充実した研修会

昨日は市主催の授業改善研修会で授業解説をおこなってきました。打合せの時点から楽しみにしていましたが(研修の打ち合わせ参照)、期待以上に内容の濃いものになりました。

授業者はこの1週間、ずいぶん内容を検討してきたようです。細かいところまでよく練られていました。また、このブログも参考にしていただいたそうです。たしかに私が日ごろ意識していることが、随所に見られました。とてもうれしく思いました。この日の模擬授業は、一つひとつの発問や子どもとのやり取りの意図がはっきりとしていたので、とても解説がしやすいものでした。
たとえば、子どもの発言をつなぐかつながないか、評価するかしないかはその後で取り上げたいことを反映していました。授業者の意図がよくわかるのです。しかし、子どもからすれば、なぜ自分の意見は評価されないのだろうか、きっと教師の期待したものではなかったのだと思ってしまいます。一つひとつの意見はどれも素晴らしいものです。取り上げる、取り上げないは教師の都合なのです。取り上げなかった意見と同じ考えの子どももいるはずです。今日は取り上げなくても、きちんと評価しつなげる必要があります。これはきちんと評価したりつなぐ場面があったからこそ、見えてくることです。
よい点がたくさんあるからこそ、うっかり見落としてしまうこと、改善点がはっきり見えてくるのです。

また、今回の生徒役は他の研修会の参加者にお願いしましたが、実に素晴らしいものでした。教師の指示が不明確であれば、素直に生徒になりきって態度に表してくれます。不安な時は、友だちの書き込みを覗いたりもしてくれます。実際の授業と同じように、子ども役の動きからいろいろなことが見えてきます。気になる動きをした生徒役にインタービューすることで、何が起こっていたのかが明らかになります。それは、誰もが納得できることでした。
授業者はその指摘を素直に認める度量がありました。生徒役の様子を見ていなかったときも言い訳せず、どうすべきだったか考えてくれました。また、その場で予定を変更して進め方を変えたりもしてくれました。これが模擬授業のよさです。その場で修正しながら授業をみんなでつくっていくことができるのです。

十分な時間があったはずなのですが、解説したいことがたくさん出てきたため、授業の一部をはしょらなければいけなくなりました。また最後に授業者や生徒役の先生から感想をうかがう時間もなくなってしまいました。申し訳ないことです。
とはいえ、私自身は、見るべきものがたくさんあり、一瞬たりとも気を抜けない緊張感あふれる模擬授業を本当に楽しませていただきました。得るべきものがたくさんありました。参加された200人近い先生方はどのような感想を持たれたでしょうか? 会場が大きな舞台であったこともあり、参加者と直接かかわることができなかったのが残念です。来年はもう少しコンパクトでフラットな会場をお願いできましたので、参加者とのやり取りも楽しめると思います。今から来年が楽しみです。
授業者、生徒役の先生、また早くから準備やお手伝いをしていただいた先生方、本当にありがとうございました。おかげでとても充実した時間を過ごせました。

子どもが活動する発問

子どもへの問いかけ、発問によって子どもたちの動きは大きく変わります。資料を提示して「気づいたことをメモして」といった発問ではなかなか動いてくれないこともあります。どのようなことを意識するといいのでしょうか。

一つは意欲をもたせることです。
比較的簡単な方法は、

「先生は4つみつけたよ。先生よりたくさん見つけられるかな」
「隣のクラスでは、10みつけたよ。このクラスはいくつ見つけられるかな」
「2分で何問解けるかな。昨日よりたくさんできるといいね」

というように、目標となるような指標を合わせて提示するといったやりかたです。指標は何も数値に限りません。「みんながあっと言う」「みんながなるほどと言う」といったものもよいでしょう。もちろん興味をもたせる工夫ができればそれに越したことはありません。これに限らず、子どもが意欲的に取り組むためには、どんな要素が必要かを意識することが大切です。

もう一つは発問からどう具体的な活動につなげるかです。
「考えて」といった抽象的な言葉は子どもにとっては何をすればよいかわかりにくいものです。

「先生はこんなことに気づいたよ」
「たとえば、この線を引いたところからどんな気持がわかるかな。○○さんどう」

というように、一つ例を提示したり、個人活動の前に、全体で一度やってみることで、具体的に何をすればよいか明確にします。
また、「考える」「気づく」といった発問は、比較となる物を与えることで視点がはっきりして活動しやすくなります。

「この絵を見て気づいたこと」
→「この絵を見て、今の暮らしと違うところを見つけて」

というように、比較の対象を意識させることにより、コントラストが明確になり、見通しがもてます。
発問に対して期待する子どもの活動を具体的にイメージすると、そのため必要な知識、視点などの要素が明確になってきます。どのような知識を事前に与える、確認する。視点を明確にするために比較の対象として何を意識させる、提示するといったポイントが明確になります。その上でもう一度発問を見直すとより具体的で子どもたちが活動しやすいものにすることができます。

基本となる発問を考えてそれで終わるのではなく、子どもが意欲的に活動するためにはどんな要素が必要か、発問を具体的な活動につなげるために何を付け加えるか、どう変えるかといったことを考えてほしいと思います。こうして発問を練っていくことが、子どもたちの意欲的な活動につながっていくはずです。

授業の感想に課題や意識が見える

昨日は、アドバイザーとしてお手伝いしている中学校の現職教育に参加してきました。7月に撮影した国語の授業ビデオを見て学び合うというものでした。

先生方はとても熱心に授業を見た感想をまわりと話し合っていました。だれしもが授業を大切に思っている証拠です。
話し合ったことを全体で聞き合う場面で気づくことは、授業を見る視点が、自分が課題としていること、意識していることと関連しているということです。
言葉のつなぎを課題にしている先生は、言葉づかいが丁寧であることや、考えを発表させた後に同じ意見の生徒に確認をしていることに気づきます。
子どもの考えで授業を進めたいと考えている先生は、子どもの動きが止まっているときの支援についてどうであったかと意見を言ってくれます。
授業者が子どもの発言に対して、意見を聞かせてくれて「ありがとう」と言っているのに気づく先生は、自分も意識して「ありがとう」を言っている先生です。
授業について感想や気づいたことをみんなで共有するということは、互いの課題や大切にしていることを共有することでもあります。授業者からだけでなく、互いに多くのことを学び合えるのです。

この学校では、現職教育といった特別のときだけでなく、日ごろから授業について教師同士が語り合うことが増えてきています。それに伴って課題意識も明確になっているように思います。学校がどのように変わっていくか、これからも楽しみです。

算数・数学の授業力アップ研修会に参加

昨日は、算数・数学の授業力アップの研修会にオブザーバーとして参加しました。毎年この時期に先生方の自主運営でおこなわれています。今年でもう9年目です。毎年何かしらバージョンアップされているので、とても楽しみにしている研修会です。以前は授業技術やスキルにスポットを当てての実技研修が中心でしたが、ここ数年は新任や若い先生の参加が多くなってきたことに合わせて、個々の授業技術が授業の中でどう活かせるのか、また教材研究は具体的にどうやるのかといった内容も付加されるようになってきました。

今年は一つの教材を1日かけていろいろな視点で考えることができるような構成でした。最初の実習では、子どもの言葉を活かす授業のイメージが伝わるような教師と子どものやり取りで練習をするようになっていました。このシナリオが実にコンパクトでしかもポイントとなる要素が明確でわかりやすいものでした。スタッフが真剣に取り組んで、工夫していることがよくわかります。

次の実習は、一見単純で簡単に見える授業技術を実際に体験してみることで、その難しさとポイント、その効果を実感できるようにつくられていました。限られた時間で研修の効果を高めるために、思い切って入門レベルに絞っていることが印象的でした。よい判断だと思いました。

そして、最後の研修は、この日学んだ技術を取り入れて授業を組み立てるとどうなるかを、参加者を子ども役にして模擬授業形式で見せるものでした。その後、この授業を具体例として、教材研究が教科書を読みこむことが中心であることを授業者が解説してくれました。
この模擬授業が実に素晴らしいものでした。授業者の発言、行動が意図的につくられていて、復習問題の数値の工夫や定着問題の提示の仕方など見所がたくさんありました。しかし、あまりにも自然に授業が進んでいくので授業者の意図を参加者がすべて読み取れていないようにも感じました。解説は教材研究にスポットを当てていますし、自分の口からは話しにくいこともあるでしょう。この授業のよさにあまり触れられていないのがとてももったいなく思いました。このことを同席しているスタッフの先生に話したところ、ありがたいことに私が授業解説をする時間をとるように進言してくださいました。おかげで、特別に時間をいただいて、この授業の素晴らしい点を伝えることができました。ありがとうございました。

今回は時期の問題もあり、例年と比べてスタッフの数が少なかったのですが、一人ひとりのレベルが高く、参加者の満足度が高い研修を実現できていたと思います。
また、参加者は自腹を切って参加するような方たちです。学ぶ意欲も旺盛で積極的で、実に素直に講師の話を受け止めていました。きっと多くのことを学ばれたことと思います。ただ残念なのは、この研修会はリピーターが少ないことです。多くの方が経験するという意味ではよいことなのですが、一度研修を受けたからといってすぐに身につくものでもありません。研修の内容を授業に活かそうとすれば必ずうまくいかないことや疑問点にぶつかります。そういった問題意識を持ってぜひ来年も参加していただけたらと思います。

スタッフの皆さんの努力に敬意を表するとともに、大きな刺激とたくさんのことを学ぶ機会をいただいたことに感謝します。ありがとうございました。10年目となる来年の研修会はさらにバージョンアップしていることと楽しみにしています。
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