個人の気になる点をどう直させるか

どの子に対しても、気になる点があります。ここを直してほしい、もう少しこういうところに気をつけてくれたらもっとよくなるのに。こういったことを伝えるには、面接などの一対一の場面が有効です。とはいえ、ストレートに直しなさいと言ったからといって、なかなか治るものではありません。反発する子もいるかもしれません。どのようにすればよいのでしょう。

基本は子ども自身にそのことを認めさせ、どうするかを言わせることです。
宿題をよく忘れる子どもの場合を考えてみましょう。子どもがそのことを問題と自覚しているのなら、自分から「困っている」と言ってくれるでしょう。もし、そうでないならばその指摘から始める必要があります。

「そういえば、国語の宿題を2回続けて忘れたね。それってどういうことなのかな」
「うーん。忘れないようにしようと思っていたんだけど・・・」
「忘れないようにしようとは思っていたんだ。えらいね。それで」
「家へ帰ってマンガを読んだり、ゲームをしていて忘れちゃった」
「そうか、忘れちゃったのか。やろうとは思っていたけど忘れちゃったんだね」

いきなり宿題をやらなければダメと注意するのではなく、まず、事実をきちんと伝えてその理由を考えさせます。原因がわかれば、どうすればよいか考えさせればいいのです。この場合は忘れないようにするにはどうすればよいかを考えさせるのです。

「じゃあ、忘れないようにすればいいんだ。どうすればいいかな」
「うーん。ちゃんとノートには書いているんだけど、見るのを忘れちゃう」
「そうか、見るのを忘れちゃうのか。どうすれば見るのを忘れないんだろう」
「忘れないように気をつける」
「なるほど、気をつけるのか、えらいね。ところで、気をつけるってどうすることか、教えてくれる」

子どもは「頑張る」「努力する」といった漠然とした言葉で対応を答えがちです。なかなかきちんと具体的なことを考えません。こういった言葉に対しては、「どうすること」「どういうこと」と問い返し、具体的にしていく必要があります。

「うーん。家に帰ったら必ずノートを確認する」
「なるほど、家に帰ったら必ずノートを確認するんだ。いいね。それで、いつも宿題はいつやるの」
「日によって違う。遊んでからやったり、晩ご飯のあと」
「そうか、日によって違うんだ。遊んでいたら忘れたりしない」
「忘れることもあるかもしれない」
「せっかく確認しても、忘れたら困っちゃうね。何かいい方法はないかな」
「忘れないうちに、早くやる」
「早くやるんだ。いつやるの」
「帰ったらすぐにやる」
「そうか、帰ったらすぐにやるんだ。帰ったらノートを確認して、すぐに宿題をやるんだね。ちゃんとやれるといいね」
「うん、やる」

子どもはどうしても安直な方向に流れていきます。なかなかきちんとしたことを約束しようとはしません。時間はかかりますが根気よく子どもの口からよい答えが出てくるのを待つ姿勢が大切です。どうしても出てこないときいは、「こんなやり方はどう」と提案してもよいでしょう。しかし、無理やり従わせようとはしないようにします。あくまでも子どもが自分で決めることが大切です。
このあと、しばらくしてから、実行できているかどうかを必ず聞くようにします。きちんとやれていればほめてあげ。うまくいっていなければ、またその理由から聞いてあげるのです。そのままにしていると、教師との約束をいい加減にするようになってしまいます。
子どもの行動を変えることは時間がかかります。根気よくつきあってあげる姿勢を大切にしてください。

面接の基本は聞くこと

1年間のうちに何度か子どもたちと個別に面接する機会があると思います。時期によってもねらうところは違ってきますが、基本となることを整理しておきたいと思います。

基本は、聞く姿勢を大切にすることです。
一人ひとりに対して、こうしてほしい、ここを直してほしいということはあるかもしれませんが、教師の側からこうしなさいと押し付けないようにしましょう。まず情報を集めることから始めます。

最近はどんな調子?
どんな生活している?
前にこんなこと話していたけど、その後どう?

漠然とたずねることで、自分が生活のなかで気にかけていることを話してくれることが多いようです。また、以前の面接時に話してくれたことなどをきっかけにするのもよいでしょう。
これでいろいろ話してくれるときは、聞き手になればいいのですが、言葉がなかなか出てこないこともあります。こういうときは、なにか話しづらいことがあるのかもしれません。

楽しかったことは何?
何か困ったことある?

少し具体的に聞くことにします。話しやすいように「楽しかったこと」から始めるとよいでしょう。この話題があまり弾まないようであれば要注意です。また、教師に思い当たることがあってもストレートにそのことを聞かないようにします。「困ったこと」と聞くと話しやすくなります。話してくれないけど、何かあると感じたなら、「最近元気ないように感じるときがあるんだけど、私の思いすごしかな? 思いすごしならごめんなさいね」というように、教師が気にかけていることを伝えてください。それでも、話してくれなければ、一旦引いてください。まずは、あなたのことを教師は見守っているというメッセージを伝えることまでにしておき、次の機会を待ちます。

面接で子どもからでた相談や悩み事はその場で解決できることもあれば、時間をかけなければならないこともあります。多くの子どもから同じようなことが出てきたら、学級全体で取り上げる必要があるでしょう。のんびりと構えてはいけませんが、過剰に反応して拙速になってはいけません。落ち着いて対応するようにしましょう。

面接は個々の子どもの状況や学級の状態を知ると同時に子どもとの人間関係をつくることも大きな目的です。受容的に聞く姿勢を大切にし、子どもの話をたくさん聞くことを目標にしてください。
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