのがチョークの持ち方です。鉛筆と同じように持って板書しているのです。黒板に正対して子どもを見ない先生が多いことに疑問を持ち、細かく観察していて気づきました。
子どもたちを見ながら板書しようとすると、体を開いて斜めに書くことになります。鉛筆のように持っていると斜めでは力が入りません。親指と人差し指の2本の指でチョークを持つことが必要になります。

自分のことを振り返ってみると、誰かに教わったという記憶がありません。ある先生は、自分は小学生に授業の中できちんと教えているとおっしゃっていました。私も学校で教わったのかもしれません。
また、子どもの様子をしっかり見ながら板書できるようにと、真正面を向いたまま手を裏返して書けるように練習もしました。いろいろと工夫しているうちに自然に身についたのかもしれません。

いずれにしても、誰かに教わるか、自分で工夫して身につけることが必要なのでしょう。ところが、最近の若い先生のチョークの持ち方がおかしいということは、教わっていないし、板書中に子どもを見ようと工夫していないということです。指導する側、若い先生自身、双方に問題があるということです。

ある校長は、「そんなことは私がきちんと指導している」と力強く話されました。しかし、そのことに気づいていない管理職もいらっしゃいます。
今の時代、基礎基本の定着は子どもたちだけの問題ではなく、教師に対しても必要なことのようです。教師にとっての基礎基本は何か、それをどのようにして定着させるのか。そんなことは教えなくても知っているはずだという思い込みを捨てて、学校経営に携わる方が真剣に考えるべき問題のように思います。

PTA対象の講演

昨日は小学校のPTA対象のセミナーで講師を務めました。テーマは「いじめる側やいじめられる側にならないための子育て」でしたが、私にとっても勉強するよい機会をいただきました。

この依頼をきっかけに、いじめそのものではなく、その根っこにある問題は何かについて考えてみました。いじめる子はなぜいじめるのか、いじめられる子はなぜいじめられるのか。そこから、親がどのように子どもに接することがいじめを防ぐことにつながるのかを考えてみました。

結論としては、やはり、子どもが自己有用感を持つ、自分がまわりに認められると感じることが大切であるということです。自分が認められていれば、他の人を認められる。結果としていじめが起きにくいということです。まず家庭で子どもをしっかり認めてあげることをお願いしました。
また、子どもたちに想像力をつけることも大切だとお伝えしました。自分や友だちの行動の原因や結果を想像する力があれば、軽率な行動は避けられ、他者を思いやることができるようになるはずです。子どもと一緒に考えるような機会をつくるようお願いしました。

「ありがとう」の言葉がたくさん交わされることを目指せば、結果として子どもにとって居心地のよい家庭となります。そのような家庭で育った子どもがいじめにかかわることは少ないと思います。

参加されたお母さん方には、本当に真剣に話を聞いていただけました。子育てに真剣に向かい合っている方ばかりなのでしょう。きっと家庭を「ありがとう」の言葉で満たしてくれることと思います。私も程よい緊張感の中で、楽しく話をさせていただきました。とてもよい機会をいただき、ありがとうございました。

学習計画を考える

長期休業などで、子どもたちに学習計画を立てさせることがあると思います。なかには学習計画を立てて満足してしまう子もいます。子どもたちにとって意味のある学習計画とはどのようなものなのでしょうか。

子どもたちの学習計画は、何時から何時まで勉強するといったものがどうしても多くなります。時間が来たから勉強するぞと机に向かい、それから何をするか考え始めます。これではなかなか取り組めませんし、すぐにやる気をなくします。
計画はできるだけ具体的にするように指導します。国語をやる、漢字の練習をする、漢字の練習帳の何ページをやる。後にいくほど具体的になっています。具体的であればあるほど、それだけ実行できる可能性は高くなります。
何をどれだけやるかが明確であれば、机の前で時計を見て時間がたつのを待っているのではなく、早く終わらせて次の行動に移ろうとするとして集中力が生まれます。早く終われば遊んでもいいのです。

ここで、もう一つ注意してほしいのは、やったことで満足するのではなくその結果どのような力がついたか、何ができるようになったかという成果を意識することです。そのためには具体的に何ができればよいのかの目標と成果を明確にする必要があります。漢字の練習であれば、練習帳の何ページの漢字が全部きちんと書けるようになるといった成果を明確にすることです。

この目標と成果を明確にするためには、学習計画全体を通じての目標、成果を具体的にすることが大切になります。休みを通じてどんな力をつけたいのか、その成果をどんな形ではかるのかです。目標は漢字力をつける。その成果は、問題集のテストで何点とれたかで確認する。そのために、練習帳を毎日何ページやる。こういう発想です。
子どもたちが自分でこの目標と成果をつくれないようであれば、教師の側で最低限のものを用意することが必要かもしれません。休み中の課題と連動してもよいですが、その場合、成果を具体的にチェックする方法をプラスする工夫がほしいと思います。

また、子どもたちが立てる計画は、気合を入れすぎて無理をしたり、確実にできることを意識して押さえ目になったりします。そのために、チェックポイントを設けるようにします。たとえば1週間ごとにチェックし、うまくいっているなら上方修正、うまくいっていないなら、目標達成のために計画を立て直すのか、目標自体を修正するのか考えます。

とはいえ、なかなか計画通りに実行できないのも子どもたちの常です。子どもたちのやる気を持続させるためにはいくつかの工夫が必要です。
目標に対してどこまで進んだかを視覚的にわかるようにすることも一つの方法です。予定をこなせたら、マスをぬりつぶしていく、シールを貼るといったやり方です。こうすることで、達成感を味わうことができます。
また、いつも目標をクリアできないとやる気がなくなりますが、最低限でもここまではというラインを設定することで、達成感を味わいやすくするという方法もあります。たとえば、目標10ページに対して6ページを最低ラインに設定します。集中力が切れかかっても、6ページはクリアしようという気持ちが働きます。6ページできれば、とりあえず最低ラインをクリアした達成観が得られるので、あと1ページくらいはと意欲が戻ってきます。

これらのことすべてを子どもたちに求めることは難しいと思います。しかし、子どもたちの発達段階に合わせてできること、やれそうなことにチャレンジさせてください。とりあえず、学習を時間ではなく、具体的に何をするかでとらえさせることで、子どもたちの学習に対する取り組み方が変わっていくと思います。

悩み事の相談

若い先生は子どもから悩み事を相談されたときに、どうしても気負いすぎる傾向があるように感じます。解決を焦りすぎるあまり、子どもの気持ちにきちんと寄り添うことを忘れて、子どもとの関係を崩してしまうこともあります。どのようなことに注意をすればよいのでしょうか。

子どもから、悩み事や相談事が出たときに大切なのは、すぐに答えを出そうとしないことです。悩み事があるときは、基本的に子どもの中に負の感情があります。大切なことは子どもが感じている負の感情をきちんと受け止め、共有することです。
いきなり「もっと詳しく」「なぜ」と矢継ぎ早に質問をすると、子どもには問い詰められているように感じてしまいます。また、「こうしたらどう」とすぐに教師がアドバイスをはじめても、自分のことをしっかり理解してくれていると感じていなければ、なかなか素直に聞けません。
深刻な話であればあるほど、柔らかい笑顔で、「それってどういうことかな。もう少し聞かせてくれる」と余裕を持って聞くようにします。子どもから自分を否定するような言葉がでてきても、まず受け止め、「話してくれてありがとう」「気づかなくてごめんね」と子どもに対して教師が寄り添う姿勢を見せます。

「最近みんなとうまくいっていないんです」
「それってどういうこと」
「なにか、みんなが私のこと無視しているように感じるんです」
「そうか、みんなが無視しているように感じるんだ。それはつらいね。話してくれてありがとう。気づかなくてごめんね」

このように、子どもの言葉をしっかり復唱して子どものつらい気持ちを共感してあげるのです。ここで、「そんなことないよ。みんなあなたのことを無視なんかしていないよ。気にしすぎだよ」と励ますつもりで子どもの負の感情を否定しまうと、自分の言葉を否定されたと感じ、わかってくれないと心を閉ざしてしまいます。

子ども気持ちをしっかり共有した上で、解決に向かって進むのですが、ここで注意してほしいのは、教師が一方的にアドバイスしないことです。子どもに寄り添って、一緒に解決するという姿勢が大切です。

「どうすればよいか一緒に考えようね。みんなと言ったけど、全員かな」
「○○さんは、ときどき声をかけてくれる」
「そうか、全員じゃないね。よかったね」
「じゃあ、どうなれば、あなたの悩みは解決するのかな」
「みんなが声をかけてくれる」
「なるほど、みんなが声をかけてくれるようになるとうれしいね。みんなってどのくらいだろう」
「うーん、1人だけはいやだけれど、何人かいればいい」
「そうか、1人はいやだけれど、何人かいればいいんだね。あなたにできそうなことはない」
「無視されるのは怖いけど、声をかけてみる」
「そうか、声をかけてみるといいね。それじゃ思い切ってやってみようよ」
・・・・

子どもの状況が完全にネガティブなことは稀です。その中でポジティブなものを探すことが、気持ちを切り替えるきっかけになります。できないことではなく、できていることを探すのです。その上で、自分がどうなりたいかを子どもに気づかせます。ゴールをイメージして、そこに至るスモールステップを意識させます。この例の場合は、「みんな」というゴールの途中に「何人か」というスモールステップを設定させています。そして、そのために何をすればよいかを考えさせます。

悩み事の相談は、子どもに寄り添い、一緒に考える姿勢が大切です。子どもが「どうなりたい」「どうする」のかを自分の口で言えるようにサポートすることを第一に考えてほしいと思います。

授業研究に参加

昨日は中学校の授業研究とアドバイスをおこないました。私が参加した研究授業は、1年生の理科の調べ学習でした。

授業を参観した先生方は、子どもたちの様子をしっかりと観察していました。子どもたちの活動が授業者のねらったものになっていたか、何に集中していたかなど、検討会でもしっかり話ができていました。

授業者は「小学校6年生にもわかる説明」という条件をつけて、子どもたちが単に調べて満足するのではなく、その内容を理解して自分の言葉で説明できるようになることをねらっていました。しかし、調べる項目を書きこんだワークシートを準備したせいか、子どもたちは、教科書や便覧の該当項目を写してワークシートを完成することで満足してしまいました。グループでのかかわりも、どこに書いてあるかという情報は聞くのですが、その内容に関して聞き合っている姿は見られません。最後にまとめを見せ合って、確認をするのですが、ほとんど内容に差がなく学び合いにはなりませんでした。授業者のねらいと子どもたちの活動がずれてしまいました。
このことに気づいても授業時間中に修正することはなかなか難しいのですが、私からは次のようなアドバイスをさせていただきました。

ある程度子どもたちの作業が終わった段階で、中間発表をさせます。その上で、その説明で本当に「小学校6年生にわかる」かを問いかけます。具体的にこの部分はどう説明すればわかる。理科用語はどう説明しよう。「小学校6年生もわかる説明」という課題をより具体的にして再度課題に取り組ませるのです。こうすることで授業者のねらいに近づくことできるはずです。

子どもたちの活動の途中で中間発表を入れることで課題や論点を明確にすることができます。その上で再度課題に取り組むことで、より深い学びにつなげることができます。

授業者が単なる調べ学習ではなく、より深く内容を理解する授業にチャレンジしてくれたおかげで、参加した私たちもたくさんのことを学ぶことができました。うまくいかなくてもそのねらいと現実のズレから多くのことを学べるのです。学校内に、先生方がチャレンジする雰囲気があることを大変うれしく思いました。

個人の気になる点をどう直させるか

どの子に対しても、気になる点があります。ここを直してほしい、もう少しこういうところに気をつけてくれたらもっとよくなるのに。こういったことを伝えるには、面接などの一対一の場面が有効です。とはいえ、ストレートに直しなさいと言ったからといって、なかなか治るものではありません。反発する子もいるかもしれません。どのようにすればよいのでしょう。

基本は子ども自身にそのことを認めさせ、どうするかを言わせることです。
宿題をよく忘れる子どもの場合を考えてみましょう。子どもがそのことを問題と自覚しているのなら、自分から「困っている」と言ってくれるでしょう。もし、そうでないならばその指摘から始める必要があります。

「そういえば、国語の宿題を2回続けて忘れたね。それってどういうことなのかな」
「うーん。忘れないようにしようと思っていたんだけど・・・」
「忘れないようにしようとは思っていたんだ。えらいね。それで」
「家へ帰ってマンガを読んだり、ゲームをしていて忘れちゃった」
「そうか、忘れちゃったのか。やろうとは思っていたけど忘れちゃったんだね」

いきなり宿題をやらなければダメと注意するのではなく、まず、事実をきちんと伝えてその理由を考えさせます。原因がわかれば、どうすればよいか考えさせればいいのです。この場合は忘れないようにするにはどうすればよいかを考えさせるのです。

「じゃあ、忘れないようにすればいいんだ。どうすればいいかな」
「うーん。ちゃんとノートには書いているんだけど、見るのを忘れちゃう」
「そうか、見るのを忘れちゃうのか。どうすれば見るのを忘れないんだろう」
「忘れないように気をつける」
「なるほど、気をつけるのか、えらいね。ところで、気をつけるってどうすることか、教えてくれる」

子どもは「頑張る」「努力する」といった漠然とした言葉で対応を答えがちです。なかなかきちんと具体的なことを考えません。こういった言葉に対しては、「どうすること」「どういうこと」と問い返し、具体的にしていく必要があります。

「うーん。家に帰ったら必ずノートを確認する」
「なるほど、家に帰ったら必ずノートを確認するんだ。いいね。それで、いつも宿題はいつやるの」
「日によって違う。遊んでからやったり、晩ご飯のあと」
「そうか、日によって違うんだ。遊んでいたら忘れたりしない」
「忘れることもあるかもしれない」
「せっかく確認しても、忘れたら困っちゃうね。何かいい方法はないかな」
「忘れないうちに、早くやる」
「早くやるんだ。いつやるの」
「帰ったらすぐにやる」
「そうか、帰ったらすぐにやるんだ。帰ったらノートを確認して、すぐに宿題をやるんだね。ちゃんとやれるといいね」
「うん、やる」

子どもはどうしても安直な方向に流れていきます。なかなかきちんとしたことを約束しようとはしません。時間はかかりますが根気よく子どもの口からよい答えが出てくるのを待つ姿勢が大切です。どうしても出てこないときいは、「こんなやり方はどう」と提案してもよいでしょう。しかし、無理やり従わせようとはしないようにします。あくまでも子どもが自分で決めることが大切です。
このあと、しばらくしてから、実行できているかどうかを必ず聞くようにします。きちんとやれていればほめてあげ。うまくいっていなければ、またその理由から聞いてあげるのです。そのままにしていると、教師との約束をいい加減にするようになってしまいます。
子どもの行動を変えることは時間がかかります。根気よくつきあってあげる姿勢を大切にしてください。

面接の基本は聞くこと

1年間のうちに何度か子どもたちと個別に面接する機会があると思います。時期によってもねらうところは違ってきますが、基本となることを整理しておきたいと思います。

基本は、聞く姿勢を大切にすることです。
一人ひとりに対して、こうしてほしい、ここを直してほしいということはあるかもしれませんが、教師の側からこうしなさいと押し付けないようにしましょう。まず情報を集めることから始めます。

最近はどんな調子?
どんな生活している?
前にこんなこと話していたけど、その後どう?

漠然とたずねることで、自分が生活のなかで気にかけていることを話してくれることが多いようです。また、以前の面接時に話してくれたことなどをきっかけにするのもよいでしょう。
これでいろいろ話してくれるときは、聞き手になればいいのですが、言葉がなかなか出てこないこともあります。こういうときは、なにか話しづらいことがあるのかもしれません。

楽しかったことは何?
何か困ったことある?

少し具体的に聞くことにします。話しやすいように「楽しかったこと」から始めるとよいでしょう。この話題があまり弾まないようであれば要注意です。また、教師に思い当たることがあってもストレートにそのことを聞かないようにします。「困ったこと」と聞くと話しやすくなります。話してくれないけど、何かあると感じたなら、「最近元気ないように感じるときがあるんだけど、私の思いすごしかな? 思いすごしならごめんなさいね」というように、教師が気にかけていることを伝えてください。それでも、話してくれなければ、一旦引いてください。まずは、あなたのことを教師は見守っているというメッセージを伝えることまでにしておき、次の機会を待ちます。

面接で子どもからでた相談や悩み事はその場で解決できることもあれば、時間をかけなければならないこともあります。多くの子どもから同じようなことが出てきたら、学級全体で取り上げる必要があるでしょう。のんびりと構えてはいけませんが、過剰に反応して拙速になってはいけません。落ち着いて対応するようにしましょう。

面接は個々の子どもの状況や学級の状態を知ると同時に子どもとの人間関係をつくることも大きな目的です。受容的に聞く姿勢を大切にし、子どもの話をたくさん聞くことを目標にしてください。

板書計画を考える

板書計画をしっかり立てるということがよく言われます。計画という言葉にも表れているように、どのタイミングで、何を書くかが重要になります。教師がまとめて板書して、子どもがただそれを写すのであれば、プリントにして配ればよいのです。

1時間の授業の流れの中で、黒板をどのように活用するのか、その視点を明確にしておく必要があります。

言葉では消えてしまうものを、板書することで残す。
板書を全体で考えるためのツールとして活用する。
結果をわかりやすく整理する。

大きく分けるとこのようになると思います。
課題や指示などは、子どもが見ただけでもわかるような工夫が必要です。また、この時間で前提となる知識や考え方をあらかじめ板書して、いつでも参考にできるようにすることも子どもが課題に取り組む上で効果的です。

メインとなるのが全体での活動における活用です。

子どもから出た意見を板書するのかしないのか。
そのまま書くのか、教師が整理して書くのか。
どこに書くのか。
書く場所を教師が決めるのか子どもに決めさせるのか。

このようなことを、課題や授業の流れに応じて考える必要があります。
教師が子どもの発言内容にかかわりなく予定したとおりに板書すると、子どもは板書だけに注目して友だちの発言を聞かなくなります。あえて、板書しないという選択もあるのです。
子どもの発言を認めたり価値づけする道具としても意識するとよいでしょう。子どもの言葉をそのまま板書し、発表者の名前を書く。こうするだけでも認められた気持ちになります。近い意見を並べて書く。異なった意見は離して書く。どこに書くかを意識することで、互いの発言をつなぐこともできます。どこに書くかを子どもたちに考えさせることで、他の発言と比べながら聞くようになります。
似たような考えを○で囲んで、タイトルをつける。対立関係を色で示す。いろいろと工夫することで、板書を見ながら考えが整理され、新たな意見が出るようになっていきます。
子どもたちにこの場面でどのような活動をしてほしいかを考えながら計画を立てることが大切です。

授業の最後にその時間の学習内容をまとめることが多いと思いますが、板書するのがよいのか子どもたちまとめさせるのがよいのかの判断が必要です。子ども自身にまとめさせるときに、まとめの視点だけを板書しておく方法もあります。教師がまとめる場合も、あえてポイントに色をつけたりせずに、各自に線を引かせるといった方法もあります。子どもにまとめさせたときは、全体やまわりの子どもと確認し合うことで、よりよいまとめになっていきます。
また、同じ写すのでも黒板をできるだけ見ないで写しなさいと指示する方法もあります。
いずれにしても、何も考えずに子どもが写すような使い方は避けるべきでしょう。

板書計画は、大体の方向性や絶対外せないような内容は考えておく必要がありますが、あまり細かく立てすぎると子どもの考えを活かせなくなってしまいます。子どもと一緒に作っていくという視点を加えて、柔軟にとらえるようにしてほしいと思います。

うれしい驚き

昨日は授業研修の講師を務めました。市内の小中学校から集まった16名の先生方との授業研究です。今回は代表者が研究授業をおこない、それを全員で参観して協議するという形式でした。

授業は中学3年生の社会科でした。教師と子どもたちの関係がとてもよく、明るい学級でした。授業を見ていてその理由がよくわかりました。子どもたちに対する教師の否定的な言葉が少ないのです。できるだけポジティブに評価しようとしています。
今回の授業はグループを使っての話し合いが中心でした。子どもたちは元気に話し合っていますが、自分の答や意見の主張が目立ちました。少数意見をしっかり聞こうとするグループもありましたが、多数決をとって終わるグループもありました。実は、学級活動や道徳ではグループをよく取り入れているが、社会科の授業では今回が初めてということでした。今回の研修をきっかけに、子どもたちのグループ活動の質が上がっていくことと思います。
また、グループではよく発言している子どもも全体ではなかなか発言しようとはしませんでした。子どもたちは正解を発言することを求められていると感じているようです。結論を聞くのではなく、出た意見を聞くようにすると変わっていくと思います。

驚いたのは、参加者による、授業後の4人グループでの話し合いです。どの先生も実によく子どもを見ていました。各グループでの話し合いの様子、子どもが課題に取り組むときの戸惑いなど、細かなことも見逃していません。子どもの事実をもとにした足が地についた話し合いでした。

参加できない生徒がいたのは、6人とグループの人数が多かったから。それなら司会者をつくるか、4人くらいに減らしたらよいのでは。
対決的な話し合いになっていたのは、グループの結論を求めていたから。グループで一つにまとめることにこだわらない方がよいのでは。
考えを書くという指示であったが、子どもはどうすればよいかわからず戸惑っていた。2回目は経験しているので、すぐに取りかかっていた。例を挙げて具体的に伝えるべきだったのでは?
・・・

充実した話し合いでした。皆さんの意見に私がつけ足すことはほとんどありませんでした。子ども同士のつなぎ方、結果ではなく過程や根拠を問うことについて少し話させていただきました。

この年3回の研修を始めて5年目になります。参加者は毎年入れ替わりますが、年々話し合いのレベルが上がっていると感じます。子どもを中心に見て、少人数で話し合う形の授業研究が、この研修会を通じて市内のほとんどの学校に広がったという話をうかがいました。みなさん、自分の学校で質の高い授業研究をおこなっているに違いありません。だからこそ、ここでの話し合いがとても素晴らしいものになったのだと思います。
グループごとにまとめ方も工夫していました。きっと、お互いの学校の工夫を伝えあっているのでしょう。この研修会が市内の学校の学び合いのきっかけになっていることを大変うれしく思いました。

先生方のレベルアップに負けないように私もレベルアップしなければと気持ちを新たにしました。よい刺激をいただきました。

学習内容の定着

子どもたちが学習内容をきちんと理解したからといって、すぐに活用できるわけではありません。2×2が4になることがわかったからといって、九九は言えるようになりません。定着させるための活動が必要になります。

反復練習が有効なものに対しては、授業時間内に時間を設けて練習する。宿題や試験というプレッシャーをかけて家庭学習させる。このようなやり方が一般的です。この場合大切になるのが、子どもたちへの動機づけです。指示されたからやる、やらなければいけないという、ネガティブな動機ではなかなか集中しませんし、定着もしません。いかにして子どもに前向きに取り組ませるかがポイントになります。
そのためには目標や指標を上手に与えることが有効です。九九が何秒で言えるといったやり方です。このとき、何秒で言えるかではなく、何秒で言えたかを計測する方法もあります。いずれにしても、合格したか、何秒だったということだけで評価するのではなく、以前と比べてどれだけ進歩したかを見ることが大切です。たとえ目標に達成しなくても、自分の努力の結果が見えることでやる気を継続させることができます。気をつけてほしいのは、1回だけやって終わってしまはないことです。そのときに結果を出せなくても、再挑戦できるような仕組みをつくってください。そうしないと、できなかった子どもは、達成感を持てないまま、次第にやる気をなくしてしまいます。

また、目標設定をグループに対しておこなうというやり方があります。例えば、グループ全員の九九にかかった時間の合計が何秒といった指標を導入します。こうすることで互いに励ましたり助け合いながら取り組むことができます。このとき、全員が何秒以内というような設定にすると、特定の子だけが達成できないという状況が生じてしまいます。できない子が非難されないような雰囲気づくりが大切になります。それぞれの能力に応じて貢献できるような目標設定を心掛けると有効な方法です。

一方、考え方のように反復練習しにくい、試験などになじみにくいものには、活用して定着するという方法があります。
例えば、資料の見方であれば、資料からわかったことではなく、そのための視点を整理しておきます。そして、別の資料をつかって練習をします。このとき、できるだけ身近な資料を用意すると子どもたちの意欲が増します。
考え方のように抽象度が高いものは、1度や2度練習したからといって定着するようなものではありません。他の課題や、単元でも意図的に活用する場面を作ることが大切です。資料の見方であれば、資料を見る場面があるごとに、子どもたちにその視点を問いかけます。こうして、意識して活用させることで定着を図ります。

教材研究はどうしても、子どもたちに理解させることに目が向きがちですが、学習内容の定着という視点も大切です。定着させるためにどのような活動が必要なのか、逆にこの課題は、どのようなことを定着させるのに有効であるか。このようなことも意識してほしいと思います。

保護者対応について考える

ある会議で、教師の保護者対応が話題になりました。

保護者とのトラブルは、最初の対応がまずいためそれが尾を引くケースが非常に多いようです。

教師(特に若い)が、上から目線で話をする。
電話応対等、社会人としての基本マナーを知らない。

教師は子どものためにと一生懸命に働いているのに、こんなことが印象を悪くして、話をこじらせているようです。確かに昔は保護者から尊敬される立場でしたが、今は教師だからといって特別ではありません。へりくだる必要はありませんが、相手を尊重した接し方が必要です。保護者が学校に話をすることは、ほとんどが子どものことです。子どもを間に挟んで保護者と学校が対立してもいいことは何もありません。互いに自分の考えを相手に納得させようとするのではなく、「子どものために一緒に考える」というスタンスをまず共有するようにしてほしいと思います。このことを大前提とした上で互いの考えを「聞きあう」ことで、多くのトラブルは避けることができると思います。

一方、電話応対等のマナーについては、きちんと研修する必要があります。最近では、就労経験のある保護者がほとんどです。当然基本的なマナーはよくご存じです。教師にそのつもりはなくてもマナーを知らないために、対応がぞんざいであるとか、軽んじていると感じさせてしまうことがよくあるのです。
例えば、「ご苦労さま」という言葉です。「ご苦労さま」は目上の人が下に対して使う言葉であるとして、外部や目上に対しては「お疲れさま」を使うように教育している企業がほとんどです。学校内ではだれも気にしなくても、保護者にうっかり使ってしまえば、上から目線と取られてしまいます。本当は、「わざわざありがとうございます」という謙虚な気持ちで使っているのに、軽んじられたと気分を害してしまう保護者も出てきます。こんなつまらないことが、トラブルのきっかけになることもあるのです。

また、保護者との対応に関してネガティブな言葉使わないことも大切です。例えば、保護者から「苦情」があった、「苦情」対応をするといった表現です。確かに内容的には「苦情」といっていいことかもしれませんが、「苦情」といった時点で、すでに関係をネガティブにとらえています。詳しく話を聞く前にこういう言葉を使ってしまうと無意識に防衛的な態度をとってしまいます。しかし、最初は、話を聞いてほしい、納得させてほしいというレベルの話であることがほとんどです。教師が防衛的になって、こちらの立場を主張し、相手の話を否定してしまうことで本当に「苦情」になってしまうのです。こうなるといくらその場でこちらの主張を通しても、結局はよそへ「苦情」を持ちこむだけで、余計に深刻なトラブルになるだけです。
ところが、ポジティブな言葉に言い換えるだけで、気持ちはずいぶん変わります。「苦情」を「相談」といいかえるだけで、ニュートラルな気持ちで接することができ、余裕を持って話を聞くことができるようになります。

保護者対応は学校にとって大きな問題となってきましたが、ちょっとした研修や気づかいでほとんどの問題は避けられると思います。この「ちょっとしたこと」を学校としてどう徹底するかが問われているように思います。

公開授業を見学

先日、今年度よりICT活用の研究指定を受けた小学校の公開授業を参観してきました。

ICT活用ということも影響してか、授業者は若手の先生ばかりでした。自ら手を挙げて公開されたそうで、その意欲に感心しました。今回は、ICTをどのように活用しているかということより、授業として何を目指しているのか、子どものどんな姿を見たいと思っているのかに焦点を当てて見させていただきました。

見させていただいた3人に共通していたのは、場面ごとの活動を意識しているのですが、1時間の授業全体で子どもたちのどうなってほしいかが明確でなかったことです。子どもたちは、作業には取り組むのですが、どこへ向かっているのかがよくわからない状態でした。
ICT機器のような道具を意識するとどうしても起こりやすいことです。一旦ICTを横に置いて授業構想を立ててみるとねらいがはっきりしてきます。その上で授業の各場面で子どもたちにどのような活動をさせたいのか、そのポイントは何かを考え、そこにICT機器を活かしていけばよいのです。

当日は、最後に、この研究をサポートされる大学の先生のお話がありました。直接聞くことはできませんでしたが、そのレポートを読ませていただき、さすがと感心させられました。この学校の現在の問題点をわかりやすく指摘し、その改善への方向性もとてもシンプルに語られています。先生方が前向きに研究をとらえられるように、意識されていることがよくわかります。私にとっても大いに勉強になりました。
まだまだ研究は始まったばかりです。熱意のある先生方と素晴らしい研究者のコラボレーションで、きっと大きな成果をあげられることと期待しています。

言語活動について講演

昨日は中学校で言語活動についてお話をしてきました。30度を超す暑さの中、はたして集中して聞いていただけるのだろうかと内心ドキドキしていたのですが、とても熱心に聞いていただけて、気持ちよくお話しさせていただきました。

子どもたちが内田樹のいうところの消費者的な行動をとる、効率的に結果を得ようとする傾向が強いと感じる学校です。説明を集中して聞いていなくても、板書は素早くノートに写すそんな子どもたちです。

この傾向を変えるためには、正解をすぐに提示して説明するのではなく、その過程を子どもたちに問うことが大切です。

「それってどういうこと」
「どこでわかった」
「○○さんの考えを説明して」

このような言葉をうまく使うことをお願いしました。

言語活動を充実するために、まず、子どもたちが安心して発言できる、発言することがうれしいと思えるようにすることを意識してもらいました。

そのために、

聞くことを大切にする。
子どもの発言をポジティブに評価する。
たとえ間違いでも否定しない。
発言に正解を求めない
発言できなくても、まわりに助けてもらって発言できるようにする。
指名されたら、必ず最後は何か発言をして、ほめられて終わるようにする。
わからない子どもで発言できる問いかけをする。

このようなことをお伝えしました。

互いにしっかりと聞きあうこと、自分の発言が否定されないこと。ここからのスタートです。このことができれば、課題や活動の内容を工夫すれば驚くほど子どもは積極的に活動します。
とても熱心な先生ばかりです。きっとそのための1歩を踏み出してくれることと思います。

継続的に育てる

日々の教材研究は、どうしても目の前の授業をどうするかに追われてしまいがちです。なかなか、1年間、3年間、6年間を通じて育てる力のことをじっくりと考えることができません。

例えば、読む力はどの教科でも大切な基本となる力です。1時間ごとにどう力をつけると考えるようなものではなく、継続的に育てていくものです。授業のどのような場面で、何を意識し、活動させなければならないのかを整理しておく必要があります。

国語であれば、わからない言葉や読めない漢字を見つけて調べる。すらすら読めるようになる。話の内容がわかる。筆者の主張、登場人物の気持ちを本文に沿って理解できる。・・・
算数・数学であれば、問題文の条件がわかる。何を求めればよいかがわかる。・・・
社会であれば、事実がわかる。違いがわかる。因果関係を整理できる。・・・
・・・

このように、読む力といってもいろいろな場面でさまざまな形で求められます。それを身につけるための活動も、子どもの成長や教材によっていろいろ考えられます。

初めて目にする文章であれば、黙読してわからない言葉や、漢字に線を引くという作業をするとよいのかもしれません。いきなり音読して、詰まったところを調べる方法あります。
すらすら読ませたいのなら、できるだけ早くとプレッシャーをかけた方がよいのかもしれません。ペアで読みながら、詰まったところを教え合うのもいいでしょう。
内容を理解するのであれば、「主人公の気持ちがわかるところに線を引いて」と指示をして、じっくり読ませることも大切です。
算数の文章題であれば、問題文を絵や図にすることで把握する。求めたいものと、わかっていることを別の色で線を引く。こんな方法も知っておく必要があります。
社会科で資料を整理するのであれば、箇条書きではなく、事実とそこからわかること、因果関係を線で結んで関係図をつくる。
・・・

書く、聞く、話す、調べる、・・・。多くの力が子どもたち求められます。それぞれの力をつけるため、どのような場面で、何を意識して、どのような活動が必要なのかを整理してみてください。若い先生は、ほんの少ししか見つからないかもしれませんが、意識して授業をおこなったり、他の先生の授業を見ることで見つかっていくはずです。
このことが明確になってくると、新しい教材に出会っても、時間をかけずに授業を組み立てていくことができると思います。

愛される学校づくり研究会に参加

先週末に愛される学校づくり研究会に参加しました。今回は研究指定校の取り組みの現状と実践例の発表でした。

私も研究指定校のお手伝いを何校か経験していますが、研究の方向性やゴールが見えるまでけっこう右往左往することがあります。立派な結果を残さなければいけないというプレッシャーがどうしてもかかるからかもしれません。そんなとき、私は研究発表会の参加者は何を求めるのだろうと考えます。来てよかったと思うのはどんな内容なのでしょうか。

一つは、発表の内容を自分の学校でもやってみようかと思うえること。もう一つは、その研究の結果そのものではなく、そこに至る過程での組織づくりや仕掛けが学校の活性化に参考になると思えることだと考えています。
特に2つ目の視点は、研究内容にかかわらず役に立つ情報だと思います。私がお手伝いをさせていただくときは、特に2つ目の視点での情報伝達を発表会では意識するようにしています。

結果を求めると、決められた期間でなんとしても結果を出さなくてはいけません。無理やり結果が出たことにする発表会もあります。このような研究発表をすると、そのあと研究はしりすぼみになってしまうことが多いように思います。また、先生方の負担も大きいように感じます。
一方、ゴールはまだ先でも、確実に前へ進んでいると思えれば継続できます。先生方が日常的に無理なく前へ進めるような取り組み方を考えることは、長い目で見れば学校を大きく進歩させます。研究をきっかけに学校がよい方向へ無理なく変わる。研究指定が終わっても進歩し続ける学校を目指してほしいと思います。

研究会で発表された学校は今年度スタートしたばかりで、まだ多くのことが混沌とした状態のように感じました。この学校は、アドバイスをお願いしている大学の先生が来られるときはすべてオープンにするそうです。この状態からどのように変化していくか、できるだけ時間をつくって参加し、その過程から学ばせていただきたいと思います。

学校公開日で授業アドバイス

先週末は中学校の学校公開日で、授業アドバイスをおこなってきました。

おじゃまするようになって3年目の学校です。子ども同士の学び合いを大切にした授業に取り組んでいます。子どもたちは落ち着いて、学習に積極的に参加しています。先生方の取り組みの成果が子どもたちの様子に表れています。
しかし、どんな課題や活動でも集中して取り組んでくれるので、子どもたちにどのような学びがあったのかをきちんとチェックしていないと、活動はあるが学びのない授業になってしまう可能性もあります。今まで以上に授業の質が問われるようになってきたのです。

また、公立学校の常ですが、新転任で今年から勤務された先生がこの学校のスタイルにまだなじめずにいるようでした。
グループ活動を取り入れたり、形の上では学び合いの場面を作るろうとしています。しかし、グループ活動を取り入れることの意味やねらいがよくわかっていないため、「なぜここで?」「なぜこの課題?」という場面が多いのです。本を読んだり、オリエンテーションを受けただけで理解し、自分のものにするのはとても難しいことです。具体的な場面から学んでいくことが一番の方法だと思います。学校のスタイルが固まれば固まるほど、授業研究を継続しておこなうなど、互いに学び合う機会をたくさん作ることが大切になってきます。

校長は、日ごろから授業の様子をよく見ておられるのでしょう。現状の課題をしっかり把握しておられました。校長の考える課題をしっかり伝えていただくことで、私もアドバイスがとてもしやすくなります。校長も意識していろいろとしかけられることでしょうから、学校にいろいろな変化が起きることと思います。今後の訪問がとても楽しみになりました。

何をどこに残すか

教材研究で意識してほしいことの一つに、何をどこに残すかということがあります。

例えば知識や結果は、プリントやワークシートの形で子どもたちの手元に残るのか、板書を写したノートに残るのか、子どもたちの頭に残るのか、どうあってほしいのでしょうか?
考え方はどうでしょうか?
授業を見ていると、知識や結果は圧倒的にワークシートやノート、考え方は頭の中に残そうとすることが多いようです。

知識は書いて覚えるという考えが主流のように思いますが、ワークシートやノートに一度写したからといって身につくわけではありません。結局、後日試験などをするというプレッシャーを与えて覚えさせることがほとんどです。その時のために何らかの形で残しておくわけです。学校で頭を使わずノートやワークシートの穴を埋めること、家庭でそれを覚えることが学習だと勘違いしていきます。
頭に残そうと思うのであれば、そのための活動が必要になります。板書を写すのであれば、「ポイントを隠してその部分を見せずに書かせる」「黒板を見ないで書かせる」といった工夫や、隣同士で確認し合う、知識を使う活動をすることが欠かせません。

一方考え方は、説明を聞けば身につくわけではありません。また、結果を見てもどうすればそれが出てくるのかはわかりません。
算数や数学で、模範解答が板書され、それを先生が説明する。子どもは板書を写す。こんな授業をたまに見かけます。自分で解けた子どもには写すことは不要の作業ですし、解けなかった子は、後から解答だけを見直しても解けるようになりません。
考え方を頭に残すことはとても難しいことです。子どもたちに理解しやすい言葉で整理をし、何度も使うことが必要です。教師が毎時間確認し、目立つように板書して、いつでも振り返れようにする。子どもが自分の言葉で整理してノートに書く。こういうことが大切になります。

1時間の授業を考えるとき、その時間で押さえる知識や考え方があるはずです。これらは、ただ話したり説明しただけではすぐに消えて行ってしまいます。
知識であれば、この時間のうちに頭に残すのか、時間をかけて後日確認するのか。頭に残すのであれば、どのような活動で残すのか。後日確認するのであれば、プリントやワークシートの形で残すのか、板書や、子どものノートに残すのか。
考え方であれば、整理した形で板書として残すのか、整理しながらその過程を板書に残すのか、子どもが自分で整理してノートに残すのか。
このようなことを考えながら授業を組み立てていってほしいと思います。

声にならない声を聞く

昨日は中学校で授業アドバイスをおこなってきました。

この日は、特定の学級を中心に授業を見ました。授業者、教科によって子どもたちの見せる姿がかなり違っていました。学級全体もそうですが、同じ生徒でも、集中する、積極的に参加する場面と、集中力をなくす、やる気をなくす場面の差が極端なことが特徴的でした。ある意味子どもたちが素直で、場面場面でその時の気分、状態を素直に出していると感じました。

たまたま、新任の先生が一緒に子どもたちを見たいと言ってくださったので、その先生が授業をしたときと比べながら見てもらいました。自分の授業ではは全くやる気のなかった子どもが、積極的に活動している姿や、学級全体が集中する瞬間を驚いて見ていました。子どもたちの見せる姿は一つではないことを実感してくれたようです。自分の授業を改善しようという意欲が一層強くなったようでした。とてもうれしいことです。

子どもたちは、何をやればよいかがはっきりとわかっている、見通しがあって手がつきやすい、作業の成果物が明確である。そんな活動には積極的に取り組む。また、自分たちの活動の結果については、それがどう評価されるか非常に興味を持つ。当然のことながら、この学級を見ていると、あらためてこのようなことに気づきます。

この学級の多くの子どもたちが、集中力や意欲をなくした姿をはっきりと見せることは、別の見方をすれば、先生に対して「もっとわかるようにしてよ」「ちゃんと見てて」「評価して」という声にならない叫びを発していることのように思えます。特に行動面で目立たない普通の子どもが、自分たちを見てほしい、認めてほしいと訴えているように感じます。
担任をはじめ、この学級にかかわる先生方がこのことに気づいてくだされば、この学級はよくなっていくと思います。特に、先生方が少し余裕を持って、一人ひとりの子どもをポジティブに評価することを心掛けてくだされば、大きく変化するに違いありません。当面意識してこの学級の変化を見続けようと思っています。

子どもが育っているからこそ、課題が見つかる

昨日は中学校の社会科の授業研究に参加してきました。

授業者は小学校から転勤してきたばかりの若手の先生です。まだ中学校で教え始めて3か月もたたないこの時期に研究授業をおこなうチャレンジ精神が素晴らしいと思いました。
小学校で授業力を鍛えてきたことが子どもたちの姿からもよくわかります。先生の話を聞く姿勢、作業が遅い子どもを待つ様子、課題に取り組む素早い動きから、授業者がこのこと意識して指導していることがとてもよくわかります。授業者の表情も柔らかく、当然子どもたちの表情もにこやかです。子どもたちが安心して授業に参加していることがよくわかります。先生と子どもの関係もとてもよいのです。
実は、こういう先生と子どもたちの関係がよい状態での授業は、課題もたくさん見つかること多いのです。目の前の事実の原因から教師と子どもの人間関係を除外できるからです。

子どもたちが課題に取り組む様子は、多くのグループで一人の子が仕切って、その指示で作業をしている姿が見られました。答えを見つける過程で、一人ひとりが考えたこと、個人が持っている情報を共有する場面がありませんでした。
この原因は、

・グループ編成時に学習面でリーダーの役割をする子を必ず入れるようにしている。
・一人ひとりの答えを持つのではなく、グループで一つの答えを出すようにしている。
・正解を共有することが中心で、どのように考えたか、その理由は何かといった過程や根拠を活動の途中や活動後共有することをしていない。

などが考えられました。
子ども同士の関係がよく、互いに協力しようとしているからこそ、このことがよくわかります。

また、資料を使って考える場面では、手がつく子どもと、全く手がつかない子に分かれてしまいました。手がつかない子はやる気がなかったのではないことは、何度も鉛筆を持ち資料を読んでいることからわかります。資料の中の正解となる用語の意味が子どもたちにはわからないようでした。資料を読み取る場面を設定しなかった、用語の意味を知るための手立てを与えていなかったため、子どもたちはわからないまま資料に向かっていたのでした。答えを見つけた子どもも、根拠は教師のヒントと資料の言葉からの類推で、正解となる用語を示せてもその意味はわかっていませんでした。
手がつくつかないの差は、わからないことをいったん棚上げして考えることができるか、そこに引っかかって先に進めないかの差だったようです。

このように子どもの状況をつくる原因が見えてくれば、その改善方法も明確になってきます。授業者は経験を積むことで、急速に進歩すると思います。ベースとなるものがしっかりあれば、その上に多くの物が積み上がっていきます。素直で学ぶ意欲の旺盛な先生です。次に授業を見るときには、きっと見違えるようになっていることと思います。私もこの授業からとても多くのことを学べました。次の機会がとても楽しみです。

石垣則昭先生から学ぶ

教師力アップセミナーで石垣則昭先生(登別市立緑陽中学校長 上級教育カウンセラー・ピアサポートコーディネーター) のお話を伺いました。

ソーシャルスキル、エンカウンター、カウンセリング、ピアサポートなどの幅広い知識をベースにしたワークショップと講演からなる、参加者が自分で理解することを大切にしたプログラムでした。若い先生に感想を聞くと「ロールプレイでネガティブな教師と子ども役を互いに経験することで、子どもたちがどんな気持になるかを実感し、改めて子どもとの接し方を考え直した」と答えてくれました。日ごろ気づかずにそんな態度をしているもしれないと振り返るよい機会なったようです。変化するためには、まず気づくことが大切です。このことを大切にした講演を心がけなくてはとあらためて思いました。

石垣先生の素晴らしさは、多くの知識を持っているにもかかわらず、常に学校現場での現実的な実践の面から考えられていることです。特定の理論や手法にとらわれず、現場の課題を解決するという視点での指導例は大変参考になりました。
今回は子どもたちの心にスポットを当てたコミュニケーションが中心でしたが、いろいろな場面で応用のきくお話でした。

予定している保護者向けの講演にも役立つヒントをたくさんいただくことができました。ありがとうございました。
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